GCCには生活習慣病患者とその予備軍が多いとの理解は正しいと思います。その背景には、

- 栄養に関する知識・情報の不足     

- カロリーの過剰摂取     

- 運動不足(極度の車社会)     

- 甘味嗜好     

- 昼食後の午睡、遅い夕食と直後の就寝、

等の要因があると言われます。一方、近年、ネットの普及等のお陰で、欧米先進国でのダイエットに関する情報に接する機会が増え、人々の栄養に関する知識と健康への関心は以前に比較して高まりつつあります。その結果、大都市部では、フィットネス・クラブが繁盛するようになり、高級スーパーでは欧米製ダイエット・フードも売られるようになっています。

従って、こんにゃく由来の加工食品の市場性が芽生えて来る素地は出来つつあると思われます。

然し、貴社製品のターゲットとなるGCC国民や中高級出稼ぎ人層(主として、南西アジア、や他のアラブ諸国出身)は、食習慣や味覚の好みが保守的であるゆえ、初めての食べたことのない食材に対する心理的抵抗感は避けられないと思われます。それを克服する為には、先ずは、こんにゃくの効用を分かり易く説明・教育・宣伝することが重要となりましょうし、形/色/匂い/食感といった点でも、消費者に受け入れやすいものに加工することが必要でしょう。
以下に、若干の補足を記します。

1. 宗教的制約と食の保守性の克服

(1)イスラム教では、豚肉・アルコール、血、鱗のない魚、軟体海洋生物等宗教的に忌避する食材があり、それら食材そのものと、それらに触れたものも忌避することが規定されている。これらを総称して「ハラーム」と称される。一方、イスラムの教えに抵触しない食材は「ハラール」と称される。

(2)GCC市場で販売する食材は「ハラール」であることが義務つけられて居り、輸出する際には「ハラール」認証を認定機関から取得して置く必要がある。(ハラール認定に関しては、末尾の参考リンクをご参照。)尚、こんにゃくは植物由来ゆえ、ハラール認証は問題なく発行されると思われる。宗教的制約以外にも、GCC消費者に受け入れられる為には、事前に、形・色・匂い・食感といった点に関し、モニターによる試食調査を行うことは不可欠であろう。

2.こんにゃくの「ダイエット効果」に関する教育・宣伝の必要性

(1)こんにゃく由来の加工商品は今日では、北米/英・仏・独・露市場、或いは、東南アジア市場向けに輸出・販売されている。その際、生産者・販売者による、現地消費者の嗜好調査/試作品モニター調査等を経て製品に仕上げたものと想像される。然し、これら市場は元々日本/日本文化/日本食に対する関心がそれなりに高い市場であったこと、且つ、健康志向も相対的に高かった市場であることから、こんにゃく製品の紹介と販売開始の難易度は、GCC市場よりは低かったものと想像される。

(2)一方、GCC市場は、日本/日本文化/日本食に対する関心も情報・知識も、欧米市場に比して乏しいのが実情。従って、消費者の関心を呼び起こすには、前述の昨今の「健康志向の芽生え」を刺激するような施策が必要であろう。即ち、例えば、本邦でGCC出身者(例えば、大使館員夫人)を集めてモニター試食調査を行い、その結果を踏まえて市場の消費者により受容度の高いものを試作し現地で更なる調査を行うことも、試みるに値しよう。

(3)それらを経て完成させた製品を現地に持ち込み広く宣伝する格好の機会としては、毎年2月にドゥバイで開催される“Gulfood”(【中東ビジネスのヒント】第14回ご参照)という域内最大の「食」に関する国際見本市に出展することであろう。

(4)又、近年、大都市に徐々に登場しつつある“自然食”レストランにメニュー/調理法と共に提案することも一案であろう。

3.現地代理店/パートナーの重要性

(1)「こんにゃく」というこれまで未知であった食品/食材を、“食”に関して極めて保守的な市場に紹介する試みだけに、最初は市場に需要は存在していないことを覚悟して「市場を創り出す」決意で臨むことが必要であろう。

(2)その意味で、この特殊な食品/食材の意義・効用と潜在性を理解した上で、新規市場の創出と開拓に、共同で取り組もうという意と能力のあるパートナーを発掘し、輸入代理店として起用することは極めて重要であろう。

同パートナーには、食品輸入に関する諸規制・手続をクリアーする為の働きを行って貰うことは勿論だが、より重要な仕事は、「植物由来の新しいダイエット食品/食材としての”こんにゃく”に関して、その効能/成分/製法/実績等々の情報を、食品業界/外食産業/ケータリング産業/医学・栄養学/メディアの関係者にできるだけ広く多く提供/発信する。」ことであろう。

〇 例えば、市場に芽生えつつある”オーガニック・フード”レストランに対して、(「こんにゃく」を使ったメニューを提案し、採用してもらい、それをメディアで紹介してもらう、といった働きかけを画策できるようなパートナーであれば、より早く市場を切り拓けよう。

尚、代理店起用に関しては、「GCCで代理店を起用する場合の留意点」をご参照。

プロフィール

国際化支援アドバイザー(国際化支援)富山 保
総合商社に38年勤務し長年海外ビジネスに携わってきた。若い頃の会社派遣のアラビア語研修皮切りに、 合計約15年間の現地駐在経験(サウジアラビア・UAE等)を有する。