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ミラノサローネに出展して世界に発信しよう~海外をちょっとのぞき見コラム 第34回~

地域:イタリア カテゴリ:現地レポート
ミラノサローネに出展して世界に発信しよう~海外をちょっとのぞき見コラム 第34回~

「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第34回目は、イタリア在住の伊藤アドバイザーに現地事情をお聞きしました。

※このレポートは2025年10月時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

世界最大のデザイン、ライフスタイルフェアであるミラノサローネ、ミラノデザインウィーク(MDW)は、1961年に家具見本市として始まりました。今では毎年世界中からあらゆる分野のものづくり関係者、プロダクト、建築、クラフト、ファッション、ITの大企業・中小企業、バイヤー、メディア、デザイナー、学生など、大勢の人たちが来場します。会期中は50~100万人規模の集客がある、世界で唯一無二のライフスタイルのトレンドや新作を発信・受信する場です。

ミラノサローネは多様な発表の場

毎年4月にロー・フィエラ・ミラノ会場で6日間開催される家具の国際見本市、ミラノサローネは1961年の開業以来、家具と並行して照明器具が展示発表されてきたエウロ・ルーチェ、1974年から始まったキッチンとバスルームデザインに特化したエウロ・クチーナ、そして1998年から始まった若手デザイナーの登竜門・サローネ・サテリテなど、家具だけではない生活用品の新作デザイン発表の場となっています。

コロナ禍で中断された2020年以降は多くのイタリア大手主要家具ブランドがミラノ市内のショールームで新作発表を行うフオリサローネ(ミラノサローネ外会場、という意味)での展示に変更したため、本会場の大きなスペースの空きが多くなったのを機会に、主催元のCOSMITが家具以外の生活用品全般の展示パビリオンを設けるなど、世界のライフスタイルの中小製造業やデザイン企業が出展できるトレードショーになっています。

ミラノサローネ本会場内の照明器具展示会”Euro Luce”の様子
ミラノサローネ本会場での展示
Riva社の杉の端材から作ったオブジェ、アニマルコレクション

創業以来、生活スタイル全般の新作デザインを発表する場、という性格の強かったミラノサローネは、フオリサローネのみならず、本会場の方も多様な発表展示ができる場になりつつあります。

フオリサローネは自由な発表の場

1980年代からはポストモダンデザインのアルキミアデザイン運動を主導したA.グエリエーロ氏、A.メンディーニ氏らの発案で、ミラノ市内の様々な会場で開かれるミラノファッションのスタイルを踏襲し、ミラノ市内の店舗やショールーム、貸しスペースを利用してフリースタイルで展示会を行う、“フオリサローネ”が行われるようになりました。

1989年からは主要デザイン誌のINTERNI誌の編集長G.ボヤルディ氏の発案により、市内でバラバラに行われていたフオリサローネをメディアサポートとして情報をとりまとめ、訪問客が効率よく市内会場を見て回れるよう工夫し、本会場でのミラノサローネと合わせたミラノデザインウィーク(MDW)として、世界に先駆けたメディア統括型のデザインフェアとして発展させました。 そのおかげで現在市内の歴史建造物から工場跡まで、ショールーム、貸スペース、2000以上の会場で開かれたフオリサローネはあらゆる分野のアート、デザイン、クラフトの自由な発表、発信の場となっています。

MDWフオリサローネ2024の展示会場になったリッタ宮殿
MDWフオリサローネ2025ブレラ通りでのスペインのファッションブランドLOEWEのTEAPOT展

ミラノサローネで展示発表することの意義

ミラノサローネ、ミラノデザインウィーク(MDW)の近年の傾向は、世界のデザイン関係、自動車、ファッション、グローバルIT、最先端テクノロジー企業から手工芸メーカーまで出展しているので、世界中のあらゆる業態やライフスタイル全体のトレンドをリサーチすることができます。

そしてここに出展することには、更に大きな意味があります。出展企業にとっては自身の業態だけでなく世界のあらゆる業態の中での自分たちの位置付けが確認でき、自分たちの企業文化、ポリシー、商品に興味を持ってくれる世界中の関係者と出会う機会にもなります。 また、イタリアは、人の生活に対する大らかさ、ライフスタイルをセグメント化しない洞察の深さを持つ文化大国でもあります。ポリシーやオリジナル商品がしっかりある企業は、どんなに小さな展示会でも出展する意義があり、世界中のポテンシャルユーザーと出会える機会になるのです。

ミラノサローネで発表するには?

文化度の高いイタリアにおいて日本企業は尊敬の対象であり、非常に友好的に迎えられます。自分たちの企業ポリシーに自信があって、世界に進出したいと思っているなら、企業規模に関わらず、ミラノサローネ、ミラノデザインウィーク(MDW)への出展を考えるべきです。例えば、日本の伝統工芸分野で、さらなる国内での需要が見込めず、家業存続の危機が迫る中、ここで小さな展示会を開いたことをきっかけに、世界中に販路が広がり、国際的に知られるようになった企業は数多くあります。

フオリサローネは市内のあらゆる会場を使った自由な展示会なので、勇気をもてば誰でも参加できます。勿論効果的な展示会にするためには、現地に精通しているコンサルタントや中小企業アドバイザーに相談して出展するのがよいでしょう。2025年4月でもデザイナー、ベンチャー企業、中小製造業を含む日本企業が数多く出展しており、成果も上々のようです。海外進出を検討されている企業のみなさま、 Ci vediamo a Salone !(サローネで会いましょう!)

筆者紹介

筆者紹介写真

伊藤 節 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

ミラノにデザインコンサルタント会社を1995年創業。以来世界中の国際企業のデザイン開発、コンサルタント業務を行う。ミラノサローネには1989年から36年間毎年数多くの展示会と出展コンサルタントを行う。サローネの他パリメゾンやフランクフルトアンビエンテなど欧州の主要フェアにも毎年出展し、政府関係のコンサルタントも行っている。筑波大学芸術系教授、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、ミラノ工科大学特任教授。国際デザイン賞受賞多数。

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