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「海外市場に活路を見出す西陣織の機屋4代目夫妻の挑戦」- 岡本織物株式会社(京都府京都市)

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色とりどりの絹糸を巧みに操り、美しく華やかな紋様に織り上げていく西陣織。飛鳥時代から始まったと伝えられ、京都を代表する伝統工芸品のひとつだ。しかし、日本人の生活様式の変化による需要低迷や後継者不足などから、産地では苦しい状態が続くという。

そんななか、海外市場に目を向け、西陣織を守ろうと奔走する会社がある。西陣で機屋(はたや/織り専門工場)を営む「岡本織物」。3年ほど前から西陣織を使った自社オリジナルのバッグなどを製作・販売し、新市場の開拓を模索していたが、中小機構のアドバイザーとの出会いを機に、海外進出を決意。そして2017年1月に、海外ビジネス戦略推進支援事業を活用してフィンランドで現地調査を行い、ヨーロッパ市場の開拓に向けて大きな手応えを得たという。

同社の取り組みを聞こうと、4代目社長で伝統工芸士の岡本圭司さんと、デザインを担当する絵麻さんご夫妻を訪ねた。

【インタビュー・執筆 青山まりこ(株式会社トランジット)】

企業DATA

 岡本織物株式会社(京都府京都市)所在地 京都府京都市上京区小川通一条上ル革堂町576
代表者 代表取締役社長 岡本圭司
業 種 西陣織の製織・製造・販売
資本金 1,000万円
従業員数 9名
URL http://okamotoorimono.com/
海外展開検討国 フィンランド
※平成30年3月現在

 

主力製品は、西陣織の中でもひときわ豪華な金襴織物

―――――岡本織物さんの事業概要や特色についてご紹介ください。

岡本圭司さん(以下、圭司さん) 当社は職人集団で、正確な創業年がわからないのですが、曽祖父の代にはすでに西陣織に携わっていたと聞いています。主力製品は、金糸や金箔を使って手機で織り上げた金襴(きんらん)織物。主に神社仏閣を飾る戸帳や僧侶の法衣、仏壇の打敷などを用途とした生地を、西陣織の専門問屋に卸しています。

岡本織物さんの事業概要や特色についてご紹介ください

―――――金襴は手機でしか織れないのですか。

岡本絵麻さん(以下、絵麻さん) 「力織機」と呼ばれる機械でも織れるのですが、手機織は、絹の光沢に深い陰影が重なって、何ともいえない独特の風合いや光沢を醸し出します。専門の職人が、あらかじめ並べられた経糸(たていと)に1本1本緯糸(よこいと)を織り込みながら、「紋意匠図(もんいしょうず/織物の設計図にあたるもの)」の紋様を表現していく手仕事なので、複雑な紋様だと、1日に15センチほどしか織ることができません。さらに、西陣の機屋でも、竹べらを使って金箔糸を1本ずつ織り込む技法「引箔(ひきばく)」ができるところとなると、かなり数が絞られます。

岡本織物には3人の伝統工芸士が在籍。昔ながらの手機で西陣織を織り上げている
▲岡本織物には3人の伝統工芸士が在籍。昔ながらの手機で西陣織を織り上げている

―――――それだけの高い技術があり、かつ競合も少ないとなれば、経営は安定しているのではないですか。

圭司さん いやいや、それがそうでもなくて。仏壇の需要の低迷や不況の長期化で、市場はどんどん先細りしています。新しい売り先を開拓しないと、生き残っていくことも、後継者を育てていくことも難しい。そんな危機感が10年くらい前からあり、年々じわじわと深刻さを増しています。

―――――そこで、デザイナーである奥様の絵麻さんの感性と行動力が発揮されるわけですね。そもそも、おふたりはどのようにして出会われたんですか。

圭司さん 初めて会ったのは、私が武蔵野美術大学で油絵を、彼女が東京造形大学でテキスタイルデザインを学んでいたときです。卒業後すぐに結婚し、ふたりそろって岡本織物に入社しました。

絵麻さん 私は札幌市出身なのですが、あと数年で、京都暮らしのほうが故郷で過ごした年月よりも長くなります。

―――――おふたりはきっと、出会うべくして出会ったご夫妻なのですね。では、絵麻さんが販路開拓に向けて、具体的に取り組んだことについてお聞かせいただけますか。

絵麻さん 聞くところによると、業績が良かった時代には社員旅篝盾ナ海外にも行っていたそうです。入社してから国内旅行に2度行っただけの私たちからすると、夢のような話。裏を返せば、それほど業績が悪化しているということです。「このままではいけない。何か行動を起こさなくちゃ」と思って、3年ほど前に西陣織を使ったバッグや名刺入れなどの小物をインターネットで販売し始めました。

―――――自社のオリジナル商品ということですか。

絵麻さん ええ。でもメーカーさんに西陣織の生地を提供して作っていただくので、どうしても製造原価が上がってしまい、薄利なんです。それに、本来の業務の合間を縫って商品企画から撮影、出品、発送まで一連の作業をしなければならず、ひとりで続けていくには限界がありました。ただ、商品に対する評判は上々でしたし、西陣織の魅力をもっと多くの方に知っていただきたいという気持ちが強かったので、どうにかして新しいビジネスモデルがつくれないかと、暗中模索していました。

自社のオリジナル商品ということですか

 

―――――そして次なる行動を起こされた。

絵麻さん ひとりで悶々としていても、答えなど出ません。これは外に出て、いろいろな方の意見を聞いたり、勉強させてもらったりするしかないと思い、経営やブランディングについて学ぶビジネスセミナーや、ものづくり系の展示会に積極的に足を運ぶようになったんです。

―――――社内のみなさんは快く送り出してくれたんですか。

絵麻さん いいえ。何しろ職人の集まりですから、「勤務時間中に外出する=遊びに行っている」と思われていたかもしれません。

圭司さん でも、彼女はそんな視線などどこ吹く風ですよ。社員には私から「会社の将来のために必要なことなんだ」と説明して、理解してもらうよう働きかけました。

絵麻さん 私、思うんです。新しいことを始めるなら、本気にならないといけません。「こんなことを言ったりやったりしたら、だれかに反対されるんじゃないか」とか、「他の人ががんばってくれるんじゃないか」とか考えているうちは本気じゃないんですよ。

―――――外から客観的に自社と西陣織を見ることで、ご自身の意識や考え方に変化はありましたか。

絵麻さん さまざまな業種・世代の方との交流を通じて、新たな気づきや学びが多くありました。自分の中で漠然とですが、「海外進出」という目標が生まれたのも、そのころでしたね。とはいえ、英語が話せるわけでもないし、流通ルートを持っているわけでもありません。そんな時、中小機構のアドバイザーを務める小川陽子さんと知り合って、海外ビジネス戦略推進支援事業の話を聞き、チャレンジしてみようと思ったのです。

絵麻さんが企画・製作した商品の一例
▲絵麻さんが企画・製作した商品の一例。現在はブログやSNS、対面でのみ販売している
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