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何から始めればいいのかわからなくても大丈夫!越境ECから始めるステップアップ海外展開のすすめ

何から始めればいいのかわからなくても大丈夫!越境ECから始めるステップアップ海外展開のすすめ

これから海外展開や越境ECに挑戦したい中小企業の経営者・担当者必見!失敗しないための秘訣をアドバイザーが伝授します。今回は、越境ECを絡めた海外展開の段階的な取り組み方、成功に向けた実践的なヒントをお伝えします。

はじめに 越境ECとは?

越境EC(エレクトロニック・コマース)とは、国境を越えて行われる商品の電子商取引のことです。海外ではクロスボーダーショッピング(Cross Border Shopping)とも呼ばれています。インターネットを活用することで、販売者は新たな顧客を獲得しやすくなり、消費者は世界中の商品を手軽に購入できるようになっています。

経済産業省のレポートでは、2030年に世界の越境EC市場は現在の10倍規模へ成長するとされ、とくに中国・アメリカの市場拡大が顕著です。一方、日本では少子高齢化や人口減少の影響で国内市場が縮小し、売上が減少傾向にある中小企業も増えています。

こうした状況を背景に海外展開を目指す企業が増えていますが、「何から始めればいいのかわからない」という声もよく聞きます。まずは“海外展開の基本ステップ” と “3つの販路拡大パターン” を理解し、越境ECを活用しながら段階的に取り組むことをおすすめします。

海外展開の基本ステップ

海外展開には、大きく3つのステップがあります。

海外展開の基本ステップ
■ステップ1:何を、誰に、どのように[構想策定]

最初に決めるべきは、「何を、誰に、どのように事業展開するか」です。

  • 何を:どの商品で海外に挑戦するのか
  • 誰に:相手は一般消費者(BtoC)か、企業(BtoB)か
  • どのように:独自で販路開拓、共同事業・合弁などで展開、代理店経由、越境ECなど

こうした点を明確にすることで、その後の準備や販路開拓がスムーズになります。

■ステップ2:どの国へ展開するか[展開準備]

次に、「どの国へ展開するか」を決めます。国ごとに輸入品に関する規制やルールが異なるため、慎重な確認が必要です。たとえばアメリカでは、FDA(米国食品医薬品局) の規制対象に該当する商品は認証が求められます。

■ステップ3:最適な販路を検討する[販路拡大]

販路拡大には次のような方法があります。

  • 越境ECを活用する
  • インバウンド需要・代理購入業者との接点を強化する
  • 販売チャネル(BtoB)を構築する

「販売チャネル(BtoB)を構築する」は、海外展示会への出展によって現地企業と出会う方法です。海外展示会への出展には多額の予算が必要ですが、近年は、越境ECの活用により低コストで海外展開しやすくなっています。ただし、商品特性や社内体制によっては越境ECよりも展示会出展やインバウンド需要へのアプローチのほうが効果的な場合もあります。自社の状況に合わせて判断することが重要です。

越境ECの事業モデル

越境ECの事業モデルは、「海外ECモールへの出店」と「自社サイトの構築」の2つに大別できます。いずれにしても、まずは「国内ECでの販売経験があること」が前提です。そのうえで、3段階の成熟度モデルが考えられます。

越境ECビジネス成熟度モデル
■ステップ1:海外ECモール活用型

まずは、AmazonやShopeeなどの海外ECモールを活用する方法がおすすめです。モール側が集客してくれ、運営サポートも整っているため、安心してスタートができます。

■ステップ2:自社直販サイト活用型

自社で広告・集客を行う必要があるため難易度は上がりますが、「顧客情報を取得できる」「手数料が安い」「ブランドの世界観を自由に表現できる」といった大きなメリットがあります。

■ステップ3:デジタルマーケティング活用型

SNSやネット広告などを駆使した本格的なデジタルマーケティングを展開する段階です。このレベルに到達すると、売上の伸び幅も大きくなります。

越境ECを活用した海外展開ロードマップ

近年は、オンライン(越境EC)とリアル(現地商談)を組み合わせるケースが増えています。すでに国内でECを行っている企業にとって、越境ECは海外展開への第一歩として取り組みやすい方法です。以下の3ステップを参考に、段階的にオンラインとリアルの併用を進めていきます。

■ステップ1:直送モデル(国内の倉庫から発送)

越境ECを始めたばかりの少量出荷の段階では、商品を日本の倉庫から海外へ発送する“直送モデル”が適しています。配送コストが高く、リードタイム(発送日数)も長くなりますが、現地に在庫を置かないため、在庫リスクを抑えられます。

■ステップ2:保税区モデル(現地の倉庫から発送)

売れ行きが伸び、出荷量が増えてきたら、販売先国の保税倉庫に在庫を置き、注文ごとに通関して発送する“保税区モデル”を検討するとよいでしょう。保税倉庫では在庫時点では関税がかからず、一度にまとめて輸送することで送料の総コストが抑えられ、リードタイムも短縮できます。

■ステップ3:越境ECとリアル取引の併用

越境ECで実績が積み上がると、現地企業との商談(BtoB)で大きな武器になります。「実際にこの国で売れています」と数字で示せると非常に説得力があるためです。越境ECでグローバルに販売しつつ、現地セレクトショップや百貨店、代理店に卸すという直販と卸を併用したハイブリッド戦略に発展すると、海外展開は一気に加速します。

海外展開を進める際のポイントに「価格設定」があります。
越境ECから始める場合でも、将来的にBtoB取引を考える場合は、流通業者のマージンを意識して価格設定する必要があります。この点を考慮せず、直接購入する消費者だけ意識して価格設定して上市したために、後に流通マージンを吸収できる卸価格を提示できず、BtoB商談が進まないケースが見受けられるので、留意する必要があります。

まとめ

多くの中小企業にとって海外展開はハードルが高いものですが、その大きな理由のひとつは「認知度も売上もゼロからのスタート」になる点です。しかし、まず越境ECから始めれば、すこしずつ売上や認知度を積み上げることができ、その実績をもとに現地企業との商談に臨むことができます。実際、昨年私が支援したある企業は、海外売上がゼロの段階から、海外ECモール出店から越境ECをスタートさせて、月商300万円規模まで成長。その実績をもとに、現在はある国・地域をターゲットに、企業とのBtoB展開を進めています。

もうひとつの大きなメリットは、「越境ECはテストマーケティングになる」という点です。各国のECモールに出店することで、自社の商品がどの国からアクセスが多いのか、売れるのかが明確になり、そのデータがBtoB商談を有利に進める材料になります。

中小機構のアドバイザーは、「輸出に挑戦したいけど何から始めればよいかわからない」という段階から丁寧に伴走します。また、世界各地に300名以上の現地アドバイザーがおり、リアルな最新情報を無料でご提供できます。まずはアドバイスを活用し、ぜひ気軽にご相談ください。

筆者紹介

川辺 恭寛 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

コンサルティング業界で25年間の経験があります。
様々なクライアントの変革プロジェクトのプロジェクトマネージャーとしてリードし、リアルパートナーとして伴走支援してまいりました。中小機構の中小企業アドバイザーとして、経営支援・海外展開を支援しています。


中小機構について

中小機構の「海外展開アドバイス支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。

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