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EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編③-アーニャ・グラフ氏-)

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 みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
 なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

アーニャ・グラフ氏(Ms. Anja Graf)

プロフィール

氏名:アーニャ・グラフ(Anja Graf)
年齢:40歳代
職業:起業家(不動産業)
家族構成:パートナーあり、子ども4人
自宅エリア:チューリッヒ市内
職場エリア:チューリッヒ市内
住居の間取り:ヴィラ所有、12部屋
車所有台数:1台、メルセデス(Mercedes)
使用する言語:ドイツ語、英語、フランス語、スペイン語、ポーランド語

13歳でモデルエージェンシーを設立

 チューリッヒ近郊の都市ウィンタートゥール出身です。父親は会社CEO、母親は主婦という家庭で育ちました。父親は多忙で不在がちでしたし、親から何か積極的なインプットがあったわけではありませんが、自分で何か物事を作り出すのが好きな子どもでしたね。新聞を作ったりしたこともありますよ。
 13歳のときには、年長の友人3人と共にモデルエージェンシーを設立しました。音楽や運動が得意だったので、いったんは教育系高校に進学。でも、モデルエージェンシーの仕事をするうちに興味が変わり、経済系高校へ編入しました。勉強は面白かったのですが、学業と仕事の両立が難しく、結局18歳で中退することに。友人たちも事業から離れたため、このときから経営者として1人でやっていくことになりました。

20歳でサービスアパートメント業を開始

 東欧から呼んだモデル達の滞在先を探すうち、自分でアパートを借りることを思いつきました。スイスのホテルは高いですからね。リサイクルショップで家具を購入し、部屋の内装をととのえて貸し出したところ、クレディ・スイスなどの大手企業からも声がかかり、需要が高いことが判明したんです。
 そこで、本格的にサービスアパートメント業に乗り出しました。ちょうど20歳のときです。最初は、25部屋からスタート。2年後には、父親が私の事業に理解を示し、100万フラン(約1億円)の資金を提供してくれました。それを元手に、チューリッヒ中央駅近くにビルを購入。1999年に、「ヴィジョンアパートメンツ(VISIONAPARTMENTS)」を設立したんです。

現在はスイス主要都市のほか、欧州へも進出

 便利なロケーション、美しいインテリアスタイル、クリーニングなどのサービスを兼ね備えたレンタルアパートメントは当時珍しく、事業は順調に滑り出しました。2007年にはスイス・フランス語圏のローザンヌ、2009年にはドイツのベルリンやフランクフルト、オーストリアのウィーンなど、国外へも進出しています。
 現在は、欧州10都市に1,800部屋以上を保有。社員は2018年現在200人以上おり、顧客サポートや会計・IT関係は、ポーランドのオフィスが担当しています。

スタイリッシュなインテリアデザインが特徴

 アパートメント事業ではインテリアデザインに特にこだわっており、専属のデザイナーや建築家、建設チームが、様々なコンセプトの部屋を作り上げています。現在、バーゼルでは、日本にインスピレーションを受けた部屋も準備中なんですよ。床にクッションを敷いて座るスタイルで、桜のモチーフなどを取り入れる予定です。
 また、「リビングホテル(LIVINGHOTEL)」というプロジェクトも、スイス・フランス語圏のヴェヴェイで進行中。個々の部屋はホテル並みのスペースですが、キッチンやラウンジ、オフィスなどのシェアスペースを兼ね備えており、他のゲストとも交流しやすくなるのが利点です。今後も、世界を駆け巡るビジネスマンの多様なニーズに応えていきたいと思っています。

生活スタイル

経営者として、欧州を飛び回る生活

 週の前半(月~水曜日)は、自宅から車で約10分の距離にあるオフィスに出勤します。マネージャーやIT関係者とのミーティングがメインですね。週の後半(木~金曜日)は、新規プロジェクトが進行中の都市や、バックオフィスのあるポーランド、新たなサポートセンターを設置する予定のルーマニアなど、ヨーロッパ各地へ出張しています。
 週末は、現在のパートナーが住んでいるポーランドで過ごすことも多いです。日々あちこちに移動しているため、趣味は旅行といえるかもしれませんね。出張先でもホテルに閉じこもるのではなく、街に出て、ローカルの人たちと会うことを大事にしています。その土地の文化や、人々の暮らしに興味があるんです。

家事は家政婦に任せ、育児は交代で

 このように移動の多い生活ですので、自宅の家事は、住み込みの家政婦に任せています。彼女が週2回チューリッヒのマーケットに出かけ、新鮮で良質な食材を買い、子どもたちのために調理してくれています。ポルトガル人の彼女は、とっても料理上手。ソースなどもすべて手作りなんですよ。
 4人の子どもたちのうち、3人はインターナショナルスクール、末っ子は現地の幼稚園に通っています。育児は、彼らの父親たちと交代で担当し、常にどちらかが家にいるようにしています。子どもたちがいるから、仕事も頑張れる。彼らは、私の人生で一番大切な存在です。

休暇は、スペインとスイスに所有する別荘に

 仕事で忙しい日々を送っているので、残念ながら、友人にはなかなか会えませんね。事業を通して知り合った社長たちとは、コーヒーを飲みながら情報交換したりしています。学生時代の友人は女性が多く、子どもがいる人も多いですね。成功している人もいれば、難しい状況にある人もいたり、色々です。
 休暇は、子どもたちの学校の休みに合わせて、夏はスペインのイビサ島、冬はスイスのサンモリッツで過ごします。それぞれの場所に別荘を持っているので、子どもたちの友人も呼んで、プールやスキーなどを楽しんでいます。普段忙しい分、毎年同じ場所に集まって、家族の思い出を積み重ねていくことが大事だと感じているんです。

住居の印象

閑静な高級住宅街に佇む、歴史あるヴィラ

 自宅は、チューリッヒ市内の中心部にほど近い、緑の多い静かな住宅街にあります。1年ほど前に、現在の家に引っ越してきました。このヴィラ、今世紀初頭には独身男性のシェアハウスだったようですが、その後はボリビアの領事が住んでいたといわれています。

 

 

 1階には、キッチンやダイニング、居間、ピアノのあるサロン、洗面所など。2階には、子どもたちの部屋や寝室があります。地下にはスイミングプール、ジム、サウナ、ラウンジも備えていますが、使う暇がなかなかないのが実情です。サウナはまだ入ったことがないんですよ。エレベーターもあります。
 外には芝生の庭もあり、子ども用のトランポリンなど、遊具を出しています。

持ち物を拝見

自社ブランドの家具や備品を使用

 仕事が忙しく、引っ越して間もないこともあり、自宅のインテリアを整える十分な時間がない、というのが正直なところなんです。そのため、主に弊社のサービスアパートメントで使用していた中古の家具や備品を使っています。
 例えば、このティーセットも自社でデザインしたもの。カップの底に、「V」のマークが入っているでしょう?こちらのターコイズブルーの石が入ったものは、ドバイで購入しました。あとは、洗面所のタオル類も、自社ブランドのものを使っています。

サロンにはピアノや長女の作品を

 サロンには、音楽好きの長女のため、スタインウェイ&サンズ(Steinway & Sons)のグランドピアノを置いています。壁に飾っている絵も、彼女が描いたもの。彼女によれば「まだ途中の状態」なのですが、なかなか仕上がらないので待ち切れずに飾っています。彼女は父親と共にジュネーブで暮らしており、インターナショナルスクールに通っています。アートが大好きで、近くニューヨークの大学に進学することが決まっているんですよ。

ダイニングには思い出の写真を飾って

 ダイニングの壁にかけてある風景写真は、有名な写真家のものというわけではなく、私が出張先や旅行先で撮ったものなんです。携帯のカメラで撮ったので、あまりいい画質ではありませんが、楽しかった時のことや、印象深い瞬間を思い出すことができます。廊下には、休暇の際に撮った家族写真も飾っていますよ。
 また、ダイニングテーブルの上の大きな照明は、友人でもある弊社のデザイナーがセレクトしてくれたもの。白い部分の大きさを変えたり、明るさも調節できたりするので、使い勝手もよく、気に入っています。

日本関係のものは、料理本

 自宅にある日本関係のものといえば、料理の本くらいでしょうか。現在進めているバーゼルの「ジャパン」プロジェクトで、桜モチーフのものなど気に入ったものがあれば、今後自宅にも置く可能性はありますね。

買い物について

自分の買い物は、出張中の空き時間に

 普段なかなか買い物をする時間が取れないので、出張先で街歩きをしながらショッピングすることが多いですね。自分の服も、大体旅の途中で買っています。空港やホテルにあるショップで購入することもありますよ。ミラノでは、「リッチモンド(RICHMOND)」のショップによく行きます。
 チューリッヒでは、高級デパート「イェルモリ(Jelmoli)」が行きつけのお店。世界中のブランドが揃っており、地下フロアには質の高いフードマーケットもあって、気に入っています。

プレゼント選びは、贈る人を思い浮かべて

 家族や友人へのプレゼントも、旅先で店を見ていて「ああ、これはあの人に合いそうだな」と感じたら購入する、という感じ。「6個必要だから、まとめて買っておこう」というようなスタンスではなく、必ず贈る人を思い浮かべて、それぞれに合う品物を選びます。
 できれば、相手が予想していないような物を贈りたいのですが、スイスの人達はもう既に色々な物を持っているので、プレゼント選びはなかなか難しいですね。
 子どもたちには、自転車や靴、洋服や趣味のものなど、必要なものをその都度買っています。

出張で使える実用品のプレゼントも

 私が頂いた物としては、FIFAに勤務している親友の女性から、ヘアオイルなど美容系の品物をもらったことがあります。彼女も1年の半分は海外出張という、多忙な生活を送っているんですよ。
 あるとき、私が「出張では荷物を少なくしたいから、クリームなどの化粧品類はたくさん持って行けないの。だから、ハンドクリームを髪の毛にも使っているのよ」なんて話していたら、「あなたのようなポジションの人が、そんなことをしていてはだめ!」と叱られてしまったんです(笑)。そして、旅行でも持ち運びしやすいオイルなどを色々プレゼントしてくれました。ありがたかったですね。

情報集め

ニュースはオンラインで、SNSは最小限に

 ビジネスのために、「シング(Xing)」というウェブサイトをチェックしています。情報収集はオンラインがメインで、紙媒体の新聞や雑誌、テレビはほとんど見ていません。
 SNSについていえば、ワッツアップは使っていますが、フェイスブックやインスタグラムはほとんど利用していません。インスタで友人たちの近況を見ていると、あっという間に30分くらいたってしまうでしょう。それでは時間がもったいないし、私は仕事でのプライオリティに集中したい。取材にしても、事業に関するものは受けますが、基本的にプライベートはあまり公開したくないというのが本音なんです。

日本文化に対して

日本のイメージは「トレンド」「ヘルシー」

 日本に対しては、「世界のトレンドセッターであり、食べ物がヘルシー。そして人々がよく働く」というイメージを持っています。
 2014年春の週末に、一度だけ東京に行ったことがあるんです。その際は、「マンダリンオリエンタル東京」に宿泊しました。ホテルから眺めた東京のスカイラインに圧倒されたのを、今でもよく覚えていますよ。

日本人のおもてなし、謙虚さに感動

 東京での滞在中は、サービスが素晴らしいと感じました。例えば、タクシーの運転手も、途中で降ろさずに最終目的地までちゃんと送り届けてくれたにも関わらず、チップを受け取らなかった。そうした面においても、日本人の仕事の正確さや謙虚さが現れており、感銘を受けました。
 また、スイス人とメンタリティーが似ていると感じます。特にフランス語圏の5つ星ホテルなどでは、日本のような温かいおもてなし文化がまだ残っているんですよ。一方で、チューリッヒを始めとするドイツ語圏は、人々の対応がもっとドライで、ちょっと残念に思っているんです。

次回は京都や田舎へも足をのばしたい

 この日本旅行は3日間と非常に短い滞在でしたので、次回は京都などの歴史ある都市や地方にも足をのばしてみたいですね。近未来的なホテルである「カプセルホテル」にも入ってみたい。実際にどんな感じなのか、興味があります。
 買い物をする時間もほとんど取れなかったので、次回はぜひ。購入するとしたら、自宅のインテリアやデコレーションに使えそうなものや、旅の思い出をよみがえらせるようなものでしょうか。日本製には限りませんが、絵やランプ、カーペットなどにも興味があります。

ヘルシーでライトな日本食のファン

 日本食やアジアンフードは好きで、普段もよく食べています。オフィスのあるビルの1階に入っている、日本食レストラン「エドマエ(Edomae)」でランチをすることも多いですね。魚や肉がのった丼物や、「手織り寿司」という自分で巻く寿司のスタイルが好きです。味噌汁や枝豆も、おいしいですよね。
 また、チューリッヒ中央駅前にある「サラ・オブ・トーキョー(Sala of Tokyo)」の炉端焼きも気に入っています。シンプルに焼くのが、ヘルシーでいいなと感じます。スイスではバターソースやクリームソースをかけた、カロリーの高い料理が多く、苦手なんです。子どもたちも日本食が好きなので、よくケータリングを頼んでいますよ。

成功者、富裕層の定義

成功者には、「明確なヴィジョン」がある

 成功者には、エネルギッシュな人が多いと感じます。モチベーションも高く、新しいアイディアを色々持っていて、常に次のことを考えています。また、自らのライフスタイルが確立されている人も多いですね。
 富裕層はお金持ちではありますが、だからといって皆がそのお金を、意味のあるやり方で使っているとは限りませんよね。ただの「消費者」である富裕層も、少なからず存在していると思います。そうした点が、成功者とはまた違うのではないでしょうか。

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