みなさんは「富裕層」と聞いて、どのような方が思い浮かぶでしょうか。近年、「当社の製品を海外の富裕層に売りたい!」という中小企業の方々からのご相談が増えてきています。このレポートでは、中小企業の方々が富裕層に向けた海外展開を計画するうえで、そのターゲット像の具体化に資するべく、富裕層と呼ばれる方々のお気に入りのものやライフスタイル、お勧めのショップなどをインタビュー調査し、まとめたものです。みなさんの商品開発やマーケティングのお役に立てれば幸いです。
なお、このレポートは2018年に執筆されたものであり、現在の状況と異なる可能性があることをご了承ください。

氏名:ハッサン・アフィフィ(Hassan Afifi)
年齢 40才代
職業:Round Square Ventures Ltd. 取締役社長
家族構成:4人家族(17歳娘と14歳息子)
自宅エリア:ロンドン・イーリング地区ハンウェル
職場エリア:ロンドン・ブロードゲイト(ロンドン中心部にある広大なオフィススペースの一角)
住居の間取り(部屋数)大きさ:3ベッドルームを含む全部で9部屋
車所有台数:車は所有しておらず、車共有システムclub carを使用
使用する言語:英語/アラビア語/フランス語。イタリア語は基本的な会話のみ

エジプトリゾート地からアメリカ、ロンドンへ

エジプトの国際リゾート地であるシャルム・エル・シェイク出身です。高校はアメリカのオークヒルアカデミーへ通いました。エジプトではアメリカの学校はトップであるという認識が強いので、裕福な家庭の人はアメリカの高校・大学に行くことが多いんですよ。卒業後も成功を収めている人が多いですね。高校卒業後はカイロ・アメリカン大学で経済を学び、さらにロンドン・メトロポリタン大学院で国際観光マネジメントを専攻しました。
今の会社を立ち上げる前は、旅行業界で働いていました。エジプトの「スキューバダイバーズレッドシー」でダイビングインストラクター兼ガイドをしていたこともあるんですよ。ロンドンには先進国からだけでなく、ロシアやインド、中東、北アフリカなど世界中の新興国から富裕層たちが集まってきています。私もその一例だと言えるかもしれませんね。

生活スタイル

スポーツに傾倒する家族思いのビジネスマン

Round Square Ventures Ltd.は、ビジネスコンサルティングとオペレーション・マネジメント(運用管理)を専門とする会社で、事業計画やマーケティング、市場調査、規制・コンプライアンス要件、ブランド立ち上げなど様々なサービスを顧客に提供しています。サービスを提供している分野も国際貿易、商品取引・流通、スポーツ、オンライン小売、旅行・観光、教育など多岐に渡っています。睡眠時間は1日7-8時間ですね。
仕事関係の外食もありますが、基本的には毎日家で食事をとるようにしています。私と奥さんが50/50で料理をして、パレスチナ料理、エジプト料理など様々な国の料理を楽しんでいますよ。趣味はスポーツ、特にトライアスロンとダイビングで、これが健康維持にもつながっています。健康のため3カ月に1度は医療機関で血液検査をして、どのような食事、サプリメントが必要かどうかについて医師からアドバイスも受けています。

休暇は経費の安い場所へ

よく会う友達は3-4人で、1ケ月に1回会うか会わないかという程度です。仕事が忙しいため、外出することはほとんどありませんね。休暇は年2回で、基本的には夏に1回、クリスマスやイースターなどの大型連休にもう1回という形が多いですね。行きたい場所を決めてから計画を立てるのではなく、一番安い飛行機を予約してから行く場所を決めて、旅行の計画を立てるんです。ですから、その時によって行く場所は様々ですね。どうしても経費が安いヨーロッパに行くことが多いですが、エジプトに帰ることもありますよ。

住居の印象

自然に囲まれた治安のよい地域

自宅はロンドン・イーリング地区ハンウェルにあります。ゴルフ場やクリケット場、公園に囲まれた自然の多い地域で、治安も良いですよ。3ベッドルーム、2バスルーム、リビングルーム、キッチンダイニング、ユーティリティースペース、小さなオフィスの計9部屋と庭から成っています。壁紙はなく全部白壁です。家族の写真や、家族と一緒に訪れた場所の写真や絵画をあちこちに飾っています。照明はLEDライト。家電はテレビ、冷蔵庫、洗濯機、食洗器、ガス台、オーブン、パソコンとパソコン関連製品。ブランドのこだわりは特にありません。キッチンはリビングにつながるオープンキッチンになっていて、開放感がありますね。

買い物について

買い物はオンライン中心

仕事が忙しいのもあって、買い物はオンラインで済ませることが多いです。お店にわざわざ行くということはあまりないですね。食品は一般的なスーパー「セインズベリー(Sainsburys)」で買いますが、週に3回程は「ハローフレッシュ(Hello Fresh)」で自宅まで食材を配達してもらっています。様々なメニューに沿った食材を日替わりで持ってきてくれるので、献立を考える必要もなく、とても重宝しています。

見た目は普通な「ミニマリスト富裕層」

服を買う時の唯一のこだわりは、ブランドのロゴが入っていない物。「プライマーク (Primark)」という、みなさんもご存じの懐に優しいお店で買うことが多いですね。裕福な人は高価なもので着飾っているというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、私のような一見裕福には見えない、そうですね、言ってみれば「ミニマリスト富裕層」もロンドンには結構いるのではないかと思います。

プレゼントは物より共に過ごす時間

今まで買ったもので一番高いものはボートか家のどちらかでしょう。どっちが上だったかな?日本製の物といえば、初めて買った車がホンダシビックだったのを覚えています。懐かしいですね。誰かにプレゼントを贈るのはクリスマスぐらいです。文化上、プレゼントを贈る習慣があまりないんですよ。普段は何かをプレゼントするというよりも、一緒に食事に行ったり、自宅のディナーに招待することの方が圧倒的に多いですね。

情報収集方法

それぞれの媒体を活用した情報収集

テレビは夜家族と一緒に見ますよ。家族みんなでリラックスできる時間ですからね。「ネットフリックス (Netflix)」をよく利用しています。新聞は普段はオンラインで、ファイナンシャルタイムズ、BBC, CNN, Sky Newsやアラブ関連ニュースなどをチェックしています。週末だけ紙媒体のサンデータイムズ紙に目を通します。SNSはフェイスブック、インスタグラム、ツイッター、リンクインとメジャーなものは一通りやっています。ラジオは車の中かキッチンで聞くことが多いですね。BBCラジオ4やブルームバードラジオなどがお気に入りです。

日本文化に対して

息子が日本に興味津々

残念ながら日本に行ったことはありません。もちろん興味はありますが、とにかく高くて遠いイメージ。実は息子が日本に興味があり、日本語を学びたいと思っているようなんです。将来ゲームプログラマーになりたいとか。私よりも息子の方が先に日本に行くかもしれませんね。

日本といえば寿司と家電

イギリスで有名な日本商品と言えば、なんと言っても寿司。「ワサビ(Wasabi)」などのチェーン店も含めて至る所にお寿司屋さんがありますし、スーパーにも日本食コーナーがある程、人々の日常に入り込んでいると思います。お寿司=ヘルシーというイメージもありますし、富裕層の間でも人気ですよ。
それから日本の家電。日本製品は間違いなく高品質だと思いますし、信頼できると思いますが、その分値段も高いですよね。品質と価格のバランスが大事なのではないでしょうか。

日本企業にもビジネスチャンスはある

イギリスでビジネスを始めること自体は実はそれほど難しくありません。オンラインで始められますし、お金もそれほど必要ありません。一番の鍵はローカル文化を理解して適切なマーケティングを行うことができるかどうかという点です。特にロンドンは、時間を無駄にしたくない、知らない人とビジネスをすることを嫌がるなど、独特なビジネス文化があるので、その部分をしっかり理解することが大切です。例えば、以前エジプトのレストランがロンドンでオープンする時に手伝ったことがありますが、本国のレシピをローカルの人たちに合うように改良するのに6カ月ほどかかりました。ここをクリアしなければビジネスとしてはうまくいかないんです。
エジプトの物をそのままロンドンで売ろうとしてもうまくいかない。ですから、日本の企業もロンドンのビジネス文化を理解した上で進出するであれば、十分チャンスはあると思いますよ。ビジネスを始める前にしっかりとリサーチをして情報を集めることがとても重要です。ただなんとなくでは成功しません。頑張ってください。

成功者・富裕層の定義

幸せかどうかが鍵

富裕層は、一言でいうと、お金の心配をしないで生活できる人のことですね。
成功者は、お金とは関係ありません。幸せな毎日を送っているかどうかです。子供たちが幸せで満足した人生を送ることができれば、私の人生は成功だと言えるでしょう。