EPA(Economic Partnership Agreement / 経済連携協定)とは、日本と諸外国の貿易・投資の自由化や円滑化を進める協定です。ちなみに海外では、EPAよりもFTA(Free Trade Agreement)という用語が一般的に使われています。

ここでは、EPA(Economic Partnership Agreement / 経済連携協定)の特徴や注意すべきポイントなどを説明します。

EPAには様々なメリットがあります。海外取引に従事する企業にとって特に重要なのが、貨物の輸入関税が下がる(またはゼロになる)というものです。これをEPA特恵関税と言います。

例えば関税率20%の貨物を、A国の港渡し価格(CIF)で1億円分輸出するとします。A国に輸入する際、1億円の20%に当たる2千万円相当の関税が課せられます。その輸入関税は、輸入者である現地企業側が支払うことになります。

もし日本とA国の間にEPAが結ばれていて、貨物が特恵関税の対象だとしたら、輸入関税は下がるかゼロになります。関税がゼロになるということは、2千万円分の製造原価低減に等しいわけで、かなり大きな効果です。

ただし、無条件で輸入関税が下がることはありません。EPA特恵関税の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

2021年1月現在、日本とEPA協定を結んでいる国や地域は21あります。以下のマップの緑の部分がEPAを利用できる、あるいはEPA署名済みの国や地域です。(外務省HP:「日本のEPA・FTA等の現状 」より)

出典:外務省(緑が発効済あるいは署名済、赤が交渉中)

EPAは、1)シンガポール、2)メキシコ、3)マレーシア、4)チリ、5)タイ、6)インドネシア、7)ブルネイ、8)ASEAN全体、9)フィリピン、10)スイス、11)ベトナム、12)インド、13)ペルー、14)オーストラリア、15)モンゴル、16)TPP11、17)日EU・EPA、18)TPP12(署名済)、19)米国、20)英国、21)RCEP(署名済)との間で存在しています。(2021年1月13日時点)

中国や韓国向けにEPAを利用したいと相談を受けることがありますが、現時点でこの両国とのEPA利用は、2020年11月に署名されたRCEPの発効を待つ必要があります。RCEPの発効には、ASEAN加盟国のうち5か国、非ASEAN加盟国(日、豪、ニュージーランド、中、韓)のうち3か国、の議会で批准することが求められます。

そのEPAが適用されるHSコードは何年版ですか?

HSコードは5年ごとに見直されます。2021年現在のHSコードは2017年版です。2017年版ではハイブリッドカーに独自のHSコードが割り振られました。(2017年版以前のHSコード~2012年版、2007年版、2002年版~にはハイブリッドカーは乗用車の「その他」というコードに含まれていました)

品目によっては年度でHSコードが異なるため、どのEPA協定を利用するか、その協定ではどの年度のHSコードが適用されるのかをしっかり確認してください。前項で挙げた17のEPA協定のうち、1)から9)は2002年版、10)から13)は2007年版、14)から16)および18)と21)は2012年版、17)と19)および20)は2017年版のHSコードが適用されます。(2021年1月時点)

HSコードを調べるには税関のサイトを利用します。

税関:輸出統計品目表

*HSコードの年度に4を加えた年の輸出統計品目表を参照してください。2007年版ならば2011年の輸出統計品目表を参照します。

*貨物の輸入関税率を決定するのは「輸入国の税関職員」です。正確なHSコードを知るには、輸入国のパートナーが輸入国税関に当該貨物のHSコードを問い合わせる必要があります。ただし、その貨物をすでに輸入した実績がある場合、輸入通関書類からHSコードを確認することができます。

該当品目は関税引下げ対象でしょうか? また、何%下がりますか?

関税の引き下げ率はEPA協定によって異なります。EPA関税の方が通常の関税より高くなることもあります。

先ほど述べたHSコードを使って、「どの国や地域向けの関税が何%下がるか」を確認できるツールを紹介します。

1)World Tariff :クーリエ便FedExが提供するサービスです。ジェトロと契約しているため、日本からは無料で利用できます。事前のユーザー登録が必要。検索に必要なHSコードは4桁です。

2)ITC Rules of origin facilitator :このサイトでは関税率のほか、日本と相手国間にいくつのEPA協定が結ばれているか、通常の関税率(=MFN税率)、各EPAを利用した場合の関税率が同一ページに表示されます。英語サイトですが、輸出国(日本)と輸入国、製品名(またはHSコード)の入力で簡単に検索できます。利用は無料。ただし1年前のEPA税率が表示されることもあるため、World Tariffとの併用をお勧めします

関税引下げに必要な手続きを取る

上記では、以下を説明しました。

  • 日本と当該品目の輸出先との間にEPA協定が存在するかを確認する
  • 品目のHSコード(年度にも注意)を調べる
  • 通常の関税率よりもEPA関税率の方が低いことを調べる

次に必要なのは、

  • 当該品目がEPA協定での「原産性を満たすか」どうかを確認する ことです。

EPA協定では「原産性」(日本製)についての条件が定められているため、その規則に従って「日本原産」であることを証明しなければなりません。 主に、「サプライヤー証明書」が必要な「農水産品」(肉、水産品、青果物、鉱物、他)と、「サプライヤー証明書」が必要でないこともある「加工品」(工業品、加工食品、他)、に大別することができます。

サプライヤー証明書が必要ない品目の原産地証明で代表的な方法は、当該産品のHSコードと、産品を構成する部材のHSコードを比べ、HSコードの上2桁・4桁・6桁が違っていればOKというものです。

例えば写真のはさみのHSコードは821300ですが、はさみを構成する部材のステンレス鋼は722240、鉄鋼製のねじは731815、持ち手のプラスチック部分は390730です。はさみのHSコードと構成部材のHSコードが上2桁・4桁・6桁の全てで異なっています。こうした場合に、「日本で実質的な変更がなされた」とされ、日本原産と見なされます。

各品目の原産性のルールを知るには?

税関の「原産地規則ポータル 」で調べることができます。該当するEPA協定にチェックを入れ、当該品目のHSコード6桁を記載してから上部にある検索ボタンをクリックしてください。

原産地証明の手順を知るには?

日本商工会議所の「EPAに基づく特定原産地証明書発給事業 」ページに作業フローが詳しく説明されています。日本が結んでいるEPA協定のほとんどは第三者証明という方式を採用しており、日本商工会議所が発給する「特定原産地証明書」のみが有効な書類となっています。

原産性の自己証明について

前項に記載した第三者証明ではなく、原産性の「自己証明」を採用しているのがTPP11 (CPTPP)、日EU、日米貿易協定(輸入者による証明のみ)、日英EPA、日豪(日豪は第三者証明も選択可)です。これらのEPA協定では第三者証明の方式が利用できないので、企業自らが責任をもって証明する必要があります。

ただし、産品の原産性を証明する根拠書類の作成は、自己証明でも第三者証明でも変わりないため、基本さえ押さえておけば大丈夫です。

EPA特恵関税を利用した輸出先国での関税引下げ方法や、日本に輸入する際の関税引下げ方法について、中小機構の窓口でも相談を受け付けています。無料で何度でもご利用頂けますので、お気軽にご相談下さい。

中小機構近畿本部 国際化支援AD 芳賀淳

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