「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第31回目は、中国にお住まいの近藤アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※このレポートは2025年1月時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

2024年11月12日から14日まで中国・上海で開催されたグローバル食品展の様子をお伝えします。今回で27回目を迎える伝統ある展示会で、出展企業数は約3,000社、3日間の来場者数は、なんと17万人という大規模なものでした。どの展示会もそうですが、およそ中国で開催されるものは、世界No.1の規模を誇るものが多いです。世界中から挙って出展を申し込む企業が殺到し、日本の展示会よりも格段に国際色が強く、バイヤーも世界各地から集結するのが大きな特徴です。本展示会でも約50ヶ国からの出展があったようです。

今回の展示会では、様々なジャンルの食品企業が出展していましたが、中でもお菓子類のブースに注目して、ご紹介します。食ビジネスは文化への挑戦と言われるように、その国で長年親しまれている食べ物に舶来品が割って入るのは、確かに難しいです。実は中国でお菓子と言えば、ナッツ類やヒマワリの種、ビーフジャーキーや鴨肉の珍味といったものが真っ先に挙げられます。チョコレートやクッキー、ポテトチップスが日常的なお菓子と言える日本人にとっては、かなり意外に思われるかもしれません。そのような中国の伝統的なお菓子市場に切り込むべく、海外の洋菓子(ケーキ・クッキー)等の企業が多数出展し、中国顧客を獲得する為に、積極的にPRしていた光景が印象的でした。ただ、日本のお菓子企業の出展がほとんど無かったことは残念です。昨年からの水産物輸入禁止の影響を受けて、中国で日本産食品全体に向かい風が吹いていることが原因の1つとも推察されます。加えて、中国関連のネガティブな報道が過剰な「チャイナリスク」を煽っているように思われます。しかし、日本以外の諸外国には「チャイナリスク」という日本発の和製フレーズは存在しません。海外のライバル達は、世界最大の中国市場を狙って、ビジネスを推進していることを忘れてはならないでしょう。

来場者で賑わうマレーシアのバタークッキーメーカーのブース

ライブコマースこそが中国流の宣伝方法

中国ではビジネスや生活のあらゆる場面で、ITが大いに発達していることは、日本でもよく知られている実状です。例えば、仕事においてメールでやり取りする中国人は、今やほとんどいません。皆WeChat(中国版LINE)で相手とコミュニケーションをします。買い物の際もモバイル決済がほぼ100%と言え、現金を使う消費者は、もう何年も見たことがありません。お店側に小銭が用意されていないケースも多いです。

展示会の現場からライブコマースを同時配信

そんな中国では、Eコマースがビジネスの常套手段であり、出展企業にヒアリングしたところ、大体オンラインとオフラインを併用した販売手法を採用していました。さらにオンラインではライブコマースという、生中継による商品紹介が人気で、定番化しています。ここで活用されるのが、日本でもお馴染みのTik ToKや小紅書(中国版インスタグラム)といったアプリです。著名インフルエンサーも出演して、購入確度を一気に押し上げます。今回の展示会では、特に中国企業が出展ブースの現場からライブコマースも配信するというシーンが目に付きました。日本流の泥臭いオフライン営業だけではなく、こうした中国流のスマートな宣伝手法も習得して、中国市場を開拓していけば、商機はますます広がるはずです。

量り売りは中国でまだ最前線にあり

もう1つ、中国のお菓子に関して、ユニークな点をご紹介します。それは量り売り(バラ売り)による販売です。昔は日本でも農産品等の量り売りがよくあったと記憶しています。中国では今でもスーパーや市場で量り売りが普通に行われています。これはお菓子についても言えることで、例えば500gでいくらといった価格表示で、小袋に個包装された色々なお菓子が販売されています。お菓子によっては、パッケージに量り売り専用と表示されているものまであります。購入者ができるだけ多数の種類のお菓子を買うように仕組まれていると言えそうですが、楽しみながら買えるという面白さもあります。今回の展示会でも中国企業のメーカーが、量り売りタイプのお菓子を出品していました。バラエティーに富んだ商品の陳列は、来場者の目に強烈なインパクトを与えます。

上海市内のお菓子チェーン店。 量り売りの多さにビックリ仰天!

日本の駄菓子も小袋で個包装されているので、もしかしたら中国市場にマッチするのではないかと、展示会を回りながら、ふと思い当たりました。日本のお菓子はどれも美味しくて、パッケージも洗練されているので、創意工夫をすれば、中国市場で十分に戦っていけるはずです。個人的には日本の米菓を中国にもっと輸出して欲しいと期待しています。

中国に食ビジネスの活路を求めて

食品ビジネスは、人の数の多さに伴ってチャンスありというのは自明の理でしょう。ただ、人口が日本の10倍だからと言って、その食品の市場も中国で10倍あるとは必ずしも言えないのは、先述の通り、国ごとに好みの問題が大きく影響するからです。しかし、人口減少が続く日本において、お菓子や加工食品の商売を拡大していくことは難しいのが現実です。現在人口が多い中国も、日本と同様に少子高齢化のフェーズに入っており、決して油断できない状況にあります。こういった中国の展示会を見学して情報収集を行い、できれば自ら出展して自社商品の露出度を高めていけば、中国で新たな顧客を獲得できるかもしれません。中国渡航ビザが免除となった今こそ、是非中国市場にも真っ直ぐな目を向けてチャレンジしていただきたいと思います。

上海国際チョコレート展についてまとめたコラムもあわせてご覧ください。

筆者紹介

近藤 敬 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

中国に在住。日本と中国で総合商社及び中国事業開発(台湾・香港含む)をサポートするコンサルティング会社を経営。学生時代より中国事業の世界に飛び込む。「中国の次に来るのも中国だ!」をモットーに、ガチンコで中国市場に挑む企業と共に中国事業開発に日夜奔走中。

中小機構について

中小機構の「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。

ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。ご利用は「何度」でも「無料」です。どうぞお気軽にお申し込みください。

「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。