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イタリアライフスタイル過去20年の変化。日本企業参入の余地は?~海外をちょっとのぞき見コラム 第35回~

地域:イタリア カテゴリ:現地レポート
イタリアライフスタイル過去20年の変化。日本企業参入の余地は?~海外をちょっとのぞき見コラム 第35回~

「海外をちょっとのぞき見コラム」は海外現地の最新状況やホットなトピックスをお伝えするコラム記事です。第35回目は、イタリア在住の嶋末アドバイザーに「ミラノ・コルティナ2026 冬季オリンピック/パラリンピック」仕様に彩られた街の様子とともに、現地事情をお聞きしました。

※このレポートは2026年1月時点の情報であり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

世の中どこも物価が上がっていますがイタリアの物価高もひどいもので、インフレ率は国立統計研究所(ISTAT)のデータによると、2022年から15%以上も上がり、また、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック開催で都市再開発が加速し不動産価格も高騰しています。上昇しているのは物価だけではなく、世界の富裕層の移住先としても人気が高まっています。これは、特別税制(フラットタックス)の優遇性や食の豊かさ、温暖で過ごしやすい気候など住環境が整っているためとか。そんなイタリアの今と昔を顧みながら日本企業が新規参入する余地はあるのかを探ります。

クリスマス商戦2025はプレゼント探しにAIが大活躍

1年で最も大きな商戦のクリスマス。2025年は、生活費の高騰や景気循環の鈍さにも関わらず、贈り物への支出が昨年と同等で、イタリア商業連盟(コンフコンメルチョ)による最新の分析によると、イタリアの人々の81.5%が贈り物の習慣に積極的に参加し、1人当たりの予算は全国平均で211ユーロ(約4万円)でした。家族の絆が強いと言われるイタリアらしく、クリスマスという伝統の行事を重んじる傾向は時代を問わず今でも健在しています。

ただこれまでと違い、贈り物に関して多くの消費者がAIに頼って買い物をするようになったとか。毎年のプレゼント探しにネタが尽きているのか、街中を彷徨って探すことへ気力体力を奪われてしまうからか。少なくともEU統合前までのイタリアの人はどんなものでも現物を確かめ、五感で納得したもののみを購入するこだわりが徹底してありましたが、家族全員が参加する毎年のプレゼント交換は同じものは渡せないし、特に嫁姑関係など気を遣う相手への贈り物に頭を抱えていた人々にとっては、AIは救いの手だったのかもしれません。

ドゥオーモ広場のクリスマスマーケット

ラグジュアリーブランド20年前のマーケット世界戦略

AIが存在する世界になるとは考えもしていなかった2000年代半ば、ラグジュアリーブランドの創業者やCEOクラスの方々との会合に著者が通訳同行した際、世界のマーケット戦略の考え方が異口同音だったのを思い出します。  
ファッション産業は、イタリアの主要産業として経済を支えており、輸出額は常に世界の上位を占めるなど、ヨーロッパではトップを走り続けています。その業界トップが意識していたことは影響力のある著名人に自社ブランドを身につけてもらうこと。極めつけはハリウッドスターで、彼らはブランドの最強の広告塔でした。その影響は、ハリウッドからロンドン・パリ・ミラノにトレンドが伝播して、更にそれぞれの国の趣向にあわせ、ローカライズされていくのです。

そしてアジアはハリウッド発信だけでは不十分で、中国はブランドの未来を賭けたマーケットと当初から理解し、中国人は日本のファッション動向を見本としていると判断し、彼らの購買動向を理解するのに日本が重要なポジションを担っていると認識していたのです。各ブランドは競ってハリウッドを狙い、中国市場獲得のために日本市場を狙い、各国の特徴やトレンド発信の国順も網羅して的確にブランディングしていたのに衝撃を受けました。

高級ブティック街 モンテナポレオーネ通り①
高級ブティック街 モンテナポレオーネ通り②

15年でイタリアのライフスタイルは世界標準へチェンジ

歴史ある美しい街並みを継承し、メイドインイタリーに誇りを持ち、伝統を守り、目の前の事実しか信用しなかったイタリア人ですら、今ではスマホとSNSの普及で生活がガラリと変化しました。コロナ禍で宅配システムは飛躍的に改善、在宅ワークも普及してすっかりデジタルグローバル化の仲間入りです。

消費者意識もリサイクル、環境配慮、社会貢献、多様性などに共感して、個人の好きなコトやモノは世界中へリアルタイムにアクセスし、”推し活”を楽しむ体験型へと変化しているのも他の欧米諸国と遜色なくなりました。

先日大型ECサイトを運営する企業のマネージャーにインタビューをした際、イタリアの今の消費者事情を解説してくれたのですが、「南北経済格差はあまり関係なく、ブランド名や知名度がなくても顧客のニーズと価格がマッチすれば比較的売れるマーケットである。大都市や北部に売上が集中していることもなく、各地で個々の欲しいものが注文されていてオンライン上の購買人口は既に安定しているとはいえ、商品次第で購買力はまだまだ上昇する余地はある。」といったことを教えてくれました。

ガッレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世内の
クリスマスイルミネーション

AIと人間性を融合させたハイブリッド化でEU市場進出へ

インタビュー中の”ブランド名よりも商品の価値を重視する”という言葉に日本企業がイタリア市場へ挑戦できる可能性があるのではないかと感じます。 
さらに日本企業がイタリアからEU市場も視野に入れて新規参入がしやすい理由として、EU圏の言語もAIで同時翻訳が可能になり、オンライン販売では倉庫はEU各国に確保する必要もなく1箇所から配送でき、在庫管理も類似商品の過去のデータからサイズ・個数・色などもある程度推移が可能なので、コストも抑えられて最低限の投資から始められるためと説明してくれました。

昨今イタリアでも日本ブームは堅調で、日本食、アニメ、伝統文化も人気は止まらず、行きたい海外旅行先としても高い人気を誇ります。日本のあらゆる情報もリアルタイムに自動翻訳でキャッチでき、言葉の壁は低くなりました。日本に憧れている人たちの心も掴みつつ、AIやデジタルをうまく活用して、円安の状況もチャンスとして捉え、EU全体も視野に入れながら是非ともイタリア市場への積極的な事業進出を検討していただきたいです。

筆者紹介

嶋末 みどり 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

長崎県出身。米国に遊学後、1999年に渡伊。ミラノを拠点に日伊企業の現地事業展開や市場調査、サポート業務に携わる。デザイン・ファッション・食・美容などライフスタイル分野を中心に、ミラノサローネをはじめ世界的なイベントにて企画・運営多数。イタリアでの人脈ネットワークは業界・地域・階層・年齢を問わず多岐にわたり好評。イタリアの人気バラエティーTV番組にシーズン2から出演中。

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