
「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。 第33回目は、オランダの食文化と食の最新情報を、オランダ在住の田代アドバイザーにお聞きしました。
※このレポートは2025年5月時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。
オランダのこと、どれくらいご存知でしょうか。ヨーロッパにある小国であまり馴染みのない国に感じるかもしれませんが、オランダと日本は400年以上の交流の歴史があり、両国の関係は良好です。
オランダの国土の3分の1は海面下、国で一番高い山は322メートルというとても平らな国で、大きさはちょうど九州くらいです。首都があるアムステルダムは北緯52度にあり、北海道の稚内(北緯45度)よりももっと北にあります。王様がいる王国で、王様がお住まいの宮殿の名前はハウステンボスです。
オランダは西ヨーロッパの中央に位置するという地理的要因、またヨーロッパ有数(ロンドン、パリに次ぐ3番目)の旅客数を誇るスキポール空港とヨーロッパ最大の港であるロッテルダム港があり、先進的で優れた物流インフラを持つことなどロジスティック的要因から、「ヨーロッパの玄関口」と呼ばれています。
首都のアムステルダムから、電車でパリまでは3時間半、ドイツのデュッセルドルフまでは2時間、ロンドンまででも4時間半と、ヨーロッパの主要都市へのアクセスが非常に良い立地です。
オランダでは、国民のほとんどが流暢に英語を話します。プライベートセクターだけでなく公的機関でも英語で情報を受け取ることが可能であり、職員とも英語でのコミュニケーションができ、商取引がしやすい国であると言えます。

オランダの東にある大国がドイツ、南にある小さな国がベルギーで、その下の大国がフランス、海を挟んで西にあるのがイギリスです。
鎖国していた日本にとって、オランダは唯一の交流がある外国でした。なぜオランダだけが日本と交流することになったかというと、ポルトガルやスペインのようにキリスト教の布教をせず、交易だけすると幕府と約束したからなのですが、そのことをオランダ人に話すと、みな口を揃えて「(合理的で商売人気質の)オランダ人らしい!」と言います。
また、オランダでは安楽死や同性間結婚を合法化した最初の国で、とてもリベラルで多様性を受け入れる国でもあります。
オランダのスーパーにみるアジア食材
オランダは、インドネシアが植民地だった関係でインドネシア料理、同じく植民地だったスリナム(南アメリカ大陸の北東部に位置するインド系、アフリカ系などが共存する多民族国家)経由でのインド系オランダ人も多いので、インド料理などアジア料理にとても馴染みがあります。そのため、どこのスーパーにもインドネシア食材やインド食材などが置いてあります。
日本食に関しても、とても人気です。ほとんどのスーパーで日本食材のコーナーがあり、惣菜コーナーには寿司やおにぎりや餃子が売っています。インスタントラーメンのコーナーには、インドネシアや韓国、日本のものが置いてあり、日本でも有名な「出前一丁」は、「Demae Ramen」という商品名で日本にないフレーバーも売っています。
スーパーの惣菜コーナーにあるおにぎりや寿司は、オランダの法規制により冷蔵温度が低いことで酢飯が冷たくパサパサしていて日本人の口にはあいませんが、「Onigiri」はオランダでも受け入れられつつあり、私の家の近所にあるおにぎり屋さんは、買いに来ている人はほとんどが日本人以外のようで、評価も高いようです。
おにぎり屋さんのメニューは、日本でも定番の明太子、うめ、こんぶ、焼き鮭以外にも、こちらで人気の枝豆、わさびなどビーガン用のおにぎりもあります。
他に人気の日本食は、(オランダだけではありませんが)抹茶はとても人気で、カフェに抹茶ラテがあることは珍しくありません。ラーメン屋さんもたくさんあります。

日本食材の棚にあるのは、スシライス(日本米)、海苔、みりん、わさび、パン粉、うどん、日本的なマヨネーズ、ガリ、味噌などです。

スーパーにあるにお寿司、おにぎり、 巻き寿司はどこか惜しい感じ。 ネーミングもOSAKA、 NAGANO、SAMURAIとミスマッチ感があります。

おにぎり屋さんのおにぎりは、ビーガン、グルテンフリー、肉なしの表記があります。
フレキシタリアンとプラントベース
オランダでは3分の1くらいの人がフレキシタリアン(基本的に野菜中心の食事で場合によっては動物性のものも食べる)ではないかと言われており、私がよく行くスーパー では、ビーガン食品が一目でわかるようになっています。
ビーガン食材は、ビーガンの人しか食べないというわけでなく、ベジタリアンの人は間違いなく食べられますし、フレキシタリアンの人たちや、普段はお肉を食べる人たちがたまにお肉の代用として食すこともできます。そういう意味で、最近はビーガンというより「プラントベース(植物性のみ)」という表記も増えてきたように思います。
そのようなプラントベースであるビーガン食品は、ほとんどの加工食品で見つけることができます。牛乳の代わりに豆乳やオーツミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルクなどは日本でも見かけるものだと思いますが、チーズ、バター、ヨーグルトなどその他の乳製品にもビーガン用のものがあります。ビーガン用ハムはいくつも種類があって、陳列棚一列全部がビーガン用のハムやパテというところもあります。お肉もどきも、ミンチでビーフっぽいもの、 チキンの胸肉っぽいもの、バーガー用のパテっぽいもの、ミートボールっぽいもの、チキンカツっぽいもの、ナゲットっぽいものなど、多種多様なものがあり、さらに複数社から販売されているので選択肢はかなり多いといえます。

商品タグの色分けで、緑黄色がオーガニック、濃い緑はビーガン、水色は人気の価格帯、オレンジはお買い得商品と、一目で探しているものがわかります。
プラントベースのチーズ、サーモン、ペパロニ、ケバブ、サラミなどです。
日本との関係や近年の日本の影響
オランダと日本の関係は非常に強く、国民も日本への興味が強い印象を受けます。
ドラえもんをみて育った世代が本物(日本製)のどら焼きに憧れたり、宿坊体験でビーガン料理を嗜んだりするなど、より深く日本の食文化に触れる人が多くなってきたようです。
日本製品に対しての信頼度は高く、日本食は健康的だという印象も強いので、日本食を海外で売ってみたいとお考えの企業は、高品質の 健康志向のもの、日本の精進料理をヒントにしたプラントベースの食品関連をオランダからスタートするというのも検討の余地があるのではないでしょうか。
筆者紹介

田代 紫野 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
アムステルダム(オランダ)在住 中小企業診断士/ウェブ・グラフィックデザイナー
日本からヨーロッパに輸出したいとお考えの中小企業を支援しています。主にオランダ近辺国の人々の声を反映した戦略、商品の英表記について、アイデア、欧州用パッケージなどのご提案、英語のホームページ、会社案内、商品紹介などのパンフレット作成、マーケットリサーチ、展示会出展のサポート、翻訳・通訳、英語での現地窓口代理業務、SNSを使ったブランディング、少人数のテストマーケティングとアンケート調査、フィージビリティスタディなどを行っています。
旅が好きで、これまで訪れた国は約60カ国。
中小機構について
中小機構の「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。
ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。ご利用は「何度」でも「無料」です。どうぞお気軽にお申し込みください。
「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。
公開日:2025年 6月 2日
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- オランダの特徴
- オランダのスーパーにみるアジア食材
- フレキシタリアンとプラントベース
- 日本との関係や近年の日本の影響
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