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生成AI・海外クラウドを安心して使うための個人情報管理

生成AI・海外クラウドを安心して使うための個人情報管理

はじめに

海外展開がはじまると、ChatGPTで英文メールを作成したり、Google Driveで見積書を共有したり、Zoomで海外企業と打ち合わせをしたりと、生成AIや海外クラウドサービスを利用する機会が急速に増えていきます。一方で、「顧客情報をすべて入力しても大丈夫?」「海外サービス利用のリスクはないのか」と不安を感じる方も少なくありません。本記事では、中小企業で実際によくある業務を例に、生成AIや海外クラウドを安心して活用するために知っておきたい個人情報管理のポイントを、ある海外営業担当者の日常シーンを想定して解説します。

ChatGPTで英文メールを作るとき、顧客情報を入力しても大丈夫?

朝、海外の取引先から問い合わせメールが届いていました。

以前なら英語に悩みながら2時間近くかかっていた返信も、今ではDeepL※1で内容を確認し、ChatGPT※2で英文メールを作成すれば10分ほどで返信できます。見積条件や納期、担当者とのこれまでのやり取りも入力すると、より自然で精度の高い文章になるため、「最近はほとんど生成AIに任せている」という担当者も少なくありません。

しかし、この便利な使い方には、いくつか確認しておきたい点があります。

① 個人情報や機密情報を、そのまま入力していませんか。
担当者名やメールアドレスだけでなく、価格や未公開製品、図面なども、自社や取引先の重要な情報です。

② 利用しているサービスの設定を確認していますか。
生成AIサービスによっては、入力内容の取り扱いや設定が異なります。業務利用では、自社で利用しているサービスの設定や利用条件を一度確認しておくことが安心につながります。

③ 「便利だから」で使い方が広がっていませんか。
最初は英文メールだけだったものが、契約書や顧客リスト、展示会参加者一覧など、扱う情報が少しずつ増えていくこともあります。

こうした状態を放置すると、情報管理に対する社内の基準が曖昧になり、気付かないうちに重要な情報まで生成AIへ入力してしまう可能性があります。

生成AIサービスは、入力データの取り扱いや利用目的、設定がサービスごとに異なります。例えば、入力内容をAIの改善に利用しない設定が用意されているサービスもありますが、それだけで「あらゆるリスクがなくなる」と考えるのは適切ではありません。万が一、重要な情報が外部へ漏えいした場合には、取引先との信頼低下や企業の信用失墜につながるおそれがあります。

まずは、「会社名や担当者名は『A社』『担当者』に置き換える」「メールアドレスや電話番号は削除する」「見積金額や契約条件などの機密情報は入力しない」といったルールを決めるだけでも、多くのリスクを減らすことができます。

※1 DeepL:DeepL社が提供するAI翻訳・文章校正サービス
※2 ChatGPT:OpenAI社が提供する対話型生成AIサービス

Google DriveやDropboxで海外顧客情報を共有していませんか?

ランチ前に、海外企業から
「急ぎ図面を送ってください」とメールが届きました。

以前は容量制限があるためメール添付で苦労していましたが、今ではGoogle Drive※3へ保存し、共有リンクを送るだけで作業は完了です。展示会後には、見積書や製品カタログ、契約書、名刺リストなどもDropbox※4やGoogle Driveへ保存し、社内メンバーや海外代理店と共有している企業も多いでしょう。

便利なクラウドサービスですが、このような使い方には確認しておきたい点があります。

① 共有相手は本当に必要な人だけですか。
「リンクを知っている人なら誰でも閲覧できる」設定になっていると、意図しない相手まで資料を閲覧できる可能性があります。

② 商談終了後も共有リンクを残したままにしていませんか。
一度作成した共有リンクは、削除しない限り有効なままになっていることがあります。

③ 個人情報をまとめて保存していませんか。
展示会で集めた名刺リストや顧客一覧には、氏名やメールアドレスなど多くの個人情報が含まれています。

こうした状態を放置すると、「誰が、どの資料へアクセスできるのか」が分からなくなり、情報管理が担当者任せになってしまいます。

例えば、以前の海外代理店との共有リンクが残ったままになり、新しい価格表や見積書まで閲覧できる状態になっていた、というケースも考えられます。 小さな設定ミスでも、取引先との信頼関係に影響するおそれがあります。

まずは、「共有相手を限定する」「不要になった共有リンクは削除する」「顧客リストは必要最小限だけ保存する」というルールを決めるだけでも、多くのリスクを減らすことができます。

※3 Google Drive:Google社が提供するクラウドストレージ・ファイル共有サービス
※4 Dropbox:Dropbox社が提供するクラウドストレージ・ファイル共有サービス

CanvaやGoogle Workspaceを使うときに知っておきたいこと

午後一番に、海外展示会で配布する会社案内を
作成することになりました。

以前はデザイン会社へ依頼していたチラシも、最近はCanva※5で自社制作することが増えました。海外営業資料はGoogle Workspace※6で共同編集し、営業担当者同士で同時に修正することも珍しくありません。短時間で資料が完成し、社内外との共同作業もスムーズになるため、とても便利なサービスです。

しかし、この便利な使い方にも、確認しておきたい点があります。

① 編集権限を必要以上に広げていませんか。
共同編集の設定によっては、社外の関係者でも資料を編集・ダウンロードできる状態になっていることがあります。

② 過去の資料をそのまま流用していませんか。
展示会資料や提案書には、以前の顧客名や担当者名、価格などが残っていることがあります。そのまま別の顧客向け資料として使ってしまうと、思わぬ情報共有につながる可能性があります。

③ 誰でも自由に利用できる状態になっていませんか。
「急ぎだから」「自分しか使わないから」と、共有範囲やアクセス権限を見直さないまま利用していると、その設定がそのまま社内の標準になってしまうことがあります。

こうした状態を放置すると、小さな”うっかり”が積み重なり、本来共有すべきではない情報まで社内外へ広がる可能性があります。

例えば、「社長確認後に送付」「利益率が低いので要注意」といった社内向けコメントを削除し忘れたまま海外企業へ共有してしまったり、制作途中のページや非公開のデザイン案まで相手に見られる設定になっていたりするケースも考えられます。

まずは、「共同編集する相手を必要最小限にする」「過去資料を流用するときは固有名詞や価格を確認する」「公開範囲を定期的に見直す」というルールを決めるだけでも、多くのリスクを減らすことができます。

※5 Canva:Canva社が提供するオンラインデザイン作成ツール
※6 Google Workspace:Google社のビジネス向けグループウェア・業務支援サービス

海外サービスを使うと「越境移転」になることがあります

今日の業務もあと少し。契約書を送り、
商談メモをGoogle Driveへ保存して一日が終わります。

こうして一日を振り返ると、ChatGPTで英文メールを作成し、Google Driveで資料を共有し、Canvaで営業資料を修正するなど、多くの業務で海外のサービスを利用していることに気付きます。実は、これらのサービスでは、入力したデータが海外のサーバーで処理・保存されることがあります。このように、個人情報が海外で取り扱われることを「越境移転」と呼びます。

越境移転で注意したいのは、日本の個人情報保護法だけでなく、取引先が所在する国や地域のルールも関係することです。例えばEU企業との取引では、GDPR※7への配慮を求められる場合があります。また、利用するサービスによっては、どの国でデータが処理・保存されるのか利用者には分かりにくく、万が一情報漏えいなどの問題が起きた場合には、原因確認や対応にかなりの時間と費用を要することもあります。

しかし、だからといって「海外サービスは危険だから使わない方がよい」ということではありません。重要なのは、自社がどのサービスを利用し、どのような情報を入力・共有しているのかを正しく把握した上で利用することです。サービスごとの利用規約やセキュリティ設定を確認し、自社で取り扱う情報に応じて適切に利用することが、個人情報保護法やGDPRへの対応にもつながります。

※7 GDPR:EUが定める個人情報保護に関する規則(General Data Protection Regulation)

今日から安心して生成AI・海外クラウドを使うために

ここまで見てきたように、生成AIや海外クラウドサービスは、今や海外営業に欠かせない業務ツールです。これらは限られたリソースでも業務を効率化でき、中小企業の海外展開を支える便利なサービスでもあります。

一方で、「便利だから」「急いでいるから」と使い続けているうちに、会社名や担当者名をそのまま入力したり、共有設定を見直さなかったり、以前の資料をそのまま流用したりと、小さな”うっかり”が積み重なってしまうことがあります。

たった一人の担当者が「これくらいなら大丈夫だろう」と判断したことが、会社全体の問題につながることもあります。もし情報漏えいが起これば、取引先への説明や原因調査、共有設定の見直しなど、本来の営業活動以外の対応に追われることになります。さらに、「この会社に情報を預けても大丈夫だろうか」という不安を与えれば、海外企業との信頼関係にも影響しかねません。中小企業では、一つの取引先との関係が経営に与える影響も大きいため、情報管理は担当者だけの問題ではなく、会社全体で取り組むテーマと考えることが重要です。

例えば、特別なシステムを導入する前に、まずは社内で次のようなルールを決めておくことをおすすめします。

  • 会社名や担当者名は匿名化して入力する
  • 機密情報や個人情報は必要以上に入力しない
  • 共有相手や公開範囲を定期的に確認する
  • 古い共有リンクや不要なデータは削除する
  • 利用している生成AIやクラウドサービスを一度整理する

こうした小さな取り組みを積み重ねることで、生成AIや海外クラウドサービスを安心して活用しながら、海外企業との信頼関係も築いていくことができるでしょう。

筆者紹介

小川 陽子 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

海外営業・海外販路開拓支援を専門とし、約20年にわたり中小企業の海外展示会、海外営業、海外Web活用を支援。海外販路の開拓と社内への海外営業ノウハウの定着を両立する支援を行う。自ら海外展開を目指す中小企業向けWebサイトを運営し、実践・検証を重ねながら現場で役立つ海外ビジネスの情報を日々発信している。

中小機構について

中小機構の「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて200名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。

ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。ご利用は「何度」でも「無料」です。どうぞお気軽にお申し込みください。

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個人情報管理についてまとめた別コラムもあわせてご覧ください。
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