「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第18回目は、タイにお住まいの倉地アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2022年1月31日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

観光立国であるタイは、2020年以降全世界で猛威を振るうコロナウィルスの影響に伴う外国人渡航者の減少により、経済的に大きな打撃を受けてしまいました。この記事を執筆している時点でもコロナウィルスの影響は続いていますが、経済の回復を図るべく、タイは少しずつ外国人渡航者へ門戸を開こうとしています。そんな中、この記事ではタイへの訪問を考えている方向けに、タイの現状について現地からのレポートをお届けします。

タイに行くにあたりThailand Passというシステムを通じて渡航制度を申請する必要があるのですが、2月1日以降、行動制限がほぼない渡航制度(Test & Go)が申請できることになりました。この制度を利用してタイに渡航する場合、1泊目と5泊目のみタイ当局が定める防疫基準に則し、医療機関と提携のある施設における宿泊が求められる一方、他の滞在期間については自由にタイ国内を移動できます。この通り、この制度を利用すれば宿泊義務以外はほぼ行動制限がないタイへの渡航ができますので、タイ渡航後の行動制限を懸念してタイ渡航を見合わせていた方には朗報と言えます。

ただし、この行動制限がない渡航制度が今後もずっと認められるのかというのはわかりません。そもそもこの制度は2021年11月に始まった一方、12月下旬にオミクロン株の感染拡大を受けて一旦停止され、今回また復活したという経緯があります。私は年末年始に日本に帰国していたのですが、ちょうどこの制度の申請ができない期間にあたってしまい、タイ入国後7日間隔離検疫用ホテル(AQホテルという)における隔離検疫を受けなければいけない状況になりました。

AQホテルへの送迎を待つ人たち

AQホテルの費用は自己負担ですし、基本的にはホテルの部屋から出られない生活(参考記事)ですので、人によっては辛いものがあるかもしれません。タイへの渡航予定があるのであれば、この制度が有効なうちに、早めに予約するのが良いでしょう。

ビジネスの状況について

タイ渡航するからには現地でタイ企業や日系企業との対面面談や会食をされたいと思われるでしょう。ここで、タイ企業・日系企業ともに対応をしてくれるのか、については各社本当にバラバラという印象です。すなわち、出社形態(自宅勤務・出社勤務・混合)、面談可否(オンラインのみ可・両方可)、会食可否(可・不可)について会社ごとに様々なガイドラインがあり、それぞれの会社が自社のガイドラインに従って判断している印象です。

ただし、対面面談や会食の実施にいったんOKが出たとしても、参加予定者が状況によって突然参加できなくなってしまう、ということも当然あり得ます。このため、対面面談や会食の実施は、個別の相手先ごとに渡航前に可否を確認した上で、仮に実施できなくなったとしても、タイの方が言うところの『マイペンライ(仕方ない、大丈夫、といった意味)』の精神で臨むのが良いかもしれません。

日常生活について

通りの様子。本当は通り沿いにお店が並んでいるが、閉店している。

日本と同様、マスクを常時着用しなければならないこと以外は、日常生活にはほぼ支障はありません。例えば飲食店は基本的に空いていますし、お酒の提供も行われています。日本からの渡航者の方はゴルフやマッサージを楽しみにしている方も多いかと思いますが、どちらも利用可能です。観光地も、基本的にはどこも空いているようです。

ただし、全てが平常運転、というわけにはいきません。例えば、バンコクでも有名なバーが並ぶ通りでは、外国人渡航者の減少を受けてか、かなりのお店が閉まっているのが現状です。

また、その通りに入るにあたっては原則入り口でATKテスト*を受けなければならないなど、やはり平常時とは異なり、一定の物々しさがあります。このため、日常生活にあたっても、訪問先との対面面談や会食と同様、『何人まで一つのテーブルで会食可能か』『予定の日は空いているか』『営業時間は何時までか』といった個別のケースの実施については、その都度行こうとしている場所ごとに確認するのが良いと思われます。

*ATK(Antigen Test Kit)テスト:薬局等で購入できる抗原定性検査

ATKテストを受けるためのブース

ブース内の記載の様子

おわりに

いかがでしたでしょうか。タイは少しずつではありますが、外国人渡航者への完全開国を目指して進んでいます。実際のところ、私のお客様でもタイに渡航されている方々は少なからずおり、コロナ禍にあった2021年において、タイで新しく拠点を立ち上げられた会社の方もいらっしゃいます。2022年の動向はまだ不透明ではありますが、この記事をお読みになった皆様が、タイへの渡航、さらにはタイでのビジネスに関心をお持ち頂けたのであれば幸いです。

筆者紹介

倉地 準之輔 中小機構 中小企業アドバイザー

日本国内にて大手監査法人、外資系企業勤務を経て、2013年来タイ。外資系会計事務所のジャパンデスクにて日系企業向けコンサルティング業務に従事した後、2015年10月に現地会社をタイ・バンコクにて設立。同社代表として、タイで事業を展開する日系企業及び外国企業に対して会計・税務・法務・ビジネスアドバイザリーといった経営コンサルティング業務を提供し、現在に至る。
公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。

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