「フリーゾーン」(FZ)とは、外国企業の自国への誘致を狙い、拠点進出に伴う様々な法的・税制面での優遇措置を整備している経済特区のことです。 通常、オフショア扱いとされています。ここではGCCの中でもフリーゾーン政策が最も発達しているUAEのドゥバイ首長国のケースを見てみましょう。

1.FZの役割

〇 経済開発・発展を推進させる為に、国内の一部の地区を「経済特区」として指定し、様々な優遇策を用意し、外国企業の直接投資・進出を誘致する経済政策に基づく「非関税地区」。
域内では早くからFZを開発したドゥバイにとっては、FZはオフショア扱いであり、直接の課税収入対象地域ではないが、以下のような副次的収入獲得/関連産業育成のメリットをもたらしている。
①  企業の毎年の事業ライセンス・(更新)フィー収入、
②  FZ庁がFZ地区に独占的に建設し用意する「レンタル・オフィス・ビル」の家賃収入。(実際に、競合者が不在なので、頻繁に家賃改定が行われている。)
③  多数の雇用を創出できれはそれら従業員と家族の生活に伴う消費の創造(食費・家賃・車・学校・医療その 他日常の生活必要物資・サービスの購入)、
④  中継地点としての港湾収入・空港収入・航空会社の収入
⑤  倉庫・物流業者の活動の結果発生する収入、
⑥  その他船舶付随の諸サービス業(陸送、港の構内作業バンカーオイル、船舶修理、諸検査業務、シップチャンドラー業務等々)
⑦  FZに外国企業の進出拠点が集積し、それらの多くが南西アジア~CIS~中東~アフリカ市場をカバーする地域統括拠点としての機能を担っていることから、後背地である、
ドゥバイでの国際見本市/国際会議/セミナー等の開催地として選択される機会の増加がビジネス訪問客数増加をもたらし、付随するサービス産業が発展。
〇 中東では、70年代にエジプトPort SaiidやヨルダンAqaba等でフリーゾーンが建設されたが、いずれも従来から存在する自国最大の港湾の一部を区切り「非関税地区」扱いとしたもの。 その意味では、何もない「前面は海、後背地は砂漠」という立地にゼロからフリーゾーンを建設した1980年代のドゥバイの試みは、当時は「無謀な挑戦」と受け止められた。
然し、今日、このドゥバイJubel Ali Free Zoneは中東域内最大の人工商業港を擁し7,000社以上が進出している世界でも有数のフリーゾーンに発展し、ドゥバイの成長の重要な牽引要因となっている。

2. 企業にとってのFZに進出する意味・メリット

〇 GCC諸国は何れも、外国企業の国内での活動に対する制約は少なくない。例えば、ドゥバイ国内に会社を設立する場合(除、製造業)、自国籍資本が51%所有すること、 或いは、駐在事務所/支店を設置する場合には、自国籍私人か法人をスポンサー(=身元保証人、官公庁への手続き代理人)の設定が義務付けられていること等がある。
〇 FZに進出する場合は、資本構成自由/スポンサー不要(FZ庁がその機能を果たす)/輸入関税免除(再輸出を前提)/設立後50年間所得税免除/資本・利益の送金の自由等の利便性を享受できる。
〇 FZ拠点からGCC・中東のみならず、南西アジア市場、全中東、CIS市場、更には、東アフリカ市場までのカバーを可能にするだけの、地理的立地/港湾インフラ/航空便インフラ(フライトが結ぶ都市数と便数)の発達のレベルは地域内他国のFZを遥かに凌いでいる。
〇 Jubel Ali FZだけで世界の数十か国から7,000社以上の企業が進出しているドゥバイには、”xx国Businessman’s Association”的な同じ出身国別の商工団体が設立されて居り、斯様な団体に当たることで 当該国のビジネス情報入手、或いは、当該国特定企業とのビジネス創出の機会を生む可能性もあろう。

プロフィール

国際化支援アドバイザー(国際化支援)富山 保
総合商社に38年勤務し長年海外ビジネスに携わってきた。若い頃の会社派遣のアラビア語研修皮切りに、 合計約15年間の現地駐在経験(サウジアラビア・UAE等)を有する。