
目次
はじめに
インドネシア政府は、外資の誘致を強化するため、外資企業設立時の払込資本金(Paid-up Capital)規制を2025年10月から大幅に緩和しました。従来の高額な最低払込資本金要件が撤廃されたことは、これまで当初の必要資本で進出を断念してきた日本の中小企業にとって、まさに画期的な変化となります。インドネシアの巨大な国内市場と成長力を取り込むため、規制緩和の具体的な内容と、日本の中小企業がどのようにインドネシア市場へ進出すべきかについて説明したいと思います。
外資企業設立、資本金規制緩和の具体的内容とインパクト
インドネシアの外資企業(PMA)に関する規制は、投資調整庁(BKPM)が管轄しています。従来、外資企業の設立には、最低100億ルピア(約1億円弱)という高額な資本金が必要であり、この高額な要件は、初期投資を抑えたい多くの中小企業にとって大きな障壁となっていました。
2021年の「投資活動に関する大統領規定」や、それを反映した最新の投資調整庁(BKPM)の規定などにより、外資の事業分野に関する規制は実質的に撤廃されてきましたが、払込資本金については高額な要件が維持されてきました。
今回の規制緩和は、初期投資の負担を大幅に軽減するため、資本力に制限のある日本の中小企業が、インドネシア市場に進出する際の最大のハードルの一つが取り除かれたことになります。これにより、これまで進出を躊躇していた、技術力やサービス力を誇る外資企業による、インドネシア市場での事業展開が可能となり、日本の中小企業にとって新たなビジネスチャンスが生まれています。この変革は、インドネシア政府が「質の高い投資」とともに「多様な投資」を求めていることの表れと言えます。
外資企業設立の許認可手続きも楽に。簡素化、迅速化が進展
OSS制度(外資企業設立、許認可オンライン制度)の統一、明確化。外資企業の設立許認可手続きの政府側窓口が一本化され、手続きの流れもオンラインベースで大幅にスピードアップが図られました。
OSS制度の手続き完了に伴い取得するNIB(事業所識別番号)の法的効力が拡大。 これまでのように単なる事業者番号ではなく、関税、輸入番号、社会保険加入、労働者報告などにも提供されるなど法的効力が拡大され、監督官庁別の申請が不要になりました。
今回の制度変更により、これまで中小企業にとって、インドネシア市場参入への大きな障壁であった最低払込資本金の緩和に加え、認可手続きも明確化、迅速化がはかられました。これまで、インドネシア人の名義借りなど不透明な形式が横行し、法的なトラブルも絶えませんでしたが、設立手続き面でも大きくハードルが下がりました。アセアンで最大の人口と最大経済規模を誇るインドネシア市場へ、日本の中小企業も本格的な参入が容易になり、手続きの透明性や迅速性に課題が残るアセアン他国に比べても、有望な投資環境になったと言えます。

規制緩和が牽引するインドネシアへの投資戦略の考え方
インドネシアは、世界第4位の人口と成長する中間層を背景に、巨大な国内市場をもつ内需主導型経済が最大の強みです。
従来は、資本金規制のハードルの高さにより進出が難しかったものの、今回の資本金規制緩和により、製造業、非製造業とも参入が加速するものと見込まれます。非製造業では、教育、コンサルティング、各種サービス、飲食、不動産などの分野が有望で、中間層の拡大が追い風となっています。
製造業では、既存のサプライチェーン依存型から、国内市場向けの高付加価値製品の現地生産へと戦略転換が進む可能性があります。例えば、食品加工や包装は、ハラール認証義務化により、現地製造が重要となり、再生可能エネルギーやEV関連部品は、投資優先リストに入っておりインセンティブが手厚い分野です。
アセアン主要国の投資環境と比較しても、輸出志向型のベトナム、高付加価値化志向のタイ、マレーシアに対し、インドネシアは明らかに内需志向型です。
今後は、巨大な国内需要の取込みと共に、経済特区(SEZ)が提供する各種優遇措置を最大限に活用する投資戦略が不可欠です。
規制緩和措置を最大限に活かす戦略的アプローチ
今回の資本金規制緩和と、手続きの一本化・簡素化・迅速化により、資本金規制がネックで進出を断念していた日本の中小企業にとって大きな追い風となります。特に、進出手続き面での大きな改革は、進出リスクを低減させ、より本質的なインドネシアでの事業戦略に集中することを可能にしました。
また、内需主導型市場であるインドネシアでは、単に日本国内での成功体験を持ち込むだけでなく、現地の消費者ニーズや文化を深く理解し、現地市場に適合した事業展開が不可欠となります。また、豊富な労働力に対して、日本の高度な技能教育やマネジメントノウハウの提供は、現地人材の成長と企業の生産性向上に直結します。
経済特区の優遇制度の活用や、デジタル化によるプラットフォームの構築、効率的なサプライチェーン構築などを通じて、新たな制度を追い風にする戦略的なアプローチこそが今後のビジネスを成功に導く鍵といえるでしょう。

筆者紹介
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安藤 律男 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)
銀行、ファイナンス会社等の金融機関に通算39年勤務。内通算22年インドネシアの銀行、ファイナンス会社に駐在しました。退職後3年間、マレーシアを拠点としてコンサルタント会社の立ち上げに従事しました。
日本では主に、海外新規事業開発、取引先の海外進出支援業務を担当してまいりました。
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