前回の輸出管理(安全保障貿易管理)の基礎知識では、貿易を行う上で押さえておきたい4つの国際レジームについて解説しました。今回は「リスト規制」や「キャッチオール規制」といった、外為法に基づいた輸出管理規制について詳しく解説していきます。

国際レジームに続き、日本の輸出管理においては重要な基礎知識となっていますので、この機会におさえておきましょう。

貨物の輸出・技術の提供にあたって、日本では外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)に基づいた輸出管理が行われています。具体的には、「リスト規制」、「キャッチオール規制」、「輸出承認対象貨物」の三種類があります。

「リスト規制」とは輸出しようとする貨物や技術が輸出貿易管理令 別表1(技術の場合は外為令 別表)にあるリストに該当する場合、輸出許可が必要になる規制です。規制対象かどうかの判断は「貨物・技術」とその「スペック」で行います。

一方で「キャッチオール規制」は、輸出する貨物や技術を誰がどのように使うのかといった「需要者・用途」に基づいて判断をします。リスト規制では「貨物・技術」、キャッチオール規制では「需要者・用途」と規制対象が異なるため注意が必要です。

「輸出承認対象貨物」とは貨物輸出時の貿易秩序に基づく規制であり、ワシントン条約などの国際条約に準じた規制になっております。これは輸出貿易管理令の別表2で規制品目がリストになっています。こちらはリスト規制とはいわず、一般的にリスト規制というと輸出貿易管理令 別表1(外為令 別表)を指します。

上記3つは貨物の輸出に纏わる規制です。技術の輸出では上記のリスト規制に加え、「はみだし技術」と言われる規制技術もあります。

外為法に基づいた輸出管理規制:

①【貨物・技術】リスト規制:貨物・技術とそのスペックで規制(輸出貿易管理令別表1)

②【貨物】輸出承認対象貨物:貿易秩序に基づく規制(輸出貿易管理令別表2)

③【貨物】キャッチオール規制:需要者と用途で規制※輸出先により技術輸出でも対象となります。

④【技術】はみだし技術

これから、貨物の輸出に纏わる規制について詳しく解説していきます。

技術の輸出については、本稿の最後で解説します。

リスト規制

リスト規制は「貨物・技術」とその「スペック」に着目した規制です。

経済産業省が作成している輸出貿易管理令 別表1(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403M50000400049)で規制貨物・技術がリストになっています。この別表1に輸出予定の貨物が載っているかどうか、そしてスペックを満たしているかどうかを確認します。この確認作業を「該非判定」といいます。

品目が記載されておりスペックが規定以上であればリスト規制該当となり、輸出許可申請が必要になります。

貨物の名前は記載されているが、スペックは満たしていない場合、これは非該当なので許可申請は不要です。貨物の名称もない場合は対象外となり、こちらも許可申請は不要です。

輸出貿易管理令別表1の規制貨物を確認する方法

輸出貿易管理令 別表1のみでの判断が難しい場合は、経済産業省が公開している貨物のマトリクス表(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html)で判断してください。

エクセルファイルでリスト規制該当貨物・技術が一覧になっています。

品目数が多いので時間はかかると思いますが、このマトリクス表を用いて規制対象かどうかの確認をしてください。

参考としてリスト規制では大見出しとして1項から15項に分類されています。これら見出しは参考になりますが、先端素材と思っていたら原子力関連として規制されていたなど、思いがけない項目で規制されていることもあるので注意してください。あくまで見出しは参考です。

リスト規制見出し1項2項3項3の2の項4項5項6項7項項武器原子力・核関連化学兵器生物兵器化学兵器先端素材材料加工エレクトロニクス8項9項10項11項12項13項14項15項コンピューター通信関連センサー・レーザー航法関連海洋関連推進装置その他機微品目

よくある間違いとして、リストでは一般的な名称が使われてない場合があるので注意してください。例えばベアリングは軸受という名称で記載されています。また、海外の自社工場や関連会社へ輸出する場合も輸出許可が必要になります。日系企業や関連企業だからといって無許可で輸出しないよう気を付けてください。

該当していたら・・・

輸出予定の貨物が該当している場合、経済産業大臣へ輸出許可の申請が必要になります。輸出許可を取得後に輸出が可能になります。該当の場合でも価格など、一定の条件で特例の対象となり、許可不要になるケースもあります(少額特例)。

一方で、非該当(規制貨物だが、スペックが規制値よりも低い)の場合や対象外(貨物の名称がない)の場合、非該当証明書を作成することをお勧めします。輸出時に税関で提出を要求される可能性があります。

これらの場合でもキャッチオール規制の確認は必要です。

 非該当証明例(経産省):https://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply04.html

以上を踏まえて、リスト規制の判断する手順をまとめると以下の通りになります。

該非判定:

輸出貿易管理令別表1(または貨物のマトリクス表)で規制貨物を確認。

  • 規制対象貨物でスペックを満たす→該当
  • 規制対象貨物でスペックを満たさない→非該当
  • 規制対象貨物でない→対象外

該当の場合:経済産業省へ輸出許可申請

非該当・対象外の場合:輸出許可は不要。非該当証明書を準備し、キャッチオール規制へ。

貿易秩序に基づく規制

貿易秩序に基づく規制は、ワシントン条約といった国際条約などに関係した規制になります。こちらも規制貨物がリストになっており、該当する場合は経済産業省で輸出承認を取る必要があります(これは許可でなく承認です)。

規制貨物は経済産業省のサイトで確認できます。

輸出承認対象貨物一覧(輸出貿易管理令別表2):https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/04_kamotsu/01_export/export_kamotsu.html

キャッチオール規制

リスト規制が製品・技術に着目した規制であるのに対して、キャッチオール規制は需要者や用途に関連する規制です。リスト規制に該当しない製品や低スペックの製品であったとしても、需要者や用途によっては輸出許可申請が必要になる、という規制です。

キャッチオール規制では、用途が通常兵器や大量破壊兵器に使用される懸念があるかどうか、需要者が大量破壊兵器の開発などを行っている(または行った)かどうか、この二点が重要になってきます。

また、仕向地によっても規制内容が変わってきます。具体的には「輸出貿易管理令 別表3の地域(通称:グループA/ホワイト国)*」か「輸出貿易管理令別表3の2の地域(国連武器禁輸国・地域)**」かそれ以外の「普通の国」かです。仕向地が別表3の地域の場合、キャッチオール規制の対象外とされています。

用途・需要者・仕向地、この三項目がキャッチオール規制のポイントです。

なお、経済産業省大臣から直接に許可申請をするようにといった通知(インフォーム)が来ることがあります(インフォーム要件)。この場合は輸出許可申請が必要になります。

キャッチオール規制のポイント:

  • 用途:通常兵器や大量破壊兵器の開発などに使用される懸念があるか
  • 需要者:大量破壊兵器の開発などを行っている(行っていた)かどうか
  • 仕向地:国連武器禁輸国・地域か普通の国なら規制対象 別表3(ホワイト国/グループA)なら規制対象外

 ※経済産業大臣から通知が来たら絶対に許可申請が必要です。

この用途・需要者・仕向地でマトリクスを作るとよく見る下の表になります。丸印がついていると輸出許可の申請が必要です。

大量破壊兵器等の需要者に関して経済産業省が「外国ユーザーリスト」を公開しています。これは取引禁止リストではありませんが、いわゆるブラックリストのようなものです。外国ユーザーリスト(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law05.html)は定期的に更新されるので適宜確認するようにしてください。

別表3 (グループA/ホワイト国)でよくある間違い

別表3に関するよくある間違いとして、別表3の地域向けの場合はリスト規制も検討しなくていい、との誤解があります。しかし、リスト規制対象貨物は別表3の地域向けであっても輸出許可が必要になるので注意してください。

* 別表3の地域:
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国(26カ国)

** 別表3の2の地域:
アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン(10カ国)

貨物の輸出管理まとめ

今まで解説した貨物の輸出管理規制をまとめると、以下のようになります。

  1. 輸出する製品の該非判定を行ってください。経済産業省の貨物マトリックス表が参考になります(リスト規制の確認)。
  2. リスト規制該当なら輸出許可申請を行ってください。販売価格など条件によっては特例が使え許可がいらない場合もあります。非該当の場合、非該当証明書を準備してください。
  3. 貿易秩序に基づく規制の確認を行ってください。該当の場合は輸出承認をとってください(別表2の確認)。
  4. 需要者と用途を確認してください。通常兵器や大量破棄兵器等に使われる懸念や、需要者が大量破壊兵器の開発を行っている懸念があれば、経済産業省に相談や許可申請を行ってください(キャッチオール規制の確認)。

技術の輸出管理

技術の輸出では、リスト規制とはみ出し技術が対象となります。
※輸出先により技術輸出でもキャッチオール規制の対象となる場合があります。

リスト規制(技術)
リスト規制では貨物だけでなく貨物に関連する技術も規制されています。具体的にはリスト規制該当貨物の設計・製造・使用に係る技術で、技術データや技術支援などの形で提供されるものを指します。該非判定の方法については、貨物輸出管理のリスト規制を参考にしてください。なお、経済産業省のマトリクス表については技術マトリクス表(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html)を参照してください。

はみ出し技術
規制貨物の設計・製造・使用に係る技術以外に、「はみだし技術」と言われる規制技術があります。これは技術マトリクス表(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html)で確認可能です。

技術の提供では、貨物の輸出と異なり、海外への提供だけでなく、国内で非居住者へ提供することも規制対象になります。非居住者の定義は一般的なものと異なりますので注意してください***。自社の社員であっても「2年以上海外で駐在を予定して海外にいる社員」や、外国法人の社員、日本に来て6か月以内の外国人なども非居住者になるので注意してください。

 

技術の輸出の注意点:

国内の非居住者へ技術を提供することも規制対象となる。

*** 居住者及び非居住者の判定

居住者 非居住者
日本人 ①我が国に居住するもの
②日本の在外公館に勤務するもの
①外国にある事務所に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
②2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在する者
③出国後外国に2年以上滞在している者
④上記①~③に掲げるもので、一時帰国し、その滞在期間が6か月未満の者
外国人 ①我が国にある事務所に勤務するもの
②我が国に入国後6か月以上経過しているもの
①外国に居住するもの
②外国政府または国際機関の公務を帯びるもの
③外交官又は領事館及びこれらの随員または使用人(ただし、外国において任命又は雇用された者に限る)
法人 ①我が国にある日本法人等
②外国の法人などの我が国にある支店、出張所その他の事務所
③日本の在外公館
①外国にある外国法人等
②日本法人などの外国にある支店、出張所、その他の事務所
③我が国にある外国政府の交換及び国際機関

おわりに

ここまで、輸出管理のやり方に関して簡単な解説をしてきました。

輸出管理は思っているよりも時間がかかる作業です。輸出通関時に税関から指摘され該非判定を始めるような事態が起こると、予定していた船積みができなくなる可能性が高くなります。許可の取得にも時間がかかりますので、該非判定は余裕をもって行うようにしてください。

中小機構 中小企業アドバイザー 小橋川 唯之

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