メキシコ 現地レポート

メキシコ市場調査 ―メキシコの消費動向と日墨関係―

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はじめに

メキシコは数多くの国と貿易協定を締結している国の一つである。しかし、あまり効率的な活用には至っておらず、これは、隣接するアメリカ合衆国との貿易取引に極めて強く依存する状態が継続している(総輸出額の約7割)ことに起因する。これは同時に、とりわけ、増大する貿易赤字、といった期待とは異なる効果を頻繁に生み出している。
とはいうものの、2014年における対メキシコ日本輸出額は、17,545百万ドルを計上し、日墨EPA発効前と比較すると3倍以上になっている。ラテンアメリカにおける日本の重要な貿易パートナーであり、同地域への総輸出額の3分の1がメキシコに向けられている。
メキシコ側としては、グローバル・バリュー・チェーンを主流とする国際的な生産および交易の枠組み、生産活動の異なる段階における付加価値の重要性、さらに日本との生産統合が、メキシコに先進的な製造システムにつき知識集約型のプロセスを実現する機会を与えるものとして、日墨EPAのさらなる積極的な活用を目指している(PROMEXICO, 2015)。
なお、2016年2月にTPPに署名がなされた。現実的な観点からすれば、今後、2年内に各国の国内手続きを経て発効となろう。域内のGDP率を鑑みれば、キャスティング・ボートを握るのはオーストラリア、カナダあるいはメキシコであろう。日本とアメリカ、GDP下位7カ国、そして右3カ国のうち一国でも国内手続きが済めば、発効条件となる「域内GDP85%」を超える。メキシコでは2016年内の国内手続き完了を目指している。
日墨EPAを通じた対メキシコ日本投資が激増しているが、これは、日本から直接にメキシコになされた投資であり、アメリカにある日本の子会社・関連会社からのそれは反映されない。TPPが発効すれば、日本・アメリカ・メキシコが一つの協定によって結ばれることになり、さらなる投資・交易が活発化されることが予測される。

対メキシコ日本輸出の動向―メキシコで必要とされている日本製品

日墨EPAは、日本の対メキシコ直接投資を促進させてきている。メキシコ経済庁のデータによれば、2004年の日本の対メキシコ直接投資は392.4億ドルであったが、2007年には440億ドルに増加し、さらに2014年には1,433.7億ドルに達している(Secretaria de Economia)。2004年から2014年の間の増加率は265%で、この間の平均増加率は年14%となっている。
日墨EPA発効以降、日墨間の生産・産業統合が重要性を増してきている。対メキシコ日本輸出製品において際立つのは、メキシコにおける自動車生産、テレビあるいはパソコンの製造のために用いられる原材料や中間財である。これらの製品の輸出はメキシコの産業活動を活発化・強化し、これによってメキシコは、自動車、液晶画面、トラクター、テレビ、飛行機用電気ヒータ、冷蔵・冷凍庫、パソコンなどにつき、世界レベルでの主要な輸出国となってきている。
下記のグラフでわかるように、日本からの対メキシコ輸出品(第三国経由を含む)には、自動車・その関連製品・部品等が大半を占めており、加えて、電気機器・その関連製品も需要があることがわかる。これは、日墨EPAを通じた投資環境の整備、それを端緒とした日系自動車産業が極めて活発に投資を進めており、またTier 1およびTier 2レベルのサプライヤーも、それに準じてメキシコに参入していることに由来する。これにはまた、メキシコの地場産業が未成熟であるため、現地における製造に必要な原材料の入手が困難であることにも起因しよう。
なお、これら10品目は対メキシコ日本輸出の93%以上を構成しており、上位3品目だけでもおよそ7割に達する(グラフ1)。単一の輸出製品として突出しているのは、やはり自動車関連の部品およびその付属品となっている(グラフ2、表2)。
対メキシコ日本輸出において、農畜産品の占める割合は極めて低い。ただし、日本から1キロ180ドルの高級肉の輸出が今後、積極的なものとなると想定される。20%という関税率が16%になり、年10トンからはじめ、最終的には6000トンの輸出を目指している(Saldana, 2014)。
2014年のメキシコ国内における鉄鋼生産量はおよそ1900万トンであり、世界第14位のレベルであった。とはいえ、同年、メキシコは1200万トンを超える鉄鋼を輸入している(CANACERO, 2014)。これは、とりわけ自動車産業に関連する外資に対する供給を行うためであり、「このためには、連邦および地方政府とも、あらゆる支援を約束しており、国内のサプライヤーたると否とを問わない」といわれている(Fernandez, C. 2015)。しかし、自動車産業は、その生産活動に必要な鉄鋼の国内コンテンツのおよそ35%を取得するに過ぎない、といわれる。
かかる状況において、自動車部品全国協会(Industria nacional de Autopartes)は、「鉄鋼産業は、メキシコにおける自動車産業のための特殊鉄鋼の生産量を3倍にしなければならない」と述べている(Sanchez, A. 2015)。
対メキシコ日本投資の行先は、主として自動車産業であり、これが近年、劇的に発展している一方で、メキシコにおける地方サプライヤーの未発達が、中国に次ぎ世界第二位の鉄鋼生産量を誇る日本(CANACERO, 2014)からの鉄鋼の輸入が、過去数年において急増している一要因となっていると思われる(表1)。この意味では、日本の鉄鋼業が積極的にメキシコに参入し、地場企業および地方自治体等と共同して、その生産を増加させる試みが将来的にあっても良いと思われる。
メキシコにおける天然ゴムの生産地域は、主としてベラクルース、タバスコ、オアハカあるいはチアパスなど南部に集中している(SAGARPA, 2012)。問題は、自動車タイヤ産業が成長している中で、同地域の生産が国内市場の需要にとって不十分なことである。つまり、その生産が少ないこと、さらに合成ゴムを生産するため、原料の輸入が必要な状態にある(Reyna, J. 2015)。自動車生産にも用いられるゴム製品は、このため、鉄鋼と同様、日本からの輸入量が増加する傾向にある(表1)。
以下では、自動車や電化製品など高級品市場の存在の有無を含め、メキシコの一般的な消費動向につきその概要を示すものとする。

メキシコの消費動向基礎データ

メキシコは人口約1億1千9百万人を擁し(2015年)、ラテンアメリカにおいてブラジルに次ぐ第二の経済力を誇る国である。1990年代および2000年代を通じた一連の経済開放政策やNAFTA加盟などにより、不可避的な経済低迷を除いては、健全な経済成長を遂げてきている。
メキシコ経済発展およびその国民の生活における重要な進歩の一つは、都市部における購買力をもった中間所得層が増加してきている点である。これによって、食品および飲料部門は恩恵を受けており、また消費傾向としても、メキシコの伝統的なそれから、コンビニエンス、質、価値ならびに多様性を基盤とした西欧的スタイルのニーズに移行してきている。
並行して、メキシコは世界でも高率の肥満国であり、糖尿病なども子供から大人まで拡大してきている。このため今後は、新鮮な加工製品において健康志向が見られると考えられる。
以下では、このようなメキシコにおける国民の消費活動傾向を、同国統計局の指標に照らして検討する。これは、近時、日墨EPAにより経済・交易関係が密接化している中で、日本側として、メキシコの市場規模ないし消費市場の概要を再確認し、もってメキシコ国民の嗜好性に合った商品・製品の提供を図る視座となると考える。

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