有限会社あこ天然酵母は、製パン用の天然培養酵母(あこ酵母)を製造・販売しており、その酵母は、麹菌の酵素により、小麦等のたんぱく質を分解してアミノ酸等のうまみを形成し、原料のおいしさを引き出す特徴がある。全世界的な「安心・安全・健康」志向や「発酵食品」ブームの高まりのなか、中小機構の海外展開ハンズオン支援(長期支援)を利用して、まずはシンガポール市場に新たな販路を開拓することとなった。
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麹が生み出す旨味を活かした製パン用天然培養酵母を世界へ
同社は、他の天然酵母メーカーにはないアプローチとして、実際に販売するパンを製造するファクトリーベーカリーの研修スタイルを採用し、ベーカリーの開業支援も行っている。一方で、大手製パン企業の攻勢により国内市場の競争が激化、顧客とする手作りパン店の減少を目のあたりにしていた。そこで、現社長の長女にあたる専務が海外事業を立ち上げることなった。それまでは、輸出商社経由で台湾等への間接輸出はあったが、自社による海外展開はしておらず、検討過程で取引先金融機関である多摩信用金庫より、中小機構の海外展開ハンズオン支援事業の紹介があり、申し込みをするに至った。
シンガポールへ日本からの製パン用活性酵母の輸出の前例はほとんどなかった。ただ、現地の日本のパンへの人気は高く、また、コロナ禍での「安心・安全・健康」志向も高かった。また、アジア随一の富裕層が存在する市場である。天然酵母を使った製パンは今後、業務用及びホームベーカリーなどの個人利用とも大きな市場が期待できた。
コロナ禍ではWEB面談の活用を中心に据えた支援を計画
相談を重ねていくうちに、将来に向けての指針となるべく海外事業計画の作成を目指すべく、海外展開ハンズオン支援事業(長期支援)に採択された。海外事業担当の専務がリーダーとして社長と工場長が海外向け商品開発、及び品質管理を担当。面談には、多摩信用金庫からも担当者が参加し積極的な議論を重ねた。
コロナ禍であったためWEB面談を活用して、以下の項目についてアドバイザーは仮説版の事業計画を策定するべく支援を進めた。
- シンガポール市場での、業務用及び個人用ユーザーの発掘とWEBを活用した研修プログラムの導入可能性の検討
- 現地アドバイザーを活用したターゲットユーザー候補にかかる情報提供支援
- 販売代理店の選定(絞込み)基準作成
- 販売代理店との交渉に関するアドバイス
- 物流に関する体制構築へのアドバイス
- ターゲット国への現地市場調査と仮説検証
特に、市場調査手法や競合となる既存の製パン用イーストとの差別化ポイントを明確にし、PRや販売候補先へのプレゼンが出来るよう支援に注力した。
現地渡航調査を有効活用して現地ベーカリーにパン作り研修を通じて直接アピール
中小機構の現地アドバイザーにオンラインで相談しながら、ターゲットユーザー候補の洗い出し、販売代理店の選定基準作成等を実施。その後、現地でのビジネスモデルを検証するために、シンガポールに渡航して現地調査を行った。
現地調査では、多様な現地のベーカリー(個人店・インストアベーカリー・ローカル経営・日系ベーカリー)を視察・訪問。どんなパンが好まれているのか、パンのレパートリーをはじめ、売り方など総合的に体感した。また、現地アドバイザーによる情報提供で見つけたディストリビューターに紹介を受けた新たなユーザー候補のベーカリーと面談をし、天然酵母の製品特性のプレゼンやサンプル提供を行い、反応を確認した。候補先のベーカリーは、職人を指導するベーカリースクールも主催し、数多くの若手パン職人に影響力のある先だったため、新たな天然酵母の使い方やおいしさを市場に発信することが可能と思われ、現地でパン職人を対象に研修を実施したほか、今後の製パンセミナーの企画・開催についても相談を行った。
結果、今後の販売方法の具体策等が得られ、ディストリビューターの設定と商流・物流のチャンネル設定が完了し、シンガポール市場に商品出荷開始。ユーザーベーカリーは、パンの製造・販売を開始し、店頭POPで天然酵母を使ったパンであることをPRして販売をしている。
シンガポール市場での販路開拓に成功
渡航調査では、中小機構の職員も同行、新たなユーザー候補との面談を通じて市場の現状と将来の方向性を確認した結果を踏まえて、具体的な販路設定ができ、これにより実行可能な海外事業計画の策定が完了した。加えて、現地の雇用・教育を担う政府機関との面談も行っており、現地のパン職人を目指す人々への教育プログラムの設定に関する意見交換も行うことができた。これは、仮説版の事業計画を策定する過程のアドバイス支援により、シンガポールの市場環境が明確になり、今後の販売戦略に関する具体的な提案のヒントが得られたことと、現地調査前のWEB面談を通じてディストリビューターやユーザーベーカリーとの円滑なコミュニケーションが確立され、新たな関係が構築されたことが非常に大きい。
今後は、一連の海外事業計画策定の過程で得た海外展開のノウハウを活かし、香港経由による中国市場攻略や、北米市場や欧州市場の開拓も検討する。
企業の声
自社製品の輸出の拡大を模索していた中で、継続的な支援をいただけたのは本当に心強かったです。中小機構の支援を受け始めてからは、担当のアドバイザーに「いつでもなんでも相談できる。状況を把握していただけている。」ということがどれほど支えとなり、事業を推進していく原動力となったかは言葉では書き表せません。豊富なご経験から、常に適切なアドバイスをいただきました。また、シンガポールへの訪問をした結果として取引先との関係構築がなされたという大きな成果もありました。支援を受けた経験を踏まえて、さらに自社製品を世界に広めるべく邁進してまいります。
企業プロフィール
有限会社あこ天然酵母 | |
URL: | http://ako-tennenkoubo.com |
代表者: | 代表取締役社長 近藤 泰弘 |
所在地 | 東京都八王子市 |
資本金 | 700万円 |
従業員数 | 11人 |
業種 | 食品製造業 |
事業内容: | 製パン用天然培養酵母及びパンの製造・販売 |
商品内容: | あこ天然培養酵母 |
担当アドバイザー: 清松 直之 中小機構 中小企業アドバイザー(国際化・販路開拓)
中小機構について
独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。
「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。どうぞお気軽にお申し込みください。
「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。
公開日:2024年 3月 4日
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- 麹が生み出す旨味を活かした製パン用天然培養酵母を世界へ
- コロナ禍ではWEB面談の活用を中心に据えた支援を計画
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- シンガポール市場での販路開拓に成功
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