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EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編②-ピーター・コンラッド氏-)

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 みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
 なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

ピーター・コンラッド氏(Mr. Peter Conrad)

プロフィール

氏名:ピーター・コンラッド(Peter Conrad)
年齢:50歳
職業:金融コンサルタント
家族構成:独身
自宅エリア:サメーダン
職場エリア:ルガーノ、ミラノなど。
住居の間取り:賃貸マンション、2LDK
車所有台数:2台、ボルボ(Volvo)とメルセデス(Mercedes)
使用する言語:イタリア語、ドイツ語、フランス語、英語、日本語

長年に渡り、世界の UBS で活躍

 出身は、スイスドイツ語圏のゾロトゥン州です。ミラノの経済大学を卒業後、UBSに勤務。長らく、海外を渡り歩いてきました。ミラノ(2003~05年)ではマネージング・ディレクター、香港(2006~08年)ではアジア太平洋のセールス部門トップ。モナコ(2008~11年)では、支店のCEOを務めました。
 その後、UBSのウェルス・マネジメントの中でも、金融資産50億円以上の超富裕層の顧客を担当するUHNW(Ultra High Net Worth)部門の責任者として、東京にやってきました。代官山を拠点に、5年間滞在。そこで日本と恋に落ちたんです。多くの友人に恵まれ、かけがえのない時間を過ごしました。今でも、日本を思い出さない日はないくらいですよ。

欧州の富裕層へ、資産管理をアドバイス

 2015年に、スイスへ帰国。子どものころに家族の別荘があったサメーダンにちょうどいい部屋が見つかったので、ここに落ち着くことにしたんです。山に囲まれた自然豊かな場所で、趣味であるスキーや山登り、マウンテンバイクなどの野外スポーツを楽しんでいます。
 現在は、「ウェルスメットリスク(WealthmetRisk SA)」と「ツヴァイ・ウェルス・エキスパーツ・イタリア(ZWEI Wealth Experts Italia)」の両企業のCEOとして、スイスイタリア語圏のルガーノや、イタリアのミラノを中心に活動しています。金融コンサルタントとして働く中で得たプライベートバンキングの知識を存分に生かしながら、ヨーロッパの富裕層ファミリーに総合的なフィナンシャルアドバイスを行っています。

生活スタイル

週の半分はホテル暮らし、半分は自宅

 私のライフスタイルのテーマは、「フレキシビリティ」。常に動いているのがモットーです。持ち物もできるだけ少なく。スーツケース1個に収めるくらいの量が理想的ですね。
 週の前半(月~水曜日)は、ミラノやチューリッヒ、ルガーノ間を車で移動し、ホテルに滞在しています。週の後半(木~日曜日)は、サメ-ダンの自宅が拠点。移動の多い生活ですので、自宅の掃除や洗濯はハウスキーパーに頼んでいます。
 スイスでは、残業はほとんどありません。夕方からは皆、プライベートの時間をしっかり確保します。それでも、多くの人が成功しているわけですから、スイス人のワークライフバランスは優れていると感じます。

ヘルシーライフにこだわり、運動は欠かさず

 趣味は、ヘルシーであること。健康オタクといえるかな(笑)。父親の影響もあるかもしれませんね。運動はどの年代の人にとっても大事ですが、特に40代からはマストだと思います。年齢を重ねても仕事を続けていくためには、フィジカル面での充実が不可欠。「人生において健康ほど大事なものはない」というのが私の持論です。
 そのため、スポーツと食事、睡眠にはこだわっています。自宅にいるときはジョギングを欠かさず、ジムにも行きます。水泳やマウンテンバイク、山登りもしますよ。ホテルにいるときでも、何かしら運動をするように心がけています。

野菜中心の食事、睡眠もしっかり確保

 食事面では、炭水化物を減らし、野菜を多く摂るようにしています。イタリアンを作るのは好きですが、パスタの量は減らしています。外食でも、ファストフードのチェーン店にはまず行かないですね。
 1日の献立のイメージとしては、朝は、フレッシュジュースやスムージーと野菜。昼は軽めに、サラダやサンドイッチ。パンは、ダークブレッドを選びます。夜は、魚や肉といったプロテインを多く含む食材と野菜、といった感じです。もちろん、いつもストイックなわけではなく、ワインと共においしい食事を楽しむこともありますよ。ただ、時には制限も必要だということです。
 睡眠時間は、常に6~7.5時間をキープしています。日本では睡眠時間を削って働く人も多いですが、睡眠を甘く見てはいけません。1日の気分や活力に大きく影響するからです。

週末は自宅でゆっくり、交友関係は幅広く

 週末は、サメ-ダンの自宅にいることが多いですね。このあたりは皆がホリデーに来るような場所ですから、改めてどこかに出かけようとはあまり思わないんです。スポーツやウェルネス、スパなどが主な過ごし方。もし出かけるとしたら、ロンドンなど、ここと正反対の都会を選ぶでしょうね。
 交友関係は、金融の仕事関係で得た同世代のつながりや、中学校時代の友人などで、インターナショナルです。若者との交流も大事にしています。最近の人が考えていることは、私には想像もつかないことが多く、宇宙人みたいだと感じることも(笑)。でも、いい刺激になっていますよ。

住居の印象 

富裕層の多いエリアで、絶景ポイントに住む

 サメ-ダンは、世界的に有名な観光地サンモリッツの近くにあり、富裕層も多いエリアです。イタリアやドイツ、フランスやロシアの富豪が、プライベートジェットでやってくる飛行場(エンガディン空港)もあります。
 自宅マンションは、川に面し、対岸に美しい山並みが広がる絶好のロケーションにあります。リビングは全面ガラス張りで、自然のパノラマを堪能できます。脇の小さいスペースには、ベッドも設置。ここで朝目覚めたときに、目に入ってくる景色が最高なんです。そのほかには、ダイニングとキッチン、ベッドルーム、バスルームがあります。

思い出の品々を飾った、温かみのあるインテリア

 ダイニングの壁には、雪がちらつく冬の皇居のモノクロ写真を飾っています。東京に滞在していたときに、自分のデジタルカメラ(Canon EOS 6D)で撮りました。なかなか趣があるでしょう?これを見ていると、日本が懐かしくなりますね。
 テーブルの上には、様々な球を吊るしたモビールを。クリスマス関係のものが多いですが、実は通年で飾っているんです。友人の子どもが手作りした魚クラフトも一緒にね。自然素材のデコレーションが好きで、テラスや部屋のあちこちに置いたり。玄関の脇には、ヴェネツィアのゴンドラで使われていたアンティークの椅子もありますよ。

持ち物を拝見

物質よりも、精神性に惹かれる

 自宅にある日本製品としては、ソニーのテレビがありますね。あとは、ターコイズブルーのグラデーションが美しい陶器や、桜模様が散りばめられた「富士山グラス」と呼ばれるロックグラスも。こちらは、日本の友人からの贈り物です。キッチンには、日本の蕎麦もありますよ。
 日本のファンではありますが、物質的なものをそれほどたくさんコレクションしているわけではないんです。むしろ、日本の精神的な面や文化など、「目に見えないもの」に惹かれています。

買い物について

色々なお店を覗くのが好き

 自宅にあるダイニングテーブルや敷物、インテリア系の小物は地元サメ-ダンの店で購入しましたが、いつも同じ店ばかりに行くわけではなく、移動先で新しい店を覗くのも好きです。洋服は、安くて良いものが揃うミラノで買うことが多いかな。家具はスイス国内で調達しています。
 最近はインターネットで調べて価格などを比較することも増えましたが、やはり店舗に行って買う方がいいですね。オンラインショッピングは、積極的にはしていません。

高価かどうかよりも、テイストが大事

 これまでの人生で一番高い買い物は、チューリッヒで買ったロレックスの時計ですね。若いときにはポルシェなど高価なものを手に入れたりもしましたが、いまは特に値段にこだわらず、「気に入ったら買う」というスタンスです。
 高いからといって、必ずしもセンスが良いとは限らないというのがその理由です。日本のユニクロのように、安くても優れた製品もありますし。スウェーデンのイケアもリーズナブルなブランドですが、テイストが良ければOKです。

プレゼントには、珍しい品を

 友人へのプレゼントは、その人が今まで見たことのないようなものや、スイスでは手に入らないものを選ぶようにしています。
 例えば、イタリアでは、昔ながらのチョコレートショップで、様々な味のプラリネを包んでもらったり。同じくイタリア製品では、100年の歴史がある店のネクタイを日本の友人へ贈ったこともありますし、カプリ島特産のレモンを使った芳香剤(約3,000円)を購入したこともあります。
 南アフリカ旅行では、「アンバー・ジン(Amber Gin)」という現地でしか買えないお酒をバーで味見して、お土産にしたりもしました。友人に渡すときに由来を説明できるように、ストーリー性のあるものを選びたいと思っています。ただ、20年前と比べると、世界中で同じものが手に入りやすくなっていて、珍しいものを探すのは難しくなってきていますね。

クリスマスには、本を贈ることも

 クリスマスには、家族や友人とプレゼントを交換しています。友人には、大体1万円以内で品物を探すことが多いでしょうか。一昨年(2017年)のクリスマスには、英国製の古いガイドブック(約4,000円)を10人くらいの友人たちに配りました。約100年前の旅行ガイドを復刻して新しく印刷したもので、場所や広告などの情報は当時のままなんです。面白いでしょう?テレビで見たのをきっかけに、インターネットで探して見つけました。販売者がスイス国外でしたので、オンラインで購入して、自宅に配送してもらいました。

情報集め

世界の4大メディアのニュースをチェック

 毎朝コーヒーを飲みながら、世界各地のニュースサイトをチェックしています。1日で合計3時間くらい費やしているかもしれません。まずはアメリカのCNN、それからイギリスのBBC、スイスのSRFと続きます。日本のNHKも見ますよ。1つに限らず色々見て、各媒体の伝え方を比較するんです。
 以前はインテリア雑誌など、紙媒体のものも見ていましたが、最近はオンラインでのチェックがメインになりました。情報の量も膨大ですし、より新しいものが載っていますから。新聞も買わなくなりましたね。テレビは、ドキュメンタリー番組を中心に見ています。

SNSはインスタ、リンクトインを利用

 SNSの利用は、以前より減ってきています。私はフェイスブックより、インスタグラム派。ツイッターは読む専門です。ビジネスでは、リンクトインを活用しています。
 SNSの広まりと共に、世間には色々な意見があふれるようになりましたが、中にはそれほど重要ではない情報もあるのではないか…と感じたりすることもあります。私自身はちょっと日本人的で、自分の意見はあまり主張したくないタイプ。リンクトインにはそうした猥雑さがなく、「大人のフェイスブック」「プロフェッショナル用」というポジティブなイメージを持っています。

日本文化に対して

「わびさび」や「気配り」の文化に感動

 日本にいたときは、軽井沢や箱根、長野、名古屋、関西地方や福岡にもよく行きました。買い物では「とらや」の和菓子や、モダンなデザインの家具がお気に入り。特に和菓子の包装は、風呂敷包みなど、季節に合わせて変える細やかな気配りに、いつも感動していました。
 日本文化で好きなのは、「わびさび」「気配り」「建て前」です。自分が大事で、すべてを論理で打破しようとする、ダイレクトなヨーロッパ文化にはないもの。日本の金継ぎの技法に代表されるように、壊れたものを美しく修復して「不完全の美」を感じる心も素晴らしいと思います。
 スイス人とは、真面目さや謙虚さ、静かなところが似ているでしょうか。時間に正確であることも同じかな。国民性が似ているからか、スイス製の商品もクオリティが高く、世界中の人たちから信頼されているものが多いですね。

ラジオで日本を語り、日本映画も視聴

 日本に滞在した経験を生かし、スイスのラジオ局で月1回、日本事情について話しています。最近扱ったテーマは、「天皇」や「アンドロイド」など。日本の文化や精神性を説明できるようなトピックを取り上げることが多いですね。
 例えば、アンドロイドの回では、「本音と建て前」を紹介しました。日本がロボット先進国である理由として、直接的ではないコミュニケーションをとることの多い国民性も関係しているのではないかと。こうした私なりの分析も入れながら、お話ししています。
 日本語のブラッシュアップのために、映画もよく見ています。お気に入りの映画監督は黒澤明ですが、最近の日本映画もチェックしていますよ。先日は、itunesでダウンロードした「箱入り息子の恋(2013)」を見ました。この話も、日本ならではの恋愛事情がテーマになっていますね。

「メイド・イン・ジャパン」は、欧州では信頼の証

 ヨーロッパにおける日本のイメージは良く、「メイド・イン・ジャパン」であることは「信頼の証」であるともいえるでしょう。また、こちらの人々は「ハイクオリティ」という言葉に弱い。「高品質」「ビオ(有機)」「ハンドメイド」など、そうしたものに市場(マーケット)があります。
 建築や家具、ファッションなどに現れる日本のデザインや酒など、「メイド・イン・ジャパン」印で売れるものはたくさんあるはずです。スイスでも既に、日本酒やウィスキーが注目されています。日本食レストランも以前から流行っていましたが、最近では寿司よりも懐石の人気が高まっています。

成功者、富裕層の定義

成功者には才能と根気、富裕層は多種多様

 成功者には、他の人が気づいていない事を思いつく才能と、あきらめない粘り強さがあると思います。富裕層には色々な人々がいるので、一概には言えませんが…。ただ、プライベートバンキングの仕事をしていて感じるのは、ある程度の金額を超えると、お金は現実から離れて、抽象的な存在になるということ。100億円を超えるような額は、想像することすら難しいですよね。
 そうすると、人は金額ではなく、将来的に意味のあるプロジェクトや社会貢献にフォーカスするようになります。例えばビル・ゲイツがそう。新興富裕層である中国やロシアの人々が、キラキラしたものに目を奪われがちであるのと比べると、富裕層によっても違いがあることが分かるのではないでしょうか。

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