みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

氏名:エリーザ・ジェーラ(Elisa Gera)
年齢:50歳代 女性
職業:アッカカッパ社(H.Krull & Co. S.P.A.) 四代目CEO
家族構成:既婚。ご主人は建築家。子供二人(長男、長女)
自宅エリア:トレヴィーゾ県、コネリアーノ市
職場エリア:トレヴィーゾ県、トレヴィーゾ市 海外出張多数
住居の間取り:ヒルトップに建つ18世紀の2階建てヴィラ(曾祖父の代から所有)
車所有台数:2台(Range Roverと Audi)
使用する言語:イタリア語、英語、ドイツ語

150年の歴史を持つ老舗ブランドの美しき四代目CEO

私の曽祖父であるドイツ人、ヘルマン・クルールが1869年にイタリア、トレヴィーゾでブラシの工場を創業したのが家業の始まりです。優れた木工技術とデザイン、当時としては斬新な広告イメージなどで、徐々に全国的に有名なブランドとなっていきました。その後、祖父、父の代を経て1990年から私が会社に入りすぐに社長に就任しました。それまでは、ボストン大学でジャーナリズムを専攻しており自分の未来はジャーナリストとして世界を回ることと信じていたのですが、結局は導かれるような思いで家業を継ぎ、家族の培ってきた伝統や生まれ育った土地への愛、そして自身の考えをものづくりに込めて世界に発信する道を選んだのです。

家業の伝統と自然への愛から生まれた新しい美の世界

先代、先々代のころに働いていた職人さんの息子や孫が、優れた技術を受け継いて、いまだに手作業で仕上げるブラシの数々は、弊社にとってのまさに宝。私はその宝をとりまく世界観を豊かに広げてゆくことが自分の課題だと常に考え、シンプルで優雅なパッケージの、ヨーロッパの草木やイタリアの庭に咲く花々のエッセンスを使った自然派フレグランスや、パーソナルケア製品のラインを充実するとともに、一流のヘアデザイナーと積極的にコラボレートして、技術的に最新のコンセプトを取り入れたプロ仕様のヘアブラシの開発も進めてまいりました。お陰様でに今では、世界90カ国ほどに輸出し、東京をはじめ主要都市にショップも展開しています。最近では、昔のデザインを復刻したヴィンテージのヘアブラシや歯ブラシも若いお客様に人気があるんですよ!

世界に羽ばたくアッカカッパのこれからは…

来年はアッカカッパにとって大切な150周年記念なので、特別なフレグランスの発売を予定しているほか、トレヴィーゾの本社の中にミュージアムを作ったり、ミラノのブレラ通りにショップを開いたりと楽しみな企画が満載です。また、東京日比谷の旗艦店も1周年を迎えるので、日本のスタッフの皆さんと共同開発したオリジナルフレグランス、SAKURA TOKYOの日本先行リリースも予定しています。

生活スタイル

家族と過ごす時間最優先のシンプルライフ

私のものづくりへのインスピレーションやエネルギーを与えてくれる原動力は、私の生まれ育ったこの自然豊かな環境と、家族との暮らしに他なりません。社長という職業柄、勤務時間はあってないようなものですが、基本的に月曜から金曜は8時半から18時まで会社または自宅で仕事をしています。子供が二人ともスポーツに熱心で、17歳の娘はスキーのオリンピックチームに選抜されていて、10歳の息子は長男はインテルの養成チームに所属しているので、試合はもちろんのこと、日常生活の中で出来る限りそばにいてサポートをしてあげられるように心がけています。二人のスポーツ選手の育っている家なので、基本的に早寝早起き。5時ごろみんなで起きて9時過ぎには寝てしまいますね。私も主人も忙しいので、買い物や料理は昔から来てくれている家政婦さんにお願いすることもあります。

自然体で無理のない健康管理

料理にあまりこだわりはありませんが、旬の野菜をたっぷりと使ったシンプルなレシピが好きです。出張中以外外食はほとんどしませんが、今ブームの日本食は好きです。日本で食べた野菜の薬膳料理の美味しさが忘れられませんね!
健康管理としては、特に運動はしませんが、お天気の良い日曜日にガーデニング(広大な庭園と森)にいそしむことは精神的なリラックスに大いに役立ちますし、様々なインスピレーションを自然から受けるよい機会になります。あとは、日常生活の中でなるべく歩くことを心がけていますね。サプリなどは摂っていません。

自分と家族と向き合えるバカンスは、エネルギーとインスピレーションの大切な源

バカンスはクリスマスと夏休暇を併せて年間6週間くらいですかね。いずれも、家族と一緒に過ごす良い機会です。冬は娘の試合や練習のために、ドロミテ山脈のコルティナ・ダンペッツォなど良いスキー場のある山へ行き、夏はギリシャのガブドスという小さな島に滞在します。幼いころから夏を過ごしてきたこの島を彩るローズマリーやラベンダーの香りはたくさんの幸せな思い出とつながっていて、その香りの体験をもとに私が最初に作りあげたフレグランス、“ホワイトモス”はその優しく癒されるような爽やかなノートで世界のたくさんの人々に愛されており、いまではヨーロッパの自然派香水を代表する定番の香りともなっています。

住居の印象

豊かな自然に囲まれた18世紀のヴィラ

コネリアーノ市郊外の静かな居住区コッレ・ウンベルトにある丘一つが、お屋敷の敷地そのものとなっている。麓のエントランスから森を潜り抜けるように車で登ってゆくと、18世紀の豪農の館だったという広大なヴィラが現れる。アッカカッパのビジュアルもすべてここで撮影されるという。ヴェネト平野を一望できる庭園には藤、カリカントゥス、薔薇、菩提樹といった四季を通じて香り高い花々を咲かせる木々が植えられており、そのままアッカカッパのフレグランスのレパートリーとなっている。

歴史と自然が調和したゆったりとした居住空間

夏はダイニングスペースになるという、ガーデンに面したポーチと、古い一枚板の大きなテーブルが印象的なキッチン。暖炉のあるサロンは、代々伝わるアンティークの調度や絵画が温かい雰囲気を醸し出しており、インタビューを行った柔らかな白を基調にしたステュディオはアールデコのノスタルジックな面影を残している。曽祖父の時代から家族が住み続け、建築家である旦那様が改装を手掛けたというヴィラは、おっとりとした鄙の住まいの魅力とスタイリッシュな優雅さが周りの自然と見事に調和し、主であるエリーザを体現するような美しさを湛えている。

持ち物を拝見

ゆったりとした時の流れを感じられるものに愛着

古く伝統のある物が好きなので、アンティークの家具、小物、ジュエリーなどには目がありません。もちろん日本の工芸品も大好きで、いくつか東京から陶器も買ってきましたがこの家の内装によくマッチすると思います。

買い物について

品質本位、ノーブランド

普段あまり時間がないので、近隣でショッピングすることが難しく、海外に出張に行ったときに自分や家族の洋服を買ったりします。基本的にブランドにこだわりはなく、着心地が良く長持ちする品質の良いものを選びます。価格の高い、安いはあまり気にしません。日本ではユニクロの洋服をたくさん買いました!特にアンダーウェアやカットソーなどは品質が良く大好きです。
あとは主人との外出をかねて、アンティークショップやライフスタイルショップを回って二人で買い物をするのは楽しいですね。

ギフトは常に心を込めて

友人へのプレゼントは、主にクリスマスやバースデーですが、旅行や出張中にその国ならではの珍しいもの、美しく技術が凝っているものなどを買っておいて渡すことが多いです。この春日本に行ったときは銀座で煎茶用のお茶碗と茶托を買ってお洒落なエスプレッソ用のカップとしてお友達にあげて喜ばれました。子供たちへのプレゼントはやっぱり一番必要としているもの、サッカー用品とか携帯でしょうかね(笑)主人には折々によく花をプレゼントします。

お金は、心に響く特別なもののためにつかいたい

やっぱり現物を見て納得してから購入したいのでネットでの買い物はしないです。
今まで買ったものの中で一番高価なものは、会社への投資を別にすれば、アンティークジュエリー、アンティークカーペット、とくにペルシャ絨毯でしょうか。時間の洗礼を受けた古いすぐれた技と素材の歴史を感じさせるものが大好きで、触れることで心が落ちくような気がします。

情報集め

プライバシー重視。情報は必要なソースを効率よく

新聞は、経済紙SOLE24を欠かさず毎朝オフィスで読んでいます。そのほかのニュースは出勤途中の車の中で国営放送RAI1のラジオのニュースで得るようにしています。雑誌や本は時間がないのでなかなかバカンス中しか読めないですが、美容関係の必要な情報のために会社のスタッフが集めたプレスレビューには必ず目を通します。SNSはWhat’supを連絡用に使うくらいで、FB、インスタなどは会社としてはやっていますが個人ではアカウントも持っていません。

日本文化に対して

繊細なハートを持つ礼節と恩義の国。世界をリードするジャパンデザインと、信頼の品質

日本人は礼節と、恩義を重んじるとても繊細なハートを持つ人々だと思います。美的感覚にも優れていて、日本の伝統を上手に進化させたミニマルなデザインセンスは様々な分野で世界をリードしています。私も新しい製品や店舗を企画する際に、長年の日本でのパートナーである輸入元の方に必ずアドバイスをいただきます。日本製品は品質も信頼度が高いので、デザインと機能性を活かしたハイテク製品、インテリアグッズや家具、ファッションの部分でも世界的に大きなマーケットを広げてゆく可能性があるのではないでしょうか?

成功者と富裕層の定義

真の成功と富とは幸せを感じて生きること

成功とは、自分の信じた仕事で達成感を得て幸せを感じることだと思います。毎朝幸せな気持ちで目覚め、喜びをもって仕事場に向かえるのが成功者の生活ではないでしょうか?真の富裕層というのは、シンプルなことに喜びを感じられる人たち。所有するお金や物質ではないと思います。私の場合、人生で最も大切な宝は子供たち。愛する彼らの笑顔のためにあらゆる挑戦をして前に進み続けよう、という気持ちになりますよね。