進出事例

夢で終わらせない、海外 ~第10回~ 高品質の耐震マットに「耐震」以外のニーズはあるか。 – プロセブン株式会社(大阪府大阪市)

Google+ Pinterest LinkedIn Tumblr

平成24年から平成30年まで7年間、中小機構では、中小企業の皆様の海外展開をハンズオンで支援する「海外ビジネス戦略推進支援事業」を行ってきました。
この記事は事業最終年度である平成30年度の事例集を再編集したものです。
事例集については中小機構のホームページで公開しています。また、海外ビジネス戦略推進支援事業は平成30年度で終了した事業ですが、中小機構では中小企業のみなさまの海外展開をご支援しています。詳しくはお近くの中小機構地域本部までお問い合わせください。

アメリカ調査で見つけた新しい可能性

2000年、大阪で創業。国内唯一の耐震マット専業メーカーとして、ウレタンゲルを用いた家具や機器・設備の固定マットを開発・製造している。震度7耐震試験をはじめ、多くの第三者機関の試験を受けている。家庭の地震対策だけでなく、工場設備の地震対策やプレジャーボート上の機材固定など、幅広い需要がある。今回、本格的な海外展開先として米国を選択、カリフォルニア州への現地調査で、「耐震」以外の新たなニーズも確認した。

阪神大震災から生まれた耐震マット

プロセブン耐震マットは、1995年の阪神大震災から生まれた。創業者の小玉誠三さんは震災直後、大阪から神戸へ駆けつけ、被害の大きさを目の当たりにする。建物等の倒壊はもちろんのこと、一見無事な家屋の中でさえ大きな揺れによって、タンスが倒れ、テレビが飛んだ。これによって大切な友人たちを亡くすという悲しい経験をした。それをきっかけに、巨大地震でも家具が動かない商品が作れないかと、耐震業界未経験ながら製品の開発に乗り出す。5年後、紆余曲折を経て、家具の下に置くだけで固定できる耐震マットを開発。プロセブン株式会社を設立した。現在の代表は、ご子息の小玉誠志さんだ。

粘着力と、貼ってはがせる手軽さをあわせ持つ耐震マットは、2011年の東日本大震災でも活躍。最近では、工場設備、病院、研究所などBto Bの需要も多い。一方で、以前から海外からの問い合わせが来ることはあったが、本格的な輸出には結びついていなかった。

今回、初めての海外進出の候補に上がったのが、米国のカリフォルニア州だ。米国の中で一番の地震地帯であり、将来の地震に備えるだけの、金銭的余裕がある家庭も多い。さらに、過去に大きな地震を経験しており、年に1度大規模な防災訓練をするなど、行政が積極的に対策を行っていた。防災意識が高い土地なら、企業からの需要も考えられる。だが、具体的にどう動けばいいかわからない。そこで小玉さんは、中小機構の海外ビジネス戦略推進支援事業に申し込んだ。

事前調査で分かった「耐震」への意識の差

耐震マットのデモキット。引っ張ってもびくともしない

米国展開にあたり、公募採択後一番気になったのは、耐震マットのニーズがどれだけあるかだ。専門業者に市場調査を依頼する選択肢もあったが、過去にいくつかの国へ調査を依頼したことがあり、あまり具体的な手応えを感じていなかった。そこで、中小機構の益倉アドバイザーが「一緒に自分の目で市場を見た方が良いのでは」と提案。現地調査に向け、準備を始めた。

まずは、日本在住のアメリカ人とカナダ人に、耐震マットに関するヒアリングを実施。すると、日本人よりもはるかに、地震への意識が薄いことが分かった。プロセブン耐震マットの売りである「震度7対応」についても、そもそも「震度」という単位が通用しない。やはり、アメリカへ売り出すのに「耐震」というキーワードだけでは弱いようだ。しかし一方で、「キャンピングカーやボートは日本以上に普及しており、その中の物を固定するのに使える」「地震以外にもハリケーンや竜巻などの自然災害も多い」「子どもの家具転倒事故を防ぐアイテムになる」など、別の切り口から提案があった。

そこで、現地で幅広いニーズをリサーチするための訪問先をピックアップ。日本で展開している美術品固定の商品もアピールしようと、美術館をリストに入れた。しかし、日本からのアポイント取得は難航。メールの返事がない状態が1か月ほど続いた。最終的には、中小機構のカリフォルニア在住アドバイザーの力を借りて、何とかすべてのスケジュールを決めることができた。

現地調査の準備と同時に、海外向けのWEBサイト作りも進めていった。営業部長の和田雅樹さんが、中小機構のセミナーで出会ったアドバイザーに助言をもらいながら英語サイトを作成。こちらは、子どもによる転倒防止をメインに、商品を紹介する内容にした。将来的にはアメリカのECモールに出店し、子育てファミリーへの普及を考えている。

準備したのは、WEBサイトだけではない。現地で商品をプレゼンするための本格的な商談資料も、これを機に英語で作成した。盛り込むべき情報、誤解を招きかねない表現など、日本国内で使う資料と海外で説明する為の資料はまったく事情が異なる。益倉アドバイザーと相談しながら作った資料は、パワーポイントで30ページに及んだ。さらに、訪問先によって内容に変化を持たせ、より興味を持ってもらえるように工夫。和田さんは、アメリカでのプレゼン用にモバイルプロジェクターを購入し、調査に向かう直前まで練習を重ねた。

アメリカで「耐震」以外のニーズを発見

ニーズの可能性を探りに、現地のキャンピングカーを見学

現地調査では、サンフランシスコ市の地震対策専門機関や、防災グッズを取り扱う同業他社を訪問。いずれも、耐震マットの性能には興味を持ってもらえた。しかし、アメリカには類似商品がないため、使い方を含めたプロモーションが必要なことが分かった。また、美術館では展示物固定の専門家と面談。バックヤードを見学し、どのように美術品が固定されているのか、実情を知ることができた。

さらに、現地の弁護士事務所等を訪問。輸入品に対する化学物質の規制や、パッケージ表示方法などを確認した。物流会社も訪ね、通関の費用などコスト計算に欠かせない、具体的な情報を入手。現地のホームセンターで競合製品の価格を確認すると、原料からすべて日本製のプロセブン耐震マットより、安価なものが多かった。それらの情報を整理し、 アドバイザーと共に販売価格を細かくコスト計算。商談の際に重要な「値ごろ感」が分ったことは、大きな収穫だった。

同時に、「耐震」のキーワードだけでは、競合製品に価格面で対抗困難という現実も見えてきた。「むやみに価格競争に入るのは、得策ではないと思いました。そこで、訴求の仕方を変えて、商品に付加価値が出せないかと考えました」。

現地調査では新たな発見があった。カリフォルニアの富裕層には、ボートやキャンピングカーを所有している家庭が多い。耐震マットの粘着力を、乗り物内の固定に使うニーズは日本よりも大きいのではないか。また、意外と地震に対する意識が薄かったことから、一般家庭へは「子どもの怪我を防ぐ」という目的での販売がベターだと考えた。もとより、品質には自信がある。「安ければ買う」層ではなく、「必要だから買う」層に届けたい。今後の方針が決まった。

支援を受けて海外展開へのステップが見えた

中小機構の支援を、小玉さんは「背中を押してもらった」と振り返る。「今まで、色んな人から海外展開を勧められてきましたが、そこへたどり着くまでのステップが分かりませんでした。中小機構のサポートによって、何が必要かがクリアになり、きちんと手順を踏みながら調査を進めることができました」。

現地調査から帰国後、初めて海外(中国)の展示会に出展。ここでも英語のパワーポイント資料が役に立ち、ブースには多くの人が集まった。アメリカ展開のルートが見えた今、他の国へも積極的にアプローチしていきたいと思っており、海外向専用のパッケージを使った製品も開発を決めた。阪神大震災から生まれ、東日本大震災でも活躍したプロセブン耐震マット。多くの可能性を秘めて、次は世界の安心と安全を守りに行く。

中小機構 ロゴ