みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

職業:ファッションブランドオーナー・デザイナー Robinson Les Bains
年齢:49歳
家族構成:パートナーと2人暮らし
出身:オーヴェルニュ
自宅エリア:パリ10区

独学でデザインの世界へ

農業が盛んなフランス中心部のAuvergne地方出身です。ビジネススクールで経営を学んだのちに美大でアートの勉強を始めました。もともとアートや服が興味があり自分で何かを作りたいという強い思いがありファッション業界に進みました。エルメスでプロダクトマネージャーとして働き始め、その後もニューヨークに移りエルメスでプロモーションを担当していました。アートと建築に関心があり、自分のデザインをしたいという思いから、独学でデザインの勉強もしました。2012年には自身の男性用水着ブランドRobinson Les Bainsを設立し経営もしていますが、アートディレクション、プロダクトデザインの仕事も並行して行っています。

ファッションブランド設立

念願叶って自らの男性ファッションブランドRue Begandを2018年に立ち上げ、10月にパリ市内3区にあるシャルロ通りに店舗をオープンしました。Rue Begandは建築から強いインスピレーションを受け、毎シーズンある地名を選び、その場所に因んで服のデザインをするのがブランドのコンセプトです。建築という要素を服に合わせる際に特定の場所にある建物や都市構造をモチーフにデザインをしています。コレクションごとに様々な地域をコンセプトにデザインに挑戦するのがこのブランドを立ち上げた目的です。
ターゲットは品質重視の25歳以上の男性。価格帯はT–シャツで100ユーロ前後、アウターで350–550ユーロ。全てはトロワにある自社工場で製造し、全22カ国へ輸出販売、日本ではユナイテッドアローズやビームスでも販売しています。

生活スタイル

働くモチベーションは休暇と旅行のため

健康には一番気を使い、休みの日はジム、ヨガ、サイクリングなど体を動かすようにしています。食生活にも気を使っており、あまり赤身の肉を取らず野菜、魚中心の食生活を心がけています。長期休暇は海外で過ごすことが多く、年に一度はスペインで購入したタウンハウスでパートナーとバカンスを過ごします。若い頃から海外旅行が好きで中でも日本は大好きで出張を含め6回行ったことがあります。家族や友人達と過ごす時間を最も大切し、月に一回は自宅で人を招いて会食をするようにしています。その時は趣味でもある料理を振る舞うのですが、その時は日本料理を振る舞うこともあります。調理器具にもこだわりがあり、日本の包丁や、四角い卵焼き用フライパンまで常備していますね。映画好きであり、家のすぐ近くに小さな映画館もあることから毎週一度は映画館で映画を見るようにしています。

買い物について

自分だけでなく人にギフトを贈るのも好き

人に招かれた際は花、ワイン、チョコレートなど、お誕生日などにはアクセサリーや靴や鞄などをあげることが多いです。自分のためはもちろん人のために何かを選ぶことが好きですね。人に贈るものに自分のこだわりを見せるのは常に意識しています。ものを買うときの基準はあまり値段を見ないことです。自分の目で品定めをして良いものであれば高価なものであっても買いますね。デパートなどはあまり好きではなく、どうせ買うなら人と被らないような特別なものを送りたいし、選びたいからです。自分の為に購入した一番高い物は日本で一目惚れしたヴィンテージのロレックスの時計でした。食品は、BIOCOOPという近所のオーガニックショップで購入しています。自炊する際の食材はオーガニックのものを使うようにしています。」

情報収集方法

各国の情報を得るようにしている

ファッション、デザイン系の雑誌には目を通すようにしています。フランス国内のものだけでなく、イギリス、イタリア、日本の物もファッション、デザイン関係のコンテンツが充実しているのでチェックするようにしていますね。最近はテレビからNetflixやYouTubeに移行し自分の好きな情報を効率よく得るようにしています。ドラマは好きで頻繁に見ていますね。The handsmade taleというドラマシリーズに今は最も熱中しています。

SNSは情報収拾ツール

SNSはインスタグラムとFacebookをやっているが基本的には人の投稿を見たり情報を得るために活用していて自分から何かを投稿することはないですね。海外に多くいる知人とはWhatsappを使いコンタクトを取っています。

日本文化に対して

大の日本好き

ファッションブランドではVISVIMがお気に入りで日本に行く際は沢山購入します。無印良品とユニクロも品質とスタイルが良いから好んで着ています。もしこの世で1種類の料理しか食べられないとしたら、私は「日本食」と即答します。日本料理は最も好きで天ぷら、しゃぶしゃぶや懐石料理を日本に行った際には必ず食べる。日本の家具やキッチン用品も好きで愛用しています。日本のおもてなしの精神がとにかく好きで、ゆくゆくは日本にもっと足しげく通える環境を作りたいと考えています。

日本のファッション

ファッションブランドではVISVIMがお気に入りで日本に行く際は沢山購入します。無印良品とユニクロも品質とスタイルが良いから好んで着ています。日本のブランドは作りが良く何よりも生地の質がいいから良いブランドがいっぱいある。日本に行くたびにフランスではまだ知られていない良いブランドを毎回発見します。そんな日本のドメスティックブランドを取り扱う「Gaijin」という日本ブランドに特化したオンラインECサイトを友人が最近立ち上げたばかりです。自分も日本と関われるようなファッションビジネスの展開をしたいですね。自身のブランドでもフランスでは手に入らないような日本の変わった生地とか使ってみたいです。

成功者、富裕層の定義

健康が何よりも大事

成功者を定義するならば健康体でいることです。どんなに生活に満足していても不健康ではそれを感じることができません。全ては健康であって成り立つと思います。特に睡眠時間を確保できる生活は幸福と直結すると考えています。そのため忙しくても寝る時間だけは確保するようにしています。富裕層の価値観は人によって異なると思うので定義がむずかしい。お金そのものより、生活の質や時間の方が大事だと考えます。フランスでは格差が激しいので、分配できるものを分配するシェアの精神がもっと必要であると感じることがあります。

クリストフ氏の御用達のお店~エルボリストゥリ デュ パレ ロイヤル(Herboristerie du Palais Royal)

店名 : Herboristerie du Palais Royal (エルボリストゥリ デュ パレ ロイヤル)
所在地 : 11 Rue des Petits Champs, 75001 Paris
電話番号 :01 42 97 54 68
営業時間:月~土 10:00~19:00、
ウェブサイト:https://www.herboristerie.com/

インプレッション(印象)

パリの老舗薬草店

パリ9区のオペラ座近くの日本人街にお店を構える1904年に創業したハーブ(薬草)専門店。日本食屋やラーメン屋が軒を連ねる通りにあり、もちろん日本人も多いですがパリ中心街で観光客も多い地区です。飲食店が多めですが服飾関係などもあって店が連なり、どの時間帯でも人通りが絶えない場所です。店内はこじんまりとしていて、顧客の年齢層は高めです。

お店の概要

コンセプトは薬局とBIOショップの間

1972年に植物療法士であるMichel Pierre氏に引き継がれたことによって改名。薬草、漢方、エッセンシャルオイルなどの商品は全てオーガニックの物を扱っています。薬草を専門的に扱うお店はパリでも珍しく、メディアにもよく取り上げられる有名な薬草屋です。
従業員は薬剤師や植物療法士がいて薬局のようにカンセリング販売をしているのがこのお店の特徴です。体調の異変や悩みを言えばそれに適した商品を、用法を説明しながら勧めてもらえるので、自分にあったサプリメントやハーブを見つけることができます。さっぱりとした接客の多いパリにおいてスタッフの愛想が良く、距離感が近いことも好評で、常連客が多い。また自社で出版したMichel Pierre氏本人執筆の薬草をまとめた本も好評です。

顧客

地域の常連客から口コミで評判が広がり有名店に

客層は健康志向の常連客が多くを占め、あとは観光客もまとめ買いに来店します。梅屋かおりさんという日本人の店員さんがいて、日本語でも対応してもらえるため現地在住の日本人顧客もいるそう。平均の客単価は40ユーロ程度。勧められた商品を数点買っても、それぞれの商品単価がお手ごろのため客単価は低いですが、品質が良いためリピーターになる人が多いそう。2−3ヶ月程度のスパンで定期的に来店する常連客がほとんどのため、常連客を対象にサロンやイベントも定期的に開催しています。

品揃え

薬草や漢方から健康補助食品やコスメまで

バルク買した薬草を郊外の自社のラボで薬草をブレンドし、店舗でパッキング、販売していてこれがお店の目玉商品になります。中でもコルシカ産のバーベナが一番の人気商品とのこと。日本商品も扱っており、ゆずの精油などゆずを使用した商品は良く売れるとのこと。そのほかには蒟蒻のカプセル、ごま塩なども置いてあります。オンラインサイトでも商品を販売しているが、規制が厳しく輸出などは行なってません。ゆず系の商品は常に需要が高いので日本商品を探すとしたらやっぱりゆず製品が欲しいが他にも良いものがあれば扱ってみたい。

宣伝方法

facebook、instagramがメインでSNSを活用し宣伝している。WEBのPR担当がいるが最近はほとんど活動していません。重要な情報更新はサイト上で行なっています。しかし顧客のほとんどは口コミからの人だそうです。

クリストフ氏の御用達お店~ビオコープ・ダダ(Biocoop DADA)

店名 : ビオコープ・ダダ(Biocoop DADA)
担当者 : Mr Jean-Paul Juquin, Directeur, Biocoop DADA
所在地 : 29 Rue de Paradis, 75010 Paris
電話番号 : 01 40 79 43 51
営業時間:月~日 10:00~22:00、
ウェブサイト:https://www.biocoop.fr/magasins-bio/Trouver-mon-magasin-Biocoop/Ile-de-France/Paris/BIOCOOP-DADA

インプレッション

近所の人御用達ビオショップ

ショップパリ10区にある東駅付近のオフィス街にあるスーパーの Biocoop DADA。店内中央にある農作物売り場には木籠に入れられた大きさが不揃いの野菜がたくさん並べられています。パリに数多くあるビオ系スーパーでも野菜のディスプレイに力を入れています。周りがオフィス街であるためこの店舗では飲食できるスペースがあり、昼過ぎにはランチタイムで利用するビジネスマンで賑わいます。店員もとても愛想がよく店の雰囲気がすごく良いです。

お店の概要

フランスで最初にできたオーガニック専門チェーン

以前からのオーガニックブームによりフランスではビオ系のスーパーがここ数年でさらに大きく展開しています。オーガニックスーパーのチェーンはフランスだけではなくヨーロッパ全土で展開していて、その中でもBiocoopはフランス国内に330店舗ある最大手です。しかし各店舗フランチャイズではなく店舗ごとに独立しており購買する品の選択権はオーナーにあるという少し変わったシステムを採用しています。グループで共有している仕入れ先のプラットフォームはあるが、特に農作物などはオーナー自身が見つけた地域の生産者から買うお店も多いのだとか。お店の名前も今回取材した「DADA」のようにBiocoopの後に各店舗固有の名前が付けることによって差別化を図っています。グループを介して共通の理念などはあるが店舗によってコンセプトは違うのですべてのBiocoopの店舗が共有するマニュアルはなく、各々の店がそこの店長の哲学に沿った経営をしています。

顧客

フランスにおけるビオショップユーザー

フランス国内のオーガニック食品の消費者は全体の約60パーセントに上ると言われて現在では過半数を超えています。その中の年齢層は26歳から55歳とのことで60代を超えた層にはあまり届いておらず、オーガニック製品へと手が伸びない傾向があるそうです。フランス各所のデータではなく多くのオーガニック食品ユーザーはパリ市内に住んでいて、オーガニック食品ブームはフランス全土もそうではあるがとりわけパリで起こっている現象です。消費者の80パーセント近くが女性で美容や健康の観点からオーガニック食品ユーザーになるそうです。

コンセプトは「近所のDADA」

地域の人が簡単に活用できる便利な存在でありたいとの事。客層は近所に住んでいる人、また近くのオフィスで働いてる人が休憩や帰りの買い物に利用しているそうです。また農作物に関しては充実した品揃えがあり、信頼できる生産者の野菜や果物を求めてくる顧客も一定数います。ベジタリアンの客層も多く、グループ全体の理念としても少しづつ動物性の商品を減らす意向だ。

品揃え

全商品BIOを徹底 

フランスではオーガニックショップを名乗るための取り決めとして、店内で扱う95%の商品をオーガニックにしなければならないそうです。しかしDADAでは常に100%の商品がオーガニックであることを誇っています。他のビオショップでも徹底しているところは珍しいとのこと。特に農産物には力をいれており、他のオーガニックショップでは手に入らない珍しいものを仕入れるようにしている。2018には日本大使館監修のもと日本の農業をPRするために日本の農作物を1ヶ月テスト販売しました。日本の農作物はパリでは好評だったが、地方の店舗では全く売れなかったそうです。日本の商品には関心があり、抹茶や柚子系の商品をもっと増やしていきたい。

宣伝方法

主に宣伝活動はしていません。現在、店舗としては特に何もしておらず、これ以上の集客を目指すつもりはないそうです。