本稿では空調設備の製造・販売を行っている企業を題材とし、自社の製品を海外で販売するにあたり現地の販売代理店の発掘やエンドユーザーへの認知度拡大を目的として、見込み客の獲得から育成までリアルな営業活動の補完的役割を果たすWebサイトを構築・運用するためのプロセスや手法についてSTEP BY STEPで説明します。
ページコンテンツ
- SME設備開発株式会社の場合
- ヨーロッパ市場における商流
- Step1: 競合サイト分析
- 日本にいながらUKでの検索結果を見る方法
- 自社サービスの紹介ページ
- Become a Dealer: 販売代理店募集ページ
- ギャラリーページ:動画活用による事例紹介
- 製品カタログ集
- 競合サイト分析結果まとめ
- さて、自社のサイト構築に入ろうでもその前に・・
- リアルな現場での販路開拓活動
- オンラインでの販路開拓活動
- Step2: 見込み客の獲得
- データで見る海外のBtoB 見込み客獲得トレンド①
- 見込み客の獲得 その1:検索エンジンからの誘導
- SEOに効く(=オーガニック検索を伸ばすための)Webコンテンツ作成手順
- キーワードの抽出
- 抽出したキーワードからユーザーの求めている情報を推測する
- 顧客の潜在ニーズを掘り下げる
- misting system のサジェストワード抽出結果
- Webサイト来訪者はどこから来るの?
- 見込み客の獲得 その2:ブログ
- 見込み客の獲得 その3:ソーシャルメディアからの誘導
- ちょっとした手間や工夫でYouTube動画も見込み客獲得に活用
- WebサイトとYouTubeの連携
- Step3: 見込み客の育成
- 営業部門から聞いた内容を海外向けWebサイト上のコンテンツに当てはめてみる
- Step4: 数値管理
- 来訪者の流れと取得する数値
- SME設備 現地販売代理店・エンドユーザ向けサイト構築プロジェクト 全体像
- 番外編:リアルビジネスとの連携
- 例:アヌーガ(ドイツ開催の食品展示会)の出展社ページ
- THANK YOU FOR READING!
- 中小機構とは
SME設備開発株式会社の場合
SME設備開発株式会社(以降、SME設備) では、空調機器の製造・販売を中心とした事業を展開しています。国内での主な顧客は中小規模の飲食店です。
2年前に国内の顧客のレストランチェーンがロンドンに店舗展開した際にSME設備のミストファンを現地のレストランのオープンテラスに使用したところ、近隣の飲食店からも引き合いがありました。
SME設備では、それをきっかけにロンドンや近隣都市でFS(フィージビリティスタディ)を行ってみました。すると、夏が短く湿気の少ないイギリスですが、真夏は気温も高くなり日差しも強くなる環境下で、設置が簡単でコンパクトなデザインのSME設備のミストファンは飲食店のテラス席やイベント会場など屋外での暑さ対策にニーズがあることがわかりました。
そこで、まずは英国(以降、UK)への輸出を目指し将来的にはEU全域への本格展開を目指していきたいと考えています。
※SME設備開発株式会社は架空の企業です。
ヨーロッパ市場における商流
SME設備のミストファンは、現地の販売代理店経由で施工業者に納入、飲食店や商業施設に設置される形を想定しており、現在SME設備の営業代行を担う販売代理店を探しています。
そこで今回構築するウェブサイトでは、販売代理店、施工業者、そしてエンドユーザーとなる飲食店や商業施設のオーナー等が主な来訪対象者となります。
Step1: 競合サイト分析
BtoBの場合、ユーザー企業の業種、取引の商流などは国内も海外もさほど違いが無いケースも多くあります。だからといって、海外向けWebサイトは国内向けの日本語サイトの単なる翻訳版で良いのでしょうか?
まずは、UKを始めEU地域でビジネス展開している空調機器の企業、つまり競合企業のウェブサイトを研究・分析してみようと思いますが、そもそも競合企業がどこなのかまだよく知らない場合、どうやって特定すれば良いでしょう
自社の競合企業は?
まずはシンプルにUKのGoogle (www.google.co.uk) で “mist fan system” (ミストファンシステム)と検索してみます
日本にいながらUKでの検索結果を見る方法
日本からGoogle UK (www.google.co.uk) にアクセスをしても、検索をした時点で日本のGoogle に強制転送(リダイレクト)され、日本でのGoogle検索結果が表示されます。つまり、イギリス現地で検索した場合の結果を見ることはできません。
そこで、検索するときに、Google検索のURLを次のように書き換えてください。
https://www.google.com/webhp?gl=uk&hl=en&gws_rd=cr
(Google UKで英語ページの検索結果を表示したい場合)
「gl=uk」は「Google UKで」という意味で、ドイツなら「gl=de」、フランスなら「gl=fr」とします
また、Googleドイツでドイツ語ページのみの検索結果を表示したい場合はこうですhttps://www.google.com/webhp?gl=de&hl=de&gws_rd=cr
このようにURLを書き換えて検索することで、現地での検索結果を見ることができます。ページ翻訳機能なども使って、いろいろ試してみてください。
※他の国の検索結果を調べたい場合は、「glパラメータの国コード」を、他の言語での検索結果を調べたい場合は「hlパラメータの言語コード」を、ネットで調べてみてください。
SME設備では、“mist fan system” だけでなく、”misting systems(ミスト設備)”, “misting systems for restaurants(飲食店向けミスト設備)”, “cooling systems for restaurants(飲食店向け空冷設備)” などいくつかのキーワードで検索し上位表示される企業のWebサイトを一つ一つ調べてみました。
結果、企業の知名度、Webサイトのわかりやすさ、豊富なコンテンツなどの観点から以下の2つの競合サイトを深堀りしてみることにしました。
Google UK (www.google.co.uk)で検索上位表示されているこの2社は、 本社はUKではなく米国の企業です。では早速、この2社のWebサイトについてじっくり見てみましょう
参考サイト例(1) Koolfog, Inc.
www.koolfog.com
同社のビジネスに関する情報(①)、製品やサービスに関する情報はメニューバー(②)に集約されており、Webサイトの上部から全ての主要な情報にたどり着ける導線になっています
次のページ以降は、特に参考になるページをいくつかご紹介します
自社サービスの紹介ページ
このページでは、飲食店のオーナーや施工業者に向け、レストランのオープンテラスにミスティングシステムを導入するメリットを定量的に示していて、SME設備にとって非常に参考になるコンテンツ構成です。
Become a Dealer: 販売代理店募集ページ
ギャラリーページ:動画活用による事例紹介
参考サイト例② MistCooling Inc
www.mistcooling.com
製品カタログ集
MistCooling社では、製品のカタログを掲載し仕様が確認できるようにしています。販売代理店、施工会社向けに役に立つ情報です。
競合サイト分析結果まとめ
SME設備では、ミストファンの競合サイトを分析した結果、サイトの構造や掲載するコンテンツについて、以下の要素を自社のサイトにも取り入れることにしました。
1.Webサイトのデザイン・構造
トップページ上部にメニューバーを設置し、サブメニュー経由で全ての商品、適用例が見られるようにする
トップページの中央部は、ミストファン使用風景の画像を入れる(複数画像が定期的に入れ替わる形式に)
トップページ右上に、会社情報、代理店募集ページへのリンクを掲載
2.掲載コンテンツ
Become a Dealer (代理店募集ページ)
動画や画像を活用した事例紹介
製品カタログ
導入コストや採算性に関する情報
さて、自社のサイト構築に入ろうでもその前に・・
Step1では、競合サイトを研究することで、販社・施工業者・エンドユーザーを対象としたミストファンのWebサイトのイメージが沸いてきました。SME設備ではそれらをふまえ、 早速サイト構築を進めていきたいところです。
が、その前に今回構築するWebサイト上で何を目指すのか、一旦ここで少し整理をしたいと思います。
何故でしょう。
BtoBのビジネスでは、複数の意思決定者が介在し、成約までの期間が比較的長いケースが多い中、Web上で全てが完結することはほぼ無いでしょう。どこかのタイミングで営業担当者にバトンタッチして最後は人と人のやりとりにより契約締結に至ります。
よって、Webサイト上で目指すのは以下の2つです。
- 自社の潜在顧客である『見込み客』を獲得すること
- 獲得した見込み客を成約確度の高い営業案件に育てて営業部門に渡すこと
次のページでリアルな現場の営業活動とWebサイトを活用した場合のそれぞれの役割分担について比較してみます。
リアルな現場での販路開拓活動
成約までの営業活動はリアルの世界で完結する
BtoB向け海外販路開拓では展示会、商談会などから新規営業案件の発掘を行う場合が多いかと思います。
例えば展示会に出展した場合、会場で獲得した名刺の中から営業案件につながりそうな名刺を抽出し、営業に渡す、場合によってはさらに自社セミナーを開催してもう一段階確度の高い見込み客を絞り込んだ上で営業部門に渡す。マーケティング/販促部門ではこうした活動をしていることでしょう。
そして、営業部門では案件化された見込み客に営業活動をかけ成約を目指します。
中小企業で特に海外販路開拓の場合は、全てを営業担当者が担っている場合も多々あるでしょう
オンラインでの販路開拓活動
成約までの全てのプロセスをオンライン上で完結できるケースは少ない
オンライン環境では、まず自社の商品特性に適したルートから情報を発信し、見込み客を自社のWebサイトに誘導します。そうしてサイトに来訪した「見込み客」に対してさらなる情報を提供し、見込み客の育成を行います。
そして、確度の高い見込み客をお問い合わせページへと誘導し、『営業案件』化した上で海外営業部門へと渡すことができれば、営業担当者は効率良く営業活動を行うことができます。
あくまでも理論上の話ではありますが、BtoB 向けWebサイトではこうした理論に基づき、
見込み客の獲得(lead generation), そして見込み客の育成 (lead nurturing) を展開している企業は多数あります。
本稿ではこの後、Step2で『見込み客の獲得』、Step3で『見込み客の育成』について説明します。
そして、Webサイトの構成や仕様についてはStep3が終了してから決定することにします。
Step2: 見込み客の獲得
BtoB における見込み客獲得の活動には以下の様に、リアルな場、オンラインそれぞれ様々な選択肢があります。が、こうしてみるとリアルの施策の方ではダイレクトメールやテレアポ、紙面広告など、最近は身の回りでもあまり見る/接する頻度が減ったと感じるものが多いのではないでしょうか、それだけ見込み客の獲得施策がオンラインの方にシフトしているからと言えるかと思います。
データで見る海外のBtoB 見込み客獲得トレンド①
こちらは前ページと同じチャネル別の見込み客の獲得状況を企業規模別に見た数字です。グローバル市場においては、中小規模の企業は大企業よりもeメールマーケティング、ブログ、ソーシャルメディア、SEOなどオンラインからの見込み客獲得の比重が高いことがわかります。
ここからは、オンラインの見込み客獲得施策の中で主要な以下の3つの施策について説明します。引き続き、SME設備のミストファンを題材にしていますが、あらゆるBtoB 製品にあてはまる手法です。
- その1:検索エンジンからの誘導
- その2:ブログ
- その3:ソーシャルメディア
見込み客の獲得 その1:検索エンジンからの誘導
BtoB向けWebサイトでは、Googleなどの検索エンジン対策は非常に重要です。ユーザー視点で考えると、単価が高く、時には自社のビジネスの運営に大きな影響を与える製品を購入する場合、例えば
- それがあると競合より優位になる可能性
- それが無いと業務上支障がある、またはそれがあると業務効率化などメリットがある
- これまで使っていたものに不満がある、または壊れた
など何らかの「課題」がある場合はまずGoogleなど検索エンジンで対応策、または対応製品について調べてみるケースは多いでしょう。
Webサイトをオープンしたからといって何もしなくてもGoogle検索結果に上位表示されるわけではありません。 検索エンジンで上位表示されるためにはSEO(サーチエンジン最適化)という取り組みが必須です。 SEOという言葉が日本で広がり始めてすでに15年ほど経っており、この言葉だけは聞いたことはあるという方も多いのではないかと思います。
現時点でのSEOでもっとも本質的な要素は 『良質なコンテンツを提供すること』 と言われています。 なぜなら現在のGoogle社の方針は 『検索ユーザーが必要としている質の高いコンテンツを上位表示させる』 ことだからです。 何やら概念的に聞こえてしまうかもしれませんが、私は 『ユーザーが欲しているであろう情報をきちんと理解しそれを丁寧に伝えていく作業を継続すること』 と捉えています。 地味でそれなりに時間のかかる作業ではありますが、中小企業の事業者様にも是非取り組んでいただきたいと思っています。たとえ広告宣伝費に多くのコストをかけられる様な大企業でなくても、ユーザーが知りたいと思っている情報をきちんと届けることができれば、検索結果で上位表示され、結果としてより多くの集客効果を得ることができるのですから、オンラインの世界は非常にフェアな世界だと思うのです。
では、 『顧客が知りたいと思っている良質なコンテンツ』 を作るにはどうすればよいのでしょうか?
SEOに効く(=オーガニック検索を伸ばすための)Webコンテンツ作成手順
1)テーマを決める
- 自社の商品に関連し、よく検索されている “キーワード” を抽出する
- 競合サイトで掲載されているコンテンツを参考にする
- 自社の国内の顧客によく読まれているテーマを海外向けにも活用する
2)1で選定したテーマに関連するコンテンツを制作する
3) 効果を測定し、1のテーマ選定や2のコンテンツ制作の改善を継続して行う
自社の商品に関連性の深いテーマを探し、それに関して顧客が知りたいと思っている情報を提供することで、質の高いコンテンツの作成を目指します。
キーワードの抽出
SME設備では、まずMisting system(ミスト設備)に関連する内容ではどの様なキーワードがGoogleで検索されているのかキーワードツール(*) を活用して調べてみます。今回はGoogleのキーワードプランナーツールを使いました。紙面の都合上、本ツールの使い方については省略しますが、SEOに関するブログサイト等で詳しく紹介されていますので参考にされてみてください。
抽出したキーワードからユーザーの求めている情報を推測する
今度は、Google UKの検索ボックスから “misting system” と入力した後にスペースを一文字入れると、次の様な予測キーワードが表示されます。 これは、Googleのサジェスト機能と言って ”misting system” と一緒によく検索されているキーワード群を表示する機能です。これらのキーワードから、”misting system”についてさらにユーザーがどういう情報を求めているかが推測できます。
顧客の潜在ニーズを掘り下げる
Keyword Tool (https://keywordtool.io/google ) を使うと特定のフレーズに対してGoogleサジェスト機能で表示されるワードを全て抽出することができます。
先ほどの “misting system”について、Google.UK の検索画面では上位10個が表示されましたが、このツールを使って同じく misting system を調べてみると239個のサジェストワードを抽出することができました。
Keyword Tool にはエクセルへのエクスポート機能も付いています。
misting system のサジェストワード抽出結果
この様にして抽出したサジェストワードを眺めてみると、
- how does a misting system work
ミストシステムのしくみ - what is a misting system
ミストシステムとは? - setting up a misting system
ミストシステムのセットアップ - parts of a misting system
ミストシステムの部品 - cost of a misting system
ミストシステムのコスト - misting system benefits
ミストシステムの利点
など、misting system に関してどんなトピックが興味を持たれているのか見えてきます。こうした内容をWebサイト上に掲載することで、ユーザーの求めている情報が発信できる → 検索エンジンにかかりやすくなります。
この様に、ツールを活用しGoogleユーザーの検索の痕跡をたどっていくことで、現地の潜在顧客のニーズを推測することができます。是非試してみてください。
Webサイト来訪者はどこから来るの?
Webサイト来訪者の流入元は次の様に区分されます
ダイレクト
Webブラウザ上でURLを直接入力、またはブックマークからの訪問、メールからのアクセスなど
オーガニック検索
Googleなどの検索エンジンからの検索による訪問
ソーシャルメディア
Facebook, インスタグラム, YouTubeなどのSNS
リファレル
他サイトからのリンク
有料広告
検索広告、ディスプレイ広告などの有料オンライン広告
Web分析ツールの活用
SimilarWeb (*1)(シミラーウェブ:https://www.similarweb.com/ja )などのWeb分析ツールを使うと競合サイトの流入経路分析を行うことができます。
下のグラフは、Step1 で競合サイトとして取り上げた2社の流入元分析です。 SimilarWeb(無料版)から取得しています。二社ともオーガニック検索からの流入が60%以上を占めています。次に比率の高いダイレクトは既に同社の存在を知っているユーザーからの流入ですから、実質完全新規の来訪者はほぼオーガニック検索から来ています。いかに検索エンジン対策が重要かわかります。
(*1) SimilarWebを活用した競合サイトの分析方法については、
『欧米向けWebサイト構築 STEP BY STEP ガイド』シリーズの
“1. 越境EC編” で詳しく説明しています。よろしければ参考にしてみてください。
見込み客の獲得 その2:ブログ
Step1 で取り上げた競合サイト www.mistcooling.com ではブログを併設しています。ブログには、(1) 検索エンジン対策 (2) 見込み客に対し説得力のある検討材料を提供するといった効果があります。
こちらの記事では、ミストシステムが夏の暑い時期のレストランの売り上げupに貢献する例を紹介しています。レストランオーナー、またはレストランオーナーに提案する施工事業者や販売代理店にとって参考になる情報です
こちらの記事は、ミストシステムの部品であるフィルターに関する記事です。施工事業者や販売代理店向けの情報です。Webサイトの製品紹介ページでは製品のスペックや一般的な情報を掲載するのに対し、ブログでは特定のテーマや特定のターゲットを対象に深堀りした情報を提供することができます。
以上の様に、検索エンジンからの誘導やブログではキーワードやテーマの選定が非常に重要なことがおわかりいただけたかと思います。
よって、英語など現地の言語でコンテンツを作る際には、単純に翻訳事業者に日本語原稿を翻訳してもらうだけだとせっかくテーマは良いのに検索エンジン対策に重要なキーワードが含まれていない、といったことも十分起こりえます。
翻訳を依頼する前にあらかじめ重要キーワードやフレーズを調べておいて、翻訳文中に反映してもらう、もしくは納品された翻訳結果に対し、重要キーワードがきちんと入っているか確認し必要に応じて単語やフレーズレベルの修正をかける、といった対策を取ると良いでしょう。
少しの手間で効果がだいぶ違ってきますから是非取り組んでみてください!
見込み客の獲得 その3:ソーシャルメディアからの誘導
YouTube にBtoB向け製品に関する動画なんてアップしても、見る人いるの? と思われる方もいるでしょう。こちらの動画は、Step1で取り上げた競合サイト mistingcooling.comのYouTube 動画です。
公開は2012年とかなり前ですが、こうしてYouTubeに置いておくことで23,131回再生されています(2018年6月現在)。
対面でデモを見せることに比べればはるかに効率が良いですし、BtoBの製品には動画で見せれば機能や良さが一目でわかる、という製品はたくさんあります。
ちょっとした手間や工夫でYouTube動画も見込み客獲得に活用
WebサイトとYouTubeの連携
Step3: 見込み客の育成
中小企業の場合は海外営業担当者は社内に一人、というケースも多いかと思います。特にBtoBの場合、一件成約するのに何か月もかかるケースも多く、案件の一つ一つの「確度」はできるだけ高いに越したことはありません。
Step3 では、Step2で獲得した見込み客をWebサイト上で育成するプロセスについて説明します。
「営業案件」として営業担当者の手に委ねる前にあらかじめ見込み客の育成を行っておくことで確度が高まり、限られた営業担当者のリソースで効率良く成約できるようにすることが目的です。
4種類の見込み客のタイプとニーズ
Webサイトに集客した『見込み客』は以下の4種類に分類されます。売上の大半は「いますぐ客」から生まれますが、初回Webサイト来訪者の大半は「まだまだ客」が占めており、成約に至るには「まだまだ客」を 「おなやみ客」や「そのうち客」、そして「いますぐ客」に育成する必要があります。 これはリアルの世界では営業担当者が行っている営業活動に相当します
「まだまだ客」を「いますぐ客へ」
国内の営業現場ではどうしてるの?
前ページで、“成約に至るには「まだまだ客」を 「おなやみ客」や「そのうち客」を経て「いますぐ客」に育成する必要がある、そしてそれはリアルの世界では営業担当者が行っている営業活動に相当する” とお伝えしました。
そこでSME設備の本プロジェクトチームはまず営業担当者に国内での営業活動についてヒヤリングしてみることにしました。海外の市場で「いますぐ客」を育成する手段を考える上で一番身近で参考になる情報だからです。
消費財などBtoCの商品ならPOSデータやECの注文データなどを分析することで売れるパターンを見つけることができます。
一方、BtoBの場合、そうしたビッグデータは無く、代わりとなる情報は営業担当者の頭の中にあることが多々あるでしょう。営業は自分の売り方のロジックを持っているはずです。是非そうした経験則を取り入れてみてください。
営業部門からのヒヤリング
集まってもらった営業担当者には、4つの見込み客の分類について説明した上で担当営業先をそれぞれのタイプに分類してもらい、どういう働きかけをしているか、付箋に書いてペタペタ貼ってもらいました。
営業部門から有用な情報を聞けたことで、国内では成約までにどういったプロセスを経ているのかが理解できました。
Webサイトの世界でもソーシャルメディア、ブログなども活用しながらこれと似た働きを実装できれば、Webサイトに来訪した「まだまだ客」を「今すぐ客」へと育成した上で海外営業担当者に『案件』として渡すことができそうです。
次のページで具体的に考えてみます。
営業部門から聞いた内容を海外向けWebサイト上のコンテンツに当てはめてみる
前ページで付箋に書いてもらった情報を整理し(下の左の表)、それぞれのステージで行っているアクションを海外向けWebサイト上に実装可能なコンテンツに置き換えてみました(下の右の表)
Step4: 数値管理
見込み客の獲得・育成におけるゴールは、確度の高い営業案件をできるだけ多く、できるだけ低いコストで創出できるようにすることです。そのためには以下のポイントに留意します。
a.質の高い見込み客を獲得できているか
b.獲得した見込み客を狙い通り育成し、営業案件を創出できているか
c.1営業案件あたりの獲得コストは予算を超えていないか
c.は、本プロジェクトでかかった費用を b. で取得した営業案件数で割ることで算出できますので、 Step4 では、a. b. の数値管理について説明します。
a.b. を把握するために取得する主な指標は以下の3種類です。
来訪者数:Webサイトに誘導した来訪者(見込み客)がどこからどのくらい来ているのか
(検索エンジン、YouTube, ブログなど)
転換率:見込み客からどのくらいの割合で営業案件に転換したか
営業案件数:問い合わせページ、代理店募集ページ、採算性試算ページからのコンタクト数の総和
来訪者の流れと取得する数値
こちらは月別の数値管理シート(例)です。
先述の通り、このWebサイトの果たす役割として重要なのは以下の2点ですから、下表の① ~③が特に非常に重要な指標になります。
1. 自社の潜在顧客である『見込み客』を獲得すること・・・・・・・・・・・・①
2. 獲得した見込み客を成約確度の高い営業案件に育てて営業部門に渡すこと・・②③
同時に、直帰率、平均セッション時間(=滞留時間)など付帯情報も取得し、来訪者が狙い通りの潜在顧客であったか、Webサイトやブログの情報をしっかり読んで見込み客として育成されていそうか等、モニターします。
また、年度の最後に1コンタクトあたりの獲得コストを算出します。こちらは オンライン施策の”コスパ” ですから、展示会出展などリアルな場での販路開拓活動での案件獲得コストと比較します。
数値管理シートの各項目の説明、および改善のポイントを以下にまとめました。
Webサイトやブログのセッション数については、余力があれば個々のページ別のセッション数も取得・比較し、YouTube動画同様、ユーザーの関心の高いテーマを探すヒントにすると良いでしょう。
最後に、ここまで説明した全てのプロセスの全体像を次にまとめました。
SME設備 現地販売代理店・エンドユーザ向けサイト構築プロジェクト 全体像
番外編:リアルビジネスとの連携
海外展示会に出展する時はWebサイトに出展情報の掲載を忘れずに!
規模の大きな海外の展示会では広大な会場に一日で回り切れないほど多数の企業が出展しています。そのため展示会に来る代理店やバイヤー等は展示会の公式サイトから自社のビジネスに関連性の高い企業を探し、それらのブースを優先的に回ることが多いです。
そこで、展示会の公式サイトの出展企業紹介ページ(図 ※1)には、検索にかかるような重要ワードを反映した出展商品紹介と自社のWebサイトのURLを記載しておきます。
自社のWebサイト上にはブース番号や当日連絡のとれる電話番号、メールアドレスを掲載しておきましょう。実際にこうした導線から海外の代理店が日本企業のブースを訪れ商談に至ったケースがあります。
例:アヌーガ(ドイツ開催の食品展示会)の出展社ページ
Webサイトとメールを活用した海外代理店やバイヤーのフォローアップ手法については、『欧米向けWebサイト構築 STEP BY STEP ガイド』シリーズの “3. BtoBtoC:海外バイヤー向け商品紹介サイト編” で説明しています。
Web/メールなどのオンライン施策を活用し、展示会などリアルな場での販路開拓でさらに高い効果を生み出していただければと思います。
THANK YOU FOR READING!
いかがでしょうか。BtoB向けWebサイトはBtoC やBtoBtoCのサイトとは異なる視点での構築・運営手法となることがおわかりいただけたかと思います。
質の良い見込み客を獲得し、そして育成することは決して簡単ではありませんが、多くの企業が試行錯誤を重ねつつ取り組んでいます。本ガイドブックが、Webサイトを活用した海外における販路開拓活動のお役に立てば大変幸いです。 Good Selling!
PRESENTED BY empapilio, Inc.
中小機構とは
独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。
全国10か所の地域本部等及び9か所の中小企業大学校を支援の最前線として、皆様の経営をサポートしています。このほか、国内外の他の政府系機関や地域支援機関とも連携し、幅広く支援メニューを提供しています。
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公開日:2019年 7月 16日
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