「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第32回目は、前回に引き続き中国在住の近藤アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※このレポートは2025年1月時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

今回は前号でご紹介した上海グローバル食品展と同時開催された上海国際チョコレート展の模様をお伝えします。こちらの展示会は出展企業数が約200社で、中国企業を筆頭にチョコレートの本場である欧州からも多数出展がありましたが残念ながら日本企業の出展はゼロでした。出展企業には、工業用のブロックチョコレートの製造会社は無く、自ら小売店舗を持って、お店でカカオ豆からチョコレート製品まで一貫して作る「Bean to Bar」と呼ばれる製造スタイルの企業のブースが多かったです。

前号で触れたように、中国ではお菓子と言えばチョコレートというカルチャーは、今のところありません。他の伝統的なお菓子が市場シェアの上位を占めている為、チョコレートの存在感は日本ほど大きくないのが実態です。それでも市場は少しずつ拡大しており、中国・咖啡金融網によると2023年のチョコレートの市場規模は約5,800億円程度だったとのことです。これは足元では日本と同じくらいの規模で、中国でチョコレートの地位が徐々に上がってきていることが見て取れます。

今回の展示会ではスーパーやコンビニに並ぶような大手メーカーのチョコレート菓子ではなく、上海をはじめとする都市部でBean to Barを営む中国ローカル系の小規模店舗が主役でした。来場者はお洒落なパッケージに魅了され、物珍しそうに商品を手に取ったり、試食にも長い行列ができたりしていました。上海にこれほどまでBean to Barがあるのかと、当地に長く住む筆者も知らないお店がたくさんありました。日本でもBean to Barは10年ほど前から流行していると理解していますが、海外のトレンドをキャッチし、素早く商売に変えていくのは、やはり中国人の得意技だと痛感しました。

昔とは違う今どきの中国チョコレート

これまでの自らの経験談からして、中国のチョコレートは甘過ぎるという印象がありました。ケーキも同じで、派手な見た目がますます甘さを強調しているようで、率直に言うと美味しいと言えるものではありませんでした。しかし、今回多数の出展ブースのチョコレートを試食しましたが、上述の先入観を完全に打ち消すものでした。どれも甘さと苦さのバランスが取れており、むしろ苦味の方が勝っているくらいで、まさにこれぞ本物のチョコレートという感じでした。カカオ豆の配合量を70%や80%等に高めた商品もたくさん出品されており、中国も時代が随分変わったなとつくづく思いました。

お洒落なチョコレートのパッケージデザイン

パッケージもおそらく専門のデザイナーが手掛けたと思しき可愛らしくトレンド感のあるものばかりで、流行に敏感な中国人の若者のハートをしっかりキャッチしている印象を受けました。もちろん価格もそれなりで、安くて品質が悪い商品は1つもありませんでした。ちなみに原料のカカオ豆について、中南米産を使用した商品が多かったことは意外でした。日本ではまずガーナ産を思い浮かべますが、調べてみると、中国ではエクアドルとトーゴからの輸入が多く、ガーナは4位でした(出典:咖啡金融網)。

チョコレートはコーヒーとセットで提案を

いくつかのBean to Barのブースは、本業としてカフェ店も兼営しているところがありました。ヒアリングしてみると、「コーヒーとチョコレートは相性が良いから、今後きっとニーズが高まってくるはず、だからチョコレート作りにも新規参入した。」ということでした。日本ではコーヒーを飲みながら、チョコレートやクッキーを食べることは習慣化していますが、中国はそうではありません。中国では先行してコーヒー市場が拡大し、上海市内にはコンビニ以上にカフェスタンドやカフェ店が乱立するような状態にまでなりました。それくらいコーヒー文化が根付いてきたということですが、もう一歩踏み込んでチョコレートもセットで食べてもらおうと狙っているお店が増えてきているということでしょう。

カフェをイメージした、落ち着いたひとときも味わえるブース

もし日本のチョコレート店や企業が、中国市場に参入する場合、コーヒー企業とタッグを組んで新規開拓に取り組んでみるのも面白いかもしれません。しかし、中国企業がコーヒーとセットでチョコレートを販売することにも目を付けた今、チョコレート市場での顧客争奪戦が一層激化しそうな予感がします。

これからアツいチョコレート市場

中国でチョコレート市場は、まだまだ成長途上にあります。この10年~20年の中国経済全体の発展と照らし合わせて、他の商品やサービスの成長具合と比較すると、やや緩やかな右肩上がりの軌跡です。繰り返しになりますが、食品は国ごとに好みが大きく影響してくるので、今チョコレート市場が爆発的に拡大しているとは言えません。しかし、コーヒーやアイスクリームのように、一度火が付くと、超巨大マーケットに変貌するのが中国の特徴です。今後沿岸部の大都市から大規模なチョコレート専門のチェーン店の誕生や、大手企業も参入してくることが想像されます。中国のチョコレート市場は、まだ黎明期から成長期に差し掛かる付近にあると言えそうですが、今こそ布石を打って、これから来る波に乗っていきたいものです。

海外企業のチョコレートも大人気

上海グローバル食品展についてまとめたコラムもあわせてご覧ください。

筆者紹介

近藤 敬 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

中国に在住。日本と中国で総合商社及び中国事業開発(台湾・香港含む)をサポートするコンサルティング会社を経営。学生時代より中国事業の世界に飛び込む。「中国の次に来るのも中国だ!」をモットーに、ガチンコで中国市場に挑む企業と共に中国事業開発に日夜奔走中。

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