「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第13回目は、シンガポールにお住まいの天野アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2021年12月15日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

シンガポールはマレーシアから独立して今年で建国56年を迎えました。そして日本とシンガポールの外交関係が樹立して今年で55年。両国間には、友好的な関係が築き上げられており、数多くの日系企業が早くから進出しています。非常に親日であり、日本を訪れるシンガポール人の年間訪問者数は過去最多で43万人を超えるほど(コロナ前)日本の人気は定着しています。

この様に友好的な彼等でも国が違うと考え方も違うので、そのポイントをお伝え出来きたらと思います。

シンガポールの富裕層と中間層の厚さ

建国直後、天然資源、水すらも十分にないこの島国は、同じ島国国家の日本を最良のモデルと考え「日本に追いつけ、追い越せ」の勢いで、とうとう日本の(一人当たり)GDPを抜くまで成長しました。ここで暮らしていると、そのスピードを感じられずにはいられません。コロナ禍の規制も政府主導でどんどん最適化されていくので常に重要事項はチェックしています。

私が飲食店の現場を監修していた際、頻繁に政府が新興国政府と会食されていました。「ああ、また新しい投資事業が始まる」と実際の動きを、肌で感じる事が再三とありました。

公用語が英語に加え多くの方言を話す中華系、マレー、インドなど、どの国にも通用する文化を併せ持つシンガポール人達は多様且つ柔軟なアイデアを駆使して働いています。

2020年のシンガポール統計局によると、家計所得がSG$6,000(約50万円)を超える家庭が約58%となりSG$12,000(約100万円)を超える富裕層は約32%に上ります。(日本の勤労者世帯の実収入は約55万円 総務省統計局より)

日本の商材は輸送コストなどを含めると、どうしても高額となるのでこの中間層以上をターゲットにせざるを得ないですが、この層の厚みを見ても難しい話ではありません。ただ、日本産、日系関連商品は特に何もしなくても高く売れるという話は10年以上も前の事で、高付加価値を付けるためのアイデアは必要です。

販路開拓で苦労した事

小売の話になりますが、パッケージやパンフレットなどの好みの色彩が全く違う事。ここは南国なので赤や緑などの原色が好まれます。日本の春や秋などのイメージをする淡い中間色はストライクゾーンの端にあるかアウトコースです。食品の味付けでは、南国特有の甘味があり、キリッとした醤油や塩味は「しょっぱい」と嫌われます。食品や生活用品などの品物の9割を輸入に委ねる為、物作りの工程を理解されていない国民が多い事も、すれ違いを起こす原因となります。例として某食品メーカー様が現地企業と商談を行った際、「私のミルクパンは美味しいですよ、可愛いパッケージが売りです」と黒と白のぶち模様のデザインを施したパッケージをバイヤーに見せた時、そのバイヤーは酪農を知らないので乳牛の黒と白のイメージが出来ず、話が弾まなかった事がありました。結局この商品は選ばれず。この様に日本では容易にイメージ出来る事でも、ここでは通じない事があるので、商談前に日本企業様には必ずキーポイントをお伝えする様にしています。

Withコロナのシンガポールが求めるもの

先述した様に品物の9割を輸入するシンガポールはコロナ禍のロックダウンで、商品需要の逼迫による欠品、サプライチェーン寸断などの経験から、以前から推進されて来た2030年までに自給自足率を30%までに増やす「30X30」プロジェクトを政府は強化しています。

現在、私は数少ない現地食品製造企業と日本の原材料を組み合わせた新商品を作り,新しいマーケットを作る事業に取り組んでいます。それは両国の売り上げ向上を目的としています。昨年度は沖縄のモズクを使った食品を県と合同で開発しました。この様にシンガポールで求められるものは、コロナ禍で変化が見られ、探求すれば、より多くのビジネスの機会を得る事が出来ます。シンガポールはコスト高で成功が難しい、香港の方が優位では?という話も聞きますが、アジアのリードを取るこの国で成功する意義は、ミラー効果で多くの国へ告知できるという事、世界中への商機を得るチャンスです。Withコロナの新時代を迎えたシンガポールと日本との規制のない往来が早く可能となり、より多くの新しい事業に携われる日が来る事をとても楽しみにしております

筆者紹介

天野 礼子 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

在星25年。現地法人代表。長く食品、飲料サービスに携わってきた経験と現地文化に造詣が深い事から幅広いネットワークを持つ。レストランの運営サポート、食品の輸入コンサルティング、県、や自治体のアドバイザー等を行なってきたが、近年は日系の教育関連の興味も高まり運営内容は多岐に渡る。現在は日本の知識と技術を駆使した植物工場、溶液栽培の企画を政府関連機関と立案中。コロナ禍でもオンラインを駆使してリモートで両国を繋いでいる。

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