「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第6回目は、オランダにお住まいの岩本アドバイザーにオランダのコロナ事情をお聞きしました。

※なお、このレポートは2021年9月16日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

初めてオランダに赴任したのは、チェルノブイリ事故の前年1985年だった。当時のオランダは日本に比べるとずいぶん質素だった。日本では見たことのないソ連製の車が当たり前のように走っていたのを思い出す。また助手席側のドアミラーが付いていない車が多いことに驚いた。

セールスアシスタントの給料は、25歳なら2,500ギルダー(1,136€、約15万円)が相場だった。

食事も質素で、社員の昼食は褐色のパンにスライスしたチーズかハム、それにりんご1個が普通。卵焼きやポテトサラダは見たことがない。

あれからほぼ35年後の2018年に4度目の赴任。コロナ前のクリスマスは、大きな紙袋をもった買い物客がショッピングモールに溢れていた。その光景は、消費税は上がるが給料は上がらない日本とは大違いだった。

草地だったアムステルダム南部は、オフィスビルと高級マンションの建設ラッシュ。

高速道路を走れば、東京では見たことのないランボルギーニのSUVやベントレーのスポーツカーに何度も出合う。テスラ、ジャガー、ポルシェが普通の住宅街に路上駐車してある。

オランダは景気がいいぞ、そう実感した。

コロナ襲来

ところが年が明けた2020年、オランダにもコロナがやって来た。3月には厳しい措置、いわゆるロックダウンが実施された。夜9時以降は外出禁止だが犬の散歩は対象外だった。尿意を催した我が家のマルチワワを遅い時間に外に連れ出すと、まったく人通りがない。たまに走っているのはUBER Eatsの自転車と救急車。不気味だった。

商店は食料品店と薬局以外は営業停止。飲食店は出前と持ち帰りは許可されたが、料理が不得手なひとり者には辛かったそうだ。床屋も閉まったので、奥さんに散髪してもらえない男の頭は、いつの間にかボサボサになっていった。

学校はオンライン授業に切り替えられた。日本人学校も例外ではなかった。筆者のアパートの近くにスクールバス乗り場があるが、子どもたちの姿が見られなくなった。

オランダ政府がとった政策は、規制で経営が厳しくなった企業が従業員を減らし失業者が増えるよりも、企業の人件費を支援することで解雇を防ぐという方法だった。

規制緩和

ロックダウンにより感染者が減ったため、政府は夏に規制を緩和した。飲食店はテラスでサービスを提供できるようになった。もちろんアルコールの制限はない。学校はちょうど夏休み。長い引きこもりにうんざりしていた学生たちは、ここぞとばかりに外に出てビールを片手に大はしゃぎしたのだ。反動は早速秋に現れた。政府はその後、感染者数の増減を見ながら規制を緩めたり強めたりしている。

9月15日、在オランダ日本大使館から在留届を出している日本人全員に最新情報がメールで送られてきた。ありがたいサービスである。9月25日にほとんどの規制が撤廃されるという内容だ。

規制緩和の動き:
1.5メートルのソーシャルディスタンスとマスク
25日からソーシャルディスタンスを撤廃する。しかし引き続き維持するよう推奨する。
マスクは現在、交通機関と駅構内のみ強制、その他は不要だ。8月に総合病院に行ったが、医師、看護師ともにマスクをしている人はほとんどいなかった。

在宅勤務
25日以降「可能なら在宅勤務すること。必要があれば出社してもよい。」と若干緩くなる。オランダの大手企業は面談を申し込んでも、対面ではなくオンライン。政府の指針に忠実な印象を受けるとは日本人出向者のことば。中小企業は対面で会ってくれるそうだ。

見本市
アムステルダムRAI (ライ)屋内展示場が今月(9月)18か月ぶりに再開した。写真は23日開催の仮想通貨見本市の巨大なポスター。撮影時は見本市1週間前なのに、建物前に人通りはほとんなかった。

25日以降、コロナエントリーパス(スマートフォンに表示されるワクチン接種証明のQR CODEまたは陰性証明書)があれば入場可能になる。

飲食店
25日以降1.5メートルの制限が撤廃撤廃され、人数制限がなくなる。今まで通り、深夜零時まで営業可能。アルコール提供もできる。

交通機関
今まで義務とされていた公共交通機関内と駅構内でのマスク着用も、25日以降は駅構内・プラットフォームでは不要になる。

学校 
25日以降は以下の通り規制が緩和される。

高等教育機関:
・1クラスの最大人数撤廃。マスク不要。

中等教育機関:
・廊下でのマスク不要。
・ワクチン未接種の生徒は週2回の自己検査が義務。
・クラスメートが感染したら10日間自己隔離。

幼児、初等教育機関:
・クラス内の1名が感染しても学級閉鎖は不要。
・複数名の場合、学級閉鎖が勧告されることがある。

景気見通し
すでにオランダの景気は、特に材料メーカーなどで回復基調が顕著だ。株価も上昇している。失業率はわずか3.2% とリーマンショック直後の3分の1にまで下がっている。職種を問わず優秀な人材を採用するのが困難な状況にある。

最後に

オランダ人の贅沢をしない生き方と32キロメートルの大堤防を築いた粘り強さを観ると、コロナにも耐え抜くことは間違いない。来年経済はさらに持ち直し、再びヨーロッパの優等生の地位を獲得すると信じている。

筆者紹介

岩本 宏紀 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

1985年に事務機器メーカーの欧州統括本部(オランダ)勤務を皮切りに、デンマーク・フランスの現地販売会社経営に携わった。1999年より健康医療機器メーカーのフランス現地法人経営、欧州統括本部運営など、一貫して欧州及びその他海外地域での事業運営、販売管理に従事した。対応した課題は営業分野に留まらず、人事・総務・経理など幅広い。2020年にコンサルティング会社を設立し代表を務める。中小企業の海外事業を多角的な視点からアドバイス、支援を行っている。

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