「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第30回目は、フランスにお住まいの青木アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2023年9月時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

パリ祭を境にビジネス停滞モード突入〜夏のバカンス

6月末から7月にかけて気候も夏らしくなってくるフランス。会話はもっぱら今年の夏のバカンスはどう過ごす?に集約されると言って良いでしょう。これまで滞っていたメールのやり取りが突如息を吹き返したかのように活発になり、こんな時間に仕事はしていないだろうと期待ゼロでメールを送れば、勢いよく返事が返ってきたりして、なんだか普段と違うスピード感。こちらが調子狂いそうになります。そう、この時期は彼らにとっては仕事納めなのです。長い夏期休暇前に勢いで仕事を終えてしまおう ! という気迫さえ感じられます。そしてなかなか進まなかった案件が何事もなかったかのようにスムーズに進む。終わりよければ全て良しということを体感させてくれる日常の出来事です。フランス革命記念日の7月14日を境にパリの街全体がバカンスモードに突入します。メールを送れば「8月後半まで休暇中。緊急の場合はこちらまで連絡してください」と自動返信メールが戻ってきます。そして緊急連絡先に連絡すれば、引き継ぎが上手くされていない事態発生。フランス、よくあるあるな出来事ですが、そういうものだと思って切り抜ける寛大さも必要だと感じさせられます。

夏はたっぷり休んでリフレッシュ。潔いオンとオフの切り替えを

コロナ前にもましてパリは観光客で溢れています。8月のパリはほぼ観光客で埋まるとでも言って良いくらい、地下鉄は満員、観光スポット、レストランは大変賑やかです。パリジャンは比較的長い休暇をとってエネルギーをチャージしリフレッシュ。オンとオフをしっかり切り替え9月に備えるのは大体8月後半から。ここから一気に加速し滞っていた連絡は休暇直前のように復活します。なぜなら新学期でもある9月は、ビジネスがスタートする心機一転の時期。街全体がビジネスモードに切り替わる勝負時期だからです。

Who’s next:パリで開催されるアクセサリーとファッション小物の国際展示会。2023年は9月頭に開催

9月のパリはイベント満載。デザインウィーク、ファッションウィークをはじめ国際見本市や数々のイベントが行われ、秋にかけてビジネスチャンスを狙いつつ、街全体が活気付くのです。BtoB展示会の数自体は、10月にかけて増えてゆき、11月にピークを迎えます。11月以降はギフトシーズン、クリスマス商戦にかけてBtoCのイベントで賑やかになるといった流れです。この流れに乗り遅れないように、8月後半から早めに準備をスタートするビジネスパーソンも多いと感じます。コロナのせいで幾度となくキャンセルを強いられたこれらのイベントや展示会ですが、オンラインのみに頼るだけでなく、やはりサプライヤーとバイヤーが直接出会え、商品を目の前に直接商談できる機会、そして直接消費者と対面して会話し交流を深めるというのは大切なのだと感じます。

Paris Design Week:ギャラリー、ショールーム、ワークショップで新たなトレンドを発見する機会。芸術的なインスタレーションを楽しめる芸術の秋のイベント(2023年は9月7日から16日まで)

オンもオフも全力投球。活気あふれる状況で楽しみながらビジネスを

Maison & Objet:世界最高峰のインテリア&デザインのトレードショー(2023年は9月7日から11日まで)

今年は9月に入ってからは夏に逆戻りをしたような暑い真夏日が続いており、ラグビーワールドカップの熱い盛り上がりも手伝って連日パリは熱気に包まれているようです。展示会ビジネスが軸となっているフランス。9月前半は私自身も関わっているインテリア業界のプレタポルテと言われるメゾン・エ・オブジェ展示会を含めデザイン、ファッションをはじめとする様々な国際見本市やイベントが目白押し。連日イベントのヴェルニサージュ(オープニングパーティー)が続く中、皆もちろんこの機会も楽しむわけです。日はまだまだ長いので、日中はビジネスに集中し、夜は気分を切り替えて街に繰り出す。7、8月に温存した体力はまさにここで使うと言っても良いでしょう。

インテリア・雑貨業界に関して言えば、よりインターナショナルで、潤沢な予算で翌年販売する分の買い付け、新規商品のSourcing(ソーシング)、サプライヤー選定、価格調査等の業界リサーチがメインという傾向のメゾン・エ・オブジェ1月展に比べると、9月展は直近の新学期セール、クリスマス商品の仕入れに中小規模の小売店が多数訪れます。長い商談というよりはその場で発注し、納品を急ぐところが多いのも特徴的。9月展に出展を考える場合はそれなりの在庫の確保、即納が可能な状態にしておくことがベストと思われます。

Maison & Objet:会場内の様子

9月から年末にかけてビジネスの流れにしっかりとついて行くために、やはり夏の休暇は必須なのだと改めてしみじみ感じます。中途半端に休むのでは、9月以降の体力が持たないわけです。オンとオフの切り替えの潔さは見習いたいもの。活気に満ちたこのシーズンは体力も気力も消耗しがち。身も心もリフレッシュした状態で元気に臨みたいものです。

筆者紹介

青木 千映 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

2007年より日本のクリエーションをフランスに発信するプロジェクト、日本の職人プロダクトを世界に発信するEコマースサイトの運営をスタート。フランスをはじめ、ヨーロッパにおける国際見本市・展示会出展のサポートやコーディネートのほか、ものづくりに関する国際見本市の日本ブースのスタッフとしてバイヤー集客、商談、市場調査業務等を実施。2013年、日本企業の海外進出ビジネスサポート業務を行うフランス法人を設立。デザイン・雑貨・ファッション分野における日本製品の欧州販路開拓に多くの実績を持つ。マーケティング、市場開拓戦略をはじめ、「販売·流通·回収」の体制を備え、一気通貫で日本企業の輸出を支援できることが強み。

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