スイス

EUの富裕層へ向けた日本製品進出可能性調査レポート(スイス編①-シュテファン・ラインハート氏-)

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 みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
 なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

シュテファン・ラインハート氏(Mr. Stephan Reinhardt)

プロフィール

氏名:シュテファン・ラインハート(Stephan Reinhardt)
年齢:50歳代
職業:弁護士
家族構成:パートナー(フィアンセ)あり
自宅エリア:チューリッヒ市内
職場エリア:チューリッヒ市内
住居の間取り:賃貸マンション、1LDK(自慢のバルコニーとストレージ有り)
車所有台数:1台、ボルボ(Volvo)
使用する言語:ドイツ語、英語、フランス語、スペイン語、オランダ語

世界中を転々とした幼少期

 私はスイスのバーゼル生まれですが、父親の仕事の関係で、子ども時代のほとんどを外国で過ごしました。当時のスイス人としては、ちょっとユニークかもしれませんね。父が石油会社勤務だったので、オランダ、ブルネイ、ガボン、スペインを転々としました。10代で初めてスイスに来て、ツークにあるボーディングスクール(寄宿学校)に入学したんです。
 それまではインターナショナルスクールで、英語がほぼ母国語のような感覚で育ったので、ボーディングスクールのスイスのお金持ちの生徒たちとはあまり馴染めませんでした。でも同じような友達と、クラッシュやスミスなどイギリスのロックバンドを聴いて過ごしていました。空手に出会ったのもこの頃。個人スポーツなのが、自分の性分に合っていたようです。

防衛・警察関係でキャリアを積む

 その後、バーゼル大学の法学部を卒業し、弁護士資格を取得しました。就職先を探しているときに、スイス連邦防衛庁の面接担当の人柄に共感。語学力やアカデミックなバックグラウンドも生かせるということで、防衛分野に進むことにしました。NATOや国連の仕事で、ベルギーやアメリカにも滞在したことがありますよ。
 キャリアは順調で、アールガウ州警察庁のトップも務めましたが、46歳で公務員を引退しました。まだ若いうちに、新たな挑戦をしたいと思ったんです。自分の原点である「弁護士」に立ち返り、個人事務所を設立しました。弁護士のなかでは異色なこれまでの経験を生かし、リスクマネジメント分野に強い国際弁護士として、チューリッヒを拠点に活動しています。

生活スタイル

週5日勤務、趣味はスポーツ

 仕事内容としては、主に犯罪や交通、行政分野の法律に関わるケースを扱っていて、NGOや民間企業への法律アドバイスも行います。平日は、自分の事務所に車で出勤。事務所でのミーティングが多いですが、裁判所に出向いたり、スイス各地へ出張することもあります。
 仕事を終えた夕方5時からは、ジョギングをします。45分くらいかな。運動するのが好きなんです。警察時代はジムでリフティングなどもしていましたが、今は生活スタイルが違うのでもうしていません。その代わり自転車に乗ったり、自宅で週1~2回TRX(サスペンショントレーニング)をしています。値段も手ごろで使いやすい器具だし、冬が寒いスイスでは室内の運動に重宝しています。フィアンセもよく使っていますよ。
 睡眠は、大体7時間くらいでしょうか。仕事で座ることが多いので、パスタやポテトなどの炭水化物はなるべく控えています。あとは、ビオメッド(Biomed)というスイスの会社が出している、クロロフィルのサプリをとっています。

空手を35年、現在は指導員

 空手は10代から続けていて、黒帯3段です。週2~3回、チューリッヒ市内の道場に通い、指導員として教えています。生徒は、教師やビジネスマンが多いですね。空手を通じて出会った人達も多く、日系2世の友人もいますよ。
 私が通っている道場は、日本人の大島劼先生がアメリカで始めた「松濤館大島道場」のスイス・チューリッヒ支部にあたります。年会費は400フラン(約4万5千円)で、道場の場所代などにあてています。黒帯保持者は、さらに追加で170フラン(約2万円)支払い、ベルン本部での稽古や特別行事の費用をまかなっています。

休暇は、スイス国内でゆっくり

 週末は、夏なら自宅周辺で運動したり、友人とディナーをしたりすることが多いですね。友人は、性格やライフスタイルが自分とは異なり、世界各地に散らばっています。弁護士や銀行員、起業家が多いでしょうか。ちなみに、兄も海外在住なんですよ。アメリカのシアトルで、料理と翻訳の仕事をしています。
 人生で一番大切なのは、フィアンセです。彼女はドイツ出身。看護師なのでお互い多忙ですが、アパートもすぐ近くにあり、休暇も一緒に過ごしています。車で2時間くらいの山の中に別荘があるので、冬の週末は大体そこでスキーや散歩をすることが多いですね。
 外国に旅行することはあまりなく、年に1、2回電車でミラノに出かけるくらい。チューリッヒの自宅と、山の別荘の自然豊かな環境が気に入っているんです。

住居の印象

空手の免状がお出迎え

 自宅は、チューリッヒの中心部から北西の方へ、少し離れた地域にあります。緑もある落ち着いた住宅エリアで、街へ出るにも便利です。車だと、10分くらいでしょうか。私のアパートの部屋は最上階にあり、キッチン、バスルーム、ベッドルーム、リビング、バルコニーといった間取りです。
 玄関を入ってすぐの場所に、私の空手の免状コーナーがあります。大島先生直筆の免状は、もう手に入らないこともあって貴重であり、大事にしています。カタカナの名前入りの帯もありますよ。空手で使う型の名前や簡単な数字は知っていますが、日本語の文章を読むのは難しいですね。

大好きなカルチャー系の品々

 リビングの壁には、オアシスやラモーンズなど、好きなバンドのポスターを飾っています。大切なレコードは、棚の引き出しの中に。音楽は人生の一部として欠かせない存在で、若い頃はウォークマンを肌身離さず持っていました。アメリカの空軍ラジオから、新しいバンドを知ったり。大学時代には、レコードショップやクラブの裏方として働いたこともあるんですよ。残念ながら、楽器は演奏できないんですけどね。
 テーブルの上には、個人的に集めている雑貨やナイフ、雑誌を並べています。このナイフは、友人が手作りしたものなんです。革の袋も合わせて、凝っているでしょう?これらを見てだんだん分かってきたと思いますが、好きなものはコレクションしたいタイプなんです。

テレビや醤油、カエデなど日本のものも

 日本製品でいうと、テレビはソニー製です。あと、フィアンセと一緒に買い物に行くとき、時々お寿司やお刺身を買ってきて、食べたりもします。そうしたときに、ワサビや醤油を使うこともありますよ。
 バルコニーには、カエデの鉢をいくつか置いています。ここは私の自慢の場所です。カエデはスイスでは「日本のメープル(Japanischer Ahorn)」と呼ばれ、ガーデニングでは人気。一般住宅の庭にも、よく植えられています。
 あとは、個人的に日本のファッションが好きで、ジーンズや雑誌もいくつか持っています。

持ち物を拝見

日本製ジーンズがお気に入り

 ファッションが大好きで、ベッドルームはコレクションで一杯です。特にお見せしたいのが、日本製のジーンズ。チューリッヒにある行きつけの店、「ディーシー・スタイル(DeeCee style)」で買ったもの。
 店のオーナーのマルクスとは、バーゼル大学時代からの付き合いです。彼は80年代に、スイスで初めて、アメリカン・カジュアルやアーミー・スタイルの店を出したパイオニアなんですよ。私は海外育ちで、レッド・ウィングやVANSの靴、リーバイスのジーンズなどが好きで、よく店を覗いていました。チューリッヒへと場所が変わった今でも、週1回は通っています。
 これは、日本の島根県のブランド「マスタークラフト・ユニオン(MasterCraft Union)」のジーンズです。ウォッシュの感じや、ゆるく履けるスタイルが気に入って、何本か持っています。和紙が35%入った、特別な生地のものもありますよ。決して安くはありませんが、モノがいいので長持ちします。ドライクリーニングするなど、丁寧に手入れして、大事に履いています。

雑誌「クラッチ」や日本文学を愛読

 このお店からは、日本の雑誌も購入しています。持っているのは「クラッチ・マガジン(CLUTCH Magazine)」「ザ・レッド・データ・ヴィンテージ(The Red Data Vintage)」といったファッション雑誌や、「サイクル・ヘッズ・マガジン(Cycle Headz Magazine)」「フライウィール(Fly Wheels)」「スポーツスター(Sportster)」などの車やバイク関連の雑誌。マルクスからもらうこともあります。本文の内容は残念ながら分かりませんが、写真を見て楽しみ、ファッションスタイルのヒントをもらっています。
 若い頃は、日本の文学作品も、英語で読みましたね。リビングの本棚には、学生時代から読んできた様々な本が入っているのですが、三島由紀夫や村上春樹の作品もあります。特に三島作品は、戦後日本の歴史や侍に興味があった学生時代に読み、勉強になりました。
 読書は好きで、集中すると2~3日で1冊読み終えます。最近は、インターネットをする時間が増え、本を読む時間が少なくなってしまい、残念に思っています。

買い物について

食材は専門店で新鮮なものを

 普段の買い物でいうと、自宅からはちょっと離れていますが、気に入っている肉屋さんがあって、週1~2回通っています。「キュンツリ精肉店(Metzgerei Künzli)」といいます。フィアンセと近くを散歩していてたまたま見つけた店なんですが、ここもクオリティが高いんですよ。
 私は、「安い肉を毎日買うよりは、品質のいいものを選んで味わいたい」派です。スイスには、こうした考えの人たちが多く、ビオ(有機)の食材が好まれています。この店では、いつも200フラン(約2万3千円)くらい買いますね。ここのローストビーフが大好きなんですよ。肉製品以外にも品揃えが充実しているので、友人を招くときの食材も、ここで調達することが多いです。

値段ではなく、長持ちするいいものを

 何を買うにしても、重視しているのは「質」です。昔、祖母がよく言っていたのが、「うちは貧しいから、安物は買えない」ということ。裏を返せば、「安物はすぐ壊れるから、結局コストがかかる」ということなんですね。その教えを受け継いでいるのかな、と思います。
 自分のスタイルに合うかどうかも大事です。子どもの頃、冬休みはスイスに帰ってスキーをしていたんですが、その当時はみんな「アルパイン(Alpine)」というミグロ(Migros:スイスの一般的なスーパーマーケット)のブランドだったんです。いつか大きくなったら別のブランドに、と思い続けて、初めて買ったのはドイツのスキーブランド「フォルクル(Völkl)」でした。嬉しかったですね。今でも2本持っています。
 自分の人生で一番高い買い物は、6年前に購入したロレックスの時計です。

プレゼントは人や場所に合わせて

 友人や家族へのプレゼントには、チューリッヒにある高級デパート「イェルモリ(Jelmoli)」で選ぶことが多いですね。誕生日には、フィアンセには洋服など、母へは本やショール、ハンドバックなど贈ったことがあります。今年のクリスマスプレゼント用には、「ディーシー・スタイル(DeeCee style)」でいくつか洋服を見ているところです。
 友人には、ステーキナイフやオペラのチケットなどをプレゼントしたことがあります。価格帯は、様々ですね。スイスではホームパーティーをすることがよくありますが、招待されたときには、大体ワインを持って行きます。日本製のウィスキーボトルも人気があり、喜ばれています。

情報集め

毎朝のニュースチェックは欠かさずに

 情報収集は、毎朝カフェで行うのが日課です。「NZZ(Neuen Zürcher Zeitung)」や「ターゲスアンツァイガー(Tagesanzeiger)」など、スイスの地元日刊新聞をオンラインで読んでいます。
 購読しているのは、スイスの週刊誌「ヴェルト・ヴォッヘ(Die Weltwoche)」です。政治や経済面など、主要紙とは違った目線で報道されるので、興味深く読んでいます。
 こちらの編集部からは、私自身の警察でのバックグラウンドと法律の知識を買われて、時々紙面にアドバイスを求められることもあります。最近では、交通法に関わる事例に対し、弁護士として意見を述べたものが記事になりました。

イギリスのテレビ番組を視聴

 テレビは基本的にほとんど見ませんが、BBCなどのイギリスの番組は時々見ています。コンセプトが素晴らしく、オープンマインドだと感じます。
 中でも、イギリスの有名なコメディ女優が、日本を北から南まで旅したドキュメンタリー番組「ジョアンナ・ラムレイズ・ジャパン(Joanna Lumley’s Japan)」シリーズは面白かったですよ。日本の建築や武術、陶器や花見など、様々なテーマを扱っていて、とくに花見は本当に素敵で感動しました。私はまだ日本に行ったことはありませんが、この番組を見て、いつか行ってみたいと思いました。
 一方で、スイスのテレビ番組はあまり見ていません。全体的に内向き、保守的だと感じるので。あまり面白いと思わないんですよね。

SNSも幅広く活用

 警察に勤務していた頃は、プライベートを一切公開していませんでしたが、弁護士として活動するようになってからは、個人のウェブサイトも作り、SNSも活用しています。
 仕事ではリンクトイン、ワッツアップ、プライベートではフェイスブックやインスタグラムを利用しています。趣味のスキーの写真などは、インスタグラムにアップすることが多いです。
 とはいえ、私は若者のように「デジタル・ネイティブ世代」ではないので、まだまだ活用しきれていない部分もあるとは思います。

日本文化に対して

日本は信頼できる国

 日本は、伝統を重んじる誇り高い国でありながら、新しいテクノロジーの面でも進んでいますよね。「確かな技術で、質の高いものを生み出す国」という印象があります。
 また、日本人は、スイス人と似ている部分も多いのではないかと感じています。これは、私が空手を通じて出会った日系人の友人から得たイメージなので、純粋な日本人とはまた違うのかもしれませんが、日本と同様、スイスの交通機関は時間に正確ですし、スイス人は仕事をきちんとこなそうとします。
 日本に行くとしたら、桜の時期に京都の寺や神社を訪れたいですね。北海道でスキーをしたり、東京では大都市の風景を実際に見てみたいです。ファッションもチェックして、ジーンズなどの洋服も買いに行ければと思っています。

成功者、富裕層の定義

金持ちでなくても、成功者にはなれる

 私は、たくさんお金を生み出さなくても、自分のしている事で幸せに、豊かに暮らしているのなら「成功者」だと思います。その一方で、膨大な金額を稼いでいても、満たされない人たちもいますし…。結局のところ、富を持っていて幸せになれるかどうかは、「自制心(discipline)」と「節度(moderation)」によるのではないでしょうか。

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