日本のアニメ、漫画、フィギュアなどのサブカルチャーと呼ばれる市場は、日本国内に限らず世界中で広まっています。このレポートでは、特に日本サブカルチャー文化が広く浸透されているフランスにおいて、「オタク」を自認している現地の方へ、インタビューを実施しました。
なおこのレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。
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プロフィール
FÉLIX BOTELLA(フェリックス・ボテラ)さん(写真左)(30代/工業製品デザイナー)子供の時にシティーハンターのアニメを見て以来、日本アニメや漫画のファン。アニメのイラストに関心が高く、日本でイラストを学ぶことを計画中。
NAÏMA BONNET (ナイマ・ボネ)さん (写真中央)(30代 / 医療研究者)テレビで日本アニメが放映されたのをきっかけに、日本サブカルチャーの大ファン。多数のアニメ関連のアートブック、フィギュアなどをコレクションしている。
MILA DE BLOIS(ミラ・ド・ブルア)さん (写真右)(20代/学生)セーラームーンのアニメを見たことがきっかけで、日本のアニメやファッションに興味を持つこととなった。パリにある、ロリータ系ファッションの店舗で働いていた経験がある。
読めなくても、日本語のWebサイトでも情報収集
Q:新しい商品や購入したい商品の情報入手方法は?
ナイマ:やはりWebサイトで情報をチェックすることが多いです。20年くらい前の時に比べて、今は商品の購入方法が大きく変わってきました。以前は、パリで日本の漫画やキャラクターグッズを扱う店舗はとても少なく、運よく見つけることができたら、その場ですぐ購入していました。でも今は、Webサイトで簡単に商品を見つけられるので、焦らずに済みます(笑)。
ミラ:Twitter、FacebookなどのSNSや、GOOD SMILE COMPANY(フィギュアメーカー)のような日本企業のWebサイトもチェックしています。日本の商品が好きな人は、仮に英語版Webサイトがあったとしても、品揃えや情報量が多い日本語版のWebサイトをチェックしていることが多いですね。また、私の周りの友人には、日本の商品を購入したいけど、言葉や発送の問題で難しいとために、代理購入サービス*を利用している人もいるくらいです。
*日本の通販サイトで販売されている商品を、代理で購入し、海外へ発送するサービス
フェリックス:私も日本語で苦労しますが、日本語で発信されているFacebook、アニメーションスタジオや出版社の公式ページで情報をチェックします。外国語のWebサイトやSNSで発信されていない情報も多く、日本語のWebサイトを巡ることになるのも、仕方ないですね。
長年の「オタク」層にとって、商品を選ぶ基準は「品質」。日用品としての購入も
Q:サブカルチャー関連のグッズはどのくらいの頻度で購入していますか?
フェリックス:デザインの良いフィギュアが販売されたときや、好きな漫画やライトノベルを購入することは時々ありますが、私の予算も限られるので、最近は本当に欲しい物に絞って買い物をしています。
ミラ:部屋のスペースを取るので、あまりフィギュアなどのグッズは買っていないですが、小さなアクセサリーや壁に貼り付けられるポスターなど、場所をとらないものは買うことが多いですね。アパレルに関しては、素材の品質が悪そうなもの、安くても買うことは少ないと思います。
ナイマ:大ファンの宮崎駿監督作品のグッズであれば何でも買います。トトロのメガネ、お皿、お弁当箱、箸、ベッドシーツ、枕など、日用品化されている商品は普段から使えるものなので、買い物のハードルが低いです。以前、「ジョジョの奇妙な冒険」のウイスキーグラスを購入し来客時に使っているのですが、評判も良くて重宝しています。あと、私が残念に思うのが、マイナーなアニメ作品の商品を見つけることが難しいことです。「ポケモン」や「ドラゴンボール」といった有名作品の商品に比べ、流通量が少ないですね。
買い物は、本当に欲しいものがある場合に
Q:グッズに充てる、月々のお買い物予算は?
ミラ:月に100ユーロ程度です。私は学生なので、かなり選んで買い物をしています。好きな服を購入するために、数カ月貯金することもあります。
フェリックス:月に30ユーロ程度です。主にパリにあるFNACやBookOffで漫画やフィギュアを購入しています。
ナイマ:定期的に購入することは少なくなりました。でも若いときに比べたら今はお金に余裕があるので、高いものを買うこともあります。品質を吟味して買うことが多いですね。ジブリ作品関連の商品など、特に好きなものを購入する際はお金をかけています。
大規模イベントへの参加は、減少気味。小規模でも、特化型のイベントは人気
Q:日本サブカルチャー関連のイベントに参加していますか?
フェリックス:漫画家のサイン会、座談会が開催されているイベントに参加することが多いです。最近は、自分の会いたい漫画作家などの著名人がゲストで来ない限り、パリで開催されているイベントにはほとんど参加していません。この頃は、パリ以外で開催している、漫画など何かに特化したイベントに行くことが増えました。
ナイマ:漫画家のサイン会が開催されるイベントや、Japan Expoのように大規模ではないですが、エピタニム(Epitanime パリの専門学校EPITAで開催されている日本アニメ関連イベント)のような、パリ市内で開催されているイベントに、よく行っていました。Japan Expoで出展しているブースの手伝いをしたことがありますが、比較的若年層向けのイベントで私はターゲット層ではないと最近感じています。勿論、大好きな漫画作家がゲストで来られる際は、逃さず参加しています。
ミラ:Japan Expoには何度か行ったことがありますが、好きなファッションブランドが出ているクリエイターズエリアに行く程度です。自分で作ったロリータファッションの服で、ロリータのティーパーティーイベント(ロリータファッションで参加する交流イベント)に参加することが楽しみです。
情報量が多い、英語版Webサイトの重要性
Q:今後日本の商品購入に関して望むことは?
ナイマ:これは日本のWebサイトに共通する問題ですが、そもそも英語版Webサイトがないことが多く、あっても掲載情報が古く、また翻訳精度が低いものが多くあります。情報量が多い、また情報鮮度が高い英語版Webサイトを見ると、買い物意欲も高くなりますし、なるべく多くの情報を見ることができれば、購入するハードルも、もっと下がります。決済に関しても、Paypal(電子決済サービス)などが導入されていればいいのですが。海外のクレジットカードが利用できないWebサイトも多くあります。
ミラ:既に海外市場のニーズを把握している日本企業は多いはずです。同時に、外国人をターゲットにした英語版Webサイトがあれば、商品の購入に積極的になる層は多いと思います。
ロリータファッションを紹介する英語版Webサイト。
情報量、更新頻度も高く、海外からのアクセス数も多い。
Q:使ってみたいと思うサービスがあれば教えてください。
フェリックス:日本の商品情報や趣味をシェアできる交流サイトがあったらいいですね。TwitterなどのSNSも便利ですが、交流には不向きに感じるので、情報収集が主な目的になっています。
ナイマ:フィギュアなどのグッズだけでなく、キャラクターデザインがされた日用品なども、もっと手軽に購入できるようになると嬉しいです。
ミラ:モノを買うだけでなく、ライブやイベントなどの体験をしたい外国人は増えています。一方で、日本で開催されるイベントのチケット購入Webサイトは、日本語表記しかないことがほとんどですし、ファンクラブに加入していないとチケットを購入できないイベントも多いです。外国人旅行者も手軽に参加できるようなイベントが増えてほしいです。
【参考記事】日本サブカルチャーin海外シリーズ