
ヤマサちくわ株式会社(以下、同社)は、ちくわ、かまぼこ、はんぺんといった水産練製品の老舗メーカーで、東海道新幹線のおみやげを中心に東海地方で抜群の知名度を誇る。国内市場の縮小が進む中、新たな海外販路開拓を進めるべく、中小機構の海外展開ハンズオン支援を活用し、南半球オーストラリア市場への販路開拓に取り組むこととなった。
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地元知名度抜群の長寿企業による海外展開への挑戦
同社は、1827年(文政10年)創業で、現在の佐藤元英社長で七代目となる長寿企業である。「豊橋名産ヤマサのちくわ」のフレーズで東海地方の百貨店・スーパー・キオスク等で広く販売されている。また、中小機構中部本部がアドバイザーを務める、愛知県食品輸出研究会の会員企業であり、この研究会の活動に参画する中で、国内市場の中長期的なサイズ縮小や海外市場での日本食に対するニーズの高まりを痛感し、海外市場への販路開拓を開始していた。同社は、これまで香港、シンガポール、タイ、米国への輸出実績があるが、新たな海外販路開拓と安定した輸出体制の構築を目的に、研究会での繋がりもあったことから、支援の申込みがあった。

豊橋市本店
ターゲット国と投入製品の選定に時間をかける
ターゲット国と投入製品の選定については、時間をかけて慎重に進めた。コロナ収束後、世界的な人件費高騰や各地での紛争が激化する中、海上輸送物流の安定感や治安面の安全性を考慮した結果、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)を新たな輸出先として検討することとなった。
2国はこれまで何度か輸出先候補にあがっていたものの、南半球という心理的距離もあり、アプローチするきっかけがなかった。しかし、TPP加盟国であり、加えて、オーストラリアは欧米・アジアと比べて圧倒的に日本産品が少ないことがわかり、チャンスが大きいと判断した。
投入製品については、オーストラリア国内の日系やアジア系のスーパーを中心に同社の代名詞であるちくわをはじめ、かまぼこ、はんぺんといった高品質な水産練製品とし、需要掘り起こしを図る計画を立案した。

渡航時のオーストラリア(シドニー)の様子
しっかりとした計画書策定と事前準備が現地商談のクオリティをあげる
海外事業計画書の策定においてもしっかりとした調査を行い、競合製品の比較やオーストラリアへの商流(流通経路)の構築等を具体的に分析した。
オーストラリアの水産練製品市場は、大手の同業他社の独壇場であり、売価が安いことがわかっていたため、日系やローカル系商社数社を抽出した。
2024年11月にはシドニーへの現地同行支援を実施した。同社から現地商談に出向く役員は初めての渡豪であったため、日系やローカル系のスーパーを中心に徹底した市場調査を行い、商社との商談同席支援、ジェトロシドニー事務所でのブリーフィングサービスも活用した。

現地日系商社との商談成立

シドニー中心街のアジア系スーパーを視察
事前の綿密な調査と同行時のフォロー体制を万全にしたことで、現地の日系食品商社との商談の際は、試食を交えた説得力のある戦略的なプレゼンテーションを行うことができた。
市場調査の結果、WoolworthやColesといった二大ローカルスーパーチェーンへの商機はほぼなく、日系やアジア系のスーパーへの常設化を目標とすることが明確となった。
素早いフォローアップによる商流構築、輸出開始!
現地の日系食品商社との商談の結果、帰国後の同社渡航担当者による素早いフォローアップの甲斐もあり、直営するスーパーへの水産練製品7品目が成約し、輸出開始に結びついた。同時に、オーストラリア向けの商流を構築することができ、安定的な輸出体制の礎を築くことができた。
次なる課題としては、IGA THAIKEE、MIDO MARTといったアジア系スーパーへの常設化を図ることであり、定期的な渡航による現地商社等との関係強化が課題となる。

日系スーパー「TOKYO MART」での市場調査の様子
企業の声
今回の支援を受けるまで、オーストラリアは市場調査すらしたことがありませんでした。しかし、アジア系の移民が多いオーストラリアは日系、アジア系の小売店が存在し、魚肉練り製品に対する需要があることが分かりました。また、大槻専門家の的確な助言により、弊社がまず取り組むべき日系小売店を見定め、そのための適切な商流構築に向けた商談をすることができました。今回のご支援により無事に商談が成立し、現地日系小売店にてお取り扱いいただけることになりました。今後は、現地での定着、ファンづくりのために積極的に試食販売を行い、弊社の商品を認知していただけるよう努力してまいります。
企業プロフィール
ヤマサちくわ株式会社 | |
URL: | https://yamasa.chikuwa.co.jp |
代表者: | 代表取締役社長 佐藤 元英 |
所在地 | 愛知県 豊橋市 |
資本金 | 10,000万円 |
従業員数 | 323人 |
業種 | 製造業 |
事業内容: | 水産練製品の製造・販売・飲食事業 |
商品内容: | 水産練製品(ちくわ、かまぼこ、はんぺんほか) |
担当アドバイザー:大槻 恭久 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
中小機構について
独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。
「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。どうぞお気軽にお申し込みください。
「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。
公開日:2025年 4月 25日
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