進出事例

夢で終わらせない、海外 ~第4回~ 社長のビジョンを 具体的な道筋へ。 – 大和合金株式会社(埼玉県入間郡)

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平成24年から平成30年まで7年間、中小機構では、中小企業の皆様の海外展開をハンズオンで支援する「海外ビジネス戦略推進支援事業」を行ってきました。
この記事は事業最終年度である平成30年度の事例集を再編集したものです。
事例集については中小機構のホームページで公開しています。また、海外ビジネス戦略推進支援事業は平成30年度で終了した事業ですが、中小機構では中小企業のみなさまの海外展開をご支援しています。詳しくはお近くの中小機構地域本部までお問い合わせください。

ポルトガルを拠点にEU航空業界へ羽ばたく

特殊銅合金の鋳造・鍛造メーカー。各種金型や航空機・自動車の材料など、あらゆる銅合金部品を開発から製品化まで一貫生産する。品質の高さには定評があり、近年EU航空業界との取引が増えていることから、ポルトガル進出を決意。現地調査では、社長含む4人でポルトガルへ向かい、必要に応じ2チームに分かれて効率的に訪問先をまわった。現在、支店設立の準備をしており、ポルトガル語ネイティブの社員が駐在する。ポルトガルで足場を固めたあと、EUへの本格進出を目指す。

ポルトガルからEUの航空業界へ

埼玉県入間郡に工場を構える当社は、1941年創業。代表の萩野源次郎さんは3代目だ。先代が育ててきたものを更に発展させたいと考えた結果、海外のマーケットに注目した。当社では近年、EU航空業界との取引が増えている。しかし、受注が多いとその分、トラブルの可能性も増える。緊急のフォローが必要な場合に、日本とヨーロッパの時差が不利になってしまう。現地にいる競合との差を埋めるためにも、EUに拠点を置き、スピーディに対応する必要性を感じていた。

そこで候補に挙がったのが、ポルトガルだ。ポルトガルはEU諸国へのアクセスがよく、物価・人件費などのコストが比較的安い。また、自動車業界への金型需要があり、新規開拓の可能性も感じた。さらに追い風となったのは、海外販売チームに、ブラジル国籍でアメリカ育ちの社員、ペドロさんがいたことだ。ポルトガル語ネイディブで英語・日本語も堪能なペドロさんは、当社のインターンシップに参加し、グローバルなビジョンに共感。語学力や自分のバックグラウンドが会社に貢献できそうだと、3年前に入社した。現地駐在員として、これ以上の適任はいないだろう。

伸び行く業界も、最適な人材も、将来のビジョンもある。しかし、萩野さんの頭の中には、海外進出のざっくりしたイメージがあるだけで、具体的にどう動けばいいか分からなかった。以前から中小機構の経営支援を受け、手ごたえを感じていた萩野さんは、中小機構の海外ビジネス戦略推進支援事業にも申し込んだ。

チームで準備を進めビジョンを共有

大和合金萩野社長(中央)とペドロさん(右)、中小機構の中家アドバイザー(左)

現地調査に向け、中小機構の職員・中家アドバイザーとミーティングを重ねながら準備を進めていった。萩野さんの中にだけあったイメージを、「なぜそれをしたいのか」を具体的に洗い出し、事業計画へと落とし込んでいく。ミーティングには、ペドロさんをはじめ営業チームみんなで参加し、萩野さんのビジョンを直接共有していった。

中小企業は大企業と比べ、思い立ったときに行動しやすい。そのぶん、あまり考えないで動いてしまうこともあるという。途中で想定外のことが起こると、そこで止まったり、脱線していってしまう。そうならないため、この先に起こりうる様々な事態を想定し、それに対するオプションをみんなで考えていった。「飛行機と同じで、飛び立つには長い助走が必要だ」と、萩野さんは実感した。

特に迷っていたのが、進出形態を駐在員事務所、支店、現地法人のどれにするかだ。初めての海外進出で情報がない萩野さんらに代わり、海外経験豊富な中家アドバイザーが、それぞれのメリット・デメリットを表にしていった。おかげで、現地調査前にある程度の判断材料を持つことができた。

訪問先探しにも、中小機構のアドバイスが役に立った。萩野さんらは過去に海外を訪問したことはあったが、自分たちだけだとどうしても目先のお客さん探しがメインになる。そこで、「この情報がほしいならどこに行くべきか」を中小機構とともに洗い出し、投資庁や会計・弁護士事務所など、ポルトガル進出のために必要な訪問先を一緒に考えていった。アポ取りは、当社と付き合いがある日本の銀行に問い合わせ、現地の機関を紹介してもらうなど、企業ネットワークを下地に中小機構が補強する形で進めた。

また、たまたま現地調査の日程中にポルトガル航空業界の年次総会があることを知り、急遽スケジュールに取り入れた。そうして一緒に準備を進めてきた営業チーム4人と中小機構の職員・アドバイザーとで、ポルトガルに向かった。

漏れのない計画で十分な調査ができた

現地では、大使館や行政機関、日本人会の関係者などを訪問した。いずれも、直接ビジネスが発生する相手ではないが、今後ポルトガルに根付いていくために必要なネットワークだ。大使館では、現大使から直接、ポルトガルに関する幅広い情報を聞くことができた。進出先のポルト市は、日系企業がほぼいない状態だという。当社の事業が魅力的なこともあり、どこへ行っても歓迎してもらえた。また、金型メーカーや日系企業を訪問し、航空機だけでなく金型市場にもニーズがあることが確認できた。

高い技術力で製造される特殊銅合金部品

たまたま日程が重なっていた航空機産業の年次総会には、アポを取ったすべての企業と面談するため、2グループに分かれて動いた。「現地では、必ず全員で動くものだと思っていたので、中小機構の柔軟な対応がありがたかったです」と萩野さんは言う。

情報を集める中で、迷っていた進出形態も決めることができた。コスト面を考え、まずは支店を設立し、既存顧客にスピーディな対応をすることを第一とした。ゆくゆくは現地法人を設立し、金型や航空機市場の新規開拓に動くつもりだ。これも、事前に各進出形態のメリット・デメリットを把握していたからこそ、現地で判断することができた。「限られた調査期間で、最大限の効果が出せました。入念に事前準備をしたことが良かったと思います。自分たちだけでは気づけなかった、色んな切り口から考えることができ、漏れのない計画が立てられました」。帰国した萩野さんには、ポルトガル進出の道筋がはっきりと見えていた。

これからも中小機構と二人三脚で進みたい

航空業界は大きく伸びており、このままでは生産が追い付かなくなる。生産能力向上のため、当社は今、中小機構のハンズオン(経営)支援も受けている。まさに、中小機構と二人三脚で進んでいる最中だ。「海外部門も経営部門も連携していて、足並みを揃えて支援してもらえるのが、ありがたいです。中小機構には様々な分野のエキスパートがいて、企業の発展のために尽力してくださっている。大変なこともありますが、力を貸してもらっている以上、やらざるを得ない。逃げ道を絶って、着実に成長していきたいです」と語る萩野さん。その夢は、世界の空へとますます羽ばたいていくだろう。

 

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