貿易関係で2022年1月1日に登場したものは「2022年、RCEPがいよいよ使えるようになった!」の記事でお伝えしたRCEPだけではありません。西暦年の下1桁が2あるいは7の年にはHSコードも改正されます。つまり2022年は改正の年です。HSコードとは、貿易対象となるあらゆる品目を世界共通の6桁番号で表すコード番号です。

HSコードについて https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010701.html

ここで内容をおさらいし、古いHSコードで通関手続きすることのないようにしましょう。

HSコードの数字は左から数えます。RCEPやTPP11(CPTPP)などEPA/FTA協定に基づく輸入国関税率引下げ制度を利用する場合に、必ずHSコードの桁数を調べますが、桁数は下の図のように左から2桁、4桁、6桁と数えます。

出典:日本商工会議所EPAサイト

2.なぜHSコードは改正されるのか?

5年ごとの改正は、世の中の技術革新などによる新商品の登場に対応するためのものです。例えば2017年版ではハイブリッド自動車、カメラの自撮り棒(セルフィースティック)などが新たに登場しました。

既存の品目であってもHSコードが変わることがあります。例えば生きた馬は技術革新の対象ではありませんが、HS2002/2007年版では010110、HS2012/2017/2022年版では010121と上5桁目6桁目が番号変更しています。

HSコード改正の背景として他に、正確な貿易量を把握するために国際機関や国際的業界団体からの要請に基づき細分新設されることがあります。HS2022年版では、しいたけ、エクストラバージンオリーブ油などに、貿易量把握や国際規格との整合性を目的として新たなHSコードが設けられました。

過去のHSコードとの比較表は次の国連サイト(英語)で調べることができます。
https://unstats.un.org/unsd/classifications/Econ

3.HS2017とHS2022の変更例

全てをこの場で紹介できませんが、2022年版で無くなるもの(その他のものに統廃合される)には次のようなものがあります。イラストのHS番号は2017年版です。

皆さんの周囲を見渡しても、こうした品物を使っている人はほとんどいないのではないでしょうか?実際に日本からの輸出実績を見てもそれが伺えます。

地球儀は日本全国合わせても、FOBにして年間20百万円程度の輸出実績です。

留守番機能付き固定電話は2015年の770千円の輸出を最後に、その後出荷された実績がありません。

一方、2022年版で登場する品目があります。

軽量と強度を両立する未来の素材として注目を浴びるカーボンファイバー(炭素繊維)には、2022版から独自のHSコードが与えられることになりました。乗用車や航空機向けを含め今後の需要増が見込めることから独立の番号が与えられた、ということです。

我々が使っているスマートフォンも2022年版から独立したHSコードを与えられた品目です。

1月単月の輸入実績の推移を見ると2021年までは851712というくくりでガラケーも含まれた数値でしたが、2022年からは851713という番号でスマートフォンのみの数値を把握することができるようになりました。スマートフォンだけになった2022年1月の統計実績ですが、2017年から2021年までの各1月の数値と比べると、スマートフォンだけで過去の実績を上回ったことがわかります。

このように、HSコードと品目を定期的に見直すことによって貿易実態を理解することができます。

上記説明内容も含め、HS2022の改正内容全体像を知るには税関が公開している次の資料を参照ください。

https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/classification/hs2022_shiryo.pdf

*EPA/FTA協定に基づく原産地証明を使用する時は、原産地証明書のHSコードは当該EPA/FTA協定で定められた年度のHSを使います。インボイスにHSコードを記載する時は最新のHSコードを使います。例えば日アセアンEPA/FTA協定を利用する時は、原産地証明書に記載するHS年度は2002年版ですが、インボイスや輸出入申告書に記載するHSコードは2022年版を使います。混乱しないよう注意しましょう。

まとめ

2022年1月からHSコードが2022年版になりました。ほとんどの品目は2017年版HSコードのままですが、統廃合された品目、新たに番号を与えられた品目があります。通関でトラブルを起こさぬよう、自社が扱う品目の2022年版HSコードを再度確認しましょう。

最後に

HSコードについて更に深い内容やこれ以外の留意事項などについても、中小機構の窓口相談で対応しています。何度でも無料です。お気軽にご相談下さい。

中小機構近畿本部
中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓) 芳賀淳

総合電機メーカーや精密機械メーカー等で海外市場開拓、海外法人設立・運営業務などに携わる。EPA/FTAの活用、効果的なオンライン商談のノウハウ等、海外展開で外せないテーマの講演を、中小機構、大阪商工会議所、大阪産業創造館、ジェトロ等の公的支援機関にて多数実施している。2015年に合同会社トロを設立、中小企業の海外展開支援に携わる。

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