「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第22回目は、インドネシアにお住まいの高見アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2022年4月20日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

ジャカルタ市内夜景

新型コロナに落ち着きが見られてきたインドネシア・ジャカルタ。現地の人々と日本人の仕事や生活に直結するインフラ開発案件と、新型コロナに関しての現在の情報をお届けします。皆様のビジネスや渡航のご参考になれば幸いです。

1.交通インフラ整備

1)MRT(都市大量高速交通システム)

ジャカルタ市内の交通渋滞の解消のため、インドネシアで初めての地下鉄+高架鉄道による大ジャカルタ都市高速鉄道(MRT:Mass Rapid Transit Jakarta 2006年11月~)事業が、円借款を活用し進められ、2019年4月1日にジャカルタ市内の南北線第一区間が開通した。現在は第二区間の建設と第三区間の建設に移っている。

第一区間は複数の日系ゼネコンが建設に参画しており、日本式工程・時間管理、渋滞の激しい幹線道路で、交通を阻害しない工事・通行管理は見事だった。また、日本の鉄道輸送システム導入と人材育成も実施され、安全性と運行管理能力も非常に高い。コロナ前は1日平均88,000人が利用し、ジャカルタ市内の通勤や移動の足として定着していて、日本人も安心して乗ることができる。

MRT車内の様子(筆者友人撮影)

2)LRT(首都圏軽量軌道交通)と既存高速道路の上に作られた第二高速道路

LRT(Light Rail Transit)はジャカルタ〜ボゴール〜デポックという首都圏主要地域を結ぶ交通計画で、この内のブカシ線と呼ばれる全長18.5kmの区間が、工業団地が集積する地を結ぶジャカルタ〜チカンペック高速道路脇(北側)に2015年から建設に着手され、今年8月に開通予定である。ブカシは、ジャカルタのベッドタウンであることから、多くの人が通勤の足として利用することが期待されている。

また、同高速道路の常態化した激しい渋滞を解消するため、2019年12月から約38kmに亘る、既存の高速道路を2階建てにした高架式の第二高速道路が開通している。

ジャカルタ-チカンペック高速道路(2層構造)を走ると、頭上には高架式の第二高速道路、その北側(右)にLRT、その南側(左)には高速鉄道建設中(中国主導新幹線式:開通は3年以上遅れている)、という圧巻の景色が暫く続く。

2.首都移転の動き

最後の任期(2期目)を迎えたジョコウィ大統領がカリマンタン島への首都移転に向け精力的に動いてる。過去にも首都移転計画があったが実現されなかったことから、国民には懐疑的な雰囲気もあるが、本年1月18日に国会で可決され、マスタープランの作成が進むなど、2024年の政府機関の移転開始に向けかつてない具体性が垣間見える。現状は最も重要な財源確保の方策を詰めていくところだ。

商機を逃したくない大手財閥企業も住宅開発用地等を新首都周辺に既に確保するなど民間にも動きが出てきた。在インドネシアの日系企業へのアンケートによると、165社中77%が首都移転を「半信半疑」と捉えている。また72%が「事務所移転の計画は低い又は無い」、63%が「投資の予定はない」と回答。一方、投資に関心のある事業としては、「スマートシティ」25%、「建設・インフラ」25%、「自動車」22%、「再生可能エネルギー」21%の順となっている。

3.当地新型コロナ感染状況、新型コロナと経済活動との両立を図る

1) 最近時の新型コロナの状況

インドネシアで初めて新型コロナ感染が発表されたのは、2020年3月2日である。近隣諸国では1月頃から感染が拡大していく中、なぜインドネシアだけ感染者が出ないのか、毎日何度も神にお祈りしているからとか、いろいろ憶測があった。しかしそれも束の間、その後感染者数はみるみる増加し、本年2月のピーク時には1日当たり約6万人が感染、ジャカルタでは墓地不足に。地域としては第2の都市スラバヤを中心とした東ジャワの感染が多かった。今年4月までの感染状況は、人口2億7000万人に対し計600万人が感染し、15万5千人もの方が命を落としている。しかし、2022年3月以降は一日の感染者数は約1700人程度(ピーク時の3%)にまで減少しており、現在はコロナと経済活動との両立を図る方向である。

4月からは学校の対面授業が再開し、レストランやショッピングモールも通常営業されている。海外からの旅行者の入国もワクチン証明(2回)があれば、到着時PCR検査や隔離・待機期間もなく入国できる(旅行者向けと業務出張者とではVISA対応等は違いあり)。

2)筆者のコロナ感染談

最後に筆者のコロナ感染と当地での治療体験について書きます。

2月の初めに国内出張の前に受けたPCR検査で感染が判明。自覚症状なしなので自らの判断で自宅療養を選択しましたが、2日目から40度を超える熱が続き、入院とその前後の在宅療養で約2週間の闘病生活となりました。幸いにも、新型コロナ感染を経験した日本人から入院体験(病院の評判、処方薬、血液・CT検査等の詳細情報、入院後の治療内容)を聞いており、予備知識がありました。

特に感染経験者の友人が薦めてくれた、ある日系医療サポート会社(海外における危機管理、緊急事故対応、重大疾病事故・予防、保険・補償スキームをトータルサポート)に加入したことが非常に大きかったです。このサービスのおかげで、電話一本で希望病院の空き状況の確認と病室の予約ができ、入院後も毎日同社から、治療内容について日本語で説明を受けることができました。

コロナ専門病床のある現地の病院への入院でしたが、症状の重い患者で病床はいっぱいでした。筆者はデング熱に同時感染しているも分かり、一時は腕が動かず、物が二重に見えるとかでしたが、適切な治療で後遺症もなく回復して来ています。医師はインドネシ人女医、病室は個室・シャワー付き、食事はインドネシアor中華orウエスタンから1セット選択可、しかしほとんどインドネシアのおかゆ:ブブールを取りました。

海外赴任時だけでなく、海外出張時でも医療サポート・保険は重要と思います。

筆者紹介

高見 明 中小機構 中小企業アドバイザー

大学卒業後、大手石油元売り会社に就職し、その後大学院進学。大学助手を経て2002年よりインドネシアに渡る。大学では、日本的労務管理制度の国際移転可能性をテーマに、主にインドネシア進出日系企業を調査。

当地で、日系工業団地の開発運営会社に18年間、その後、地場資本の経済特区開発・運営会社に移り2年が経過し現在に至る。中小機構では現地アドバイザーとして、インドネシアに進出する日系企業の視点から様々なアドバイス業務を実施している。

中小機構について

中小機構の「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。

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