「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第11回目は、韓国にお住まいの李アドバイザーに韓国の現地事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2021年11月1日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

Your Content Goes HereKDCA(韓国疾病管理庁)は2021年11月からWITH COVID(段階的日常回復)に転換する発表をしました。今までは過去の経験を活用し感染拡大に注力してきた韓国ですが、11月からは感染者の治療に中点を置き、治療薬の開発やワクチン接種を進めています。

2021年10月末時点の韓国のワクチン接種率は1回目が79.8%、2回目(接種完了)が72.0%(2020年10月28日:KDCA)と報告されており、他の国と比較して非常に高い数値となっています。コロナ感染が始まってから、韓国は新規感染者情報や累積感染者情報を公開し、透明性の確保に努めてきました。これにより、政府は国民から高い信頼を寄せられています。

また、韓国は2015年のMARS流行の経験から、感染病への対策準備や法整備を行ってきました。この備えが功を奏したのでしょう。この度のパンデミックでは新規感染者への徹底した経路調査をすることで、感染拡大を食い止めることに成功しました。

K-防疫

KDCA(韓国疾病管理庁)はK-防疫と呼ばれる施策を策定し、11月以降段階的にK-防疫基準を発表していきます。大規模な感染拡大が収まったとはいえ、まだ集団感染等の感染拡大リスクがあるため、11月からは状況の変化を慎重に考慮しあらゆる場面を想定したK-防疫基準でCOVIDの感染を防止していく狙いです。今後は新規感染者やその他状況の変化を見ながら、3段階に分けてK-防疫基準の防疫措置を緩和していく予定です。しかし、今後の状況によっては防疫措置を強化される可能性もあります。

PCR検査と追跡調査

KDCA(韓国疾病管理庁)はコロナ流行初期段階からいち早く診断キット導入し、徹底した追跡調査をしました。ここには韓国のIT技術が多く生かされています。例えば、PCR検査でコロナ陽性と判明した場合、その感染者の動線が調査され、接触可能性がある場所をラジオ・電子メール・携帯アプリ等のツールで公開します。そして、同じ時間にその場所にいた人にはPCR検査をするよう通告します。このように、韓国ではITシステムを活用した追跡調査を行うことで二次感染の早期発見を可能とし、感染拡大を防いでいます。(なお、調査で収集した個人情報はコロナ対策以外の目的に使用されません。)

また、PCR検査は全国の保険所、選別診療所、指定病院にて、無料で受けることができます。午前に検査をすると、ほとんどの場合は午後(遅くてもよく午前中)には結果が判明するので、タイムリーな感染状況を把握することが可能となっています。多くの人が集まる展示会,結婚式や公式会議、体育大会などに参加する場合は、72時間内にPCR検査をして陰性通知を貰って参加しています。

国の支援策

政府は国民相生補助金等のコロナの影響がでたサービス業への救済にも力を入れており、地域貨幣や地域限定の商品券を供給しました。デジタル化した政府基盤体制の効果もあり、今回の商品券配布は迅速に行われ、収入が減り困っている人々の生活の助けとなりました。こうした迅速な政策の対応は国民に高く評価されています。

また、国民相生支援金も積極的に投入されています。この国民相生支援金も在来市場や地域の経済活動に好影響を与え、フードデリバリーサービス業界や宅配業界が繁盛しました。韓国ではコロナ流行以前からフードデリバリーサービスが浸透していましたが、コロナ禍でサービス形態が進化し、事前決済や置き配といった非対面でのサービスが主流となりました。この様な非対面サービスは、フードデリバリー業界以外でもニーズが高まっていま

生活の変化

コロナ感染流行が始まった当初、企業は在宅勤務やオンライン会議、学校はオンライン授業で対応していました。しかし、現時点では学校も会社も官公署もK-防疫装置の中でオンラインからリアルに戻っています。

また、街中では各所でコロナ対策が実施されています。特に官公署のコロナ対策は徹底されており、出入口には熱検査と消毒液が同時に測定できるカメラ設置されています。さらに、建物に入る際は指定の電話番号にワンコールが必要となります。これにより、連絡先のデータが蓄積される仕組になっているのです。この仕組みにより、新規感染者が出た場合はその建物に出入りした人へすぐに告知出来るようになっています。

一般の飲食店も規模によっては出入口にて連絡先の記入が必要とされているところがあります。どこの店もKDCA(韓国疾病管理庁)の防疫規則に従った段階別の人数制限などは守って営業しており、今後もマスクの着用は必須となる見通しです。

一時期マスクの品薄問題もありましたが、現在は需要に対する供給が十分であり、容易に手に入れることができます。スーパーでも、品不足はなく客の出入りも通常に戻った様子で平常通り営業しています。

旅行業界の動き

コロナの影響で海外旅行ができなくなり、旅行業界は大きな打撃を受けました。しかし、近頃ではワクチンパスポートを活用して旅行業界を復活させる動きが出ています。ワクチンパスポートでワクチン接種の完了を証明することで、海外への渡航を再開させようとしているのです。一部の地域では飛行機の路線も再開しました。

コロナの影響で海外旅行客が減る半面、国内旅行客は多くなっており、11月からはさらに増える見込みです。一部観光地では、泊まる施設がないほど連日満室という場所も出ています。今後海外への航空便が再開すれば人の動きはより多くなると、航空会社や旅行業界の期待が高まっています。

筆者紹介

李 東和 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

1991年から18年間日本に居住。日本では大学院に進学後、2000年12月より代表取締役として韓国との貿易に従事した。扱った商材は遠赤外線ハロゲンヒーター、韓国食品、生鮮野菜果物、通販商材。その後、2012年12月に韓国現地法人社長に就任。現在は韓国で日本と韓国の貿易や関連事業を営んでいる。(前)韓日技術協力財団 客員研究員、(現)中小企業基盤機構 中小企業アドバイザーとしても活躍中。

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