キコウ醤油店は、テリヤキソース、ポン酢など日本では馴染み深い様々な調味料を製造・販売しています。 3年前からEU向け輸出に取り組み始めミラノの展示会に出展。顔なじみの現地バイヤーも徐々に増えてきました。 ただ、展示会に持っていける商品点数には限りがあります。そこで、現在50種類を超える商品をWeb上で紹介できる様なバイヤー向け商品カタログサイトを作り、展示会後のフォローアップにも活用したいと考えています。

本稿では、テリヤキソースなどの調味料の製造・販売を行っている企業を題材とし、海外バイヤー向け商品紹介機能を備えたWebサイトを構築し、案件発掘から商談後のフォローアップまでリアルな営業活動の補完的役割として活用するためのプロセスや手法についてSTEP BY STEPで説明します。

キコウ醤油店は、タレ・ソース商品を製造・販売している加工食品企業です。商品のラインンアップは、テリヤキソースやポン酢など様々な種類、そして小売り向け、業務用などサイズのバリエーションも豊富で50以上のSKUがあります。2年ほど前から、ドイツのフードショウに出展し、少しずつ現地の日本食レストランとの取引が増えてきました。

キコウ醤油店では、主力商品のテリヤキソースをきっかけとして新規取引先を拡大すると同時に、既存の取引先にポン酢、めんつゆ、焼きそばソースなど、他の商品の導入も図りたいと考えています。ただ、ドイツ現地に行けるのは展示会出展のタイミングの年に一度と限られるため、Webサイトを活用し、ドイツ含めたEU地域へのビジネス拡大を図りたいと考えています。

※キコウ醤油店は架空の企業です。

ヨーロッパ市場における商流

キコウ醤油では、輸入卸(輸入と卸を兼ねている事業者)と組んで現地の小売や飲食店等に卸す商流がメインですが、たまに小規模小売店から直接契約の引き合いもあります。いずれにしても、輸入卸業者が直接現地で営業してくれるわけではないので、キコウ醤油から現地小売店や飲食店のバイヤーへのアプローチは必須です。

また現地消費者のニーズを知らずして商品は売れません。そこで今回構築するウェブサイトでは、輸入卸事業者、小売り・飲食店バイヤー、一般消費者まで全てを集客対象とします。

※ 本稿では、輸入卸事業者・小売店・飲食店の購入担当者を総括し「バイヤー」と記述します

Step1: Webサイト構築

今回構築するWebサイトはバイヤーと一般消費者の両方が集客対象になっています。つまり、一つのサイトの中に一般消費者が見る情報とバイヤーが見る情報が混在していてどっちがどういう経路でアクセスしてきても、違和感無く見たい情報にたどり着けるような作りにする必要があります。

具体的にはどういう構成にすれば良いでしょうか?
まずは海外の食品メーカーのサイトの実例を見ながらイメージを膨らませてみましょう。

参考事例①:BRIANNAS (サラダドレッシング)

briannas

https://www.briannas.com

個別の商品ページは商品の特徴、仕様、レシピなど
バイヤー・一般消費者両方を対象にしたコンテンツ構成になっている

参考事例②:STONEWALLKITCHEN (食品・テーブルウェア)

stonewall

http://www.stonewallkitchen.com/

商品ページは、①のBRIANNAS社同様にバイヤー・一般消費者両方を対象にしたコンテンツ構成
商品SKU数が多く、商品一覧とレシピ一覧ページを別々に構成

キコウ醤油のWebサイト構成

実際のサイトを参考にするとイメージが沸いてくるのではないでしょうか?
キコウ醤油では早速Webサイト制作会社と打ち合わせを行い、Webサイトの構成の詳細設計を行いました。前頁で参考にした海外サイトの良いところを随所に取り入れた構成になっています。

バイヤー向けページの掲載方針としては、開示可能な情報はできるだけ掲載すると同時に、閲覧対象者を限定するログイン機能は付けないことにしました。キコウ醤油の規模の企業の場合、ログイン機能は将来的に取引先が増えて個別対応が負担になってきたら実装を検討するので十分と考えられます。

Web制作会社とのやりとりにおいて、Webサイトの構成を視覚化したものを使うのは非常に有用です。Webサイトが出来上がった段階で「イメージしていたのはこんなサイトじゃなかった」といったコミュニケーションエラーを防ぐことができます。

次のページからは、商品ページ やレシピ など個々のページの制作における留意点について順番に見ていきましょう。

商品ページ

競合商品のWebサイトを可能な限り見て、商品ページにどういった情報を記載しているか研究しましょう。自社の輸出対象国だけでなくグローバルにビジネス展開している企業がベストです。

また、キコウ醤油の様な食品の場合は消費者が敏感に反応する情報の開示に十分留意しましょう

上のスクリーンショットは、French‘s というアメリカの老舗ブランドのBBQソースの商品ページです。

INGREDIENT(原料), NUTRITION FACTS(栄養成分) , ALLERGENS(アレルギー物質) の情報に加え、BENEFITS (特長) の項目に、Dairy-free(乳製品を含まない)、Vegetarian(ベジタリアン)対応などの項目が列記されています。

アレルギー疾患者の増加傾向、食の多様化、健康志向の高まりなどのトレンドをふまえ、グローバル環境下で求められている情報を提供していきましょう。

前頁のFrench‘s BBQソースの商品ページと同一ページ内に掲載されている業務用サイズ商品の情報です。キコウ醤油が検討中のイメージ通り、一般消費者とバイヤーの両方を意識したコンテンツになっています。

こちらには、商品のサイズや容器の素材、賞味期限など、BtoB取引に関する情報が記載されています。

この様に、1ページにコンテンツを縦長に積み上げ、下方向にスクロールしながら見る形式のページが最近多く見られます。スマートフォンなどのモバイルでも閲覧しやすいレイアウトになっています。

複数の競合サイトを研究するとこうしたWebサイトのデザインに関するトレンドも見えてきます。

商品の活用方法を紹介するページ

食品企業のWebサイトの多くはレシピを掲載しています。特に加工食品の場合、レシピを見れば商品の活用方法が良くわかるので消費者に対して非常に有用な情報です。

Webサイトにレシピを掲載するメリットは他にもあります。

単に自社商品を使ったおいしい食べ方を知ってもらう目的だけではもったいないですよね。

【1】のソーシャルメディアとの連携については、Step2 で詳しく説明します。

【2】で把握した消費者のニーズについては、自社のPR・マーケティング戦略に反映するだけでなく、バイヤーと商談する際のネタとしても活用できます。こうした様々な活用を意識したレシピ構成を考えましょう。

【1】〜【3】いずれも、食品以外の業種にも当てはまります。海外の競合サイトがどういう情報を提供しているか、是非じっくり研究してみてください

キコウ醤油の伝統製法紹介ページ

キコウ醤油の商品は全て自社で醸造した醤油を使っています。自社の醤油蔵では何百年も前から使い続けている杉桶で今も伝統的な製法で醤油を醸造しており、この醤油から作られたテリヤキソースやポン酢などは味に深みがあると評判で、国内の商談では製法の説明や試食が成約につながるケースが多くあります。今回の海外Webサイト上では、こうした伝統的製法を画像や動画で紹介することにしました。

この様にプロフェッショナルな職人が手間をかけて丁寧に商品を作っている映像は、顧客に信頼感と興味を与えることができます。積極的に発信していきましょう。

バイヤー向けページ

今回、キコウ醤油では以下のポイントに注力したバイヤー向けページを作成することにしました。

キコウ醤油の様に、テリヤキソース、麺つゆ、ポン酢など様々な商品ラインナップがあり、また一般向け/業務用含めSKUの数も多い場合、全SKUをカタログの様に登録し、サイトに来訪した海外のバイヤーがお目当ての商品を探しやすいメニュー設計にすることが重要です。

また、せっかくわざわざWebサイトまで来てくれたのですから、サイト上で見積り依頼やサンプル送付依頼が受けられるようなしくみにしておきたいところです。

最後に、納期や決済方法、最小発注単位(Minimum Order Quantity) など、バイヤーが確認したい情報もある程度パターンがあります。こうした情報はヘルプやFAQにまとめておくことで、問い合わせのやりとりを減らすことができます。

バイヤー向けページ

① カタログ化と商品の見つけやすさ

キコウ醤油の様に複数の商品カテゴリーがありSKUの数も多い場合、バイヤー向けページの入り口では、商品を見つけやすいカテゴリー構成、メニュー設計を考えると良いでしょう。

小売り向けと飲食店向けとでバイヤーの探している商品が異なる場合もあります

参考例:クッキングオイルを販売しているサイト

BtoBに特化したECサイトで今回のキコウ醤油のバイヤー向けページとは主旨が異なりますが、商品の掲載方法として非常に参考になる事例です。

②見積り依頼などの行動に誘導するしくみ(Call To Action)

cta

参考例:サチャインチオイルの販売ページ

現在、多くの企業がWebサイトやソーシャルメディアをマーケティングに活用している中で、CTA (Call To Action) という言葉を目にするようになった方もいらっしゃると思います。直訳だと「行動喚起」という意味で、Webサイトの世界では、「サイト来訪者に取ってほしい行動を喚起すること」と定義されます。

キコウ醤油では、見積やサンプル送付依頼など、取引交渉のステージに進む様な“きっかけ” に誘導するのが目的です。

よって、右の参考例の様に、Get a Quote(見積依頼)、Request Samples (サンプル送付依頼) などに誘導するボタンをサイト上の要所要所に設置しておきます。

③ ヘルプ・FAQ

faq

http://www.batafood.com/faq/

こちらは、ドライフルーツやナッツを販売しているBATAFOOD社のFAQページです。

  • 基本契約条件
  • 決済方法
  • 梱包方法
  • 発送までのリードタイム
  • 物流
  • 最小発注単位

など、取引に関する具体情報が網羅されています。英語での書き方も非常に参考になります。こうした取引に関する情報を可能な範囲で開示しておくことで、バイヤーとのコミュニケーションを円滑化できます。

飲食店がサプライヤー(仕入れ先)に求めること

こちらは高級レストランをグローバル展開している企業のWebサイトに記載されている『サプライヤーになる条件』です。

財務健全であること、実績、評判、品質と価格、迅速な見積、配送に遅れを生じないこと等、購買側が求める条件としてはどれも一般的なことですが、規模や形態問わずあらゆる飲食店の購買側にとって、検討の土俵に乗せるためにまず確認したい情報であると言えます。こうした内容を自社サイトに開示可能な範囲で記載しておくことで、Webサイトに来訪したバイヤーが問い合わせをする確率を上げられる可能性があります。

上記ふまえ、バイヤー向けページ内では、

  • “日本ではXX店舗の導入実績” など、日本市場での実績を唄える情報があれば記載しましょう。
  • 例えばキコウ醤油の杉桶による手作りの製法の様に、大企業では真似のできない伝統的製法などは積極的にアピールしましょう。
  • 見積について、”XX営業日以内に返信します”など可能な限り明確に記載できると良いでしょう。

Step2: メールを活用した海外バイヤーのフォローアップ

Step2 ではStep1で制作したWebサイトのコンテンツと連携し、海外バイヤーのフォローアップ手法について説明します。

キコウ醤油では、ドイツで開催される世界最大級のフードショー 『アヌーガ』への出展を中心に販路開拓に取り組んでいます。現地で知り合ったバイヤーのフォローなど、まずは現状どういった形で販路開拓活動を行っているかについて振り返ってみます。

現状の課題

このようにキコウ醤油では、展示会でせっかく100人ほどのバイヤーと名刺交換をしているのに、ほとんどの名刺(=潜在顧客)を活用できず貴重な人脈資産を眠らせてしまっている状況です。

海外現地に営業拠点が無く、展示会等で現地に行けるのもせいぜい年に1~2回、というケースは多いと思います。現地バイヤーとの関係構築・維持において、こうした地理的な制約を軽減する手段としても、Webサイト、メールなどのオンライン資源を有効に活用していきましょう。

見込み客を顧客化する

キコウ醤油では、STEP1のWebサイト構築段階で、レシピや伝統的製法の紹介ページを制作、そしてバイヤー向けにサンプル送付や見積取得リクエストのページも設けました。

Step2では、これらのコンテンツを活用して定期的にバイヤーに接触し続けるしくみを構築します。

アプローチの仕方を考える

キコウ醤油がドイツの食の展示会:アヌーガで名刺交換した相手は、輸入卸事業者・小売店・飲食店の購入担当者などでした。輸入卸事業者は現地の日本食レストランや小売店に様々な商品を供給しているでしょうし、飲食店なら日本食のカジュアルレストラン、うどん屋、シーフードレストラン、寿司屋など様々な形態が想定できます。

いずれにしてもバイヤーですから、気になるポイントは「売れるかどうか」です。そして、バイヤー目線ではどんな情報が役に立つでしょうか

例えば

  • 輸入卸事業のバイヤーなら、日本でキコウ醤油の商品を導入している飲食店や小売店の成功事例
  • 飲食店のバイヤーなら、日本の飲食店でキコウ醤油の商品で作った人気料理
  • 小売店のバイヤーなら、日本での主な顧客層やセールスポイント
  • そこで、こうした情報を提供するべくメールのテンプレートを数種類作ってみることにしました。

見込み客であるバイヤーを自社の顧客にするのがゴールですから、メール配信が成功したかどうかの指標としては、「見積依頼」、「サンプル提供依頼」または「問い合わせ」が来た割合で設定します。

例①:アヌーガ直後に送るフォローアップメール(成功事例の紹介)

例②:アヌーガ直後に送るフォローアップメール(活用方法の紹介)

例③:アヌーガ後に送ったフォローアップメールに返信が無かった場合、1か月後に再アプローチするメール

この様に、あらかじめメールのテンプレートを何パターンが用意しておき、1-2か月おきにコンタクトをし続けます。

状況に合わせて英文メールを書ける人材が社内にいる場合はテンプレートは必要ありませんが、それが難しい場合は、パターンをいくつか作っておき、単語やリンク先のURLなどを変更して送れるようにしておくと定期的に英文メールを送ることへのハードルが下がります。メールだけでそんな上手くいくはずは無いと思われる方もいらっしゃるかと思います。確かに対面での商談と比較するとメールだけでは決して十分ではありません。

それでも、せっかく展示会ブースで立ち止まってくれたバイヤーに対してその後何もせずに関係性が薄くなってしまうより、翌年の展示会まで定期的にコンタクトしておくことで社名や名前を覚えていてもらえる確率はグッと高まります。

また、展示会場ではさほど高い確度では無さそうだった場合でも、バイヤー側に何か具体的なニーズが発生した際、定期的にメールで提供し続けた情報が購入に結びつくケースもあります。そもそも、アメリカやヨーロッパ地域では日本の様な訪問型営業だけでなく、電話やメールを通じて顧客と関係構築を図るインサイドセールス(内勤型営業)という営業スタイルが確立されています。

バイヤー側も対面の商談でのみ情報を収集しているわけではなく、Web, SNS, メールなどオンライン上の様々なソースから情報収集し意思決定を行っています。

展示会や商談会などのリアルな場での接点(Physical Touchpoints) と、オンラインでの接点(Digital Touchpoints)の両面からのアプローチで機会の最大化を図っていただければと思います。

番外編:相手に読まれる英文メールを書くコツ

どんなにメールを一生懸命書いても開封してもらえなければ努力は実りません。まず、日々大量のメールを受信するバイヤーの目に留まり、開封してもらうためにメールの題名はとても重要です。

ここで、先ほどのキコウ醤油のIchiro さんの場合ですが、例えば展示会(アヌーガ)の後のフォローアップメールで以下の様な題名にしたらどうでしょうか?

Subject: Thank you for meeting at Anuga (Ichiro, Kikou Shouyu)

もし似たようなメールをたくさん受信していて、キコウ醤油をよく覚えていない場合はクリックされないかもしれません。対象地域や業界によってトーンは異なりますが、全般的に欧米のビジネスコミュニケーションは “直接的” です。

例えば、今回のキコウ醤油の場合

  • Healthy teriyaki sauce we talked at Anuga
    (アヌーガでご紹介したヘルシーなテリヤキソースの件)
  • The hottest trends in teriyaki food in Japan
    (日本で流行っているテリヤキ料理のトレンド)
  • Success story – improved lunch-time revenue
    (ランチタイムの売り上げを上げた事例)

など、相手の記憶や興味に刺さるような題名を工夫してみると良いでしょう。

また、良く言われることですが、メールの本文は、以下のポイントに留意しましょう。

  • 相手への要望や質問など重要事項は冒頭で伝える
  • 1つのメールに用件は1つ
  • 内容は短かく簡潔に

ネイティブでない私たちが長々と書いた長文は相手にはわかりづらいことの方が多いです。なるべくシンプルにまとめましょう。また、文体はビジネスのトーンを崩さず丁寧に。

口頭の会話では多少カジュアルな方が相手とのキョリ感を縮めやすい場合が多々ありますが、メールでは特にまだあまり面識の無い相手にカジュアルすぎる文面は良い印象を与えないことがあります。

そんなにいろいろ無理!! と思われてしまうかもしれません。確かにこれまでやりとりしたことが無い海外の相手と現地の言語でやりとりするのは最初は難しく感じます。

でも結局は「慣れ」です。これに勝るものはありません!その意味でも、ある程度テンプレートは作っておきつつ、その先のやりとりは場数を重ねていくことで相手の興味や刺さるポイント、表現方法などは意外とすぐに身についてきます。

正解は決して一つではありません。トライ&エラーを繰り返しながら自分のスタイルを作ってみてください。

Step3: 新規集客施策

キコウ醤油ではStep1でWebサイトを構築、Step2ではメールを活用し展示会で名刺交換したバイヤーのフォローアップのしくみを構築しました。

そこで、Step3では、現地の一般消費者や、まだ面識が無くキコウ醤油のことをよく知らない現地バイヤーにキコウ醤油の商品を見つけ、そして良く知ってもらうための集客施策について考えていきます。

つまり自社サイトの集客施策、というのは前ページ 1~5それぞれの流入元からの流入を増やす作業、ということになります。 では、それらの流入を増やすには具体的に何をすればよいのでしょう?

有効なやリ方の一つとして、対象地域の競合サイトの集客の仕方を分析し、それらの良いところを取り入れるところからスタートする、という考え方があります。

Web分析ツールの活用

SimilarWeb(シミラーウェブ:https://www.similarweb.com/ja )などのWeb分析ツールを使うと競合サイトの流入経路分析を行うことができます。 SimilarWebを活用した競合サイトの分析方法については、 『欧米向けWebサイト構築 STEP BY STEP ガイド』シリーズの“1. 越境EC編”  で詳しく説明しています。よろしければ参考にしてみてください。

さて、キコウ醤油でもシミラーウェブを使ってEU地域でテリヤキソースを販売しているローカルブランドのWebサイトをいくつか見てみました。

が、データ量不足(*1) とのエラーメッセージが表示され、競合サイトの分析を行うことはできませんでした。

残念ですが、裏を返せば競合サイトもまだWebの世界でさほど集客できていない、ということなので、EU市場では後発のキコウ醤油にもチャンスがありそうです!

そこで気を取り直して、5つの流入元それぞれにおいて自社で取り組みやすいところから始めてみることにしました。

今回のキコウ醤油の様に、競合他社のWebサイトの定量的な分析が難しい場合も多々あると思います。

一般的な傾向としては、オーガニック検索からの流入が50-70%と高い比率を占める場合が多いです。そう考えると検索エンジン対策は非常に大事なのですが、ただ実際に対策が効いてくるまで時間がかかります。

一方で、ソーシャルメディアからの流入比率は10%以下の場合が多いですが比較的即効性があります。予算が許すならGoogleやソーシャルメディア広告を試す価値はあります。全部できれば理想的ですが特に中小企業の場合、選択と集中も重要です。人的リソースや予算をふまえ集客施策を考えてみてください。

では早速次のページからキコウ醤油のそれぞれの施策について見ていきましょう

オーガニック検索(SEO)対策

SEO対策、つまり検索エンジンからの流入増加を目指す具体的な方法についても

欧米向けWebサイト構築 STEP BY STEP ガイド』シリーズの“1. 越境EC編”  で詳しく説明していますのでよろしければ見てみてください。

ここでは、キコウ醤油の主力商品:テリヤキソース (Teriyaki Sauce) についてGoogleのキーワードプランナーツールを使ってキーワード抽出を行うところから説明します。

今回、Google キーワードプランナーの分析対象地域をUK含む周辺の10か国を指定し “buy teriyaki sauce” (テリヤキソースを購入) で分析してみたところ、以下の様なものが見つかりました。

キコウ醤油のテリヤキソースは、糖分は控えめですが、醤油の旨味が強く感じられるのが特徴です。よって、”healthy”, “low calorie”, “low sugar” といったキーワードは積極的に使っていくことにしました。

また、”bottled(ボトルに入っている)”,  “premade(既製の)” などは自分でテリヤキソースを作るのではなく、市販のものを探しているケースである可能性が高いワードです。こうしたキーワードも商品ページに取り入れていくことにしました。

同様に、Mentsuyu(麺つゆ), Dashi(出汁), Ponzu(ポン酢), Udon(うどん), Soba(蕎麦), Soy Sauce Dressing(醤油ドレッシング) など様々なキーワードについても同様のやり方で、検索エンジンでの上位表示を狙うキーワードを決めていきます。

そして、それらのキーワードを自社サイトのコンテンツに反映します。

ソーシャルメディア

キコウ醤油では、テリヤキソースや麺つゆ、ポン酢を使って簡単に作れる料理の中から、テリヤキチキン、うどん、蕎麦、カルパッチョなど海外でも人気の料理を選んでレシピ動画を制作することにしました。また、せっかく手間とお金をかけて制作するのですから、単にWebサイトに載せるだけでなく、YouTubeやFacebookなどのソーシャルメディアにも活用したいと考えています。

そこで今回は全ての動画を、

  1. 短縮版で正方形サイズ(Facebook用)
  2. フルバージョンでYouTube用サイズ (アスペクト比が 16:9 ) 

の2パターンで制作し、①はFacebookに投稿、②はYouTubeに登録、そして登録したYouTube動画を自社のWebサイトのレシピページに埋め込むことにしました。

Facebookからの動画投稿

YouTubeからの動画配信

YouTube動画の再生回数を増加させるワザ

前ページの①や③のルートで自社の動画を見つけてもらいやすくするために非常に重要なのがキーワード設定です。キーワードには、動画タイトル内に含めるキーワードと、動画をアップロードする際に登録するキーワード(タグ)の2種類があります。

最重要キーワードはタイトルに、それ以外の主要キーワードをタグに設定しましょう。

ちょっとした手間や工夫でYouTube動画から自社サイトへの集客効果をupさせる!

この様に、Facebookにはフォロワーのタイムラインに表示される時点で自動再生されることにより拡散しやすい、一方 YouTubeには全ての動画を資産として蓄積しやすいため、過去の動画も繰り返し見てもらえる可能性が高い、Webサイトと連携しやすい、といった様にそれぞれ異なるメリットがあります。

FacebookもYouTubeも一度アカウントページを作ってしまえば、動画の投稿作業は簡単ですので、作成した動画は毎回 FacebookとYouTube のそれぞれに投稿し、両方のメリットを活かせると良いでしょう。

また、今回はレシピ動画が活かせるFacebook・Youtube での集客について説明しましたが、アパレルや化粧品、文具など、異なる業態ではインスタグラムなど別のソーシャルメディアの方が適している場合もあります。業界内の他社サイトを研究しながら最適なソーシャルメディアを選びましょう。

Step4: 数値管理

キコウ醤油では、今回のWebサイト構築をきっかけに、展示会出展などのリアルな場での営業活動とWebからの問い合わせ経由で発生した営業案件を一元管理し、目標売上額達成に向けて取り組むことにしました。

昨年はアヌーガで商談したバイヤーからの発注が3件あり、売上合計額は100万円でした。今年は以前商談したバイヤーのフォローアップ強化とWeb経由での新規案件発掘を基に売上目標金額を200万円と設定しました。

200万円の数字はキコウ醤油の国内含む全売上高の1%に相当します。海外売上構成比を徐々に上げ、3年後に5%に相当する1,000万円を達成したいと考えています。キコウ醤油のビジネスモデル、人的リソースの観点から200万円の売上目標達成に向けどういった売上計画を立てるのが現実的でしょうか?

売上計画の考え方

キコウ醤油の主な取引先はドイツなどEU地域の輸入卸で、そこから現地の飲食店や小売店へと商品が流れていきます。

まず、売上の構成要素は
売上 = 取引先社数(a) × 発注金額(b) × 発注回数(c)

つまり、売上を伸ばすには上の式の (a), (b), (c) の数字を増やす、ということになります。

さて、(a), (b), (c) それぞれの難易度はどうでしょうか。おそらく、(a)の取引先社数を増やすのが一番難易度が高いでしょう。新規取引先との契約締結には時間も労力もかかるためです。

また、キコウ醤油の海外営業担当者は現在1人です。管理できる取引先の数にも限界があるので、目標額200万円の内訳を以下の様に設定しました。

(a)新規取引先の獲得: Webサイト経由で1件 (30万円)
(b)発注金額アップ+(c) 発注回数アップ:既存取引先から170万円

(b) の発注金額や(c)の発注回数を増やすための取り組みとしては以下が考えられます。

①同じ取引先(輸入卸)に販売する商品の種類を増やす
②同じ卸先(飲食店や小売店)からのリピート発注率を上げる
③輸入卸の現地営業に同行し、卸先(飲食店や小売店)の数を増やす

特に、①や②は Step2 で説明したメールを活用したフォローアップで、すぐにでも取り組めそうです。

月別売上管理シート(例)

前ページで説明した売上の構成要素 (a), (b), (c) とそれぞれの内訳の要素を月別でモニタリングする。

シートの作成例と入力例です。(b)の発注金額、(c) の発注回数は取引先別に管理します。また、黄色の網掛けは月別の目標値、月が閉まって実績値が出たら青で網掛けしています。

これらの数値をモニタリングすることで、

  • 取引先社数とその獲得源(展示会 or Webサイト)の内訳。
  • 発注金額を伸ばしている取引先、またはその逆
  • 発注回数が増えている取引先、またはその逆

など、リアルの営業活動とWebから創出された案件を一元管理することができます。また全体の数字の動きが把握できるので、営業活動の 優先順位が捉えやすくなります。

Webサイト来訪者が『新規取引先』となる過程の数値管理

続いて、キコウ醤油のWebサイトの来訪者を『新規取引先』 とするまでの過程について考えてみます。Web上ではバイヤー向けページに集客することと、見積依頼ページにどれだけ誘導できるかが最終的に重要な指標になります。

モニタリングする指標は以下の5つにしました。

①Webサイト来訪者数
②バイヤー向けページ閲覧者数
③サンプル送付依頼数
④問い合わせ数
⑤見積依頼数

①のWebサイト来訪者は、一般消費者とバイヤーが混在しておりその内訳を取得することはできませんが、そこは気にしないことにします。

月別Webサイト問い合わせ管理シート(例)

先頁の年間売上目標設定では、Webサイトからの新規取引先獲得目標数は1件と堅めな数字にしました。これまでのリアルな場での営業活動だと、見積5件程度から成約に至るのは1件、という実績ですが、顔の見えないWeb経由だとまだ様子がわからないので、年間で見積依頼10件を目指すことにしました。

また、このシートではWebサイトの来訪者数、および見積依頼など各種アクションの数をモニタリングしていきますが、キコウ醤油では営業担当1人体制で無理なく継続管理することを考慮して今年度はまず「バイヤー向けページ閲覧数」と「見積依頼数」の2つに目標値を設定し実績値との対比を管理することにしました。

当面はWebサイト内でバイヤー向けページにどういうルートでたどり着いているかを毎月分析し、サイト内の導線や集客施策の改善を図りつつ、10か月目にはバイヤー向けページの閲覧数が約190, 見積り依頼に至るのが約1%の2件を目指します。

こちらも、黄色の網掛けは月別の目標値、青の網掛けが実績値です。

いかがでしょうか。今回は、調味料の製造販売企業を例にしていますが、Webサイトの構築手法、競合サイトの研究、リアルの商談や展示会でやりとりのあったバイヤーのフォローアップ、Webサイトへの集客施策、そして数値管理に至るまで、あらゆる業種の企業に適用できる手法ですので是非ご活用いただければと思います。

ちなみに、海外競合サイトの中には業務用の商品もECで販売している企業も見られました。もし将来そうしたサービスも検討されている場合は、『欧米向けWebサイト構築 STEP BY STEP ガイド』シリーズの “1. 越境EC編” をご覧ください。

また、キコウ醤油の様な最終消費者が一般消費者である BtoBtoC商品ではなく、エンドユーザーが企業であるBtoB製品のケースは、 “4. BtoB編”  をご覧ください。

次のページに今回のプロジェクトの全体像をまとめましたので参考にしてみてください。

キコウ醤油店 海外バイヤー向け商品紹介

サイト構築プロジェクト 全体像

THANK YOU FOR READING!

海外バイヤー向け商品紹介サイトでは、単に自社の全商品をカタログ化することだけが目的なのではないことがご理解いただけたかと思います。  Webやメールを効果的に活用し、現地バイヤーとの関係性構築、成約率の向上を目指してしていただければと思います。Good Selling!

PRESENTED BY empapilio, Inc.

中小機構とは

独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。

全国10か所の地域本部等及び9か所の中小企業大学校を支援の最前線として、皆様の経営をサポートしています。このほか、国内外の他の政府系機関や地域支援機関とも連携し、幅広く支援メニューを提供しています。

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公開日:2019年 7月 12日

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