このガイドブックはJapan Cultural Exchangeに委託して作成しました。

中條 永味子(ちゅうじょう えみこ)Japan Cultural Exchange 代表

日本で広告代理店に勤務、2000年にオランダ・アムステルダムへ移住。デザイナーとして広告代理店や旅行代理店での広報企画などを経て、かたわらアムステルダムを中心に日本関係のイベントを運営。2015年2月にJapan Cultural Exchangeを設立。日蘭間でアートや文化、ビジネス、伝統、社会などのテーマをボーダレスに取り扱う。2016年2月からは日本のモノづくりに特化した展示・即売会「MONO JAPAN」を開催。ヨーロッパ向けのキュレーションと日本のモノづくりを背景からきちんと伝えることに注力し、日本プロダクトの価値向上と欧州での新しいマーケットを創造する。2018年からはオンラインショップも開設し、欧州での日本プロダクトの流通を開始。日蘭協業の商品開発、ブランディングやマーケティングも行う。

  1. 欧州マーケットマップ
  2. オランダという新たに注目される欧州拠点
  3. オランダの展示会MONO JAPAN
  4. オランダを選んだ6ブランドに見る欧州第一歩事例
  5. 自社に合った欧州販路開拓の展開

1. 欧州マーケットマップ

なぜヨーロッパなのか

購買意欲はアジアほど活発でないかもしれないが、それでも販路開拓先として欧州が魅力的と考える企業は、日本企業に
限らず、多い。その理由は何か。

世界のデザインの中心地、価値付与の場所

欧州にはパリの“メゾン・エ・オブジェ“やミラノの”ミラノサローネ国際家具見本市”、フランクフルトの“アンビエンテ”など、有名な大規模国際展示会がある。その他にも主要都市ではいくつものデザインウィークなどが開催されている。欧州各国は、これらの展示会やイベントを観光資源として育成するだけでなく、地域ビジネス活性化の役割や文化・教育的意義をも見出し、主催者や出展者、官民が協力してその意義を高めようとしている。ライフスタイル商材からファッションまで、世界のデザインのトレンドが決まる華やかなデザインの中心地なのである。

人種や消費傾向が多様、広範な地域で活発な消費活動

ヨーロッパ大陸は東西南北で市場特性が異なり、それぞれの地域で消費活動が活発だ。地続きの大陸内ではトレンドが各国へ複雑に伝播していく。トレンドにのっていなくても地域によってはマッチする商材もあり、欧州内では観光による往来が常に盛んで、さらに中国やアメリカ大陸からのツーリストも多いので、多様な人種の目に触れやすい。

文化的な需要

日本のプロダクトはそのシンプルなデザインや独特な製法・素材により、欧州では文化・教育面でのニーズもある。博物館が商品を展示したり、異文化紹介として工芸のワークショップが開催されたりなど、二次的ではあるが、文化的な需要も注目に値する。

ヨーロッパという市場

デザインを華やかに楽しみ消費するマーケットがヨーロッパには存在する。

デザインは、その時々の人々のライフスタイルや社会的課題、時代背景を反映する知的作業としても受け止められている。従ってデザインをアートと近い位置付けで認識する人々も多い。

富裕層と、彼らが支持するトップデザイナー達も多くが、西ヨーロッパを活動拠点としている。

彼らがいくつかの展示会や各都市のデザインウィークなどの機会で新作発表を行い、その年のトレンドが形成され、デザインメディアによって世界中に伝播されてゆく。

ヨーロッパに期待できること

・モノづくりへの文化的な理解や評価 ⇨ 新しい価値の創造
ヨーロッパでプロダクトの価値を認められることで

プロダクト及びメーカーとしての洗練
世界的な発信(アジアやアメリカへの波及)が起こりやすい
新商品のアイデアが生まれる
欧州クリエイターと出会うなど新展開への可能性

・多様なマーケットの存在

欧州は地域により多様なマーケットが存在するので、商品にあったマーケットを発見することができる。

例えば、オランダは伝統的にテキスタイル製造業が強いが、新しい、あるいは珍しいテキスタイルへの関心も高いため、日本企業にとっても輸出や技術協力などの可能性がある。

その他の例:

オランダ  ⇨ 花器関係
欧州都市部  ⇨ テーブルウェア、刃物(レストラン関係)
ベルギー、フランス  ⇨ テキスタイル関係

・日本プロダクトの付加価値が認められやすいマーケット

伝統工芸を、美術的価値及び文化的価値の両面で捉える教育が行き渡っているので、日本のプロダクトの製法や歴史、地域産業など、背景にある豊かなストーリーが付加価値として認められやすい。

ヨーロッパ地域別マーケット分布

A.北ヨーロッパ(オランダ、ドイツ、北欧、ベネルクス)
B.ロンドン、パリ
C.フランス(パリ以外)、イタリア
D.スイス、オーストリア
E.スペイン、ポルトガル
F.バルト諸国、東欧

A. 北ヨーロッパ(オランダ、ドイツ、北欧、ベネルクス)

  • 裕福な福祉国家が多い
  • 一般層は経済感覚が南部より堅実で簡単に消費しないが、質と“何に対価を見出すか”に重点を置く
  • 自然素材が好まれ、日本のライフスタイル系商材と親和性が高い(北欧)
  • モノづくりの歴史がある国が多く、文化教育が高く、他文化への理解や興味が高い
  • シャープなデザイン、シンプルさ、機能性を好む
  • 元来豊か食文化はない(ベルギー南部除く)が食への探究心や欲求が高まっている

B. ロンドン、パリ

  • 発信力が高いため、メディアの目に留まりやすい
  • 展示会、多様な店舗が多く、新しくて価値ある商品を探す人が
  • 世界中から集まる
  • ラグジュアリー商材が集まり、世界の富裕層も行き来する地域
  • 新しいものや情報が受け入れられやすいがトレンド感と洗練、
  • ある程度のPR的仕掛けは必要
  • 食に関しての展開は欧州他地域と比較して最も早い

C. フランス(パリ以外)、イタリ

  • もともと独自のモノづくりの伝統文化が強固で、消費者も自国商品を優先して消費する傾向。他国の文化も理解するが、マーケットに新規が入り込みにくい
  • 独自の言語でのPRやブランディングの必要性
  • 北ヨーロッパに比べシャーブなデザインより温かみのある装飾を好む層が多い
  • 好みの色調、色の組み合わせ、マテリアルも北ヨーロッパと異なる

D. スイス、オーストリア

  • 伝統的な商材や装飾が好まれる
  • 日本プロダクトの浸透はこれから
  • スイスのバイヤーは見本市での買い付けが活発
  • オーストリアのミュージアムショップは開拓の余地あり。デザインウィークも近年開催開始し、今後発展していく可能性

E. スペイン、ポルトガル

  • “日本プロダクトは高額“という印象がある
  • ポルトガルは欧州の商品製造工場が多く、特に欧州ファッションの製造拠点の一つ。コルク素材など自然素材を活かした工芸もあり、日本プロダクトや伝統工芸とつながりたい動きがある
  • 温かみ、遊び心のあるデザインを好む
  • またはクラシックなデザインを好む層も多い

F. バルト諸国、東欧

  • 日本文化に興味が高まっている地域
  • 需要に対して日本プロダクトの浸透はこれから
  • スラブ系諸国(ロシア、ポーランド、ベラルーシ、スロバキア、チェコ、クロアチア、セルビア、ブルガリア)は西ヨーロッパと違ったデザイン趣向
  • 東欧はカラフルで伝統的なデザインのもの、バルト諸国は北欧諸国に地理的にも近く、東欧よりシンプルでスタイリッシュなデザイン傾向

2. オランダ、新たに注目される欧州拠点

九州とほぼ同サイズの小国ながら魅力が選ばれる理由

・立地の良い欧州の流通拠点

北部、西部は北海に面し、東にドイツ、南にベルギー、その背後にフランスが控え、北海の向こうにはイギリス。歴史的に交易で栄えたこの国は、欧州第1位の港湾取扱貨物量を誇る貿易港のロッテルダム(第2位のアントワープの倍以上で、通称「ユーロポート」と呼ばれる)があり、陸路も大変整備されている。

・英語が通じ、現地での基盤作りが楽

小国でドイツやイギリス、フランスといった強国に囲まれていることから、伝統的にオランダ人は近隣諸国の言語にも長けている。また歴史的に多様な人種を外国から受け入れてきたことから、英語が公用語と言えるほど通じる国。海外の企業にとって、オランダでの拠点設立時に発生する会社登録やスタッフの現地駐在などが、他国に比べて圧倒的に楽で容易である。

・英国のEU離脱⇨国際企業が移転、富裕層マーケットの拡大と好景気

ロンドンなどに欧州拠点を置いていた国際企業が英国のEU脱退によりオランダに欧州拠点を移している。これにより質素堅実と言われたオランダの消費傾向に変化、外食の流行、若年の富裕層も拡大、さらにアート市場の好況化など、消費傾向に変化が起こっている。

・国際色豊かで近隣諸国や世界の他の地域へも情報発信力がある

アムステルダムは200人種が住む国際都市。各大陸からの人々が住むため、各言語を網羅したウェブサイト作りや多様な人種を対象とした市場調査なども可能な街。彼らが各言語でSNSなどのメディア発信を行うことで、自然発生的に情報が他言語で世界中に拡散されている。

・Eコマース、キャッシュレス、SNSマーケティングやショッピング・・・
効率化し研究されたオンラインビジネスが活発な国

高齢者までがネットを使いこなすオランダでは、多くの購買活動はネットで行われ、Eコマースサイトの消費者動向などの研究が進んでいる。決済は銀行のカードでキャッシュレスで行われ、決済端末機器はネット上で売上管理が容易にでき、購入者情報はマーケティングリストに自動で組み込まれる。これらはオランダで生まれた技術ではないが、テクノロジーの導入がスピーディーに行われることにかけては欧州でも一二を争う国。

このようなダイナミックでスピーディーなセールス活動を知らないと、海外顧客相手のカスタマーサービスの観点で不利。これらを学ぶことで、各国言語で多様な人種に対面接客する必要性から解放され、言語の問題にも直面せずビジネスのスタートラインにたてる。

3. オランダの展示会MONO JAPAN

欧州で日本プロダクトに特化した展示・即売会

2016年よりオランダの首都アムステルダムにて日本商品限定の展示・即売会としてスタート。1月末に開催のメゾン・エ・オブジェと2月中旬のアンビエンテの間に、地理的にも中間地点であるオランダにて開催しており、日本からの出展メーカーにとって効率よく利用ができる。

会期中には商品の販売も可能なため、市場調査としての精度も高い。現地在住歴が長く、欧州市場を知る日本人運営チームが、欧州マーケットにマッチするプロダクトや出展メーカーを丁寧にキュレーション。輸送や税制、価格設定など複雑さのある実務的な部分への細やかな日本語でのサポートを行っている。

来場者は、オランダのディストリビューターやショップに加え、ベルギー、フランス、ドイツ、スイス、イギリスなど、近隣諸国からのバイヤーが多数。メルシーなどの市場を牽引するバイヤーも足を運んでいる。

一般ファン層の質が高いことでも定評があり、文化教養度の高いオーディエンス、博物館スタッフやクリエイターら、オランダの文化関係者には特にファンが多い。

ロイドホテルというデザインホテルが会場となり、客室が展示スペースとなっている。

客室は様々に異なるしつらえで、出展メーカーにとっては、低コストでアーティスティックな展示の展開が可能となるのも魅力の一つ。デザイン性の質を維持し、物産展にはならない、美意識のある場作りが実現している。

2018年2月に第3回目を開催、2016年には18組、2017年には26組、2018年には16組のメーカーが出展。過去3年で欧州に深く浸透し“売れる展示会”として定着してきた。

日本の産地とオランダ他欧州のクリエイターの協業プロジェクトも行い、MONO JAPANブランド商品も開発している。オンラインショップも開設し、欧州の日本ファンにとってこれまで年に一度きりの商品購入の機会であったのが、展示会後も継続的に商品を購入できるようになった。

次回は2019年2月1〜3日の開催。新たにテーブルのみの手軽な出展方法や、商品の参加で運営チームが販売を行う出展方法を始める他、日本酒バーを開設して日本酒メーカーの出展も受け付けるなど、欧州市場でのテストマーケティング機会として拡充を図っている。

4. オランダでの日本6ブランドに見る欧州第一歩事例

オランダで販路を拡大する6ブランドに学ぶ欧州での現実的なビジネス展開事例

この章ではMONO JAPAN出展やオランダで商品が流通している、6ブランドの事例を紹介し彼らがどのように欧州でのビジネス展開を行っているかを見ていく。

  1. Time & Style <インテリア、テーブルウェア、ライフスタイル商材全般>
  2. MUJUN <刃物、陶器、テキスタイル、竹細工等>
  3. 西海陶器 <陶磁器、その他>
  4. SIWA l 紙和 <紙製ファッション、文具、ライフスタイル商材>
  5. 2016/ <陶磁器のテーブルウェア、アクセサリー>
  6. Tsunagu Sonogi Tea Farmers <日本茶、烏龍茶、紅茶など茶全般>

Time & Style

欧州流通拠点を兼ね備えた店舗をオープン
http://timeandstyle.nl/

事業内容と主要商品

日本のクラフトマンシップを生かした良質のインテリア、テーブルウェア、ライフスタイル全般の商材を自社ブランドTime & Styleとして販売。その他、ホテルなどの施設インテリアなども手がけている。

オランダでの展開

ドイツ、フランクフルトの国際消費財見本市「アンビエンテ」に10年以上前から継続して出展し、欧州マーケットに通じている同社は、2016年のMONO JAPAN出展をきっかけに、ロンドンやパリではなくアムステルダムを欧州第一店舗の拠点に選択。「ロンドンやパリの喧騒と自分たちのブランドのスタイルが合わないと感じ、アムステルダムの居住エリアで質の高い人々の暮らしを目にして決めた」と、ブランドの目指す価値観と街の魅力とのマッチングが決め手となっている。アムステルダム中心地にある19世紀建造の歴史的な建物を賃貸契約、2017年3月に初の欧州店舗をオープン。

欧州での展開

趣ある店舗面積2000㎡の建物で欧州の生活空間での同社インテリアを展開。ショールーム機能も果たしている。オランダ・アムステルダムに欧州流通拠点を置き、今後の積極的な欧州販路拡大を目指している。

英語が通じるため、日本語のスタッフの現地派遣も安心。会社登録や慣れない現地の税務処理なども英語での対応が可能なこともメリットだと同社。

欧州は人気の展示会や各都市でのデザインウィークなどが多く、拠点があることでこれらへの出展、マーケティングリサーチ、効果的なプロモーションなど考えやすい。これら展示会などのイベントは同社の高額商材やブランディングともターゲット層が一致している。大規模店舗での高額商材でのビジネスでは早急にペイしないが、売り上げは確実に向上している。将来を見越して欧州マーケットに入り込むという戦略だ。

筆者による欧州ターゲット予測

同社の展開先として期待されるのは、1の欧州マーケットマップのA、B、C、Dである。

Aは、同社の国産にこだわる “正直さ”や“真摯さ”を感じる姿勢と、北欧家具とも通じるテイスト、北ヨーロッパのコンテンポラリー・デザインとは異なるデザインスタイルが、オーセンティックなものを好む富裕層に合致する。Bは欧州での日本ブームと相まってデザイン系メディアが取り上げるなど、これからより拡散、浸透していくだろう。Cでは、同社商品のコンテンポラリーすぎないデザインや基本色調もアースカラー系と相性が良いため、同エリア富裕層はターゲットだと考える。Dでも同様に、コンテンポラリーすぎない落ち着いた品格のあるデザインがスイスの富裕層にマッチする。

オランダでは多様な人種が多く住んでいてマルチリンガル人材を確保しやすく、
多言語サイトの構築も容易なため、欧州全域展開のための多言語対応Eコマースサイトは取り組みやすいだろう。

MUJUN

現地法人設立、自分たちでディストリビューション
http://www.mujun.co.jp/

事業内容と主要商品

兵庫県小野市や三木市の包丁やハサミなどを“播州刃物”ブランドとして立ち上げ、島根県の石州和紙や瓦、陶器、京都の商材など、地域性のある商品を生産者とともに開発し、国内外に向けブランディング、流通まで行う。現在は刃物職人後継者育成のため地元小野市に工場を設立した。その際、多くの賛同者がクラウドファンディングによって工場設立に支援を行った。

オランダでの展開

ダッチデザインなどから直感的にオランダに興味を持ち、2016年にMONO JAPANへ出展。翌年には京都府の販路促進事業としてPOP UP店舗をアムステルダムにて半年間開催し、オランダ人クリエイターとの協業を経験した。この成果を2017年の第2回MONO JAPANにて発表。MONO JAPANの前後時期に開催のアンビエンテにも継続出展、同社商品はオランダやドイツなどで卸も始まる。ネットワークが出来てきたオランダを欧州拠点とし、2017年には会社登録。オランダ在住スタッフが受注と発送を担当。 MONO JAPANへは3年連続出展しており、毎年ファンが包丁のお手入れのために彼らの出展ブースを訪れている。

欧州での展開

フットワーク軽く、縁のできた国の展示会などに参加し、着実にファンと取扱店舗を増やしている。小林代表自身が各地に赴き、各国の客と直接出会うことで、各国のマーケットに対する理解を深め、商品セレクションや新商品開発にも生かしている。

「職人とその技術の次世代への継承」を目標として掲げているため、欧州文化層への価値の浸透と職人の技や素材の魅力を伝える商品を開発し、ミュージアムショップをターゲットに展開している。サイトではEコマースは行わず、リテイラーからの問い合わせのみを受け付けBtoBに特化。BtoC販売をEコマースで行わないことで、各国ごとの決済方法の違いへの対応に悩まされない。 BtoC販売はイベント時のみ実施。

国ごとに展開商品を選んだり、卸先を選ぶ展開方法は、産地への発注数量がコントロールでき、産地への負担が少ない。現地在住せず、多くの現地スタッフを抱えない、継続可能で無理のない方法である。

筆者による欧州ターゲット予測

1の欧州マーケットマップ内では、刃物はA-Fの全域が該当、欧州の日本食ブームや家庭への日本食の定着化により、今後ますます取り扱いが増えると予測できる。A-Dの地域で先に動き、その後もE-Fや他地域へも伸びていくと予想する。

その他の商材は、クラフト色が強くニッチ層向けとなり、該当地域がA-Fの全域だが数量は小さいかと予測。しかし小さいオーダーは同社の付き合う産地にとって無理がかからないし、小さいオーダーでも入る地域が増えれば全体量は増えるので、無理のない成長を考えられるのではないか。

また同社はローカル市場に合わせて商品を開発するなど、オープンな姿勢があり、市場とそこに”ハマる“製品が生まれる可能性もある。

西海陶器

現地法人を設立し多様なブランドで現地マーケットにマッチ
http://saikaitoki.com/ (日本)
http://www.saikaieu.com/ (オランダ)

事業内容と主要商品

日常的な陶磁器を、日本や西洋のライフスタイルや市場に合わせて製造販売している、生活用陶磁器業界最大手メーカー。長崎県波佐見に本社を置き、東京では「東京西海株式会社」を設立。ここでは、HASAMI PORCELAINやCommonなど、コンテンポラリーな5つのブランドが生み出されている。

オランダでの展開

2015年から、アムステルダムにほど近いスキポール空港周辺にSaikai Trading B.V.として、欧州流通拠点を構えた。1991年のアメリカ拠点立ち上げと同様、欧州拠点設立と販路拡大のために派遣されたのは1名。

西海陶器は、パリのメゾン・エ・オブジェには2011年から出展。あらかじめ欧州市場に対しての理解やネットワークがあり、満を持しての拠点設立となった。

欧州での展開

西海陶器は、長崎県波佐見に文化発信の施設「西の原」を運営している。施設にはセレクトショップもあり、商品は西海陶器社員が自社製品の枠を超えてセレクション。国内の強いネットワークと、審美眼のある高感度のスタッフを持つことが西海陶器の強みである。オランダでもガラス製品や南部鉄器、家具などの他社製品も紹介している。日本国内の良品メーカーとのネットワークと海外担当者による欧州生活や展示会経験が組み合わさり、人々の暮らしに浸透しやすい価格設定とプロダクトで、スピード感のある販路拡大を成し遂げている。

2011年から出展を開始したパリのメゾン・エ・オブジェ以外にも2016年からアンビエンテに出展・ドイツの市場と同社ブランドがマッチ、着実に注文が付くという。

「東京西海株式会社」が生み出す同社の新ブランドでは、欧州デザイナーを迎えたブランドもあり、同社が欧州拠点を有するメリットは今後ますます大きくなると考えられる。

筆者による欧州ターゲット予測

欧州の若者向けの現代的な新ブランド以外に、庶民的で格安な和食器も扱う。欧州の和食ブームにより、“最初の和食器”としても購入しやすい価格帯で、一般購買層向けのショップやデパートにも販路拡大が見込まれる。格安和食器はA-Fの全域で伸びる可能性が高い。

新ブランドのうちHASAMI PORCELAINは欧州でのコーヒーブームとも相性が良い。ベーシックかつ“ありそうでなかったデザイン”は、昔のフィンランドの陶器メーカー“アラビア”ともテイストが近く、北欧デザインファン層とも合うし、高年齢層にもなじみやすいデザインだ。

エリアではA-E、特にA-C。またイタリアやスペインなどのアースカラーを好むエリアとも合う。

欧州では、陶器はメタルマーク(ナイフやフォークの金属傷)が付きやすく、また壊れやすいため飲食店舗には採用され難いが、同社製品は磁器製品のため、今後ホテルやカフェ、レストランなど、ますます販路の拡大が見込まれる。

SIWA l 紙和(株式会社大直)

10年以上もの継続的な欧州展示会出展、熱意ある現地代理店との出会いから欧州で広く認知されるブランドとして定着
SIWA l 紙和 http://siwa.jp/

事業内容と主要商品

歴史ある和紙の産地、山梨県の和紙メーカー大直が、工業デザイナー深澤直人氏とともに生み出した「SIWAl紙和」シリーズ。大直が開発した破れない障子紙「ナオロン」を、くしゃくしゃにして風合いを生み、文房具や帽子、バッグなどファッション小物、インテリア周辺商品などのライフスタイルブランドとして展開し、欧州の日本ファンや新しいものを求めるデザインファンに広く認知されている。

オランダでの展開

欧州展示会で同ブランドを知った、熱意あるオランダ人代理店がアプローチし、現在では彼らが北ヨーロッパでの販路を拡大している。流通先はブランドのユニークさを考慮し、ミュージアムショップやセレクトショップなど、背景のストーリーが伝わる機会やショップを注意深くセレクトし、ブランドの世界観やイメージと合った卸先で取り扱われるようにしている。デザインイベントや近隣諸国の展示会にも活発に参加。

欧州での展開

フラワーアーティストedenworksの篠崎恵美氏と大直のコラボレーションブランド「ペーパーエデン」では、ネガティブなイメージが伴った従来の造花とは全く異なる大直の紙を使ったハンドメイドフラワーのシリーズを発表。2017年のミラノサローネで同製品を使ったインスタレーションが好評を博し、秋にはオランダの展示会”ShowUP”にも招待され、現地雑誌やテレビにも取り上げられた。

2017年の秋開催のメゾン・エ・オブジェではナオロン素
材を使用した紙製の糸を使った新しいブランド「SIITO」(紙糸)が誕生、ファッション、繊維業界にも商品開発を意欲的に展開。ついにフランス・パリでの2018年秋冬コレクションにて、メゾン マルジェラ(Maison Margiela)の「artisanal collection-アーティザナル-2018-19」中で同社のナオロンが使用された。

筆者による欧州ターゲット予測

同社は、「ペーパーエデン」や「SIITO」(紙糸)の活動でも明らかなように、千年続く和紙の産地に本社を構えながらも伝統にとらわれず、紙の可能性と現代人の生活に寄り添う紙の現代的な製品作りを模索し続けており、このイノベーティブな姿勢には、欧州のクリエイターからも注目が集まっている。

同社は長年パリのメゾン・エ・オブジェに出展し続け、自分たちで試行錯誤しながら欧州でのビジネスを学び、欧州の感覚を理解するに至った。上記の2つのブランドは欧州に響くテイスト、 「ペーパーエデン」はコンセプト的にも仕様的にも欧州向き、花で有名なオランダでの展示会でも多くの来場者の目を引いた。これらはA-Dの市場が期待できる。

E、FではSIWA l 紙和商品が今後より浸透していくと思われる。

2016/

有田とオランダ間の歴史的なビジネスのつながりが復活
欧州富裕層にもリーチするハイスタンダードな新ブランド
http://www.2016arita.com/

事業内容と主要商品

有田焼が創業400年を迎えた2016年に生まれた有田焼の新ブランド「2016/」。佐賀県にある窯元・商社がクリエイティブディレクターとして柳原照弘氏とオランダのデザイナーデュオ、ショルテン&バーイングスを起用、16組の国際的に活躍するデザイナーたちがそれぞれにテーブルウェアをデザインし、10社の窯元で共同開発が行われた。このプロジェクトには佐賀県庁と在日オランダ大使館も多大に協力する一大文化事業となった。

オランダでの展開

2016/ は2016年春にミラノ、その後オランダで発表。オランダでは国立博物館で特別展が開催されたほか、付近に1年間の限定ショップ「Arita House」を開設した。有田の名前は欧州で、特にオランダのデザイン業界では広く認知されることとなった。MONO JAPANでは2016年には柳原氏とショルテン氏のレクチャー、2017年に出展。現在有田ではアーティスト・イン・レジデンスが運営され、若手オランダ人クリエイターが参加し意欲的な協業が行なわれている。

欧州での展開

プロジェクトは2017年のミラノサローネで受賞。各国メディアに取り上げられたのはショルテン&バーイングスの力によるところが大きい。欧州での、アートやファッションのように、デザインのトレンド感を楽しむ華やかなブランディングは彼らなしでは成しえなかった。

欧州までの輸送費などで高額になってしまうため、現在はオランダのほかスイス、デンマーク、イギリスの4カ国の取引にとどまり、飛ぶように売れているとは言えないが 「欧州での付加価値作り」が達成できたため日本やアジアでの販売好調につながっている。

デザイン業界での有田の知名度の向上により、海外デザイナーからの発注が増加、海外の学生やアーティストの受け入れも開始し、産地の国際化が実現。

佐賀県知事のArita House訪問

佐賀県知事のArita House訪問

筆者による欧州ターゲット予測

華やかにデビューした2016年が過ぎ、「Arita House」は1年経過後ショルテン&バーイングスのショップとなったが、同ブランド商品も販売されているため、継続的に欧州デザインメディアに商品が掲載されている。

日本では多くの店舗が取り扱い、有田の技術や製造プロセスも本プロジェクトで様々に進化した。また欧州からのOEM受注もあるだろう。2016/の中で特にアクセサリーは伸びしろを感じさせるプロダクト。

Tsunagu Sonogi Tea Farmers

若い茶園後継者たちによる協業、新ブランド完成
生産農家が欧州で美味しいお茶を淹れ、市場を学ぶ
http://www.sonogitea.com/

事業内容と主要商品

長崎県の彼杵茶は昔は嬉野茶として市場に出ていた時代もあったが、現在では総理大臣賞などを受賞する高品質なお茶として認知されて始めている。20〜40代のお茶生産農家後継者たちが「生産者の顔が見えるお茶ブランド」としてTsunagu Sonogi Tea Farmersを立ち上げ、購入者が自分の好みでブレンド出来る新しいコンセプトの「シックス・センス」などを商品化。

オランダでの展開

MONO JAPANには2016年から継続出展、その際には近隣諸国も回り、各地のお茶専門店を訪問して、時にはPOP UPのお茶イベントを開催。欧州各国の好みの違いやマーケット差を研究しつつ、着実にファンを増やしてきた。英語サイトも作り、東彼杵町の歴史背景と地理的な魅力も訴求。毎回MONO JAPAN 出展の際に商品やPRの方法やツールなどをアップデートしてきた。2018年オランダの日本茶専門代理店とパートナーシップを組み、彼杵茶の継続な欧州販路拡大を目指している。

欧州での展開

ラーメンよりも静かであるが、すでに多くの欧州人が参入しているのが日本茶ビジネス。オランダでも主要都市にて日本茶を扱う店舗やティーサロンが開店している。老舗店や若者がオープンしたショップ、現地日本人のショップ、ウェブショップ、欧州の日本茶市場を牽引するお茶専門店のチェーンなど多様性がある。

同ブランドはウェブサイトにも力を入れている。英語でのサイトを制作したことは欧州以外にアジアでも同時にPRできているので、アジアへもPRに出かける彼らには利用価値が高い。現地代理店にとっても随時情報が得られるため、セールスに非常に便利だ。今後はオランダ代理店の広範なネットワークが生かされ、商品が市場に流通し始めるフェーズに入っていく。

筆者による欧州ターゲット予測

お茶に関しては当然Bの都市部が強いが、Aの地域も日本茶を好む地域。イタリアのようなコーヒーの飲み方にこだわりのある国もマーケットとして合いやすく、スイスや東欧のオーセンティックな好みの国々にも合う。

お茶の楽しみ方や美味しいお茶の淹れ方などは文化的要素も強く、浸透には草の根的な要素があるため、地域別の成長性はその国や町にどれだけお茶流通のキーパーソンがいるか、または影響力のあるショップがあるかにもよる。現在のオランダを例に出すと、欧州ブランドのティーバッグタイプのお茶ブランドが次々と発売されている状況であり、欧州の広い範囲で日本茶ビジネスの成長性が感じられる。

同ブランドは高級茶であるので、欧州の力のある日本茶取扱店舗に販売網を広げることを地道に取り組んでいけば、日本より高価となっても、じわじわと欧州全体に販路が拡大していくと思われる。

5. 自社に合った欧州販路開拓の第一歩

商材タイプや会社の規模感、目標設定で考える欧州販路開拓の方法

これまで見てきた6つの例は、その会社の規模感や商品タイプなどにより、例で見たようなそれぞれの形での展開となった。ここにたどり着くためにはどのような準備が必要だろうか?

欧州販路開拓の方法と順序、目標設定

上の図のように、展示会の機会を利用して実践的なマーケティングを行う会社は多い。また展示会に出展した後に改めてリサーチのために現地に行くという会社も。“基礎完成第一目標”では、今後どのように欧州内で商品を流通させるかの方法となる。

欧州販路開拓の基礎作り各順序や目標

前ページで挙がった欧州販路開拓の項目についてメリットや目標、必要事項を見ていこう

  1. マーケティングリサーチ
  2. 欧州展示会出展
  3. 現地パートナー
  4. Eコマースサイト
  5. 現地法人設立

欧州マーケティングリサーチ

欧州販路と言っても、どの国からまずはじめるのか、販売、流通方法はどのようなチョイスがあるのか、関税や輸送にかかる費用、現地の同商材の価格帯を知ること、また各国の景気やターゲット層を知ることなど、現実的な販路開拓を考えるのに不可欠。以下の項目は欧州販路開拓に踏み出す価値があるかどうかの判断に必要なリサーチ項目を書き出してみた。

  • 欧州全土でのマーケット規模の把握
  • 輸送費と関税、輸入消費税など輸出に関わる情報収集
  • 自社製品と市場とのマッチング
  • 既存商材の市場での価格帯とそのターゲット層、マーケティング手法
  • 訪問国の店舗やオンラインショップなど商材にあったリテールのリサーチ
  • OEM受注の可能性がないか、有識者からのリサーチ

展示会でのリサーチ

展示会はネットワークも広げやすく大勢の人が集まるので、相性が良さそうな展示会があれば参加してリサーチの機会とすることもお勧め。

  • 展示会に出展しているメーカーなど見て欧州の消費傾向やトレンドを掴む
  • 出展している日本企業と情報交換の機会
  • 出展している現地企業から現地の情報を仕入れる

現地に詳しい日本人ガイドや商材を理解する専門家などを見つけ、現地事情の情報収集や現地パートナーとのネットワーキングの機会設定などもできると良い。

欧州展示会出展

欧州で多くのバイヤーやメディア、クリエイターが集まる展示会出展は効率よく大勢の人と出会え、セールスやネットワーク作りの格好の機会となる。

展示会出展では以下の可能性が期待できる。

  • マーケティングリサーチの機会
  • 欧州バイヤーからの受注獲得
  • 現地代理店となる企業や人物との出会い
  • 現地PR会社やクリエイターなどとの出会い

展示会以外にも、街を歩いたり、展示会中に名刺交換したバイヤーを訪問、商材に適したリテールのリサーチなど、展示会会期後に欧州マーケットやターゲット層に対する知識を得るための時間を持つことは重要。

欧州展示会は住み分けがはっきりしている。自社商品対応やブランドに合わせた展示会選びが重要だ。

メゾン・エ・オブジェ(フランス、パリで毎年1月下旬と9月中旬開催)

日本で一番有名な欧州展示会。世界中から多くの人が集まり、トレンド感を求める欧州バイヤーは同展示会を選択。大規模で出展者数も多いため、ブース作りや配布リーフレットなどはプロが必要。継続出展により成果が上がる。バジェットがあり、会場デザインや現地スタッフなど十分な費用をかけられる企業向け。出展前にリサーチに行き、出展プロダクトや欧州向けブランディングを考慮すべき。

アンビエンテ(ドイツ、フランクフルトで毎年2月中旬開催)

メゾン・エ・オブジェよりもトレンド感は控えめだが、来場バイヤーが浮つかず本気のビジネス目的で来ているため、受注が入りやすい。落ち着いた日用品でも出展しやすい。欧州デザイナーの出展より、各国の様々なレベルのメーカーが多く出展している印象。トレンド感のないブース作りであっても商品次第では注文が入ると思われる。注文獲得のための資料作りや、受注時の英語対応など準備が必要。こちらも継続出展が重要。

ミラノサローネ国際家具見本市(イタリア、ミラノで毎年4月中旬開催)

欧州デザイン業界、クリエイターたちが一番好む見本市。欧州デザイナーやメーカーの新作発表は多くがミラノで行われる。場外イベントを含めてミラノサローネと呼ばれ、展示会会場はメゾンやアンビエンテと同様の雰囲気だが、ミラノの町中で開催される多くのイベントや展示が「デザインの祭典」と呼ばれる華やかで多様な楽しみを提供している。デザイナーを起用して企業のコンセプトをインスタレーションとしてみせる日本企業も毎年多数出展。富裕層向けのライフスタイル商材、デザインプロダクト、新素材など。

MONO JAPAN(オランダ、アムステルダムで毎年2月上旬開催)

欧州で唯一日本プロダクトに特化した展示・即売会。大規模展示会では日本のモノづくりの背景や歴史が伝わり難い環境であることから、小規模で欧州マーケットに合うキュレーションされたプロダクトが揃うことで好評を得ているイベント。ターゲットのエンドユーザー像を知りたい、マーケットリサーチ、現地クリエイターと出会いたい、来場者に丁寧に製法などを伝えたい、商品を販売したい、他の展示会と世界観が合わない、などのメーカー向け。現地日本人スタッフが出展に関してのサポートを行うので、海外出展初体験のメーカー向け。

現地パートナー

6ブランドの例の中にも、商品に惚れ込み欧州展開を引き受けたいと名乗りをあげる現地人との出会いから欧州販路拡大が始まったケースもあり、欧州人の中にも日本プロダクトの流通や日本メーカーとの協業をビジネスチャンスと考える人は少なくない。現地人パートナーには2つのタイプ(流通・デザイン)が考えられる。

現地流通パートナー

SIWA l 紙和やTsunagu Sonogi Tea Farmersのように、現地に熱心な代理店が見つかり、現地の市場に応じた流通を担当するパートナーが見つかるケース。

この方法だと欧州各国の市場知識を自社でもたずとも各地域にパートナーを持つことで展開が可能、小規模な企業に適している。デメリットは販路拡大も販売チャンネルの選択やボリュームも現地パートナー次第になってしまうこと。

この方法をとる場合、会社や産地自体がムラのない生産体制を組んでおく必要があり、契約の際にはパートナーの担当エリアや業務担当の範囲確認も大切。

現地デザインパートナー

2016/や西海陶器は欧州クリエイターと商品開発を行っている。

日本メーカーとの商品開発を希望する欧州クリエイターは多い。日本国内での多岐にわたる素材での製造業の存在、高品質のイメージ、伝統工芸の技を現代的に生かしたプロダクトの作成への興味、日本国内の販売網などが理由として挙げられる。

デザインパートナー選びには、デザイン能力や彼らから得られる世界的な視野、彼らの活躍やメディアの注目度、ブランド力以外にも、人同士の相性や、産地やメーカーへの理解、長く付き合っていける人柄など、人的部分も継続的で発展的な関係構築のためには不可欠だ。

ブランディング力があり、マーケット理解にも通じた欧州クリエイターを工場や産地に迎えることができれば、多くの知識を得られメリットが多い。 SNSでの発信力やWEBサイトでの販売力を持っている場合もある。

Eコマースサイトの立ち上げ

Eコマースサイトを英語で開設することの意義は大きい。世界中の顧客の目に止まる可能性が手に入るため、テストマーケティングとしても無駄にはならない。

オランダを始め、欧州諸国の消費者はEコマースサイトでの購買に移行傾向。オランダでは人口の97%がインターネットユーザー、現在のセールスの11%がEコマースで行われている。 Eコマース購買の全体の1位が旅行やチケッでファッション関係は5位。以下はEU諸国のEコマースでの売り上げグラフ。アイルランドがトップで、全購買の15%以上となっている。2位以下がベルギー、チェコ、イギリス、スウェーデンとなる

実際に欧州向けEコマースサイトの開設には以下の2通りとなる。

日本を拠点に英語対応のEコマースサイト開設

決済はクレジットカードとPayPalで、商品の発送は日本から行う。各国への輸送費を調べ、地域ごとの料金設定やキャンセル、返品、破損の際の規約をきちんと英語で記載すれば運営は可能。集客にはエリアごとの他社サイトを研究。

欧州拠点でのEコマースサイト開設

現地法人設立や現地パートナ−を持つことで可能。決済もクレジットカードとPayPal以外に各国銀行カードの決済が可能となり、購買が進む。現地パートナーがEコマースサイトの運営やマーケティングに長けた人や会社だとメリットが大きい。また現地に在庫できると輸送コストが抑えられるため、ユーザー・フレンドリー。ただしGDPR (EU一般データ保護規則)が2018年5月25日から適用され、個人情報の取り扱いにはますます注意が必要になっている。欧州顧客の情報がきっちり管理され、情報が転用などされず、広告メールなどを送る際に情報送信前に確認が取れていれば、必要以上に恐れる必要はない。

欧州Eコマースサイトの開設時には以下のことが成功の鍵となる。

  • 海外の多くのサイトを研究、購入も試してみる
    ⇨決済方法や発送、商品購入時のメール連絡やパッケージングなど学べる
  • 写真は写真家とスタイリストを起用し、スタイルを作り上げる
    ⇨現地パートナーの協力を仰ぐ、または国内で海外向けサイトやメディア発信している人を起用
  • 名前は欧州向けに短くわかりやすく
  • 文字情報を極力減らし、英語で⇨優秀な英語ライターか現地パートナ−に依頼
  • 支払いまでのステップはできるだけ短く
  • 英語でのインスタグラム投稿も重要 ⇨現地パートナ−に依頼も可能

現地法人設立

企業の規模や将来的な展望によっては、現地法人を設立することが最良の方法であることもある。Time & StyleやMUJUN、西海陶器の3ブランドはそれぞれ規模感や経緯は違うが、“自社に知識と経験を蓄える”という共通の考えがこの選択として形になっている。

また他の日本メーカーで、現地人が現地法人を作りたいと名乗りをあげるケースもあり、商材、価格帯、人的出会い、会社規模、などで多様な形が可能であることも頭に入れ、展示会に出展してみるのもお勧め。

現地法人設立のメリット

  • 企業自身が知識と経験を蓄え、国際的に販路開拓できる体質作りが可能
  • 長期的に欧州全域を対象とした展望が、自社の舵取りで行える
  • 現地法人の予算で欧州内セールスや展示会出展など活動を行い、現地で税務処理でき、効率よく運営することが可能

以下はオランダでの邦人の立ち上げに目安となる一般的な項目。会社規模にも、また国ごとにも条件が異なるため、法人設立の際には本格的なリサーチが必要。

  • 社員を現地へ派遣し、滞在許可証の取得、家探しなど居住の準備
  • 物件(オフィスや店舗、倉庫など)探し、賃貸契約
  • 商工会議所に会社登録、また登録の際に必要な条件を満たす準備
  • 現地銀行開設
  • 現地会計士や人材派遣会社、輸送会社など、必要に応じて探す
  • スタッフ探し

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【EUガイドブック 14】流通拠点オランダにみる 欧州マーケット開拓・第一歩