「戦略的知財活用海外展開補助金(正式名称:戦略的知財活用型中小企業海外展開支援事業費補助金)」は、高い技術力を保有し、知財を活用した海外展開に取り組む中小企業者に、出願費用を一部助成するとともに、海外ビジネスの専門家による海外展開サポートを行う事業です。
中小機構では、令和元年度に10 社を採択、以後3年間に渡って、支援を行ってきました。
この記事は事業最終年度である令和3年度に作成した事例集を再編集したものです。
事例集については中小機構ウエブサイトで公開しています。また、戦略的知財活用海外展開補助金は令和3年度で終了した事業ですが、中小機構では中小企業のみなさまの海外展開を支援しています。詳しくはお近くの中小機構地域本部までお問い合わせください。

次世代社会をサポートするCCの技術

当社は、電子部品の電極等のコーティング技術によるソリューションを提供する企業として創業。研究・開発に特化するために、製造、販売などを提携企業と機能分担するビジネスモデルを構築し、実績を残してきた。複数の特許を各国に継続的に出願しており、PCT出願や知財面の強化の支援を期待して、戦略的知財活用海外展開補助金に応募した。出願数が年々増加するにつれ、社内知財管理の重要度は増し、ベンチャー企業故の限られた経営資源にマッチした効果的な管理体制の確立に対して支援を行った。

電子部品用の電極塗布装置を開発、微細で高精度な技術力が強み

2017年に設立後、種々の電子部品用の外部電極塗布装置を開発、製造販売を行い、顧客の工場等への設置から立ち上げまでを行っている。研究・開発・設計に特化した技術系企業で、大手代理店を通じ国内外で順調に顧客を拡大している。

世界一のコーティング技術を多数有し、特に微細電子部品の外部電極塗布装置では世界トップシェアを誇っている。このコーティング技術(液相、気相)について、複数の特許を継続的に国内外に出願している。特に出願に当たっては、各国の法制度の違いを理解した上で、複数の優先権主張に基づく出願や、国によってはバイパス継続出願や、部分継続出願(CIP)等を行っており、必要な技術の戦略的な権利化活動を行っている。また、例えば5G等の通信規格に対応した、超小型電子部品の電極に用いる高精度なコーティング技術等を駆使し、顧客の要望に応じたソリューションを提案し、装置として提供できるのが強みである。

CMVA-500:気相成膜装置

CMD-3000:外部電極塗布装置

今後は、海外でもスマートフォンなどに使用される電子部品の微細化がさらに進むことが想定されている。より高度な微細電子部品の電極塗布精度が要求されるようになると、対応できる塗布装置メーカーは世界中でも限られ、高度な技術力を保有している当社のシェア拡大が期待できる。当社の強みを発揮した外部電極塗布装置や、室温成膜が可能となる技術を世界に提供することを目指しており、既に代理店を通し東アジアを中心に30社から引き合いがあり、これらに対応している。

技術特化型企業を目指す当社は、複数の特許を国内外に出願中で、経営層や顧問弁理士中心に知財管理が行われていた。更なる発展には、総社員の80%を超える技術者の発明への関与や特許出願の機会の拡大、そして、その管理の強化が必要であり、その知財管理の強化面の支援を期待して当事業への応募を決定した。

特許の見える化、そして知財人材の育成に取り組む

今回、知財経験のある担当者が、知財管理の強化を推進するよう命じられた。会社として知財管理強化への問題意識は高く、アイディアも豊富だった。初年度は、現状の特許の登録内容や権利維持状況、そして各国における出願中特許の審査経過等の管理状況の更なる見える化と、日常的に出願される特許を効率的に更新できるパテントマップの充実に挑戦した。複数の特許の関連性などについて知財専門家が適宜アドバイスを行ったことで、あるべきパテントマップの整理ができ、情報の見える化が大幅に改善された。現状の特許の整理をすることができたため、次の段階として、特許の価値や活用についての評価が期待されている。

二年度目以降は、次なる命題として、「幅広い技術者に発明の重要性を理解してもらい、発明に関与する機会を与え、必要な特許出願をする」ことについて検討を始めた。
その結果、企業としての職務発明制度、出願奨励制度の導入や、それを管理する社内出願審査プロセスとその運用が効果的であると認識した。当社のような小規模な組織は、専任者が常時在籍する形の知財管理部門の設置が難しいが、そのような当社にマッチした仕組みについて、知財専門家が検討、アドバイスを行い中長期的な目標が設定できた。

現状の課題として、各技術者の知財に対する意識や知識に個人差があったため、それを補うために社内知財研修を行い、知財知識の底上げと核となる知財人材の発掘と育成を目指すことにした。担当者が作成した社内知財研修のテキスト案の内容についてアドバイスを行い、三年度目、社内知財研修(基礎編)を開催することができた。今後も適宜検討を行いながら、内容を発展させていく予定である。

当社の出願特許ヘリカルプロットを示す概念図。塗布プロセスにおいて、電子部品と定盤を相対的にヘリカル(螺旋状)に動かす事で電極形状を均一にできる。

本装置で塗布したセラミックコンデンサ。0.2mm×0.1mmサイズまで対応。

会社一丸となって、知財体制を強化していきたい

当社は液相技術事業と気相技術事業の二つのセグメントがあり、各々の事業において知財に対する取組が異なる。

液相技術事業は電子部品業界に特化した市場戦略をとっており、市場の特定の工程を寡占化していくことで事業が伸長し、海外への積極的な展開が始まっている。技術による差別化だけではなく、基礎研究や製品・プロセスの技術開発を拡充させ、ノウハウ化や参入障壁を築く施策は日常的に意識をして対処をしているが、さらに海外特許の権利化に取り組むことで、模倣対策に一定の貢献をしていることを、組織全体で実感することができている。また、知財に対する権利意識が諸外国でも高まっていると実感している。

気相技術事業は国内市場を主戦場として事業をステップバイステップで育てていく段階であるが、海外からの気相技術への問い合わせが激増していることから、そこを一つのチャンスと捉えている。そのため、気相海外特許の申請に対する意識が一段と高まり、液相技術事業を超える水準で申請件数や権利化が増えている。

このように二つの事業共に海外特許の必要性を認識しており、更なる権利化に向けた取組に対して、会社一丸となって対応をして行く必要がある。その為の組織整備やリソースを拡充したいと考える。

公開日:2022年 8月 23日

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