架橋ポリエチレンは電線ケーブル絶縁体や住宅建設に欠かせない温水パイプなどの材料として広く用いられている。これまでその処理は、サーマル・リサイクル(燃やして熱エネルギーに変換)あるいは埋め立てに使う以外無かったが、電線ケーブルのリサイクルを本業とする株式会社社オオハシは、これまで不可能とされてきた架橋ポリエチレンのマテリアル・リサイクル技術(機械的に再生する技術)の開発に成功。その技術を搭載し、再生ポリエチレン製品などへ利用が可能なペレット等にリサイクルができる機械設備の欧州向け販売に、中小機構の海外展開ハンズオン支援(長期支援)を利用して、挑戦することになった。
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環境問題意識の高い欧州に商機あり?リサイクル設備の輸出に挑む強い思い
神奈川産業振興センターから紹介されて、株式会社オオハシの塩野社長は中小機構に相談にやってきた。電線ケーブルをリサイクルする設備を欧州に輸出すべく、翌年秋にドイツで開催される世界最大の樹脂・ゴム見本市K-Messeで見込み先開拓を行いたいので、それに向けた支援を希望しているという。
担当したアドバイザーはヒアリングを行い現在の事業計画を伺うことにしたのだが、まず、リサイクル事業者がリサイクル品を販売する事業モデルではなく、設備の輸出を目指していることに驚きを感じた。それも、設備に織り込まれた事業者の付加価値をどのように換金回収するのか、事業の肝部分を具体化する作業はこれからだと言う。
しかし、同社の塩野社長は、自身の発明した架橋ポリエチレンのリサイクル技術を熱く語り、環境問題に意識が高くESG(Environment・Social・Governance)を経営戦略に織り込む事業者の多い欧州では、きっとこの技術を評価し導入を検討しくれるはず、と言い切る。塩野社長の信念を伺ううちに、共にチャレンジしてみようという思いが強くなり、具体的な支援を進める運びとなった。
展示会での見込み先開拓に向け、最大限の成果を出すための準備を
支援計画の第一期では、規制の確認や収益モデルを意識した事業計画の仮説策定を行ったうえで、世界最大の樹脂・ゴム見本市「K-Messe」を機会に渡航し、ニーズ調査と見込み先ユーザーの開拓をすることを目指した。有望な見込み先ユーザーと機械設備の輸入販売代理店候補の発掘をすべく、同社でも欧州のケーブル・温水パイプメーカーをインターネット検索等で調査をおこなった。また、日本貿易振興機構(JETRO)のサービスも利用して、見込み先リストが完成した。
また、中小機構のドイツの現地アドバイザーに、当該展示会の出展社にかかる情報提供を受け、アポイント取得のサポートも受けた。現地アドバイザーとの緊密な連携により、展示会にむけて、約10社と商談のアポイントを取り付けることに成功した。
現地における商談では、提案設備の課題解決能力と日本での実施事例をプレゼン、手ごたえはあったが、導入には、サンプル品の技術評価は避けて通れないことが分かった。見込みユーザーが工場で発生させている架橋ポリエチレン廃材のサンプル提供をうけ日本に輸送、日本でリサイクルしたテストサンプル品を送り返して、ドイツでの評価テストの実施まで、数社と合意を取り付けることが出来た。
そこで、いったん、技術評価で及第点を得ることを当面の目標とし、そのあとに、製品取引についての商談段階までを達成するべく、改めて支援計画を策定した。
製品導入に向けた「実験と評価」支援計画へ
新たな支援計画では、架橋ポリエチレン製品のリサイクル実験と再生製品の評価テストと同時並行で、組み立てなどを依頼する販売代理店の決定や、リサイクルに必要な添加剤の供給体制の構築といった課題だけではなく、評価テストを実施する見込みユーザーとの接触やコミュニケーションの方法なども課題として盛り込まれた。当社と、中小機構のアドバイザーやドイツ在住の現地アドバイザーは密に連絡をとりながら、アドバイス面談などで課題解決に向けて整理を行った。
2023年秋にも渡航し、アドバイザーと中小機構職員も同行。代理店候補や見込先ユーザーに訪問し、市場調査をより詳細に行った。
郷に入れば郷に従えで見えた道筋。欧州企業の特性をみつつ、実装と協業へ
年が明け、ユーザー企業の評価テストの進捗・結果の確認と、販売代理店や添加剤メーカーとの面談のため、改めて渡航をおこなった。フランスの大手ケーブルメーカーをはじめ、ドイツ北部のケーブルメーカー、リサイクルシステムの運転に欠かせない添加剤メーカー、機械設備代理店候補企業、そしてドイツ・デュッセルドルフの日系大手商社現地事務所、と商談を行い、大きな手ごたえを得て帰国した。
未だ欧州見込み先企業の求めを完全に満足できるソリューション提供には至っていないが、道筋は見え始めた。仕入れ品である機械設備に搭載されたオオハシの発明技術をどのように換金回収するかについて欧州代理店候補の事業の中にヒントがあるように感じて帰国できたのも出張の成果だった。
これらの成果を反映させて海外展開事業計画は完成した。
今後は、機械設備の欧州実装に向け、代理店候補企業の来日招致や、機械メーカーとの協業など、次のステップへ向けた支援の議論がいよいよ始まろうとしている。
企業の声
弊社が開発した架橋ポリエチレン可塑化技術(XPRシステム(商標登録済);Cross-linked Polyethylene Recycledシステム)を環境意識の高いEU諸国の企業にPRし売り込みたいと思ったが海外に向けての知識は全くなく不安であった。そんなとき、神奈川産業振興センター様の紹介で相談に行った中小機構の海外展開支援ハンズオン支援を受けることとなった。本支援で、現地(ドイツ)のアドバイザーの協力のもと欧州企業数社とコンタクトを持つことが出来きたことで、本技術をEUに普及するための課題や道筋などが明らかになり、彼らの希望する品質に近づけるべく現在も開発中である。
企業プロフィール
株式会社オオハシ | |
URL: | https://www.oohasi.co.jp/jp/index.html |
代表者: | 代表取締役 塩野 武男 |
所在地 | 神奈川県 横浜市 |
資本金 | 2,500万円 |
従業員数 | 33人 |
業種 | 製造業 |
事業内容: | 撤去電線、撤去ケーブルの粉砕加工、非鉄金属及びその他金属類の委託加工、塩化ビニール・ポリエチレン樹脂等の再資源化、廃プラスチック製品製造販売、ポリエチレン樹脂版「リピーボード」製造・販売、銅・アルミ等の非鉄金属の回収、再資源化 |
商品内容: | オオハシ独自の架橋ポリエチレンリサイクルシステム、XPRシステム(オオハシが外部機械メーカーに製造を委託した設備機械)及び同システム運転Know-Howのライセンス販売 |
担当アドバイザー: 和田 正倫 中小機構 中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓)
中小機構について
独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。
「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。どうぞお気軽にお申し込みください。
「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。
公開日:2024年 10月 23日
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