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流通拠点オランダにみる 欧州マーケット開拓・第一歩

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4. オランダでの日本6ブランドに見る欧州第一歩事例

オランダで販路を拡大する6ブランドに学ぶ欧州での現実的なビジネス展開事例

この章ではMONO JAPAN出展やオランダで商品が流通している、6ブランドの事例を紹介し彼らがどのように欧州でのビジネス展開を行っているかを見ていく。

  1. Time & Style <インテリア、テーブルウェア、ライフスタイル商材全般>
  2. MUJUN <刃物、陶器、テキスタイル、竹細工等>
  3. 西海陶器 <陶磁器、その他>
  4. SIWA l 紙和 <紙製ファッション、文具、ライフスタイル商材>
  5. 2016/ <陶磁器のテーブルウェア、アクセサリー>
  6. Tsunagu Sonogi Tea Farmers <日本茶、烏龍茶、紅茶など茶全般>

Time & Style

欧州流通拠点を兼ね備えた店舗をオープン
http://timeandstyle.nl/

事業内容と主要商品

日本のクラフトマンシップを生かした良質のインテリア、テーブルウェア、ライフスタイル全般の商材を自社ブランドTime & Styleとして販売。その他、ホテルなどの施設インテリアなども手がけている。

オランダでの展開

ドイツ、フランクフルトの国際消費財見本市「アンビエンテ」に10年以上前から継続して出展し、欧州マーケットに通じている同社は、2016年のMONO JAPAN出展をきっかけに、ロンドンやパリではなくアムステルダムを欧州第一店舗の拠点に選択。「ロンドンやパリの喧騒と自分たちのブランドのスタイルが合わないと感じ、アムステルダムの居住エリアで質の高い人々の暮らしを目にして決めた」と、ブランドの目指す価値観と街の魅力とのマッチングが決め手となっている。アムステルダム中心地にある19世紀建造の歴史的な建物を賃貸契約、2017年3月に初の欧州店舗をオープン。

欧州での展開

趣ある店舗面積2000㎡の建物で欧州の生活空間での同社インテリアを展開。ショールーム機能も果たしている。オランダ・アムステルダムに欧州流通拠点を置き、今後の積極的な欧州販路拡大を目指している。

英語が通じるため、日本語のスタッフの現地派遣も安心。会社登録や慣れない現地の税務処理なども英語での対応が可能なこともメリットだと同社。

欧州は人気の展示会や各都市でのデザインウィークなどが多く、拠点があることでこれらへの出展、マーケティングリサーチ、効果的なプロモーションなど考えやすい。これら展示会などのイベントは同社の高額商材やブランディングともターゲット層が一致している。大規模店舗での高額商材でのビジネスでは早急にペイしないが、売り上げは確実に向上している。将来を見越して欧州マーケットに入り込むという戦略だ。

筆者による欧州ターゲット予測

同社の展開先として期待されるのは、1の欧州マーケットマップのA、B、C、Dである。

Aは、同社の国産にこだわる “正直さ”や“真摯さ”を感じる姿勢と、北欧家具とも通じるテイスト、北ヨーロッパのコンテンポラリー・デザインとは異なるデザインスタイルが、オーセンティックなものを好む富裕層に合致する。Bは欧州での日本ブームと相まってデザイン系メディアが取り上げるなど、これからより拡散、浸透していくだろう。Cでは、同社商品のコンテンポラリーすぎないデザインや基本色調もアースカラー系と相性が良いため、同エリア富裕層はターゲットだと考える。Dでも同様に、コンテンポラリーすぎない落ち着いた品格のあるデザインがスイスの富裕層にマッチする。

オランダでは多様な人種が多く住んでいてマルチリンガル人材を確保しやすく、
多言語サイトの構築も容易なため、欧州全域展開のための多言語対応Eコマースサイトは取り組みやすいだろう。

MUJUN

現地法人設立、自分たちでディストリビューション
http://www.mujun.co.jp/

事業内容と主要商品

兵庫県小野市や三木市の包丁やハサミなどを“播州刃物”ブランドとして立ち上げ、島根県の石州和紙や瓦、陶器、京都の商材など、地域性のある商品を生産者とともに開発し、国内外に向けブランディング、流通まで行う。現在は刃物職人後継者育成のため地元小野市に工場を設立した。その際、多くの賛同者がクラウドファンディングによって工場設立に支援を行った。

オランダでの展開

ダッチデザインなどから直感的にオランダに興味を持ち、2016年にMONO JAPANへ出展。翌年には京都府の販路促進事業としてPOP UP店舗をアムステルダムにて半年間開催し、オランダ人クリエイターとの協業を経験した。この成果を2017年の第2回MONO JAPANにて発表。MONO JAPANの前後時期に開催のアンビエンテにも継続出展、同社商品はオランダやドイツなどで卸も始まる。ネットワークが出来てきたオランダを欧州拠点とし、2017年には会社登録。オランダ在住スタッフが受注と発送を担当。 MONO JAPANへは3年連続出展しており、毎年ファンが包丁のお手入れのために彼らの出展ブースを訪れている。

欧州での展開

フットワーク軽く、縁のできた国の展示会などに参加し、着実にファンと取扱店舗を増やしている。小林代表自身が各地に赴き、各国の客と直接出会うことで、各国のマーケットに対する理解を深め、商品セレクションや新商品開発にも生かしている。

「職人とその技術の次世代への継承」を目標として掲げているため、欧州文化層への価値の浸透と職人の技や素材の魅力を伝える商品を開発し、ミュージアムショップをターゲットに展開している。サイトではEコマースは行わず、リテイラーからの問い合わせのみを受け付けBtoBに特化。BtoC販売をEコマースで行わないことで、各国ごとの決済方法の違いへの対応に悩まされない。 BtoC販売はイベント時のみ実施。

国ごとに展開商品を選んだり、卸先を選ぶ展開方法は、産地への発注数量がコントロールでき、産地への負担が少ない。現地在住せず、多くの現地スタッフを抱えない、継続可能で無理のない方法である。

筆者による欧州ターゲット予測

1の欧州マーケットマップ内では、刃物はA-Fの全域が該当、欧州の日本食ブームや家庭への日本食の定着化により、今後ますます取り扱いが増えると予測できる。A-Dの地域で先に動き、その後もE-Fや他地域へも伸びていくと予想する。

その他の商材は、クラフト色が強くニッチ層向けとなり、該当地域がA-Fの全域だが数量は小さいかと予測。しかし小さいオーダーは同社の付き合う産地にとって無理がかからないし、小さいオーダーでも入る地域が増えれば全体量は増えるので、無理のない成長を考えられるのではないか。

また同社はローカル市場に合わせて商品を開発するなど、オープンな姿勢があり、市場とそこに”ハマる“製品が生まれる可能性もある。

西海陶器

現地法人を設立し多様なブランドで現地マーケットにマッチ
http://saikaitoki.com/(日本)
http://www.saikaieu.com/(オランダ)

事業内容と主要商品

日常的な陶磁器を、日本や西洋のライフスタイルや市場に合わせて製造販売している、生活用陶磁器業界最大手メーカー。長崎県波佐見に本社を置き、東京では「東京西海株式会社」を設立。ここでは、HASAMI PORCELAINやCommonなど、コンテンポラリーな5つのブランドが生み出されている。

オランダでの展開

2015年から、アムステルダムにほど近いスキポール空港周辺にSaikai Trading B.V.として、欧州流通拠点を構えた。1991年のアメリカ拠点立ち上げと同様、欧州拠点設立と販路拡大のために派遣されたのは1名。

西海陶器は、パリのメゾン・エ・オブジェには2011年から出展。あらかじめ欧州市場に対しての理解やネットワークがあり、満を持しての拠点設立となった。

欧州での展開

西海陶器は、長崎県波佐見に文化発信の施設「西の原」を運営している。施設にはセレクトショップもあり、商品は西海陶器社員が自社製品の枠を超えてセレクション。国内の強いネットワークと、審美眼のある高感度のスタッフを持つことが西海陶器の強みである。オランダでもガラス製品や南部鉄器、家具などの他社製品も紹介している。日本国内の良品メーカーとのネットワークと海外担当者による欧州生活や展示会経験が組み合わさり、人々の暮らしに浸透しやすい価格設定とプロダクトで、スピード感のある販路拡大を成し遂げている。

2011年から出展を開始したパリのメゾン・エ・オブジェ以外にも2016年からアンビエンテに出展・ドイツの市場と同社ブランドがマッチ、着実に注文が付くという。

「東京西海株式会社」が生み出す同社の新ブランドでは、欧州デザイナーを迎えたブランドもあり、同社が欧州拠点を有するメリットは今後ますます大きくなると考えられる。

筆者による欧州ターゲット予測

欧州の若者向けの現代的な新ブランド以外に、庶民的で格安な和食器も扱う。欧州の和食ブームにより、“最初の和食器”としても購入しやすい価格帯で、一般購買層向けのショップやデパートにも販路拡大が見込まれる。格安和食器はA-Fの全域で伸びる可能性が高い。

新ブランドのうちHASAMI PORCELAINは欧州でのコーヒーブームとも相性が良い。ベーシックかつ“ありそうでなかったデザイン”は、昔のフィンランドの陶器メーカー“アラビア”ともテイストが近く、北欧デザインファン層とも合うし、高年齢層にもなじみやすいデザインだ。

エリアではA-E、特にA-C。またイタリアやスペインなどのアースカラーを好むエリアとも合う。

欧州では、陶器はメタルマーク(ナイフやフォークの金属傷)が付きやすく、また壊れやすいため飲食店舗には採用され難いが、同社製品は磁器製品のため、今後ホテルやカフェ、レストランなど、ますます販路の拡大が見込まれる。

SIWA l 紙和(株式会社大直)

10年以上もの継続的な欧州展示会出展、熱意ある現地代理店との出会いから欧州で広く認知されるブランドとして定着SIWA l 紙和 http://siwa.jp/

事業内容と主要商品

歴史ある和紙の産地、山梨県の和紙メーカー大直が、工業デザイナー深澤直人氏とともに生み出した「SIWAl紙和」シリーズ。大直が開発した破れない障子紙「ナオロン」を、くしゃくしゃにして風合いを生み、文房具や帽子、バッグなどファッション小物、インテリア周辺商品などのライフスタイルブランドとして展開し、欧州の日本ファンや新しいものを求めるデザインファンに広く認知されている。

オランダでの展開

欧州展示会で同ブランドを知った、熱意あるオランダ人代理店がアプローチし、現在では彼らが北ヨーロッパでの販路を拡大している。流通先はブランドのユニークさを考慮し、ミュージアムショップやセレクトショップなど、背景のストーリーが伝わる機会やショップを注意深くセレクトし、ブランドの世界観やイメージと合った卸先で取り扱われるようにしている。デザインイベントや近隣諸国の展示会にも活発に参加。

欧州での展開

フラワーアーティストedenworksの篠崎恵美氏と大直のコラボレーションブランド「ペーパーエデン」では、ネガティブなイメージが伴った従来の造花とは全く異なる大直の紙を使ったハンドメイドフラワーのシリーズを発表。2017年のミラノサローネで同製品を使ったインスタレーションが好評を博し、秋にはオランダの展示会”ShowUP”にも招待され、現地雑誌やテレビにも取り上げられた。

2017年の秋開催のメゾン・エ・オブジェではナオロン素
材を使用した紙製の糸を使った新しいブランド「SIITO」(紙糸)が誕生、ファッション、繊維業界にも商品開発を意欲的に展開。ついにフランス・パリでの2018年秋冬コレクションにて、メゾン マルジェラ(Maison Margiela)の「artisanal collection-アーティザナル-2018-19」中で同社のナオロンが使用された。

筆者による欧州ターゲット予測

同社は、「ペーパーエデン」や「SIITO」(紙糸)の活動でも明らかなように、千年続く和紙の産地に本社を構えながらも伝統にとらわれず、紙の可能性と現代人の生活に寄り添う紙の現代的な製品作りを模索し続けており、このイノベーティブな姿勢には、欧州のクリエイターからも注目が集まっている。

同社は長年パリのメゾン・エ・オブジェに出展し続け、自分たちで試行錯誤しながら欧州でのビジネスを学び、欧州の感覚を理解するに至った。上記の2つのブランドは欧州に響くテイスト、 「ペーパーエデン」はコンセプト的にも仕様的にも欧州向き、花で有名なオランダでの展示会でも多くの来場者の目を引いた。これらはA-Dの市場が期待できる。

E、FではSIWA l 紙和商品が今後より浸透していくと思われる。

2016/

有田とオランダ間の歴史的なビジネスのつながりが復活
欧州富裕層にもリーチするハイスタンダードな新ブランド
http://www.2016arita.com/

事業内容と主要商品

有田焼が創業400年を迎えた2016年に生まれた有田焼の新ブランド「2016/」。佐賀県にある窯元・商社がクリエイティブディレクターとして柳原照弘氏とオランダのデザイナーデュオ、ショルテン&バーイングスを起用、16組の国際的に活躍するデザイナーたちがそれぞれにテーブルウェアをデザインし、10社の窯元で共同開発が行われた。このプロジェクトには佐賀県庁と在日オランダ大使館も多大に協力する一大文化事業となった。

オランダでの展開

2016/ は2016年春にミラノ、その後オランダで発表。オランダでは国立博物館で特別展が開催されたほか、付近に1年間の限定ショップ「Arita House」を開設した。有田の名前は欧州で、特にオランダのデザイン業界では広く認知されることとなった。MONO JAPANでは2016年には柳原氏とショルテン氏のレクチャー、2017年に出展。現在有田ではアーティスト・イン・レジデンスが運営され、若手オランダ人クリエイターが参加し意欲的な協業が行なわれている。

欧州での展開

プロジェクトは2017年のミラノサローネで受賞。各国メディアに取り上げられたのはショルテン&バーイングスの力によるところが大きい。欧州での、アートやファッションのように、デザインのトレンド感を楽しむ華やかなブランディングは彼らなしでは成しえなかった。

欧州までの輸送費などで高額になってしまうため、現在はオランダのほかスイス、デンマーク、イギリスの4カ国の取引にとどまり、飛ぶように売れているとは言えないが 「欧州での付加価値作り」が達成できたため日本やアジアでの販売好調につながっている。

デザイン業界での有田の知名度の向上により、海外デザイナーからの発注が増加、海外の学生やアーティストの受け入れも開始し、産地の国際化が実現。

佐賀県知事のArita House訪問
佐賀県知事のArita House訪問

筆者による欧州ターゲット予測

華やかにデビューした2016年が過ぎ、「Arita House」は1年経過後ショルテン&バーイングスのショップとなったが、同ブランド商品も販売されているため、継続的に欧州デザインメディアに商品が掲載されている。

日本では多くの店舗が取り扱い、有田の技術や製造プロセスも本プロジェクトで様々に進化した。また欧州からのOEM受注もあるだろう。2016/の中で特にアクセサリーは伸びしろを感じさせるプロダクト。

Tsunagu Sonogi Tea Farmers

若い茶園後継者たちによる協業、新ブランド完成
生産農家が欧州で美味しいお茶を淹れ、市場を学ぶ
http://www.sonogitea.com/

事業内容と主要商品

長崎県の彼杵茶は昔は嬉野茶として市場に出ていた時代もあったが、現在では総理大臣賞などを受賞する高品質なお茶として認知されて始めている。20〜40代のお茶生産農家後継者たちが「生産者の顔が見えるお茶ブランド」としてTsunagu Sonogi Tea Farmersを立ち上げ、購入者が自分の好みでブレンド出来る新しいコンセプトの「シックス・センス」などを商品化。

オランダでの展開

MONO JAPANには2016年から継続出展、その際には近隣諸国も回り、各地のお茶専門店を訪問して、時にはPOP UPのお茶イベントを開催。欧州各国の好みの違いやマーケット差を研究しつつ、着実にファンを増やしてきた。英語サイトも作り、東彼杵町の歴史背景と地理的な魅力も訴求。毎回MONO JAPAN 出展の際に商品やPRの方法やツールなどをアップデートしてきた。2018年オランダの日本茶専門代理店とパートナーシップを組み、彼杵茶の継続な欧州販路拡大を目指している。

欧州での展開

ラーメンよりも静かであるが、すでに多くの欧州人が参入しているのが日本茶ビジネス。オランダでも主要都市にて日本茶を扱う店舗やティーサロンが開店している。老舗店や若者がオープンしたショップ、現地日本人のショップ、ウェブショップ、欧州の日本茶市場を牽引するお茶専門店のチェーンなど多様性がある。

同ブランドはウェブサイトにも力を入れている。英語でのサイトを制作したことは欧州以外にアジアでも同時にPRできているので、アジアへもPRに出かける彼らには利用価値が高い。現地代理店にとっても随時情報が得られるため、セールスに非常に便利だ。今後はオランダ代理店の広範なネットワークが生かされ、商品が市場に流通し始めるフェーズに入っていく。

筆者による欧州ターゲット予測

お茶に関しては当然Bの都市部が強いが、Aの地域も日本茶を好む地域。イタリアのようなコーヒーの飲み方にこだわりのある国もマーケットとして合いやすく、スイスや東欧のオーセンティックな好みの国々にも合う。

お茶の楽しみ方や美味しいお茶の淹れ方などは文化的要素も強く、浸透には草の根的な要素があるため、地域別の成長性はその国や町にどれだけお茶流通のキーパーソンがいるか、または影響力のあるショップがあるかにもよる。現在のオランダを例に出すと、欧州ブランドのティーバッグタイプのお茶ブランドが次々と発売されている状況であり、欧州の広い範囲で日本茶ビジネスの成長性が感じられる。

同ブランドは高級茶であるので、欧州の力のある日本茶取扱店舗に販売網を広げることを地道に取り組んでいけば、日本より高価となっても、じわじわと欧州全体に販路が拡大していくと思われる。

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