海外への進出国を考える際に重要な要素は何でしょうか?現地拠点の設立など、数年のスパンでの海外進出を計画する場合、その国の中長期的な発展見込を把握することが重要になりますが、その点でタイは日本企業にとって、まだまだ進出先の有力候補になるかと思います。
今年の夏、中小機構近畿本部はタイ王国大阪総領事館から、タイ政府が注力している経済戦略を学ぶための、現地視察の招待を頂きました。ここではその際の見聞を基に、タイの経済発展の重要戦略に位置づけられている「EEC」と「BCG経済モデル」について説明します。

EEC(東部経済回廊) − タイ経済の重要戦略地域

EECとはEastern Economic Corridor の略語で、首都バンコクからタイ南東部にかけたチャチュンサオ県、チョンブリ県、ラヨーン県の3県一帯を指します。タイ政府はEECに海外からの投資を呼び込むため、交通インフラ・工業団地・研究施設などの充実に力を入れています。
EECはロジスティクスの点からみると、バンコクへ通じる高速鉄道の建設が進められ、また複数の重要な物流拠点(マプタプット港、レムチャバン港、ウタパオ国際空港など)が存在し、「モノ・ヒト」の往来がこれから更に活発化することが見込まれます。更にマクロな観点からみると、東南アジア4か国(ベトナム・カンボジア・タイ・ミャンマー)を結ぶ「南部経済回廊」の一端を担う役割としても、重要な地域です。
タイへ進出をする企業にとって、生産活動に適した地域ということだけでなく、東南アジアのグローバルな中継拠点という意味でも、EECは重要な地域になっています。

EECの対象地域
(EEC事務局ウェブサイトから引用 https://www.eeco.or.th/en/government-initiative)

BCG経済モデル − 持続可能な経済発展を目指して

BCGとはBio-Circular-Greenの略語で、おおまかには「生物資源を有効活用した経済活動」「資源を再利用していく経済活動」「環境面へ配慮をした持続可能な経済活動」という3つの理念を目指すものになります。それぞれ単体では目新しい理念では無いのですが、この3つをタイの経済戦略としてまとめ国内外に推進している、という点で独自性があると考えられます。タイ政府としてはこのBCG経済モデルに寄与する産業(具体例:代替タンパク質、バイオプラスチック、バイオ医薬品など)への海外投資を奨励しており、投資企業への法人税の軽減など、インセンティブの対象となっています。
SDGsに代表されるように、環境面に配慮をしたうえで経済成長を目指すという理念が世界的に醸成されてきていますが、タイ政府も自国の経済成長戦略に世界的な時流を取り入れ、先見性や独自性を実現し、海外からの投資を呼び込もうとする意欲があるようです。

BCGモデルのコンセプト図
(NSTDA(タイ国立科学技術開発庁)ウェブサイトから引用 https://www.nstda.or.th/thaibioeconomy/bcg-concept.html)

海外進出先としてのタイ

今回の現地視察にて多くのタイの機関と意見交換を行いましたが、日系企業が多数進出し現地経済の発展に寄与している実績もあるためか、日本企業からの投資に対する高い期待を感じました。また東南アジアの製造拠点としてだけでなく、BCGモデルの実現に寄与するような高付加価値産業の中心地として存在感を発揮していこうとするタイ政府の本気度も伺え、これからの成長ポテンシャルが高い国と感じられました。特に東南アジアへの海外進出を考える際、地理的な位置付けや経済成長性でタイは魅力的な国ですので、選択肢の1つとして考慮をしてみてはいかがでしょうか。

おわりに

ここではタイの経済戦略について簡潔に紹介しましたが、中小機構ではタイへの海外展開を考えている企業様からの個別相談を受付しております。
相談内容によっては、タイ現地のアドバイザーから生の現地情報を入手することもできますので、お気軽に中小機構の海外展開ハンズオン支援をご活用下さい。

「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。

(中小機構 近畿本部 企業支援部 山口)