2022年1月1日に登場したRCEPに目を奪われていませんか?日本の重要な貿易パートナーであるタイとの間のEPAもこの日改正されました。
日タイのEPAは以前から利用しているけど(2007年11月1日に発効しています)今更何がどうなったの?という方のために、改正された主なポイントを説明します。
尚、日本とタイの間には今回説明する日タイEPA、日アセアンEPA、RCEPの計3つのEPAがあります。
1. 参照するHSコード(関税分類番号)が2002年版から2017年版になった
日タイEPAを利用してタイに輸出する品目、あるいはタイから輸入する品目のHSコードが変わりました。今まではHSコードの2002年版を使用するルールでしたが、2022年1月1日からは2017年版のHSコードを使わなければなりません。
うちの製品・商品は大きな変更などないだろう。そう思ってもHSコードが変わっている品目があるかもしれません。もし2002年版のHSコードをそのまま使っていると、正しくないHSコードを使用しているということで原産地証明書の発給機関である日本商工会議所からやり直しを指摘されるかもしれません。
2002年版と2017年版でHSコードが変わった品目には次のようなものがあります。
今一度、自社の製品・商品のHSコードが変わっていないか確認してみましょう。
HSコード2002年版検索(2006年版と表示されます)
輸出:https://www.customs.go.jp/yusyutu/2006/index.htm
輸入:https://www.customs.go.jp/tariff/2006_4/index.htm
HSコード2017年版検索(2021年版と表示されます)
輸出:https://www.customs.go.jp/yusyutu/2021_1/index.htm
輸入:https://www.customs.go.jp/tariff/2021_10_22/index.htm
2. 原産地規則の記述がわかりやすくなった
安全ピンが日本原産であるとはどういうことでしょうか?日タイEPA協定の原産地規則では2002年版HSコード731920の原産地規則を次のように定めています。
七三・〇一 ~ 七三・二〇
「第七三・〇一項から第七三・二〇項までの各項の産品への他の類の材料からの変更、又は、原産資格割合が四十パーセント以上であること(第七三・〇一項から第七三・二〇項までの各項の産品への関税分類の変更を必要としない。)。」
これは日本語でしょうか?意味がさっぱりわかりませんね。
ではこういう表現ならばどうでしょうか?
「加工された鉄鋼製品以外から作られること(フラットロールやH型鋼など鉄鋼そのものから作られることはOK)、又は、出荷価格に占める日本での部品費や加工費・管理費などの割合が4割以上であること」
*加工された鉄鋼製品とは、ばね、くぎ、タンク、パイプ、ねじなどを指します。
今回の日タイEPA協定の改正では次のような表現になり、非常に簡略化されています。
「CC又はQVC四十」
*CCとは上2桁変更、この例では左からの2桁73類(鉄鋼製品)以外の原材料から作られればOK、ということです。要は72類(鉄鋼)から作っていることを説明すれば良いのです。
あるいは、
*QVCとは、品目全体に占める日本での原材料費や日本での加工費・管理費・利益・国内輸送費など、日本で発生する付加価値の合計値です。この場合のQVC四十とは、日本で発生する付加価値合計が40%以上あればよい、ということです。売り値(日本の港渡し価額)に占める日本で発生した諸々の価額が40%以上かを計算します。
次のイラストの左側がCCについて、右側がQVC四十についての説明です。CCの場合は左2桁(73類)が実際の品目とその原材料で違っていればOKということです。
日タイEPA協定でQVCと表現される付加価値基準は、他の協定ではRVC、LVCと記載されることもありますが同じ意味です。
まとめ
日タイEPA協定では、1)適用されるHS年度が2002年版から2017年版に変更された、2)原産地規則の条件についての記載が簡略化された、ことを踏まえ、EPAを活用して行きましょう。参考までに安全ピン731940のタイ輸入関税率(最恵国待遇MFN)は20%です。日本との間に3つあるEPAのどれを使えば関税が下がるのか、3つのEPAのうちどの原産地規則が利用しやすいのか、これは皆さんで考えてみて下さい。ヒントは次の表です。
最後に
更に深い内容や、これ以外の、RCEPとどちらを利用すれば良いのか、といった事項などについても中小機構の窓口相談で対応しています。何度でも無料です。お気軽にご相談下さい。
中小機構近畿本部
中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓) 芳賀淳
総合電機メーカーや精密機械メーカー等で海外市場開拓、海外法人設立・運営業務などに携わる。EPA/FTAの活用、効果的なオンライン商談のノウハウ等、海外展開で外せないテーマの講演を、中小機構、大阪商工会議所、ジェトロ等の公的支援機関にて多数実施している。2015年に合同会社トロを設立、中小企業の海外展開支援に携わる。
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公開日:2022年 2月 25日
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