インドネシアでは、ハラール認証制度が大きく変更され、宗教省直下の機関による国家規格となりました。2024年10月より飲食品についてハラール認証の義務化がスタートし、他の品目についても2027年10月までに順次義務化が進む予定です。
この変更により、日本からの輸出品は、新制度に基づくハラール認証が必要になります。日本企業にとっても新制度への理解を深め、うまく対応すれば、大きなビジネスチャンスとなります。

今回は、ハラール認証対応のポイントについて取り上げていきたいと思います。

ハラールとは、また、ハラール認証とはなんでしょうか

そもそも「ハラール」ってなんのことかご存知でしょうか?インバウンド観光客の増加により日本でもよく耳にするようになりましたが、直接的な意味は、「イスラム法に基づいて許されるものや行動」ということです。
イスラム教徒は、豚肉や、アルコール飲料はダメということは知られていますが、実際は、ハラールは、食品、飲料に限られているのではなくて、調味料、化粧品、薬品、健康食品、衣料品等や、その成分、原材料等にも及ぶほか、食肉の屠畜方法等の加工方法や、生活行動全般に及びます。

ハラール認証とは、イスラム法に基づき、不浄ではない製品、商品、成分、製法であるということを保証することです。従って、ハラール認証承認手続きでは、製品、商品だけでなく、その成分、製造、加工プロセス、貯蔵倉庫や、流通プロセスも検査対象になります。
今回、インドネシアでスタートする新制度では、宗教省の下部組織として新設されたBPJPH(ハラール製品保証実施機関)にハラール認証権限が一元化され、認証取得が義務化されます。

ハラール認証についてよくある誤解

日本では、インバウンドの増加に伴い、イスラム教徒の旅行客も増加しており、ハラール認証を取得するレストランや、イスラム教国への輸出に関してハラール認証を取得する企業が徐々に増えてきています。
しかし、日本で取得したハラール認証は、国内向けには有効ですが、イスラム教国のすべてに対し有効な訳ではありません。これは、ハラールはイスラム教のファトワ(=イスラム法学者によって出される決まり)に従って決まるのですが、このファトワは、国、地域によって違うためです。
これまで日本でのハラール認証は、日本に所在するイスラム系宗教法人や、NPO法人等が行ってきましたが、非イスラム国である日本では、これらの組織が独自のハラール規格に従って行ってきたものです。
インドネシア向けの輸出品の認証は、インドネシアの宗教法人の提携機関により行われてきましたが、今後については、新制度に基づいて実施される必要があります。

日本企業の新制度への対応とビジネスチャンス

インドネシアのBPJPH(宗教省のハラール製品保証実施機関)は現在各国と相互認証制度の締結を急いでおり、日本からは4機関が申請を出していますが、内2機関が、最初に承認を受ける可能性があります。
今後、日本企業の新制度への対応は、①上記相互認証の承認を得た機関による認証、②BPJPH(ハラール製品保証実施機関)を通じての現地機関による認証が考えられます。
インドネシアは、世界4位の人口と世界3位の排他的経済水域面積を誇っており、日本のビジネス相手国として、これからも非常に重要な対象国となることは確実です。
しかし、今後のインドネシアへのビジネス展開に関しては、このハラール問題への深い理解と戦略が必要です。
一般的に、非イスラム国である日本では、ハラール認証制度はとっつきにくい課題ですが、競合企業も同様な状況であり、これから新たにインドネシアでのビジネス展開を計画している企業だけでなく、既に展開している企業も新制度へ対応する必要があるので、いち早いハラール認証対応戦略の構築こそが自社の競争優位性を確保することにつながります。
インドネシアでのハラール認証の義務化がスタートする今こそインドネシアビジネス推進のチャンスと言えるのではないでしょうか。

筆者紹介

安藤 律男 中小機構 中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓)

銀行、ファイナンス会社等の金融機関に通算39年勤務。内通算22年インドネシアの銀行、ファイナンス会社に駐在しました。退職後3年間、マレーシアを拠点としてコンサルタント会社の立ち上げに従事しました。
日本では主に、海外新規事業開発、取引先の海外進出支援業務を担当してまいりました。

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