進出事例

夢で終わらせない、海外 ~第1回~ 日本の幼児教育をアメリカへ – 株式会社くま教育センター(大阪府大阪市)

Google+ Pinterest LinkedIn Tumblr

平成24年から平成30年まで7年間、中小機構では、中小企業の皆様の海外展開をハンズオンで支援する「海外ビジネス戦略推進支援事業」を行ってきました。
この記事は事業最終年度である平成30年度の事例集を再編集したものです。
事例集については中小機構のホームページで公開しています。また、海外ビジネス戦略推進支援事業は平成30年度で終了した事業ですが、中小機構では中小企業のみなさまの海外展開をご支援しています。詳しくはお近くの中小機構地域本部までお問い合わせください。

入念な事前準備がもたらした現地調査の成果

京都で47年続く幼児教室。グループとして関西で幼稚園、保育園、学習塾も経営。幼児教室では、知育や運動カリキュラムのほか、食事など生活習慣全般を教えている。今後ますます少子化が進む中、海外に「日本式の教育」で勝負できないかと、中小機構の海外ビジネス戦略推進支援事業に応募した。現地調査でアメリカのヒューストンに渡り、教育関連機関から直接ニーズを聴取。帰国後、現地に子会社を設立した。

自分たちだけでは超えられない壁

「海外進出を考えたきっかけは、トヨタがアメリカの拠点を、テキサス州に移すというニュースでした」そう話すのは、代表補佐の熊本祐滉さん。父であり代表の季治さんが立ち上げた幼児教室を、共に経営している。少子化に向け「なんとかしなければ」と方向性を模索していたところ、飛び込んできたのが「トヨタなど多くの日本企業が、テキサス州ダラスに進出している」という新聞記事だった。

熊本さんは、「ダラスで働く駐在員の子ども向けに、教育ニーズがあるかもしれない」とひらめいた。日本企業から派遣される駐在員は、数年で帰国することが多い。そのため、駐在員の子どもは帰国後すぐ日本文化に馴染めるよう、現地で日本人補習校などに通う。そこで、ダラスで幼児教室を開き、集団生活や日本文化を学ぶ場を提供できないかと考えた。熊本さんは自身で情報を集め、実際に現地へ渡るなど、積極的に動いた。

しかし、帰国した熊本さんは「先が見えない状態だった」という。現地で情報収集はできたものの、どれを判断材料に選んで、どう意思決定すべきか、確信が持てない。ちょうどその時期に本事業に採択された熊本さんは、中小機構との二人三脚をスタートさせた。

 

ダラスからヒューストンへ、行き先を変更

海外進出に向け、中小機構と打ち合わせを重ねながら、具体的な計画を事業計画書に落とし込んでいった。その際、小川アドバイザーから「支援終了後も、海外進出のノウハウを残せるように」と助言を受け、早い段階からTo Doリストを作成。将来、アメリカ以外の国へ進出を考えた場合でも、プロセスを重視して進められるような仕組みを作った。

詳細な事業計画が完成したものの、その通りに進めると、苦戦を強いられることが予想できた。当時、ダラスには日本式教育を行う幼稚園が2つ、さらに有名校を含む学習塾が3つあり、すでに競合していた。それに対し、ターゲットである子どもの数は限られている。「なぜ、ダラスでなければいけないのか」。いったん立ち止まって考える必要があった。

改めてリサーチし直したところ、ダラスと同じテキサス州のヒューストンにも、日本企業が多いことが分かった。しかも、まだ競合は進出していない。チャンスではあるが、日本式教育の前例がないことは、リスクにもなる。熊本さんは悩んだ。

背中を押してくれたのは、日本での実績だった。くま教育センターには、47年前に京都で初の幼児教室を開き、発展させてきた歴史がある。「新天地で、またゼロから作り上げればいい」。そう考えた熊本さんは、渡航先をヒューストンに決めた。

くま教育センターの熊本季治代表

現地調査の訪問先探しも、小川アドバイザーの助言のもとに進めていった。訪問先から考え始めると、どうしてもアポイントを取りやすいところばかり選んでしまう。しかしそれでは、必要な情報は網羅できない。そこで、まず「何がクリアになれば先に進めるか」を考え、そのためには誰に会えばいいだろう、と候補を出していった。

特に気になったのは、許認可についてだ。以前ダラスに渡航した際、「保育園を開くには行政の許認可が必要」と聞いていた。熊本さんは、小川アドバイザーから参考になりそうな英文サイトを教えてもらい、片っぱしから読み込んだ。そうして可能な限りのデスクリサーチを行い、現地調査へと向かった。

現地調査で聞けた生の声

ヒューストンでは、商工会、日本人会、日米協会などを訪ね、ニーズ調査を行った。「日本人家族は多いのに、日本語や文化を学べる場所がない」「帰国後、子どもが日本の生活になじめるか心配」「日本式教育をやってもらえると助かる」など、生の声を聞くことができた。また、現地の幼稚園も訪問。各園がそれぞれ異なる教育方針を持っており、保護者が合うところを選んでいた。それなら、日本式教育も選択肢のひとつになるはずだ。心配していた許認可についても、現地で情報を得てクリアできた。さらに、雇用する人材の面接を実施。保育の経験者や、現役で働いている人と出会うことができた。

一方で難航したのが、物件探しだ。当初は、日本食スーパーの近くにと考えていた。事前リサーチで、そのスーパーに日本人が多く集まると聞いていたからだ。しかし、実際に見てみると、ほとんどの現地日本人に認知されているスーパーでも、曜日と時間帯により客層と入り数はまちまちだ。またヒューストンは車社会で、片道10車線以上ある道路を運転して、子供を送迎する必要がある。日本人の保護者に送り迎えしてもらうためには、道の分かりやすさも必須条件だ。そこで、自分たちで車移動しながら物件を探し、「ここなら通いやすいだろう」という場所を見つけた。

帰国後、ヒューストンに子会社を設立

「5日間の調査でこれだけ前に進めたのは、事前準備がしっかりできていたからだと思います。中小機構の支援があったからこそ、今回の成果を出すことができました」と語る熊本さん。本事業を受けていることが実績となり、金融機関からの融資にもつながったという。

帰国後、ヒューストンに子会社を設立。現在、ほぼ毎月渡航し、開業準備を進めている。「今後は支援なしでやっていけるでしょう」と、小川アドバイザーは言う。「熊本さんは最初、自分のやり方で進んでいいのかどうか、悩んでいました。改めて事業計画から一緒に作ることで、あらゆる可能性を排除せずに考え、自信を持って判断できるようになったのではと思います」。

かつて京都で産声を上げた「日本式教育」が、遠くヒューストンで花開こうとしている。

 

中小機構 ロゴ