「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第4回目は、マレーシア・セランゴール州にお住いの諸江アドバイザーに“マレーシア政府のコロナ対応と製造業の現状”をお聞きしました。

※なお、このレポートは2020年12月21日時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

マレーシア政府は、2020年3月16日に「活動制限令(MCO)」を発令。その後も感染状況や地域に応じて、「条件付き活動制限令(CMCO)」や「回復のための活動制限令(RMCO)」を発令するなど、様々な措置をとってきました。

2020年マレーシア政府のコロナ対応

3月16日 3月18日から3月31日までの「活動制限令(Movement Control Order:MCO)」の発令を発表
3月25日 「活動制限令(Movement Control Order:MCO)」を4月14日まで延長することを発表
4月10日 「活動制限令(Movement Control Order:MCO)」を4月28日まで再延長することを発表
4月23日 「活動制限令(Movement Control Order:MCO)」を5月12日まで再々延長することを発表
5月1日 5月4日より大部分の経済活動及び社会活動が許可される「条件付き活動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)」が施行されることを発表
6月7日 6月10日から8月31日まで「回復のための活動制限令(Recovery movement control order :RMCO)」を施行することを発表
8月28日 「回復のための活動制限令(RMCO)」を12月31日まで延長することを発表
10月7日 セランゴール州クランなど4カ所について、10月9日より「条件付き行動制限令(CMCO)」の発令を発表
10月12日 スランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤの全域における「条件付き行動制限令(CMCO)」の発令を発表
12月5日 「条件付き行動制限令(CMCO)」について、各州ごとに終了や延長を発表

【注】在マレーシア日本国大使館HP 【新型コロナウイルス】マレーシア政府による活動制限令の実施 より作成

2020年6月から始まった「回復のための活動制限令(RMCO)」後、マレーシア政府は、各店舗や事業所などに対して、新型コロナウイルス感染症対策用アプリ”マイスジャテラ”の導入を義務付けました。建物や店舗に入る際にスマートフォンでQRコードを読み取り、個人情報を入力する仕組みで、新型コロナの感染者発生時に濃厚接触者を追跡する際に活用しています。(スマホがない場合は建物へ入る際に名前、住所、電話番号、身分証の番号を記載します。)

2020年10月になって再び感染者が増えてきたことから、一部地域では再度「条件付き活動制限令(CMCO)」が発令されました。

今でも地区や州を跨ぐ移動は禁止になっており、通勤に関しても雇用主のレター(通勤許可証)がなければならない 、お客さんのところに行くにも警察に行き許可を貰わないと検問を通れない、またクラスターが発生している区画(集合住宅や団地など)は、軍により隔離されており出られなくする等の措置がとられています。(在マレーシア日本国大使館「国際貿易産業省による在宅勤務命令の対象となる従業員の発表 」)

感染者続出で工場閉鎖

そんな中 2020年11月23日にマレーシア政府はクラン市(クアラルンプールの外港都市)の大手医療用ゴム手袋製造業社の28の工場を、新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを理由に閉鎖する、と発表しました。

2020年12月1日の時点で、従業員全体の約4分の1の5805人の従業員の検査が済んでおり、そのうち半数以上の3406人が陽性との結果が出ました。無症状で陽性反応の出たマレーシア人従業員は自宅隔離となり、外国人労働者は隔離センターに収容されます。期間は共に14日間です。閉鎖されている28の工場は会社全体の生産量の50%を担っているので、工場閉鎖の解除が延びれば、生産に影響ができることが予想されます。

外国人労働者の劣悪な住環境

同社の従業員は約2万人で、その内約半数が外国人労働者です。

マレーシア政府がクラスター発生の原因を調査する中で、外国人労働者の劣悪な住環境が浮き彫りになってきました。過密で不衛生な外国人労働者用宿舎では、新型コロナウイルスの感染が蔓延すべくして蔓延したと言えます。そのため外国人労働者を雇用する企業に対して、マレーシア政府は、マレーシアで働く170万人の外国人労働者 全員のPCR検査の実施と共に、住環境の改善の命令を出しました。新聞では、外国人労働者用宿舎の劣悪な住環境を物語る写真が連日掲載されています。

マレーシアでは労働者が常時不足しているため、外国人労働者を多く受け入れています。外国人労働者のための労働環境のルールは決まっていますが、守られていないのが現状でした。政府は改善を要求していますが、工場側はすぐに改善は出来ない、と反発しています。

政府の補助制度

現地の日系企業にとっても厳しい毎日が続いていますが、3月末にはコロナ状況下での支援策の1つとして、労働者に対する賃金補助制度が発表されました。条件を満たした場合、月給4,000リンギ以下のマレーシア人従業員最大200人に対し、3カ月分の賃金の一部が補助されました。(JETROビジネス短信「月給4,000リンギ以下の従業員を対象とした賃金補助制度が拡充」

10月1日~12月末日には賃金補助制度第2回目の申請受付も行われました。こちらは第1回目の補助を受けた企業も対象となっていました。

その他、刻々と変わるマレーシアにおける新型コロナウイルス関連最新情報は、下記ご参照ください。

在マレーシア日本国大使館ホームページ

ジェトロビジネス短信(マレーシア)

※掲載内容は2020年12月21日時点情報です。

筆者紹介

諸江氏

諸江 修 中小機構 国際化支援アドバイザー

1991年マレーシア・ペナンの日系企業の駐在員となり、工場建設、操業立ち上げを行う。1996年辞職、クアラルンプールに居を移し、翻訳・通訳、コンサルティング業務を中国系マレーシア人の協力で始める。1997年に現地法人を設立し、日本語パソコン、日本語環境インターネット、ネットワーク構築を行う。2001年よりコンサルティング会社を立ち上げ、現在に至る。

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