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「海ブドウで欧州へ挑む! IoTコンテナ型海藻養殖装置で切り拓く新市場」株式会社OCC

「海ブドウで欧州へ挑む! IoTコンテナ型海藻養殖装置で切り拓く新市場」株式会社OCC

沖縄県のIT企業・株式会社OCC(以下、同社)は、地元特産の「海ブドウ」をよりフレッシュな状態で世界に届けるべく、中小機構の海外展開ハンズオン支援を活用し、自社開発のIoT技術を駆使した「コンテナ型海藻養殖装置」の欧州市場への展開に取り組むことになった。

フランスで海ブドウのニーズを確認。コロナ禍で中断も再挑戦!

同社は、ITソリューションの提供に加え、琉球大学などと連携した産学プロジェクトに積極的に取り組んでおり、その一環として、沖縄県の特産品である海ブドウの海外展開の可能性に着目していた。2019年には、自社のIoTおよびAI技術を応用し、海ブドウを陸上で養殖できる画期的なコンテナ型海藻養殖装置の開発に成功。欧米では一般的に海藻を食べる習慣がないことからアジア圏での販路開拓を想定していたが、在仏日本人からの要望を受けてフランスにて市場調査を行ったところ、海ブドウの形状や食感の面白さが現地のシェフたちに高く評価され、潜在的な市場ニーズが見受けられた。これを受けて欧州展開を計画したものの、新型コロナウイルスの世界的流行により、一時中断を余儀なくされていた。

しかしながら、今後の海ブドウのニーズ増を見込み、改めて欧州市場への挑戦を決意。2021年5月より海外展開ハンズオン支援を活用し、専門家による伴走支援を受けながら、欧州市場をターゲットとした事業の再構築を図ることとなった。

コンテナ型海藻養殖装置。コンテナ内の養殖水槽にIoTカメラを設置して生育状況をモニタリングし、AIが自動で海藻の生育を管理するという養殖システムをワンパッケージ化。設置環境を問わず養殖が可能であり、CO₂排出源から二酸化炭素を調達して養殖に活用することで脱炭素社会への貢献も見込める。

スペインで養殖し、フランスへ。現地アドバイザーのネットワークも活用

スペインでの海藻養殖の様子

フランス市場のポテンシャルは既に確認されていたものの、同国には海藻を食す文化がほとんどなく、養殖の実績もなかった。そのため、欧州のFood and Beverage(フードアンドビバレッジ/飲食)に造詣の深い現地アドバイザーと連携しながら、さらなる市場調査を実施。隣国スペインのマヨルカ島で海藻の養殖が行われているとの情報を得たことから、海藻食文化をもつスペインを「欧州展開の入り口」と位置付け、業務提携先の発掘に取り組むことを同社に提案。さらに、提携先とのパートナーシップの確立を通じて、スペイン市場からフランス市場へと段階的に参入する戦略を策定した。

業務提携先の発掘においても現地アドバイザーのネットワークを活用し、有望な販売代理店や提携候補企業をリストアップ。順次、アポイントを取得し、面談の調整や物流、規制対応への助言などを行いながら、渡航の準備を進めていった。

現地を知り、販売体制を築く。同行支援でスムーズな商談に成功

2023年春には同社担当者がアドバイザーと共に現地渡航し、スペインのサンティアゴ、サンセバスティアン、マドリッドなどの都市を訪問。あらかじめリストアップしていた飲食店や加工食品企業などで海ブドウの市場性や文化的適合性に関する実地調査を行うとともに、コンテナ型海藻養殖装置の販売先を検討した。企業独自で海外に提携先を開拓するのは困難な場合も多いが、公的機関かつ専門的な知識を有するアドバイザーが同行することで信頼感が高まり、スムーズに商談を行うことができた。

販売体制の構築においても海外専用の代理店を設ける必要があったが、こちらも支援チームにより候補企業の選定や商談アレンジを実施したことから、スピーディーに進捗した。

さらに、現地文化への理解を深めるため、サンセバスティアンに所在する“世界初の食の大学”を訪問。ミシュラン星付きレストランのシェフにも試食を実施し、現地の食のプロフェッショナルから高い評価を得るなど、海ブドウの商品価値の訴求にも成功した。

“世界初の食の大学”でも海ぶどうの味は高評価

スペインの海藻加工品企業と基本合意を締結。欧州市場に本格参入へ

2023年7月にはスペインの有力な海藻加工品企業であるポルトムイニョス社と、実機を導入した上での実証実験を進めるべく、その協力関係を約束する基本合意に成功。スペインには自生しない海ブドウの養殖許可の取得に必要な手続きを進めるなど、進出国における法的手続きのサポートも実施。現地での事業展開に必要とされる各種ソフト支援を提供して礎を築くことができた。

その後、同社は2024年にスペインにおいて養殖装置の設置および実証実験の開始に至っている。現地での規制対応や製造・物流体制も構築されつつあり、欧州市場への本格参入に向けた基盤が整えられた形である。

実証実験中には、海ブドウの空輸に際して他種海藻の混入という想定外のトラブルも発生したが、同社はアドバイザーによるフォローアップを受けながら対応し、実証実験を着実に進行させている。

次なる課題は、2025年度中に見込まれる実機導入を踏まえた、欧州ビジネスのスケール戦略である。戦略策定に関するフォローアップを行うとともに、ポルトムイニョス社との合意内容が着実に履行されるよう、引き続き支援を実施していく予定である。

ポルトムイニョス本社での海ブドウ試食会の様子

企業の声

中小機構の支援により、マドリッド、サンティアゴ、サンセバスティアンの3都市にてFS調査(実現可能性調査)を実施することができました。現地市場の把握だけでなく、有望なパートナー企業の発掘や関係性の構築を円滑に進めることができ、大きな成果を得られたと感じています。消費者ニーズや文化的背景との適合性に関する多くの知見を得ることもできました。今後はスケール戦略を具体化し、販売拠点の拡充を進めるとともに、フランスなど近隣国への展開も視野に入れて取り組んでまいります。現地レストランなどを訪問する際にも中小機構のアドバイザーが同行してくれ、とても心強く感じました。海外展開を途中で諦めてしまう企業も少なくない中、アドバイザーがスケジュール確認をしながら伴走してくれたおかげで、確実に推進することができたと感じています。

企業プロフィール

株式会社OCC
URLhttps://www.occ.co.jp/
代表者代表取締役社長 屋比久 友秀
所在地沖縄県 浦添市
資本金4,880万円
従業員数616名(2025年1月現在)
業種情報サービス業
事業内容システムインテグレーション事業、データセンター事業、プロバイダ事業
商品内容コンテナ型海藻養殖装置及びそれに関連した技術

担当アドバイザー:小渡 晋治 中小機構 中小企業アドバイザー(新市場開拓)

中小機構について

独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は経済産業省が所管している中小企業政策の中核的な実施機関です。起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の各成長ステージで生じる様々な経営課題に対応した支援メニューを提供しています。
「海外展開ハンズオン支援」では、国内外あわせて300名以上のアドバイザー体制で、海外ビジネスに関するご相談を受け付けております。ご相談内容に応じて、海外現地在住のアドバイザーからの最新の情報提供やアドバイスも行っております。どうぞお気軽にお申し込みください。

「海外展開ハンズオン支援」
※ご利用は中小企業・小規模事業者に限らせていただきます。

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