「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第10回目は、香港にお住まいの百瀬アドバイザーに香港の現地事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2021年11月29日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

香港のコロナ対策

香港は2019年の12月頃から、世界より一足先にコロナとの戦いがスタートした。2019年12月中旬に初めて香港で武漢Wuhanから出たウイルスのニュースが報道された。香港はSARSの経験から、市民の緊張感と危機感は高く、町は一瞬で静まり返った。即座に街中からマスクや消毒用アルコールが消え、2020年1月の春節のイベントや旅行は即座にキャンセルされた。2020年2月から公共のスペース(交通機関、一般道路、公園、学校、スーパーマーケットなど)や2人以上のオフィスでのマスク着用がが義務化され、今でも継続されている。

SARSは2002年に中国広州からスタートしたと言われており、香港では1755人が感染、299人が死亡したが、約4か月ほどで香港国内のSARSは収束された。2019年末にコロナがスタートしたころの香港人は、「またか、、、それでも半年の我慢だから」と、かなりの危機感を持ち、半数以上の会社が在宅勤務に切り替え、また外出も自主的に制限していた。

2020年3月に、政府が香港への帰国者に対して2週間の自宅隔離を強制、9月には指定ホテルでの3週間隔離に切り替わった。その後香港は一度もロックダウンすることなくコロナを抑えている。香港は2021年11月現在時点で、感染者が合計12,411人、死者は213人。国内感染は過去3か月で一人となっている。香港は未だに、香港居住者以外の入国を認めていな

い為、観光客やビザなしの出張者は入国が出来ない。(中国本土からの訪問は、一日の人数制限を付けて許可)

レストランやバーは、ワクチンを2回受け終わっている者、もしくは7日ごとにPCR検査を受けている従業員のみ就労を許可されている。

また全ての市民は、レストランやスーパーマーケット、スポーツジム、病院、郵便局などに入る際には、政府指定の「Leave Home Safe App」という携帯電話のアプリの使用を強制されていて、入館時にアプリでQRコードをスキャンし、行動をすべて追跡される。もしもコロナの陽性者と濃厚接触をした場合は連絡が入り、48時間以内にコロナの検査を受けて報告する義務がある。それに逆らった場合は、自宅に保健所が押し掛け、罰金。さらに従わなければ禁固刑となる。

日本産農林水産物の消費

香港の日本産農林水産物の輸入量は過去16年連続世界一。2020年は前年比の1.2%増で、2061億円、日本産農産物輸出の全体の22.3%を占めた。特にコロナ間は国外に出られないことから、日本産農産物の香港内消費が大変順調で、特に日本産アルコール飲料の輸入が増えた。中でも日本酒は2019年が39.4憶円に対し、2020年は61.8憶円と、約1.5倍に伸びている。高級日本食レストランの予約は半年先まで満席というお店がかなり多く、大変好調である。

香港政府はコロナとの戦いが始まってから、一般市民に対し現在までで2回給付金を給付している。2020年に一人10000香港ドル(約14万円)を銀行振り込みまたは小切手で給付、2021年には5000ドルの電子マネーを3回に分けて給付した。一回目の現金給付はそのまま貯蓄や投資に回され、当初の予測より消費に繋がらなかったという報告を受け、二回目の給付は使用期限を付けた電子マネーでの給付となった。この電子マネーはスーパーマーケットやデパート、レストラン、スパなどでも使用が可能。日系スーパーマーケットも給付後は特に大繁盛で、入店に行列のできる店舗などもある。特に好調なのは日本のドン・キホーテが直営で経営する日系スーパーマーケットDonDonDonki。2019年に一店舗が九龍島に出来て以来、現在8店舗を経営する。今は特に「日本に行った気分になれるから」と若者に大変人気だ。

香港は国内エンターテイメントが極めて少ない。香港市民はコロナの前は近所のマカオや深圳へ行き、日帰りでコンサートやショーを楽しんできた。香港内にもコンサートホールや劇場はあり、コンサートや舞台、スポーツイベントなども行われているが、海外からのアーティストやアスリート無しでは成り立たない。香港は未だに入境の際に2から3週間のホテル隔離が義務図けられる為、アーティストやアスリート不足から、国内エンターテイメントはほぼキャンセルとなっている。

海外旅行が難しいこの2年は外食やホームパーティー、また島国ならではのWater Sports(ウインドサーフィン、パドルボート、カイヤック)やクルーズ船を貸し切ったパーティーなどが主なエンターテイメントとなっている。

国家安全法

2020年6月30日に、香港国家安全維持法が署名された。大まかな内容としては、新しく4つのポイントが違反とされる。

国家分裂:「香港独立」といった主張が違法になる
政権単複:香港政府と中国共産党への批判が違法になる
テロ活動:テロとみなされる集会の自由が制限される
外国勢力との結託:民主派が欧米に支援を求める動き自体が違法となる

国家安全法が執行された2020年7月以降、表立ったデモ行為は行われていない。また、平和な集会なども違法とされているため、集会を取り纏めようと試みた人々も逮捕されている。一般市民の日々の生活が目立って変化した。という事は大きく見られないが、公務員や特に教育の部分では大きく変化がみられている。香港政府は、公立の小学校、中学校、大学を含む教員や、その他香港の公務員18万人に対し、「中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を尽くす」という内容の宣誓書にサインを義務づけた。宣誓をしない職員は、辞職、または停職となっている。香港には外国籍を持つ公務員もたくさんいる。例えば香港在住のイギリス人裁判官や、アメリカ人大学教授などがこの宣誓書に対してサインを義務図けられるのか、今のところ明確ではないが、時間の問題であろう、という見方が強い。これを理由に母国に戻る外国人も多くみられている。

1997年香港返還前に生まれた香港人には、イギリス政府からBNO(British National Oversea)という英国海外市民旅券が発給された。国家安全法が施行されてからの1年で、約10万人の香港人が既にイギリスに移民したという統計が出ている。ただしその分、中国本土から香港への移民も急増し、香港の物価や不動産は全く衰える様子はなさそうだ。

筆者紹介

百瀬 あゆち 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

香港在住。2011年に現地法人を香港に設立。地酒専門の日本食レストランを経営。日本酒学講師、調理師、利き酒師の資格を持つ。香港の複数の大学での日本酒講師、レストランコンサルティング、スタッフトレーニングなどを主に行う。2012年酒サムライ叙任。2013年より香港JETRO酒類コーディネーターを務める。

中小機構について

中小機構の「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。

ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。ご利用は「何度」でも「無料」です。どうぞお気軽にお申し込みください。

「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。