本調査の目的
TPP締結の動きを受けて豪州およびニュージーランドにおける市場トレンド調査を行う。調査項目としては主に以下の点を含む
・ 対象市場における消費者の購買マインド
・ 日本関連の商品やサービス等に関するトレンド
※ニュージーランドについては、文化面で豪州からの影響を強く受けている市場の為、特記すべき事項がない場合は豪州における調査内容に含むものとする。
市場の概況
2015年12月に発表されたオーストラリア国民経済計算によると、2015年9月四半期GDPは前期と比較して0.9%の上昇を見せており景気動向は若干の上向き傾向を示していると言える。経済成長の最大の要因は主に鉱業輸出(+4.6%)によるものではあるものの、家計最終消費支出で+0.7%、住居建設でも+0.2%の上昇がみられるなど一般消費者の消費活発化も貢献要素の一つとして考えられる(*1)。
豪州における貿易(輸入)動向
i. 消費財の輸入動向
豪州において、消費財の輸入額は2012年以降上昇傾向にあり (Figure 1)、市場における消費量の安定が推測できる。カテゴリとしてはTextiles, clothing and footwear、Food and beverages, mainly for consumptionが大きな割合を占めている事から、特にこれらの分野における消費力の強さが伺える(*2)(Table 1)。
豪州市場における消費財小売におけるトレンド
カテゴリとしては家庭用品(Household goods) のシェアが44.1%と最も多く、その他消費財(Other Consumer Goods)が33.4%、衣料品、靴、装飾品(Clothing, footwear and personal accessories) 22.5%という構成となっている(*5)。全体的な傾向として、可処分所得減少による消費の鈍化がみられるものの、商品カテゴリによっては安定した消費増を見せている(*3)。
家庭用品は家具、家庭雑貨、家庭用コンピューター、建築材料、家庭用電気器具を含むカテゴリで過去五年で顕著な伸びを見せており、業界における売上シェアを伸ばしている。中でも技術革新の煽りを受けたコンピューター、ソフトウェアカテゴリ、人気TVシリーズの影響による、家のリフォームやDIYの流行によって需要が順調に増えている建築材等の売上が好調。DIY用のプロダクト販売等を行っている、Bunnings Warehouseの一般消費者への浸透率は高く、豪州、ニュージーランド国内で300店舗以上(2015年時点)を展開している。一方で、家庭用電気器具や家具の売上には陰りがみられる。
代表的な販売業者:
Bunnings Warehouse http://www.bunnings.com.au/
リフォーム用の住宅建材や本格的工具から、キッチン用品、園芸用品まで、住宅関連のプロダクトを幅広く扱っている。日本でいうところのホームセンターに位置するが、店舗規模、取扱い製品の豊富さは日本の販売業者を上回っている。
人気TVシリーズの例:
The Block http://www.9jumpin.com.au/show/theblock/
リノベーションのテクニックやアイデアを対決形式で見せる番組。Websiteにはショッピングページや、サプライヤー一覧等が載っており、消費の後押しに繋がる構成となっている。
その他消費財では薬局、化粧品分野での成長が著しい一方、消費者のオンライン/デジタルコンテンツへの著しいシフトの影響を受け新聞、書籍、音楽(CD,DVD)では売上の低下傾向がみられる。
衣料品、靴、装飾品カテゴリでは、世界経済情勢を気にする消費者心理から全体的に消費が伸び悩む傾向がある。この分野においてもオンライン流通チャネルの台頭が目立っている。
豪州市場における消費財小売におけるトレンド
豪州における消費の大きな傾向として、食品への消費額の多さがあり、平均として世帯収入の17%を食費に充てているという統計がある(*6)。前述の輸入動向でも大きなシェアを占める事から豪州市場において主要な消費カテゴリである事が伺える。多国籍な文化背景を持つ市場特性や、地理的にアジアとの距離が比較的近い事から、アジア文化、特に食文化への興味関心度が高く、都市部を中止にバラエティに富んだ食材店、レストランを見る事ができる事も特徴。
料理関連のTVシリーズはかなり人気があり、視聴率でも他カテゴリを上回る傾向がある。また、先述のアジア文化への関心度の高さもあり、アジアにフォーカスしたTVシリーズや、料理本なども人気がある。
料理関係の人気TVシリーズ例:
MaterChef Australia http://tenplay.com.au/channel-ten/masterchef/recipes
イギリス発のTVシリーズの豪州版。対決形式の料理ショーで非常に人気が高く、2015年にシーズン7までが放送されている。スポーツ部門を除く分野で最高視聴率の記録も持っており、優勝者の中にはTVホストやライターとして活動の場を広げる者もいる。
My Kitchen Rules https://au.tv.yahoo.com/my-kitchen-rules/#page1
MasterChefの人気を受け、別局で作られた豪州発の人気シリーズ。2015年までに6シーズン放送。出演者の自宅を舞台としたリアリティショー形式。豪州各州からの参加者に加え、シーズン3ではニュージーランドからの参加者も出ている。
Destination Flavour Japan
http://www.sbs.com.au/food/programs/destination-flavour-japan
前述のMasterChef Australiaの優勝者の一人であるAdam Liaw氏がホストを務めるTVシリーズ。2013年の初シリーズで日本がテーマとして採用された事からも、市場における日本食の注目度が伺える。Adam Liaw氏はコラム執筆や書籍、SNS等でも日本食に関連した情報発信を行っており、TVシリーズ同様に豪州で高い人気を誇る。(全SNSで25万を超えるフォロワー数。Facebook: 156,663, Instagram: 40,500, Twitter: 44,300)
食品におけるトレンド
都市部を中心、忙しいライフスタイルを持つ人が増えたことで、外食を好む傾向が進んでおり、外食産業では好調な売上の増加がみられる。ライフスタイルの変化が大きな背景となり、時間短縮だけでなく社交の場として外食が注目されている様子。また、食品デリバリーのオンラインサービス等も人気がでてきている。
健康、プレミアム志向:人気料理TVシリーズの影響もあり、新しい料理や野菜等を食卓に取り入れる事に積極的で、特に野菜、スーパーフード等健康面でベネフィットがある食品は敏感に取り入れる傾向がある。外食産業においても健康志向やプレミアム志向にフォーカスした事業形態が売上高およびシェアを伸ばしている(*7)。
オーガニック志向:健康志向の消費者トレンドに伴いオーガニック食品における需要の高まり(*7)が注目されており、オーガニック食品や商品の専門店、レストラン、カフェ等も台頭してきている。
パッケージ商品におけるオーガニック志向は年々高まってきており、2014年時点で前年比16%の売上増、市場規模の増加傾向は数年持続すると見込まれている。2大大手スーパーマーケットのWoolworth、Colesもこの分野の商品展開に積極的で、2014年時点で売上の15%を占めるまでに成長している。商品カテゴリとしては、朝食用シリアルやベビーフード等が成長を牽引している(*8) 。
Woolworth オーガニック食品ブランド-macro
https://www.woolworths.com.au/Shop/Discover/our-brands/macroColes オーガニックブランド
https://www.coles.com.au/our-range/our-products/coles-brands/coles-organic
※健康、オーガニック志向はニュージーランド市場においても顕著な傾向である(*7)。
食品デリバリー: 大きく分けて2種類あり、レストランメニュー等の調理済食品と食材自体のデリバリー形態がある。外食の増加傾向に加えて、中食についても需要増加のトレンドが伺える。また、食材のデリバリーでは健康的なライフスタイルをメッセージとして訴求するサービスが多く、カロリー制限をした調理済メニューや、オーガニック食材のみを販売する業者等の人気が上昇していることから、ここでも健康志向のトレンドの影響が強く感じられる。
レストランメニューのデリバリーサービス
Menulog https://www.menulog.com.au/?gclid=CIeG-83D58oCFYeSvQodH7YJOw
Delivery Hero https://www.deliveryhero.com.au/?clid=goog&gclid=CLidrt7D58oCFQqAvQodFYcHNg
食材、調理済食品 デリバリーサービス
Fit & Fresh https://www.fitandfreshaustralia.com.au/
Doorstep organics http://www.doorsteporganics.com.au/
飲料におけるトレンド
アルコール飲料の消費:世界的にみてもビールを中心としてアルコール消費量が多い市場であり、市場規模としては十分な大きさを持っている。健康志向の高まり、アルコールに関連した事故事件抑制の為の規制変更等の影響を受けて一人当たりのアルコール消費量は過去数年で減少しているものの、プレミアムアルコール飲料(ワイン、スピリッツ、プレミアムビール、低炭水化物ビール)へのシフトにより小売業の売上規模としては先5年で3.1%の成長が見込まれている。消費者の嗜好が洗練されてきたことにより、過去数年におけるワインの消費量増が顕著なトレンドとなっている。また、規模は小さいものの、Ready-to-serve(RTS) カクテルのカテゴリ成長が目覚ましく、年率で倍の成長をみせている(*9)。
飲料における健康トレンド:食品同様、飲料消費についても健康志向トレンドの影響が強い。アルコール飲料、加糖ソフトドリンクの消費量低下が著しい中、健康維持を目的としたにボトル飲料水の消費増加傾向が見られる。今後、フレーバーを加える等の加糖以外の加工を加えた飲料水市場の成長が予想されている(*10)。
「日本関連商品、サービスにおける動向」へ続く
公開日:2016年 4月 28日
タグ: