同じものなのにどうして違う?

同じものを見ていても、全ての人が同じに見えているわけではありません。
商社で欧州に日本製生地を染めて輸出していた時の経験です。顧客からこの色に染めて欲しいと生地の端切れやカラーカードの番号で指示がきます。工場で染める前に指図の色目のサンプル(※ラブディップ、ビーカーと呼ばれます)をいくつか作成し、どのサンプルの色で染めるかを顧客から指示を貰い、それに基づき染めることが業務遂行の流れでした。
しかし、了解指示の出たサンプルの色と顧客の希望していた色が、筆者の目では両者がかなり違うと思える経験が多くありました。その時に思いました;

「同じものは、同じじゃない!」

これは、「感じ方」(情緒)の問題ではなく、実際の「物理的」(現実)な違いの話です。
雑学の話題でよく聞くことがあるのは、空の虹が何色に見えるかです。海外の人に虹は何色かと聞いてみると国によって色の数に違いがあるそうです。

日本で「虹は7色」は常識ですが、世界では常識ではないということです。
7色が常識と思って虹をみるか、或いは思い込みなしに何色あるか見ようとするかで大きな違いを生みます。自分に見えている色が他の人には違う色に見えるとは、何と興味深く含蓄のある現象でしょう。7色という概念(常識)が物事を冷静に客観的に見ることを阻害していることになります。

マーケティングとは思い込みを捨てることが肝

ある物事を実際の状況を自分の目でみていても自分の中の常識、思い込みで勝手に思い描いた印象で解釈をしてしまうことがよくあります。欧州人はこうだ、米国人はこうだ、中国人はこうだ等の自分の中の「メンタルモデル」を通して意思決定や行動をした結果、取引が上手く行かなかったりトラブルが起きたりするケースも多いと思います。
これは、情報や口コミから起きる「思い込み」が顧客や市場に対する誤解を生んだ結果です。
「百聞は一見に如かず」何事も自分の目で見て確かめる、ハンズオンの現場主義の欠如が誤解を引き起こします。海外の取引では自分の目で見る現場主義が特に大切です。
現場(顧客・市場)を見て⇒ 考えて ⇒ 行動  これがマーケティングです。

自分の目で顧客、市場を見る、知ろうとする意識・行動の積み重ねが、顧客との信頼に繋がって行き、それが成果(商売)に結び付いて行くはずです。海外市場マーケティングの肝は「思い込み」を捨てて海外市場の現場に出掛け、現物と現実を体感することです。

論理的プレゼンとは ⇒ 理解と共感の違い!

日本人は情緒的で、欧米人は論理的だという「思い込み」が染みついた几帳面な日本人がプレゼン準備・資料を作成する場合、論理的に作らねばという固定観念に縛られてプレゼン準備や資料作成に多大な労力を費やしますが、結果的に高評価を得られないことが多いと聞きます。

日本型プレゼンは、相手に「理解を求め」、欧米型プレゼンは相手に「共感を生む」という意見があり、筆者も共感できます。「求める」と「生む」の表現の違いはそれぞれ両極に位置付けられ、その違いがプレゼンの成果に直結することから、相手に「共感を生む」ことがプレゼンの肝となります。

日本型と欧米型の商品プレゼンを典型化・単純化した例を挙げます:

(日本型)
当社製品は、厳選された原料、最先端の工場、詳細データ、優秀な社員によって作られた素晴らしい製品です。
「すごいでしょ!」と素晴らしい製品だと「理解」を求める

(欧米型)
当社製品は、皆様に(有形無形の)利益(効能)を提供する素晴らしい製品です。
「へぇ!」素晴らしい製品だと「共感」を生む

「求める」と「生む」というプレゼン表現の違いを認識して、欧米だけでなくグローバル市場の人々に「共感を生む」プレゼン準備、資料ができれば、海外ビジネス現場で有効な「武器」となることは間違いないと思います。
ただし、技巧を凝らしたテクニック・プレゼンや演出(ジョブズ氏のマネ)は即座に見抜かれ逆に墓穴を掘る可能性があることも忘れないで下さい。

「共感がプレゼンの肝だ!」

筆者紹介

早川 義昭 中小機構 中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓)

総合商社に33年間勤務し、繊維製品輸出、経営統括業務を担当しました。海外駐在経験は、クウェート、香港、パキスタンの3ケ国です。合計11年の海外駐在において、営業現場、経営現場の経験を持っています。商社退職後は、小売業2社で経営企画の職を通じて会社経営に携わり、日々の営業現場の視点から業績向上と経営改善に邁進した経験があります。

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