海外展開支援相談窓口でしばしば受ける問い合わせに「当社の製品(商品)はどこの国に売れるでしょうか?」というものがあります。一番重要なことは、「なぜ、その国に売りたいのか」ということですが、ここでは理由とか背景ではなくデータを活用して売り先可能性を調べる方法について説明します。

注:引用するURLおよび画面の出典は財務省(税関)ウエブサイトです。

製品(商品)によって網の粗さが違いますが、次の手順で調べます。
1) 製品(商品)の最新HSコードを調べる
2) 財務省貿易統計のA-1品別国別表で調べる
3) 対象期間(単月、年間、会計年度)、製品(商品)が含まれるHSコードで調べる
4) 表示されるデータを加工する(国別の金額、重量や容量や個数などの単位ごと)
5) データを可視化する(グラフや表にする)

2.HSコードを調べる

2022年4月現在の最新HSコードは2022年版です。2022年以降(2026年まで)のデータは2022年版を使います。2017-2021年のデータについては2017年版を使います。同様に5年遡るごとにHSの年度も2012、2007、2002となるので、調べたい統計の年がいつなのかを確認してHSコードを調べます。

では、1つの例として金魚の輸出実績を調べてみましょう。

1)Goole Chrome、Microsoft Edge、Firefoxなどの検索エンジンを使い「金魚 HSコード」で調べます。→ 親切な人がHSコードを公開しています。どうやら030110のようです。
2)上記1)で調べたHSコードを税関のウェブサイトで再確認します。税関のHSコードサイトはこちらです。HSコードの左から6桁は世界共通(輸出も輸入も共通)です。

輸出時(輸出統計品目表) https://www.customs.go.jp/yusyutu/index.htm
→ 2022年版は、030111、その次の7桁以降は100です。
輸入時(実行関税率表)  https://www.customs.go.jp/tariff/index.htm
→ 2022年版は、030111、その次の7桁以降は100です。ただし、こちらには金魚だけでなく鯉も含まれています。
検索エンジンで下調べしたHSコードは030110だったので、税関のデータと少し違うことが確認できました。よって、HSコードは税関のものを使います。

3) 調べたい年度のHSコードを確認
上2)で調べた金魚のHSコードは2022年版です。もし2010年の統計実績を調べるならば2010年時点のHSコードである2007年版を調べます。2007年版の金魚のHSコードは030110、7桁目以降は100です。2022年版と2007年版は6桁目の数字が違うことが分かります。

3.財務省貿易統計のA-1品別国別表で調べる

輸出実績や輸入実績を調べる場合、上記2項で調べたHSコードを使います。
財務省貿易統計
https://www.customs.go.jp/toukei/search/futsu1.htm

4.対象期間と品目を決める

A-1品別国別表をクリックすると条件入力のページに移動します。検索に必要な入力をします。
https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm?M=01&P=0

2022年、年内の累計、金魚030111、を入力すると検索結果が次のように表示されます。2022年2月までの030111.100は日本から全世界向けに約8百万円輸出されたことがわかります。
加工するためのデータが必要な場合はCSVダウンロードを選択します。

試しに2010年の輸出実績を調べるのに030111を入力しても検索ができません。前記2-3)で調べておいた030110で、2010年1-3月期の輸出実績を検索すると次のような結果が表示されます。

2010年の1-3月には台湾と香港向けに全日本で70万円の輸出実績だった金魚が、2022年には1-2月で800万円を超え、12年間でかなりの伸びを示していることがわかります。輸出先国も東南アジアと米仏向けに輸出されるようになったことがわかります。

5.データを可視化する

CSVデータをダウンロードして2010年と2021年の年間実績を比較してみましょう。2021年統計を調べる場合は2017年版HSコードを使います(幸いにも2022年版と同じです)。

国別では韓国、タイ、シンガポール向けが伸びており、中国と台湾向けは実績ゼロになったことがわかります。欧州向けにも実績がありますが、主にアジアを中心に輸出されています。
データがあればこの他にも、同一年の輸出先国別内訳(%)、金額を重量で割ることでkg当たり価格、などの実態を知ることができます。特に平均単価は、自社が新規で輸出開始する時の参考価格になります。
輸入の場合も同様な検索とデータ加工をすることで多くのことに気付くことができます。

貿易統計データを加工することで、製品(商品)によって精度に差はあるものの日本との貿易市場規模や単位あたり価格がわかるので、海外ビジネスを検討し始めた段階でこうした分析をしましょう。

最後に

税関が公表している貿易統計データを検索・分析することで、自社製品(商品)がどの国に売れそうか、単価はいくらくらいか、という基本情報を得ることができます。
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中小機構
中小企業アドバイザー(販路開拓実務) 芳賀淳

総合電機メーカーや精密機械メーカー等で海外市場開拓、海外法人設立・運営業務などに携わる。EPA/FTAの活用、効果的なオンライン商談のノウハウ等、海外展開で外せないテーマの講演を、中小機構、大阪商工会議所、大阪産業創造館、ジェトロ等の公的支援機関にて多数実施している。2015年に合同会社トロを設立、中小企業の海外展開支援に携わる。

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