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中国向けWebサイト制作のポイント

地域:中国 カテゴリ:海外進出ノウハウ
中国向けWebサイト制作のポイント

はじめに

世界最大と言われる中国マーケット。多くの企業が参入する一方で、成功し難い、癖の強いマーケットという認識もあると思います。このコラムでは、デジタルマーケティング面での中国の「癖」を明らかにすると共に、法規制上の注意事項、配慮すべきポイントについて解説します。中国ビジネスの独特なスタイルや思考なども感じていただければ幸いです。

「見えない壁」を超えろ!中国特有のWeb事情とは?

ビジネスにおいて中国は「怖い」「わからない」という印象を持つ方は多いと思います。特有の考え方や規制があるからでしょう。インターネット界隈においてもそれは同様です。中国特有のインターネット事情は、Web制作やデジタルマーケティングに携わる者なら必ず一度はぶつかる「壁」だと思います。
この壁とは「グレートファイアウォール」と呼ばれる中国政府のウェブ上の検閲およびブロックシステムで、ご存じの方も多いと思います。Google、YouTube、Facebook、Instagramなどの主要なインターネットサービスが中国国内からは閲覧不可となっています。Webサイトにこれらのサービスを組み込むと、表示が崩れたり読み込み不能になったり、ユーザー体験を著しく損なってしまいます。そのため、中国向けサイトでは百度(バイドゥ)やテンセントなど現地サービスへの置き換えが必須です。
また、外部スクリプトやホスティングにも注意が必要で、Googleが提供するJavaScriptライブラリなどもブロック対象となり得ます。さらにサーバー選定やICP登録、データ保護法*への対応といった制度面の理解も不可欠です。「Web制作」であっても、日本と中国ではまったく異なる前提と技術設計が求められます。

*中華人民共和国個人情報保護法

伝える ≠ 伝わる。文化に寄り添うWeb設計を

中国向けのみならず、Webサイト制作において大切なことは伝えたい相手に伝わる言葉で語ることです。言語や文化への配慮なしにはWebサイト制作は難しいです。単純な翻訳だけでは、現地ユーザーの心には響きません。日本語の文章をそのまま中国語に訳すと、意味が伝わりにくかったり、ニュアンスがズレてしまったりすることが多々あります。また単語1つで意図せず不快感を与えることもあり、Webサイト構築においては「中国脳」でサイト全体をゼロから再構築する視点が不可欠です。
また、中国語には簡体字と繁体字があります。例えば中国大陸、台湾、香港など地域ごとに使われている字体が異なるため、ターゲット地域によって、使い分けが必要です。

さらに、フォントや文字サイズ、UI設計なども閲覧環境と現地トレンドに合わせる工夫が求められます。言葉だけでなく、感覚や価値観に寄り添う設計こそが、信頼されるWeb体験を生み出します。私たちはこの作業を「ローカライズ」と呼んでいます。ローカライズは単なる翻訳ではなく、文化への共感を形にする、クリエイティブな行為です。

ただのサイトじゃ違法になる?!中国規制の落とし穴とは

中国向けWebサイト制作においては、法規制への対応が欠かせません。特に中国では広告法が非常に厳しく、「最も」「最高」「唯一」などの誇張表現が禁止されており、ホームページ内のキャッチコピーにも注意が必要になります。
また、サイトを中国国内サーバーで運用する場合は、ICP(Internet Content Provider)登録と公安への届け出が義務です。これには中国法人の設立が前提となり、準備や手続きに時間とコストがかかります。さらに、個人情報保護法やデータセキュリティ法、サイバーセキュリティ法などの法令が存在し、ユーザー情報の扱いやデータ管理体制に対して厳格な対応が求められます。こうした規制は単なる技術対応ではなく、企業姿勢そのものが問われる重要な要素だと言えるでしょう。

まとめ

中国向けWebサイト制作は、単なる翻訳作業ではなく、環境・言語・法規・文化の全領域を横断するプロジェクトです。Google系サービスが遮断され代替手段への置き換えが不可欠であり、見えない部分、例えばスクリプトの依存もパフォーマンスや表示可否に影響を及ぼします。
コンテンツ及び表現面では、現地ユーザーに向けた構成・仕様が求められ、簡体字/繁体字の使い分け、フォント選定まで細やかな調整が必要になります。法的には、ICP登録や広告表現規制など、日本とは異なるルールへの対応が必須です。こうした要素はすべて現地の検索エンジン(百度など)やSNS活用に直結し、マーケティング成果にも影響します。中国向けWeb施策は、現地文化への深い理解と技術的・戦略的な対応力が不可欠ですが、これを正しく開発、展開することによって、中国市場への道もアプローチが可能になります。挑戦し甲斐のある市場であることは間違いないので、これらに注意してチャレンジしていってください。
中国向けWebサイト構築のお悩みには、中小機構の海外展開相談を是非ご利用ください。構築のすすめ方や、中国市場に正しく伝わるサイトづくりをご支援します。

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筆者紹介

中島 嘉一 中小機構 中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓)

家電メーカーの元海外駐在員。デジタルをフル活用した海外営業支援が専門です。英語圏・中国語圏を中心に、Linkedin等を起点とするデータマーケティング、多言語Webサイト制作、AI活用等、企業様の課題に応じたアドバイスをしています。ローカライズを意識し、海外顧客とダイレクトにつながるスキーム設計を支援します。

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