みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

氏名:シャンタル・カゼル氏(Ms.Chantal Coasale)
職業:マーケティング会社経営、アート・不動産ディーラー
年齢:60歳
家族構成:夫婦二人くらし
自宅エリア:パリ市内
職場エリア:パリ市内
出身:パリ市内
使用する言語:英語、フランス語、イタリア語、スペイン語

富裕層向けのマーケティングが得意分野

パリ出身で旦那さまはイタリア人。娘のマーケティング会社を手伝っていて、富裕層向けの不動産やアートの手配もしています。
言語は4か国語話すことができあらゆる対応が可能です。クリスチャンラクロアなどのファッション業界で仕事をした経験があります。
マーケティングは、高級ブランドや富裕層向けのブランディングなどが専門としている。趣味としては、現代アートやポエムなどが好きです。

生活スタイル

得意料理で友人との夕食会

健康面では、特別な運動をするわけではありませんが、毎日45分は歩きます。
パスタやグラタンのようなフランス料理が得意で、自宅に友人たちを招待して夕食会をよくします。ノルマンディ在住のバレー振付師のPatrice Bartが親友で、このような方々がパリに来るたびに一緒に食事をしています。
睡眠は大体7時間くらいとっています。夜は23時には就寝して、朝6時くらいには起きて散歩をしたりします。時には3時くらいに起きて本を読んだりすることもあります。
仕事は休みはほとんどなく、ほぼ毎日働いています。たまの休暇にはTintorettoの個展を観に行ったりします。先月はたまたま5日間休みが取れたのでベネチアに行ってきました。

少ない友人と深い付き合い

友人は少ないですが、とても仲が良いです。バレーの振付師や作家などの友人もいます。
パリには10人程度の友人ですが、イタリア、モロッコ、ジュネーブ、ビアリッツ、ニューヨークなどにも親しい友人がいます。パリで友人と出かけるときは、食事をしたり、映画を観に行ったりします。
ギフトを贈るのが大好きでいつも友人や家族に贈っています。友人には、本、香水、化粧品などを贈ります。そこまで高級なものではなく、50~60ユーロくらいのものを贈っています。

住居の印象

調度品は夫婦で話し合って購入

家にある調度品などは全て旦那様と二人で話し合って購入しています。アンティークの家具やインテリアもよく購入しています。
小テーブルは、Eileen Grayでダイニングの椅子は、Toni Facella Sensi Architec。プッチのスカーフを購入してGarouste&Bonettiの椅子のカバーを製作しました。

買い物について

地元産の鮮度の良いものを

ファッションはVogueやElleを購読していて、よいものがあれば買いに行きます。特にシンプルなものがすきで、品質を重視しています。イタリアのファッションは知的なデザインで品質も良いのでFendiやGucci、Loro Pianaなどを特に好んでいます。フランスにはないものを着たり身に着けたりしたいので、モンターニュ通りには好んで行きます。
食品は、ボンマルシェで購入。オーガニックだけに拘っているわけではないですが、なるべく新鮮な地元のものを購入しています。
飲みに行くのは、雰囲気が好きなためホテルのバーが多いです。古い建築物に新しいインテリアの融合も良く、お客さんもおしゃれな人が多いです。ディナーはサンジェルマンに行くことが多いです。

情報収集方法

新聞・TVが情報源

情報は主に新聞とTVで収集している。新聞はル・モンド紙。TVはBFM局もしくはRAI局を主に観ます。
インターネットはあまり得意ではないので、SNSはほとんどしません。Whatsappだけは使用しています。

日本文化・企業に関して

日本文化には非常に興味がある

日本食は寿司が大好きで、オペラやサンジェルマンの和食レストランには時々行きます。
日本の映画が好きで、監督としては、黒澤明、小津安二郎、北野武が好きです。日本の女優は知的で繊細に感じており、それを映画で見るのが楽しみです。日本映画が上映されるときはいつも観に行っています。
小説もたまに読みます。三島由紀夫がとても好きで、村上春樹も読んでいます。日本の哲学を知ることが出来て面白いです。
日本には3回行ったことがあるが、東京のみのため、今年の結婚50周年には、春に夫婦で東京以外にも京都にも行きたいと考えています。特に桜がみたいです。
日本の製品については、工業製品はドイツ製より品質や性能は少し良いと感じます。日本のアートも好きで、陶器や現代アートにも興味があります。以前にオフィスに盆栽も飾っていました。

成功者、富裕層の定義

成功者とは、目標と情熱を持って物事に取り組んでいる人。そうすれば運もやってくる。お金のために仕事をするのではなく、情熱をもって仕事をすることが大事だと私は思います。
フランスでは、富裕層は企業家が多いと思います。歴史的な元々のお金持ちもまだいることはいるが、年々少なくなってきていると感じています。

人生で最も大切なもの

家族です。家族は人生の基盤となるものであり、家族はお互いに支えあうものであると考えています。

カゼル氏の御用達お店~メゾン デュ サケ(Maison du Sake)

店名 : メゾン デュ サケ(Maison du Sake)
担当 : Youlin Ly
所在地 : 11 Rue du Pont Louis-Philippe, 75004 Paris
営業時間:火~土11:00~15:00、18:00〜0:00
ウェブサイト:https://www.lamaisondusake.com/

インプレッション

パリ中心地4区に位置するモダンなバーレストラン。最寄駅はEttiene Marcel。この付近には服のセレクトショップ多く、若者と観光客に人気のスポットです。店のガラスにはオリジナルのお猪口をモチーフにした家紋が大きくプリントされており、明るく目を引きます。窓越しからも並べられている日本酒が良く見えます。店内は真新しく清潔でお酒を販売するブティックとレストランと二つのエリアに分かれており、一見ただの販売店だがブティック奥に進むと大きなバーカウンターとダイニングのある落ち着いた雰囲気のバーレストランがります。スタッフも日本語対応可能。

お店の概要

パリで日本酒を飲むならここ

「レストラン・ブティック」というコンセプトの2016年にオープンした日本酒専門店。お店のオーナーで日本酒のエキスパートでもあるYoulin Lyさんが日本全国を回り厳選した20種類以上の日本酒が置いてある。大の日本通であり、フランスにおける日本食関連のデベロッパーとして有名なYoulinさんは、日本酒の奥深さにはワインに精通するものがありフランス人にもっと受け入れてもらえるポテンシャルがあるという思いから、本物志向の日本酒をパリジャンに広める場所としてお店をオープンしました。バーレストランは日本の「居酒屋」をイメージして営業している。
日本の居酒屋の様なお酒に合うメニューを提供しています。基本的にはコースメニューだけですが日本酒にあった日本料理を日本人シェフの北村啓太氏が手がけます。日本でいう一般的な居酒屋というよりは高級居酒屋よりのコンセプトとのこと。

顧客

パリの日本酒ブームの火付け役

顧客の殆どはフランス人ですが、観光客にも人気になってきています。客層はカップルが大半を占めるそうです。日本酒はここ数年少しづつではあるがパリジャンたちに浸透し始めています。しかしやはりパリジャンたちにとってのディナーのお供の定番はワインであり、日本酒で食事をする楽しみ自体はしらに人が多いです。なので日本酒は料理に

流行に敏感な富裕層がターゲット

単価はコースメニューのみで昼が55ユーロ、夜が85ユーロと120ユーロから選択できます。一般的にパリのレストランよりかは高めの値段設定ですが、常に満席とのこと。今はパリの富裕層が顧客です。また、ブティックにお酒を買いに来る人の単価は50ユーロほど。レストランは常に満席なので早めの予約が必要とのこと。

品揃え

選び抜かれた日本酒は定期的に変更

オープン当初は150種類置いてあった日本酒もマーケティングのため20種まで絞り、今は適度に入れ替えながら厳選しています。年に3回ほど日本酒の買い付けのため全国を回り最近は「個性の強い日本酒」を多く扱いたいと考えています。市場に出回っているものではなく、自分の足で生産者に会いに行って気に入ったものを買い付けてます。日本のウイスキーも汝窯が高いことから扱っており、自社サイトでオンラインショップも展開していてフランス各地からここでしか手に入らない日本酒、ウイスキーの注文を受けます。

宣伝方法

口コミや各種メディアで評判

facebookやインスタグラムなどSNSなどの利用はしているが主には自社サイトで新商品やシェフのメニューなどの情報などを随時更新しています。頻繁に雑誌等の取材を受け、評判は口コミで広がり今では大人気店になりました。

カゼル氏の御用達お店~ボンマルシェ(Bon Marché)

店名 : ボンマルシェ(Bon Marché)
所在地 : 24 Rue de Sèvres, 75007 Paris
営業時間:月~日 10:00~22:00、
ウェブサイト:https://www.24sevres.com/fr-be/le-bon-marche
担当:Anne-Catherine Grimal, Directeur Communication

インプレッション

セーヌ川左岸部にある唯一の百貨店

ボンマルシェは7区の観光地の真ん中にあります。界隈は富裕層が住んでいる地域で百貨店の近くには大手高級ブランドブティックが沢山あります。現在の店舗は1869年に出来たもので厳かな外観には高級感があります。厳選されたミドルからハイブランドの店舗が立ち並び、観光客も多く来ます。食品ゾーンでは高級なチョコや塩トリュフなども扱っており、グルメ御用達の買い物スポットでもあります。

お店の概要

世界最古の百貨店

1852年にフランス人のブシコー夫妻によって創業された世界最古のデパートメントストア。もともとは帽子屋であったブシコー氏は小売店をまとめることによって商売の効率化を測ろうと考えて1838年に最初の複合百貨店のボンマルシェを設立する。この商法は当時のフランスに革命を与え、その後たくさんの百貨店が出来ます。数ある百貨店の中でもボンマルシェは先駆者として、その歴史とセンスから多くの支持を地元民から集めています。

生活に驚きを

「生活はアート」をコンセプトの元セレクションされた衣類、コスメ、雑貨、食品はボンマルシェの目利きバイヤーによってセレクトされたものです。このセレクションはより新しいもの、珍しいものを選出することによって他の百貨店とは違うラインナップになっています。購買担当のキューレンションによって厳選されたブランドがボンマルシェの強みでもあります。小さいブランドから大きいブランドまで幅広いセレクションの中で顧客に「驚き」を与えることを常に意識しています。本物志向のパリジャンや富裕層観光客が主なターゲットになります。

顧客

フランス人から愛される百貨店

客層はパリ市内の富裕層が過半数を占めています。客の割合は60%がフランス人で残りの40%が観光客。この数字は意図しているもので「フランスのデパート」というイメージを大切にしているという理由から、常に一定数のフランス人を集客するように意識しているそうだ。海外から来た観光客にフランスで買い物をしていると思わせるための演出です。

あらゆる客層とニーズに対応

様々な顧客に対応できるよう店内には散髪、レストラン・カフェ、ネイルバー、医務室、パーソナルショッパー(無料)、スタイリスト(150ユーロ)、託児アトリエなどが完備されています。どんな人でもこの空間を満喫してもらうために様々な需要に応えられるようにしています。

ニッチな商品を買い求めに来る客

独自のセレクションは富裕層の中でもこだわりを持つ人に受けます。他の百貨店ではないような尖ったセレクションを信頼、支持するパリジャンも多く。「とりあえずボンマルシェに行けば何か面白いものが見つかる」と頻繁に商品の入れ替えを見に来るそうです。

品揃え

新しい商品を常に探していて、入れ替えも頻繁することを心がけている 

買い付けの場は、インスタグラムのポストから、各国のあらゆる展示やサロン、人に驚きを与えられる商品を常に探しています。また売り込みにより選ぶことも稀にですがあります。顧客の70%がボンマルシェの選ぶものに関心を持って足を運んでくる事からセレクションの信頼性が高く、店自体のブランディングも常に維持できるように努めています。

ボンマルシェ限定「カプセルブランド」 

取り扱ってるブランドのデザイナーとコラボレーションすることによってボン・マルシェ限定の他では手に入らない商品を販売。この抱き合わせをボンマルシェでは「カプセルブランド」と呼んでいます。日本のブランドではSACAIなどがボンマルシェとコラボレーションした商品を出しました。

宣伝方法

話題作りが重要

5年前より1月のセール期間の後に1人アーティストを呼んで店の装飾のディレクションを任せるというイベントがあり、一昨年はベルリン在住の日本人アーティストの塩田千春が店のデコレーションを手掛けました。9月には毎年1カ国をテーマにした展示があり、4年前は日本がテーマで行われています。ファッションウィークに合わせて開催されるイベントもあり、去年はボンマルシェにある全ブランドが自社のロゴが刻印されたプロダクト作る「Let’s go logo」という催しがあり、例えばシャネルはブランドロゴのついたサーフボードを展示したりしてました。またポップアップストアにも力を入れており年中トータルで250件ほど開催しています。イベントを打つことでそれ自体が話題なり、店舗に足を運んでもらうという形で顧客の反応を直で見れることは重要だそうだ。

SNSやメディア

情報をPRするためにSNSとプレスを活用。サイトやSNSのページでは随時お店の情報を更新しています。テレビ、雑誌などのメディア取材も多く、日本の朝日新聞からも先日取材を受けたばかりとの事。